寝たきりや車いす生活が長くなると、ご家族が最も心配するトラブルのひとつが褥瘡(じょくそう)、いわゆる床ずれです。「気づいたときには皮膚が赤くなっていた」「かかとに水ぶくれができていた」。こうした相談は、在宅の現場で本当に多く聞かれます。褥瘡は一度深くなると治療に何か月もかかり、痛みや感染でご本人の生活の質を大きく下げてしまいます。けれど、正しい知識があれば、その多くは自宅でも防げます。この記事では、訪問看護の現場でご家族にお伝えしている褥瘡(床ずれ)の在宅予防の考え方を、体位変換・体圧分散・スキンケア・栄養の4本柱に沿って解説します。初期症状の見分け方から実際のケア手順、できてしまったときの対処までを具体的にまとめました。介護に不安を抱えるご本人・ご家族が「今日から何をすればいいか」を持ち帰れる内容です。この記事でわかること褥瘡(床ずれ)が在宅でできる仕組みと、予防が特に大切な理由見逃してはいけない初期症状(発赤)の見分け方体位変換・体圧分散・スキンケア・栄養の具体的な予防ケア褥瘡ができてしまったときのステージ別の対処と受診の目安町田市・相模原市で訪問看護に相談できること褥瘡(床ずれ)とは?在宅での予防が大切な理由褥瘡とは、体の一部が長時間圧迫され続けることで皮膚や皮下組織の血流が途絶え、その部分の細胞が壊れてしまう傷のことで、在宅では「予防」が最大の治療になります。褥瘡は「床ずれ」とも呼ばれ、寝ている時間が長い方や自分で寝返りを打てない方に起こりやすい傷です。骨が出っ張った部分の皮膚が、体の重みでベッドや車いすに押しつけられ続けると、その下を通る細い血管がつぶれて血液が届かなくなります。血流が止まった皮膚は酸素と栄養を失い、早ければ数時間で赤みが出て、対応が遅れると水ぶくれや深い潰瘍へと進みます。健康な人が寝ているあいだに無意識で寝返りを打っているのは、実はこの圧迫を自然に逃がすため。自力で体を動かせない方は、この「無意識の除圧」ができないぶん、周囲の手助けで圧を逃がす必要があります。在宅で褥瘡予防が特に大切なのは、病院と違って24時間の見守りができないからです。夜間はご家族も眠りますし、日中も家事や仕事で目を離す時間があります。だからこそ、限られた時間で効率よく圧迫を減らす工夫と、毎日の観察を習慣づけることが、床ずれを防ぐ決め手になります。日本褥瘡学会も、発生してからの治療より予防に重点を置くことの大切さを示しています(出典:日本褥瘡学会「褥瘡の予防について」)。予防は特別な医療技術ではなく、家庭での毎日の積み重ねでできる部分が大きいことが特徴です。ひとたび深い褥瘡ができると、通院や処置に多くの時間と費用がかかります。痛みでご本人が動けなくなり、さらに寝たきりが進むという悪循環にも陥りやすいのです。だからこそ「できてから治す」より「できる前に防ぐ」ほうが、ご本人にもご家族にも負担が少なくなります。町田市・相模原市で在宅療養の方を訪問していると、退院してから自宅の環境が整うまでの最初の2〜3週間に褥瘡ができやすい傾向があります。入院中は体圧分散マットレスや定期的な体位変換が整っていたのに、自宅では準備が追いつかず、ご家族だけで抱え込んでしまう時期だからです。この時期に専門職が入って環境を整えるだけで、床ずれの発生はぐっと減ります。寝たきり自体を防ぐ視点も欠かせないため、廃用症候群を防ぐために、寝たきりを防ぐ訪問リハビリと生活の工夫もあわせて参考にしてください。褥瘡ができる原因とできやすい部位褥瘡は「圧迫」だけでなく、「ずれ」「摩擦」「湿潤」の4つの要因が重なって発生し、体重がかかる骨の出っ張り部分にできやすいのが特徴です。原因を正しく理解すると、どこをどう守ればよいかが見えてきます。単に「柔らかい布団にすればいい」というわけではありません。体がずれる力や皮膚の湿り気まで含めて対策する必要があります。ここでは発生のメカニズムと、注意すべき部位を整理します。