秋は気候が穏やかで過ごしやすい季節ですが、気温の変化や空気の乾燥などによって、大人が体調を崩しやすくなる時期でもあります。免疫力が低下しやすく、感染症やアレルギー、さらには心身の不調まで幅広く影響を受けやすいのが秋という季節です。本記事では、秋に特に注意すべき病気について、症状・予防法・治療法・生活習慣の改善をわかりやすく整理し、さらに看護師による実践的なアドバイスも加えて詳しく解説します。健康な秋を過ごすための参考にしてください。1. 秋に流行しやすい病気の特徴秋は朝晩の冷え込みと日中の温暖差、そして湿度の低下によって体調が崩れやすくなります。このため、呼吸器系の病気やアレルギー、消化器系の感染症が目立ちやすいのが特徴です。下記の表に、秋に大人がかかりやすい代表的な病気をまとめます。病気名主な症状原因発症しやすい条件インフルエンザ高熱、関節痛、咳、倦怠感インフルエンザウイルス朝晩の冷え込み、乾燥した空気RSウイルス感染症発熱、咳、痰、気管支炎様症状RSウイルス子どもからの感染、免疫力低下時胃腸炎(ノロウイルスなど)下痢、吐き気、腹痛ウイルスや細菌食材の衛生不良、集団生活肺炎発熱、咳、呼吸困難細菌・ウイルス感染高齢者や持病がある人秋の花粉症(ブタクサ・ヨモギ)くしゃみ、鼻水、目のかゆみ花粉花粉の飛散が多い夏の終わり〜秋季節性うつ(季節性情動障害)気分の落ち込み、無気力日照不足、自律神経の乱れ秋から冬への日照時間減少出典:厚生労働省「感染症情報」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/index.html2. インフルエンザと秋の流行主な症状38度以上の急な高熱関節や筋肉の痛み激しい倦怠感咳、喉の痛み、鼻水通常の風邪よりも全身症状が強く出るのが特徴です。合併症のリスク特に高齢者や基礎疾患がある人では、肺炎や脳症など重篤な合併症を引き起こす可能性があります。予防法ワクチン接種:接種は10月〜12月中旬が目安。効果は接種後2週間ほどで現れ、約5か月持続します。流行ピーク(1〜2月)に備え、早めの接種が推奨されます。手洗い・うがいの徹底室内の換気と加湿(湿度40%以上、目安40〜60%)規則正しい睡眠と栄養治療法抗インフルエンザ薬水分補給と安静解熱剤の使用は必ず医師の指導のもとで生活習慣の工夫7時間以上の十分な睡眠ビタミン・タンパク質を意識した食事軽い運動で免疫力を維持看護師のワンポイントアドバイス:発熱時は脱水になりやすいため、こまめに水分を補給してください。高齢者は喉の渇きを感じにくいので、周囲の声かけが大切です。出典:国立感染症研究所「インフルエンザQ&A」https://www.niid.go.jp/niid/ja/influqa.html3. RSウイルス感染症主な症状咳、痰、発熱気管支炎のような症状呼吸困難感(特に高齢者)予防法子どもや乳幼児との接触後は手洗いを徹底混雑した場所ではマスクを着用定期的な換気高齢者ではRSVワクチンの接種が選択肢となります(Arexvy、Abrysvo、mRESVIAなど)。対象年齢や接種条件はワクチンにより異なるため、医療機関で確認が必要です。治療法特効薬はなく、症状に応じた対症療法が中心重症化した場合は入院や酸素投与が必要生活習慣の工夫呼吸器を守るために禁煙水分補給で喉の粘膜を保護有酸素運動で呼吸器機能を強化看護師のワンポイントアドバイス:子どもからの感染が多いため、家庭内での手洗い習慣を強化しましょう。アルコール消毒より石けんと流水での手洗いが有効です。出典:日本小児科学会「RSウイルス感染症」https://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=924. 秋に増える胃腸炎(ノロウイルスなど)主な症状激しい下痢、嘔吐、腹痛発熱脱水症状(口渇、尿量減少、意識低下)感染経路経路具体例経口感染汚染された食品・水接触感染患者の便・嘔吐物、ドアノブ・タオル予防法食材は十分に加熱石けんで30秒以上の手洗い調理器具や食器は熱湯消毒嘔吐物・便は次亜塩素酸ナトリウム(0.02〜0.1%)で消毒。アルコールは効きにくいため注意。治療法脱水を防ぐための水分補給経口補水液(ORS)の活用重症例では点滴治療生活習慣の工夫消化にやさしい食事(おかゆ、スープなど)十分な休養規則正しい生活看護師のワンポイントアドバイス:食欲がないときは無理をせず、経口補水液を少しずつ飲むだけでも大切です。吐物処理は手袋とマスクをつけて行いましょう。出典:厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/norovirus/index.html5. 肺炎と秋の体調不良主な症状咳、痰、発熱、息切れ高齢者では倦怠感や食欲低下のみの場合もある種類細菌性肺炎(肺炎球菌など)ウイルス性肺炎(インフルエンザ、RSウイルス)誤嚥性肺炎(高齢者に多い)予防法肺炎球菌ワクチン接種栄養バランスの取れた食事口腔ケアの徹底(誤嚥性肺炎の予防に有効。歯科専門職との連携が推奨されます)治療法抗生物質(細菌性の場合)入院治療が必要なケースもある生活習慣の工夫軽い運動で呼吸筋を鍛える禁煙水分補給と休養看護師のワンポイントアドバイス:高齢者では「熱が出ない肺炎」も多く見られます。普段と違う様子を感じたら、早めに受診しましょう。