高齢者にとって「脱水症状」は命に関わるリスクのある重要な健康課題です。特に夏だけでなく、冬にも見過ごされがちな脱水が多発しています。本記事では、高齢者が脱水症状になりやすい理由や、季節ごとの原因、症状の見分け方、予防・対処法について詳しく解説します。介護や在宅医療に携わる方、家族の健康を守りたい方はぜひ参考にしてください。1. 高齢者が脱水症状を起こしやすい理由高齢になると体内の水分保持能力や感覚機能が低下するため、若年層に比べて脱水リスクが格段に高くなります。たとえば、体内水分の保持力が弱まり、喉の渇きを感じにくくなり、腎臓の機能が衰えることで尿量が増えたり、水分摂取を控えるようになってしまうことがあります。また、服用している薬剤によっては利尿作用があり、知らないうちに体内の水分が減ってしまうこともあります。これら複数の要因が複合的に影響することで、高齢者は脱水症状を起こしやすくなっています。要因説明体内水分の減少高齢者は脂肪が多く、筋肉量が少ないため水分保持量が低い渇きの感覚鈍化脳の感覚機能の低下により、喉の渇きを感じにくくなる腎機能の低下水分排出の調整が難しくなり、尿量が増加しやすい薬の影響利尿剤・降圧剤などが脱水を誘発することがある2. 季節別に見る脱水症状のリスク脱水症状は夏に多いイメージですが、実際には冬にも発生しやすいものです。特に冬は空気の乾燥や水分摂取の減少など、目立った症状が出にくいために気づきにくく、対応が遅れるケースも少なくありません。夏と冬では脱水のメカニズムが異なるため、それぞれの季節に応じた対策が重要です。季節主な原因特徴的な症状夏発汗過多、熱中症倦怠感、めまい、頭痛冬空気の乾燥、水分摂取の減少皮膚の乾燥、食欲不振冬の脱水は見逃されやすいため要注意です。エアコンや暖房により空気が乾燥し、気づかないうちに体内の水分が失われます。3. 脱水症状の初期サインとは?高齢者の脱水症状は初期段階で気づければ、重症化を防ぐことが可能です。日頃からささいな体調変化に気づけるよう、症状の特徴を理解しておくことが大切です。とくに、肌や唇の乾燥、血圧の変化、精神的なぼんやり感などが見られた場合は注意が必要です。症状詳細口や唇の乾燥唇がカサつき、ひび割れることも皮膚の張りの低下手の甲などをつまんでもすぐに戻らない血圧や心拍の変化脱水により血流が悪くなり、頻脈や低血圧になる倦怠感ぼんやりしたり、活動意欲がなくなる4. 高齢者における脱水の予防法世界保健機関(WHO)や欧州食品安全機関(EFSA)などの国際的な指標では、成人の1日あたりの推奨水分摂取量はおおよそ体重1kgあたり30〜40mlとされています。たとえば体重60kgの人であれば1.8L〜2.4Lが目安となります。高齢者では腎機能の低下や感覚の鈍化を考慮し、1日1.5L以上の水分摂取が推奨されますが、体調や持病によっては医師の指示を優先してください。日々の生活の中で水分摂取や住環境の工夫を行うことで、高齢者の脱水は十分に予防可能です。特に意識的に飲み物をとる習慣をつけること、食事に水分を多く含む食品を取り入れることが効果的です。また、住環境の調整も忘れてはならない要素であり、加湿器の導入や温湿度管理も有効です。予防法解説水分補給の習慣一度に大量ではなく、こまめに飲むことがポイント水分を含む食品果物、煮物、スープなどを積極的に取り入れる室内環境の整備加湿器や湿度計の活用で乾燥を防止5. 脱水を見逃さない!家庭でできるチェック方法家庭でも脱水の兆候を早めにキャッチできるよう、日々の観察ポイントを把握しておくことが大切です。唇や舌の乾燥、尿の色、体重の急な変化などは目に見えるサインであり、誰でも確認できる簡単な方法です。チェック項目観察ポイント唇や舌の状態乾燥やひび割れがないか尿の色濃い黄色や茶色は注意信号体重1〜2日で1kg以上の変動は要注意トイレの頻度急激な増減がないかを確認6. 脱水症状が疑われる時の対応方法軽度の脱水であれば、自宅での対応で回復が見込まれますが、重症の場合は迅速な医療対応が必要です。涼しい室内環境を整え、経口補水液を使いながら少しずつ水分を補給することが基本です。意識がもうろうとしている場合は、すぐに医療機関へ連絡しましょう。室温を整える(涼しくor加湿)経口補水液(OS-1など)を少しずつ摂取安静にして様子を見る重度の場合(意識障害、けいれん、吐き気など)は、すぐに医療機関へ連絡を。7. 在宅介護・訪問看護での工夫と注意点訪問看護や在宅介護の現場では、介護職や看護師が日常的に水分摂取や健康状態をモニタリングしています。記録の徹底だけでなく、利用者の好みを理解した飲み物の提供、タイミングを見計らった声かけなどが大切です。こうした工夫により、脱水の予防効果が高まります。工夫効果水分量の記録日々の摂取量を可視化し、不足を把握できる飲み物の工夫嗜好に合わせて飲みやすくする(例:フレーバー水)タイミングの工夫習慣づけしやすくなる(例:朝食前に一杯)8. 家族ができる脱水対策サポート家族も日常的に高齢者の脱水予防に関与できます。飲み物を勧めるだけでなく、同じタイミングで一緒に飲んだり、食事の中に自然と水分を取り入れるメニューを考えたりすることが大切です。また、ちょっとした体調変化に早く気づくために、こまめなコミュニケーションも重要です。家族の取り組みポイント一緒に飲む習慣声かけと同時に自らも水を飲むことで促せる献立への工夫汁物・果物など水分を含むメニューを意識観察と声かけ日々の変化に気づきやすくなるまとめ高齢者の脱水症状は、見逃されやすく、重症化しやすい特徴があります。しかし、日常のちょっとした配慮や、家庭・介護現場での観察・声かけにより、防ぐことが可能です。特に季節ごとのリスクや初期サインに注意を払い、こまめな水分補給を心がけましょう。関連記事高齢者の熱中症対策完全ガイド、予防・症状・室内での注意点まで【夏の注意】訪問看護の現場で気をつけたい熱中症リスクと対処法 夏場の訪問リハビリはここに注意!快適に続けるための実践ポイント町田市で訪問看護や介護サービスについて知りたい方は、ピース訪問看護ステーションの公式サイトもあわせてご覧ください。▶ https://island-piece.jp/service/houmonkango