褥瘡を引き起こす4つの要因褥瘡は圧迫・ずれ・摩擦・湿潤という4つの外力と皮膚状態が組み合わさって起こります。要因具体的な場面主な対策圧迫同じ姿勢で寝続ける、座り続ける体位変換・体圧分散マットレスずれベッドの頭側を上げたとき体が下方向に滑る30度以内の角度・ずれ防止摩擦体を引きずって移動させる持ち上げて動かす・スライドシート湿潤汗・尿・便で皮膚がふやけるこまめな交換・保湿と保護この4要因のうち、ご家庭で見落とされやすいのが「ずれ」と「湿潤」です。ベッドの背もたれを上げて食事をとる際、体がずるずると足側に滑ると、皮膚の表面と内部が逆方向に引っ張られて血管がねじれ、圧迫だけのときより深い傷になりやすくなります。おむつの中が長時間湿ったままだと、皮膚がふやけて弱くなり、わずかな圧迫でも傷になります。介助で体を動かすときに引きずってしまう「摩擦」も、皮膚の表面をこすって傷める原因です。圧迫を減らすだけでなく、姿勢の保持・皮膚の乾燥・持ち上げての移動を同時に意識することが、褥瘡予防の土台になります。4つのうちどれか1つでも対策が抜けると、そこが弱点になって傷ができてしまうのです。褥瘡ができやすい部位褥瘡は骨が皮膚のすぐ下に出っ張っている部位に集中して発生します。姿勢できやすい部位仰向け仙骨部(お尻の中央)・かかと・後頭部・肩甲骨横向き大転子部(太ももの付け根の外側)・くるぶし・耳座位坐骨部(お尻の左右の骨)・尾骨在宅で最も多いのは、仰向けで寝ているときにできる仙骨部とかかとの床ずれです。仙骨部は体重が集中しやすいうえ、おむつ内の湿気もこもるため二重にリスクが高い場所。かかとは骨が細く接地面積が小さいため、短時間でも強い圧がかかり、気づかないうちに水ぶくれができていることがあります。横向きが多い方は大転子部やくるぶし、車いすで過ごす時間が長い方は坐骨部を重点的に観察してください。これらの「好発部位」をご家族が覚えておくだけで、毎日のチェックが格段に効率的になります。「骨が出ている場所ほど念入りに見る」と覚えておくと分かりやすいでしょう。やせて骨が目立つ方や、拘縮(関節が固まって曲がったままになる状態)で体の一部が常に当たる方は、上の表にない場所にも褥瘡ができることがあります。ひざの内側どうしが当たる、耳が枕にこすれるなど、その方特有の「当たりやすい場所」も一緒に確認しておくと安心です。点滴の管や酸素マスクのゴムなどが皮膚に食い込んでできる褥瘡もあるため、機器が当たる部分にも目を配ってください。褥瘡の初期症状を見逃さないための観察ポイント褥瘡の初期症状は皮膚の「消えない赤み(発赤)」であり、この段階で気づいて圧迫を取り除けば、深い傷になる前に食い止められます。褥瘡は一気に深い穴があくのではなく、必ず段階を追って進みます。最初のサインを見逃さず、毎日決まったタイミングで皮膚を観察する習慣が、重症化を防ぐ最大の防御です。ここでは初期サインと、判断に迷いやすい発赤の見分け方を説明します。見逃してはいけない初期サイン褥瘡の初期には、赤み・熱感・硬さ・痛みといった皮膚の変化が現れます。初期サイン具体的な状態家庭での確認方法発赤皮膚が赤く変色する明るい場所で好発部位を目視熱感・冷感周囲より熱い、または冷たい手のひらでそっと触れる硬結皮膚の下が硬く感じる指の腹で軽く押す痛み・不快感触れると嫌がる、表情が曇る声かけと表情の観察観察のタイミングは、おむつ交換のときや、体を拭く清拭のときが効率的です。1日1回は好発部位を明るい照明の下で確認しましょう。朝の着替えのときと入浴・清拭のときなど、時間を決めておくと見忘れを防げます。皮膚が黒っぽい方や、もともと色素が濃い部分では赤みが分かりにくいもの。熱感や硬さといった「触った感覚」の変化も手がかりにします。会話ができない方の場合、体の向きを変えたときに顔をしかめる、特定の姿勢を嫌がるといった反応も、痛みのサインとして見逃せません。