新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が5類感染症に移行してから1年以上が経過しましたが、訪問看護の現場では依然として感染対策とケアの両立が重要な課題となっています。特に高齢者や基礎疾患を持つ利用者が多い訪問看護では、「感染から守りつつ、必要なケアを途切れさせない」ことが求められます。本記事では、2025年8月時点におけるコロナと訪問看護の最新状況、現場の工夫、公的機関のガイドライン、そして今後の展望について詳しく解説します。1. 2025年のコロナと訪問看護の関係新型コロナは5類感染症となった後も、季節性インフルエンザのように流行と落ち着きを繰り返す傾向が見られます(厚生労働省:新型コロナウイルス感染症の位置づけ変更後の対応)。流行規模や時期は地域によって異なり、厚労省の定点把握データでも波が確認されています。訪問看護の対象者は高齢者や基礎疾患のある方が多く、重症化リスクが一般より高いため、感染予防と重症化予防の両立が不可欠です。2. 厚労省・看護協会の最新ガイドライン公的機関の資料では、「標準予防策を徹底しつつ、個別の状態に応じてケアを継続する」という考え方が示されています(厚労省:医療機関・介護施設等における感染対策(総合情報)、日本看護協会:訪問看護ステーション等で働く看護職向け COVID-19 情報)。項目主な内容実務への影響訪問可否の判断基準発熱・呼吸器症状、濃厚接触歴、同居家族の健康状態訪問前の事前確認体制が必須PPE使用の考え方サージカルマスクを基本、高リスク状況ではN95等を検討物品管理と在庫確保が必要換気・消毒居室の換気、使用器具・接触面の清掃ケア前後の時間配分を調整情報共有医師・ケアマネ・介護職とのリアルタイム連携ICTツール利用が前提に3. 感染対策とケア継続の両立感染対策を厳格に行う一方で、利用者との交流や心理的サポートが不足すると孤立感が強まる恐れがあります。そのため、安全と生活の質のバランスが重要です(全国訪問看護事業協会:新型コロナウイルス感染症関連情報(特設ページ))。現場で実践されている工夫ゾーニング:清潔エリア、使用エリア、廃棄物置き場など動線を意識して区分使い捨て物品の計画的活用:訪問ごとに交換、在庫管理を徹底短時間集中ケア:事前準備を徹底し、滞在時間を短縮しながら観察は省略しないオンライン補助:バイタル測定や服薬確認をリモートで補助し、訪問間隔を安全に延ばす4. 利用者・家族への説明と同意感染対策は利用者や家族の理解と協力なしには成立しません。訪問前の体調確認や、訪問時の感染対策手順の説明が重要です。事前確認項目の例利用者の発熱や呼吸器症状の有無同居家族の発症や検査状況居室の換気可否(窓・換気扇の使用)手指消毒剤・マスクの有無エアロゾル発生が予想される処置(吸引、ネブライザー)の有無5. コロナ後遺症(Long COVID)への対応コロナ感染後、長期間症状が続く「Long COVID」への対応も訪問看護の重要な役割です(参考:日本看護協会:訪問看護ステーション等で働く看護職向け COVID-19 情報)。主な症状看護のアプローチ慢性疲労活動量を段階的に調整(ペーシング)、十分な休養呼吸困難呼吸回数のコントロール、口すぼめ呼吸、酸素療法管理精神的不調傾聴と安心確保、セルフケア計画作成、専門科との連携睡眠障害睡眠環境整備、生活リズム調整6. スタッフの健康管理とメンタルケア訪問看護師は一人で訪問することも多く、孤立や負担感が蓄積しやすい環境です。感染対策と同時に健康管理とメンタルサポートも不可欠です。推奨される取り組み勤務前のセルフチェック(体温・症状)を日報で一元管理PPE在庫の最小基準を設定し、定期的な棚卸と発注ヒヤリハット事例の共有を「責めない文化」で実施代替要員リストの作成(同地区事業所や協会支援窓口の連絡先含む)7. 今後の展望と課題訪問看護は今後も感染症対応と地域包括ケアの連携強化が求められます。ICT活用の定着(地域や事業所の規模により進度は異なる)感染症と災害が同時に発生する事態への備え(代替ルートや休止基準の事前策定)医師・訪問介護・薬局との情報共有体制の強化まとめ2025年の訪問看護は、コロナとの共存を前提とした柔軟な運営体制が広がっています。感染対策は緩めすぎず、過度に厳格化しすぎず、利用者の生活の質を守ることを第一に考える必要があります。ICT活用や多職種連携を進め、安心で継続的なケア提供を目指しましょう。困ったときはぜひ、ピース訪問看護ステーションにご相談ください。出典(参考資料)【出典】厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の位置づけ変更後の対応(5類移行)」https://www.mhlw.go.jp/stf/corona5rui.html【出典】厚生労働省「医療機関・介護施設等における感染対策(総合情報)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431.html【出典】日本看護協会「訪問看護ステーション等で働く看護職向け COVID-19 情報」https://www.nurse.or.jp/nursing/kikikanri/covid_19/homonkango/index.html【出典】全国訪問看護事業協会「新型コロナウイルス感染症関連情報(特設ページ)」https://www.zenhokan.or.jp/information-corona/関連記事訪問看護のサービス内容を徹底解説、対象者・保険制度・利用の流れまでわかる高齢者に多い不整脈と訪問看護の活用法、症状から在宅ケアまでわかりやすく解説高齢者の脱水症状に要注意!季節別の原因と予防・対処法まとめ本記事の執筆者・監修者プロフィール【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理に長け、地域医療連携や在宅看取り支援にも積極的に取り組んでいる。