家庭や職場、介護の現場など、私たちの身近な場所で毎年発生している食中毒。特に高温多湿な日本の夏は、細菌やウイルスが活発に活動し、食中毒のリスクが高まります。この記事では、食中毒の原因や症状、予防のための具体的な対策を、現場経験を交えてわかりやすく解説します。高齢者や乳幼児など、免疫力が低い方を守るためのポイントも盛り込みました。1. 食中毒とは食中毒とは、食品や飲料に含まれる細菌・ウイルス・寄生虫、または有害物質が原因で起こる健康被害の総称です。発症すると吐き気・嘔吐・下痢・発熱などの症状が出ます。場合によっては重症化し、命に関わることもあります。食中毒の分類種類主な原因特徴細菌性食中毒サルモネラ、カンピロバクター、O157など夏場に多い。増殖スピードが早いウイルス性食中毒ノロウイルス、ロタウイルスなど冬場に多い。少量でも感染化学性食中毒農薬、食品添加物など誤飲や混入で発症自然毒食中毒フグ毒、きのこ毒など特定の食材に含まれる毒素💡 現場エピソード訪問看護の現場では、夏に冷蔵庫が古く温度管理が不十分な家庭で作った惣菜が原因で下痢や発熱を起こした高齢者がいました。冷蔵庫温度のチェックは意外と盲点です。2. 食中毒の主な原因食中毒の発生には、食品の取り扱い方や保存状態が深く関わっています。加熱不足:中心部まで十分な加熱がされないと細菌が死滅しません。温度管理不良:常温放置や冷蔵庫温度が高いと菌が増殖します。交差汚染:生肉とサラダを同じまな板や包丁で扱うなど。手洗い不足:調理者の手から食品に菌やウイルスが移ります。💡 ワンポイント介護現場では、調理担当が複数いる場合は「調理工程表」を作り、手洗いタイミングや器具の洗浄タイミングを明記することで、食中毒リスクを減らせます。3. 食中毒の症状と発症までの流れ発症までの時間(潜伏期間)は原因によって異なります。原因菌・ウイルス主な症状潜伏期間サルモネラ菌発熱、下痢、嘔吐6〜72時間(通常12〜36時間)カンピロバクター発熱、下痢、腹痛1〜7日ノロウイルス嘔吐、下痢、発熱24〜48時間腸管出血性大腸菌O157激しい腹痛、血便3〜8日💡 注意高齢者や乳幼児は症状が急速に悪化する場合があります。特に脱水に注意し、早期受診が大切です。4. 食中毒予防の三原則厚生労働省が推奨する予防の基本は「つけない・ふやさない・やっつける」です。原則対策例つけない手洗い、調理器具の消毒、食材の分けて保管ふやさない冷蔵(10℃以下)、冷凍(-15℃以下)で保存(※市販冷凍食品や流通は-18℃以下)やっつける中心温度75℃以上で1分以上加熱💡 現場からの工夫訪問先では、冷蔵庫の中の温度計設置を推奨し、温度が高いときは庫内の整理整頓を指導しています。5. 家庭でできる予防対策手洗いは調理前・生肉や魚に触れた後・トイレの後に必ず。食材の保存は購入後すぐに冷蔵庫や冷凍庫へ。調理器具は用途別(肉用、野菜用)に分ける。加熱調理は中心部までしっかり火を通す。作り置きは冷蔵保存し、食べる前に再加熱。調理後は室温に長く置かず、目安は2時間以内に食べるか冷却する。6. 季節別の食中毒対策夏(6〜9月)細菌が繁殖しやすい温度帯(20〜40℃)を避けるため、調理後は早めに冷蔵庫へ(目安2時間以内)。冷蔵庫の開閉を最小限にして温度上昇を防ぐ。冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は-15℃以下をキープ。冬(11〜2月)ノロウイルスに注意。加熱後も調理器具や手洗いの徹底を。生牡蠣や二枚貝は85〜90℃で90秒以上加熱して食べる。春・秋(3〜5月、10月)気温が不安定なため、保存温度管理を油断しない。運動会や行楽弁当は保冷バッグを使用し、日陰で保管。7. 高齢者宅での注意点事例集冷蔵庫が古く冷却能力が低下 → 温度計を設置し、必要に応じて修理・買い替えを提案。賞味期限切れの食材を大量に保存 → 定期訪問時に食品チェックを行い、破棄を促す。加熱不足の料理を提供 → 電子レンジ再加熱でも中心部まで温まるよう、温度計や加熱時間の指導を実施。手洗い習慣が不十分 → 流し場に石鹸と清潔なタオルを常備するよう助言。8. 外食や買い物時の注意点消費期限や賞味期限を必ず確認する。夏場は生もの(刺身、寿司)を持ち帰る時間を短く。弁当は保冷剤を使う。外食で加熱不足が疑われる肉や魚は避ける。9. 食中毒が疑われるときの対応方法脱水症状を防ぐため、経口補水液などで水分補給。嘔吐や下痢が続く場合は自己判断で市販薬を飲まず、速やかに医療機関へ。嘔吐物や便は使い捨て手袋・マスクを着用して処理。嘔吐物は次亜塩素酸ナトリウム0.1%(1000ppm)で消毒(環境表面は0.02%:200ppm)。まとめ食中毒は日常のちょっとした油断で発生しますが、正しい知識と行動で予防が可能です。特に高齢者や乳幼児、持病を持つ方は重症化しやすいため、日々の食品管理や調理時の衛生に細心の注意を払いましょう。もし食中毒の兆候が見られたら、自己判断せず医療機関を受診してください。食の安全を守ることは、健康を守ることです。町田市で訪問看護や介護サービスについて知りたい方は、ピース訪問看護ステーションにご相談ください。関連記事【2025年最新】コロナ禍と訪問看護の現状と対策、安全なケア提供のために高齢者の水分摂取量ガイド:健康維持のために必要な知識と実践法を紹介嚥下機能に効果的!パタカラ体操の正しいやり方と注意点本記事の執筆者・監修者プロフィール【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理に長け、地域医療連携や在宅看取り支援にも積極的に取り組んでいる。