気づいた変化はノートに日付とともに書き留めておくと、訪問看護師や主治医に伝えるときに役立ちます。スマートフォンで同じ角度・明るさの写真を残すと、悪化か回復かを客観的に比べられます。少しでも「いつもと違う」と感じたら、その部位への圧迫を減らす対応をすぐ始めてください。発赤が「消える赤み」か「消えない赤み」かの見分け方指で押して白くなり、離すと再び赤くなる発赤は回復可能ですが、押しても赤みが消えない発赤はすでに褥瘡が始まっているサインです。見分け方消える発赤(一過性)消えない発赤(褥瘡の始まり)指で3秒押す押した部分が白くなる押しても赤いまま離した後数秒で赤みに戻る変化しない意味血流は回復している血流が途絶えている対応圧迫を減らして経過観察圧迫を完全に除去し相談この指押しテスト(ブランチングテスト)は、家庭でできる最も簡単で確実な判断方法です。透明なプラスチック板で軽く押して、下の皮膚の色を見ながら確認する方法もあります。押すときは強く押しすぎず、指の腹でそっと3秒ほど当てるのがポイントです。押して白くならず赤みが残る場合は、皮膚の内部ですでに組織が傷み始めています。その部位に体重をかけないよう体位を工夫し、早めに訪問看護師や主治医に相談してください。逆に、押して白くなるうちは血流が戻る余地があるため、体位変換とスキンケアを徹底すれば回復が期待できます。判断に迷ったときは「消えない赤みは褥瘡」と考えて、まずは圧迫を取り除く。この原則を家族全員で共有しておけば、誰が介護をしても対応がぶれません。在宅でできる褥瘡予防の基本ケア(体位変換・体圧分散・スキンケア・栄養)在宅での褥瘡予防は、体位変換・体圧分散・スキンケア・栄養という4本柱を組み合わせて行うことが基本です。どれか1つだけを頑張っても床ずれは防ぎきれません。圧迫を減らし、皮膚を守り、体の内側から組織を丈夫にする。この4つを無理のない範囲で毎日続けることが、遠回りに見えて最も確実な予防法です。どこから手をつければよいか迷ったら、まずは体位変換で圧迫を逃がすことから始めてください。圧迫を減らすことがすべての土台であり、そのうえに体圧分散・スキンケア・栄養を積み重ねていくイメージです。ご家庭の状況に合わせて、できるところから取り入れましょう。体位変換の正しい方法と頻度体位変換は、同じ部位に圧迫が集中しないよう体の向きを変えるケアで、体圧分散マットレスの有無に応じて頻度を調整します。状況体位変換の目安ポイント一般的なマットレス2時間ごと仰向け・右横向き・左横向きを順に体圧分散マットレス使用時4時間ごとでも可機種と状態に応じ看護師が調整横向きの角度30度側臥位大転子部に直接体重をかけないベッド頭側挙上30度以内が目安上げすぎるとずれが生じる体位変換は褥瘡予防の柱ですが、夜間も2時間ごとに続けるのはご家族にとって大きな負担です。日本褥瘡学会は、粘弾性フォームマットレスなど適切な体圧分散寝具を使う場合、体位変換の間隔を4時間を超えない範囲まで延ばしてよいとしています(出典:日本褥瘡学会「褥瘡の予防について」)。横向きにするときは、背中とお尻の骨が真横に来ないよう30度側臥位という浅い角度にし、クッションで背中を支えると安定します。無理に完全な横向きにすると、かえって大転子部に圧が集中するので注意してください。向きを変えたあとはクッションで手足のすき間を埋め、体が安定する姿勢を作ることが、次の体位変換までの時間を安全に過ごすコツです。ご家族が腰を痛めないよう、ベッドの高さを介助しやすい位置まで上げてから行うことも大切。体を動かすときは、引きずらずに一度持ち上げるか、スライドシートを使って滑らせると、摩擦とずれを同時に防げます。完全に同じ間隔でなくても、「食事の前後」「おむつ交換のとき」など生活の区切りに合わせて向きを変えると、忘れにくく続けやすくなります。