出典:日本呼吸器学会「成人肺炎診療ガイドライン2024」https://www.jrs.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=2226. 秋の花粉症秋の花粉症はブタクサやヨモギ(キク科)によって引き起こされ、夏の終わり〜秋に花粉の飛散が増加します。春とは異なる植物が原因のため、春に症状がない人でも秋に発症する場合があります。主な症状くしゃみ、鼻水、鼻づまり目のかゆみ、頭痛集中力低下や倦怠感予防法マスク・眼鏡で花粉を防御帰宅後は衣服をはたき、洗顔・うがいを徹底室内は空気清浄機を使用治療法抗ヒスタミン薬点鼻薬・点眼薬アレルゲン免疫療法(重症例)生活習慣の工夫規則正しい睡眠ストレスを減らす工夫抗酸化作用のある食品を摂取看護師のワンポイントアドバイス:寝室に花粉を持ち込まない工夫が効果的です。洗濯物は室内干しにするなど、生活環境を整えましょう。出典:環境省「花粉症環境保健マニュアル」https://www.env.go.jp/air/pollen/manual/index.html7. 季節の変わり目と自律神経の乱れ主な症状頭痛、肩こり、だるさ不眠、動悸、イライラ季節性うつ予防法気温に応じた服装の工夫入浴でリラックス朝日を浴びて体内時計を整える治療法軽症:生活習慣の改善重症:医師による治療が必要生活習慣の工夫症状改善策頭痛・肩こりストレッチ、温浴だるさ規則正しい生活、朝日を浴びる不眠就寝前のスマホ控え、寝室環境を整える気分の落ち込み軽い運動、趣味の時間、日光浴看護師のワンポイントアドバイス:眠れないときは無理に寝ようとせず、リラックスできる音楽や読書を取り入れてみてください。生活リズムを整えることが一番の予防になります。出典:日本自律神経学会「自律神経と季節の関係」https://jand.jpn.org/8. 訪問看護の活用と在宅支援秋に流行しやすい病気は、特に高齢者や持病を持つ方にとって重症化のリスクが高く、早期発見・早期対応が重要です。しかし、通院が難しい方や日常生活の中で体調変化に気づきにくい方も少なくありません。そのような場面で活用できるのが訪問看護サービスです。訪問看護でできること体調管理:バイタルサインの測定、発熱や咳などの症状観察感染症予防:手洗い・消毒の指導、ワクチン接種スケジュールの確認服薬管理:薬の飲み忘れ防止、正しい服薬方法の指導栄養・水分補給の支援:脱水予防や免疫力維持のための食事指導リハビリ支援:肺炎や体力低下に対するリハビリ、運動指導看取りや慢性疾患管理:自宅での療養を希望する場合の包括的支援看護師のワンポイントアドバイス訪問看護は「病気になってから利用するもの」と思われがちですが、病気を予防し、再発を防ぐ役割も果たします。秋の体調変化が不安な方は、早めに相談することで安心して在宅生活を続けられます。出典:日本看護協会「訪問看護とは」https://www.nurse.or.jp/home/publication/feature/visit/まとめ秋は感染症やアレルギー、自律神経の乱れなど、大人が体調を崩しやすい季節です。予防の基本は手洗い・マスク・規則正しい生活にあります。早めのワクチン接種や生活習慣の工夫に加え、訪問看護サービスを活用することで在宅でも安心した療養生活が可能になります。健康について不安を感じる場合は、ピース訪問看護ステーション にぜひご相談ください。注意事項本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状や体調に不安がある場合は、必ず医師などの専門家にご相談ください。関連記事熱中症の症状とは?初期症状から重症化までの段階と対処法経口補水液の効果とは?熱中症・脱水症の強い味方を徹底解説コロナか夏風邪か熱中症か?2025年夏に知っておきたい症状の違いと受診目安参考文献一覧厚生労働省「感染症情報」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/index.html国立感染症研究所「インフルエンザQ&A」https://www.niid.go.jp/niid/ja/influqa.html日本小児科学会「RSウイルス感染症」https://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=92厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/norovirus/index.html日本呼吸器学会「成人肺炎診療ガイドライン2024」https://www.jrs.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=222環境省「花粉症環境保健マニュアル」https://www.env.go.jp/air/pollen/manual/index.html日本自律神経学会「自律神経と季節の関係」https://jand.jpn.org/日本看護協会「訪問看護とは」https://www.nurse.or.jp/home/publication/feature/visit/本記事の執筆者・監修者プロフィール【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理に長け、地域医療連携や在宅看取り支援にも積極的に取り組んでいる。