夜間の負担が大きいときは、日中に体位変換の回数を増やして夜を少し減らすなど、家族の生活に合わせた組み立てを訪問看護師と相談してください。体圧分散グッズ(マットレス・クッション)の選び方床ずれ予防グッズは、体の沈み込みで圧を分散するマットレスと、部位を守るクッションを組み合わせて使います。グッズ主な役割向いている方エアマットレス空気圧で自動的に圧を分散自力で動けない・褥瘡リスクが高いウレタンマットレス体の形に沿って沈み圧を逃がすある程度自分で動けるかかと保護クッションかかとを浮かせて除圧かかとの発赤があるポジショニングクッション横向きや姿勢保持を補助体位変換の補助が必要体圧分散マットレスやクッションの多くは、介護保険の福祉用具貸与(レンタル)で借りられます(出典:厚生労働省「介護・高齢者福祉」)。要介護度によって対象が異なるため、ケアマネジャーに相談して選ぶのが確実です。グッズ選びで大切なのは「高価なものほど良い」ではなく、その方の動ける力に合っているかどうかです。自分で少し寝返りができる方に沈み込みの深いエアマットレスを使うと、体が沈んで動きにくくなり、かえって寝たきりが進むこともあります。逆に、まったく動けない方に硬めのマットレスを使えば圧が逃げず、褥瘡のリスクが上がってしまいます。かかとに赤みが出やすい方は、ふくらはぎ全体で支えてかかとを浮かせるクッションが有効です。福祉用具の選び方は介護保険で利用できる福祉用具とは?レンタル・購入のしくみと選び方を解説や高齢者向けベッドを介護保険でレンタルする方法とそのメリットも参考になります。スキンケア(洗浄・保湿・排泄ケア)褥瘡予防のスキンケアは、皮膚を清潔に保ち、乾燥を防いで保湿し、尿や便の刺激から守ることが基本です。ケア具体的な方法頻度の目安洗浄弱酸性の洗浄剤をよく泡立て優しく洗う1日1回・排泄後保湿入浴・清拭後に保湿剤を塗る1日1〜2回排泄ケア汚れたらすぐ交換・撥水性の保護剤汚染のつど摩擦予防こすらず押さえるように拭く毎回皮膚は乾燥しても、湿りすぎても弱くなります。高齢の方の皮膚は薄くバリア機能が低下しているため、保湿剤でうるおいを保つことが床ずれ予防に直結します。洗うときはナイロンタオルでゴシゴシこすらず、石けんをよく泡立てて泡で包むように洗い、押さえ拭きで水分を取ります。ふき取りのときにこすってしまうと、それだけで摩擦の刺激になります。尿や便が付着したままだと皮膚がふやけてただれやすくなるため、汚れたらできるだけ早く交換し、必要に応じて撥水性の皮膚保護クリームで刺激から守りましょう。保湿剤は入浴・清拭の直後、皮膚がやわらかいうちに塗ると浸透しやすく、少量を手のひらで温めてから優しくのばすとムラなく行き渡ります。おむつを使う方は、通気性のよいものを選び、あて方がきつくなりすぎないよう気をつけるだけでも蒸れを減らせます。入浴やシャワーが難しい日でも、蒸しタオルでの清拭と保湿だけは続けると、皮膚の状態が安定します。この毎日の積み重ねが、目に見えない形で皮膚の強さを支えてくれるのです。褥瘡を防ぐ栄養管理褥瘡予防には、皮膚や筋肉の材料になるたんぱく質と、エネルギー・水分をしっかり確保する栄養管理が欠かせません。栄養素役割多く含む食品たんぱく質皮膚・筋肉・傷の修復肉・魚・卵・大豆・乳製品エネルギー体を動かす・組織を保つごはん・パン・油脂ビタミン・亜鉛皮膚の再生を助ける緑黄色野菜・果物・貝類水分皮膚の潤いと血流維持こまめな水分補給栄養状態が悪いと、皮膚や筋肉がやせて骨が出っ張り、少しの圧迫でも褥瘡ができやすくなります。日本褥瘡学会のガイドラインでも、血液検査の血清アルブミン値が低い方は褥瘡の発生リスクが高いとされており、日々の食事でたんぱく質とエネルギーを十分にとることが予防につながります(出典:日本褥瘡学会「褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版)」)。傷を治すときには普段より多くのたんぱく質が必要になるため、食事が細い方ほど意識してとることが大切です。食が進まない方には、少量でも栄養が詰まった食品や、市販の栄養補助ゼリー・ドリンクを活用する方法があります。水分が不足すると皮膚が乾燥し血流も悪くなるため、食事のたびにひと口ずつでも水分をとる習慣をつけましょう。むせやすい方は、とろみをつけると安全に水分と栄養を補えます。低栄養の詳しい対策は高齢者が避けたい低栄養とその予防法、訪問看護でできる栄養管理で解説しています。食事量が減ってきた、体重が落ちてきたと感じたら、早めにピース訪問看護ステーションへご相談ください。栄養と褥瘡の両面から、ご家庭に合ったケアを一緒に組み立てます。褥瘡ができてしまったときの対処法とステージ別ケア褥瘡ができてしまったら、深さ(ステージ)に応じた対応が必要で、自己判断で処置せず訪問看護師や主治医に早めに相談することが回復への近道です。「もう傷ができてしまった」と落ち込む必要はありません。早い段階で正しく対応すれば、多くの床ずれは改善します。ここでは深さの段階と、家庭でやってはいけない対処を整理します。ステージ(深さ)別の見方と基本対応褥瘡は皮膚の浅い段階から深い段階まで進行し、深さによってケアの方針が変わります。ステージ皮膚の状態基本的な対応ステージ1押しても消えない発赤圧迫を完全に除去・保護ステージ2水ぶくれ・浅いびらん湿潤環境を保つ被覆・処置ステージ3皮下組織まで達する潰瘍医療的処置・専門的管理ステージ4筋肉・骨まで達する医師の治療・場合により手術この分類は、国際的に使われている褥瘡のステージ分類(米国のNPIAP〔旧NPUAP〕やヨーロッパのEPUAPなどがまとめた、深さの基準)に基づいています。ステージ1〜2の浅い段階なら、圧迫を取り除き適切なスキンケアを続けることで自宅でも改善が期待できます。一方、ステージ3以上になると医師の診察と専門的な創傷管理が必要です。見た目が小さくても、皮膚の下で組織が広く傷んでいる「ポケット」ができていることもあり、深さの正確な判断は専門職でなければ難しいのが実情です。表面が黒っぽいかさぶた状になっている褥瘡は、その下の深さが分からず、時間が経ってから急に深い傷が現れることもあります。こうした傷を家庭で無理にはがすのは危険なので、必ず医療者に任せてください。傷から膿が出る、悪臭がする、周囲が赤く腫れて熱を持つ、発熱がある。こうした場合は感染のサインなので、すぐに主治医へ連絡してください。感染が全身に広がると命に関わることもあります。様子見の判断に迷ったら、訪問看護師に写真を見せる、または訪問時に確認してもらうのが安全です。やってはいけない対処と受診の目安褥瘡には、マッサージや消毒の乱用、自己判断での市販薬使用など、かえって悪化させる対処があるため注意が必要です。やってはいけないこと理由正しい対応赤い部分のマッサージ傷んだ組織をさらに傷める圧迫を除去して安静に強い消毒液の多用再生する細胞まで傷める洗浄を基本に医療者へ相談患部を乾かす治りが遅くなる場合がある湿潤環境の管理は医療者と市販薬の自己判断使用深さに合わず悪化の恐れ主治医・看護師の指示に従うかつては褥瘡に消毒して乾かすのが常識でしたが、現在は傷を適度に潤した湿潤環境で治す考え方が主流です。良かれと思ってのマッサージや消毒が、逆に治りを妨げることも少なくありません。特に、血行を良くしようと赤い部分をもむのは、すでに傷んだ組織を壊す行為なので避けてください。次のような場合はためらわず受診・相談してください。発赤が消えない、水ぶくれや皮むけができた、傷が広がる・深くなる、膿や悪臭がある、発熱を伴う。これらは家庭だけで様子を見てよい段階を超えたサインです。褥瘡は「早く相談したほうが結果的にラク」な傷であり、早めの対応が、入院や長期治療を避けることにつながります。訪問看護に相談できること|町田・相模原での在宅褥瘡ケア支援訪問看護では、褥瘡の観察・処置から、体位変換や福祉用具の助言、多職種との連携まで、在宅での褥瘡ケアを幅広く支えることができます。褥瘡ケアは、ご家族だけで抱えると心身ともに大きな負担になります。専門職が定期的に入ることで、悪化を防ぎ、ご家族の不安も軽くなります。ここでは訪問看護が具体的に何をするのか、制度面も含めて説明します。訪問看護師が行う褥瘡ケアの内容訪問看護師は、褥瘡の予防から発生後の処置、家族への指導までを一貫して行います。ケア内容具体的な支援観察・評価好発部位のチェック・深さの評価・写真記録処置医師の指示に基づく創傷処置・被覆材の交換予防ケア指導体位変換・スキンケアの方法を家族に指導環境調整マットレス・クッションの選定をケアマネと調整栄養・全身管理食事・水分・全身状態の確認と助言訪問看護師は、褥瘡そのものだけでなく、その方の全身状態や生活環境まで含めて見ています。町田市・相模原市で在宅療養の方を訪問する中で実感するのは、ご家族が「体位変換のコツ」や「皮膚の見方」を一度覚えると、日々のケアの質が大きく上がることです。たとえば、退院後にかかとの赤みが消えず不安を抱えていたご家庭では、ふくらはぎで支えてかかとを浮かせるクッションを1つ加え、あわせて背上げの角度を30度以内に見直しました。それだけで数日のうちに赤みが引き、夜間の体位変換の回数も無理なく減らせました。皮膚の見方をご家族が身につけたことで、「これなら続けられる」と表情が変わったのが印象的です。私たちは処置を代わりに行うだけでなく、ご家族がその場で一緒に手を動かしながら覚え、自信を持ってケアを続けられるようお伝えしています。看取り期の在宅ケアについては看取り期でも自宅で過ごせる?町田市の訪問看護ができることもご覧ください。褥瘡が心配な方は、まずお気軽にピース訪問看護へお問い合わせください。医療保険・介護保険での利用と多職種連携訪問看護は医療保険または介護保険で利用でき、主治医やケアマネジャー、福祉用具事業者と連携して在宅の褥瘡ケアを支えます。連携先役割主治医処置の指示・薬の処方・全身管理ケアマネジャー福祉用具の手配・サービス調整福祉用具事業者マットレス・ベッドのレンタル訪問看護ステーション観察・処置・家族指導・連携の要褥瘡ケアは1つの職種だけでは完結しません。医師が処置を指示し、看護師が実施し、ケアマネジャーが必要な福祉用具を手配し、それぞれが情報を共有することで、はじめて在宅でも安全なケアが実現します。リハビリ職が関わって少しでも自分で動ける範囲を広げれば、それ自体が圧迫を減らす予防にもなり、複数の視点が重なることでケアの質は着実に高まります。訪問看護ステーションは、この多職種連携の中心的な役割を担い、ご家庭で起きている変化を各職種へ橋渡しします。利用にあたっては、要介護認定の有無や病状によって医療保険と介護保険のどちらを使うかが変わりますが、その判断や手続きも訪問看護師とケアマネジャーがサポートするので心配いりません。「どこに相談すればいいか分からない」という段階でも大丈夫です。まずは声をかけていただければ、必要な窓口へおつなぎし、その方に合った支援の形を一緒に考えます。よくある質問(褥瘡の在宅予防)Q1. 褥瘡の体位変換は本当に2時間おきでないといけませんか?一般的なマットレスでは2時間ごとが目安ですが、体圧分散マットレスを使えば間隔を延ばせる場合があります。夜間の負担が大きいときは、マットレスの導入をケアマネに相談してください。Q2. 床ずれにマッサージをしてもいいですか?赤くなった部分や傷になった部分のマッサージは避けてください。傷んだ組織をさらに傷め、悪化させる恐れがあります。赤みが気になるときは、まず圧迫を取り除くのが正しい対応です。Q3. ベッドの高さや角度は床ずれに影響しますか?はい、影響します。頭側を上げすぎると体が足側にずり落ち、皮膚に「ずれ」が加わります。背もたれは30度以内を目安にし、上げたあとはお尻を軽く持ち上げてずれを解消しましょう。Q4. 褥瘡予防に効果的な栄養・食事は何ですか?皮膚や筋肉の材料になるたんぱく質を中心に、エネルギー・ビタミン・亜鉛・水分をバランスよくとることが大切です。食が細い方は栄養補助食品も役立ちます。Q5. 褥瘡ができやすい人にはどんな特徴がありますか?自分で寝返りが打てない方、寝たきりや車いすの時間が長い方、栄養状態が低下している方、感覚が鈍く痛みに気づきにくい方はリスクが高めです。複数重なるほど注意が必要です。Q6. 褥瘡の初期症状(発赤)を放置するとどうなりますか?押しても消えない発赤を放置すると、水ぶくれやびらん、さらに深い潰瘍へ進みます。深くなるほど治療は長引きます。初期の段階で圧迫を取り除けば回復が期待できます。Q7. 訪問看護に褥瘡ケアを頼めますか?はい、頼めます。褥瘡の観察・評価、医師の指示による処置、体位変換やスキンケアの家族指導まで対応します。予防段階からの相談も歓迎です。Q8. 褥瘡が治らない・悪化したときはどこに相談すればいいですか?まず主治医と訪問看護師に相談してください。膿や悪臭、腫れ、発熱があれば感染の可能性があり早急な受診が必要です。深い褥瘡は皮膚科・形成外科での治療が必要な場合もあります。まとめ褥瘡(床ずれ)は、圧迫・ずれ・摩擦・湿潤が重なって起こりますが、その多くは在宅でも予防できます。カギは、体位変換・体圧分散・スキンケア・栄養の4本柱を無理のない範囲で毎日続けることと、押しても消えない発赤という初期サインを見逃さないことです。まず体位変換で圧迫を逃がすことから始め、そこにスキンケアと栄養を積み重ねていきましょう。傷ができても、深さに応じて早めに対応すれば回復は期待できます。ご家族だけで抱え込まず、訪問看護の手を上手に借りることが、ご本人にもご家族にも優しい在宅療養につながります。ピース訪問看護ステーションにご相談ください「家族に床ずれができないか心配」「かかとの赤みが消えなくて不安」。そんなときは、褥瘡が深くなる前にご相談ください。こんな方はぜひご相談ください:自分で寝返りが打てない家族を自宅で介護している方お尻やかかとの赤みなど皮膚の変化に気づいて不安な方体位変換やスキンケアの正しい方法を知りたい方ピース訪問看護ステーションができること:褥瘡の好発部位の観察と、深さの評価・経過フォロー体位変換・スキンケア・栄養管理の指導とご家族のサポート体圧分散マットレスなど福祉用具の選定をケアマネと調整町田市・相模原市・多摩市など東京都南部を中心に対応しています。まずはお気軽にお問い合わせください。関連記事廃用症候群を防ぐために、寝たきりを防ぐ訪問リハビリと生活の工夫高齢者が避けたい低栄養とその予防法、訪問看護でできる栄養管理介護保険で利用できる福祉用具とは?レンタル・購入のしくみと選び方を解説【2025年最新版】高齢者向けベッドを介護保険でレンタルする方法とそのメリット看取り期でも自宅で過ごせる?町田市の訪問看護ができること参考文献一覧出典:日本褥瘡学会「褥瘡の予防について」https://www.jspu.org/general/prevention/出典:日本褥瘡学会「褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版)」(2022年)https://www.jspu.org/medical/books/出典:日本褥瘡学会「床ずれ(褥瘡)予防パンフレット」https://www.jspu.org/medical/books/出典:厚生労働省「介護・高齢者福祉」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理、地域医療連携、在宅看取り支援に積極的に取り組んでいる。island-piece.jp 株式会社isLand|訪問看護・居宅介護支援・訪問介護|町田市