1. 「心臓が痛い」と感じたときに考えられる原因胸のどのあたりが痛い?(左胸・真ん中・みぞおち・背中など)部位主な原因特徴左胸狭心症・心筋梗塞など締めつけられるような痛み、左腕やあごに放散胸の真ん中心臓・大動脈・胃食道圧迫感・焼けるような痛みみぞおち胃炎・逆流性食道炎・胃潰瘍食後や就寝時に悪化しやすい背中大動脈解離・筋肉痛強い痛みが突然起こる胸の痛みの位置は、原因を見分ける大きなヒントになります。心臓の痛みは胸の中央から左胸にかけて出ることが多く、左腕・肩・あごに放散する場合は特に注意が必要です。背中まで抜けるような痛みは、大動脈という太い血管が裂ける「大動脈解離」のサインのこともあります。胃や食道が原因の痛みはみぞおち付近で「焼ける」「もたれる」などの感覚を伴い、食後や就寝時に悪化する傾向があります。どの部位に痛みがあるかを正確に伝えることが、診断を早める第一歩になります。痛み方の違い(締めつけ・ズキズキ・刺すよう・チクチク)痛みの種類主な原因特徴締めつけるよう狭心症・心筋梗塞強い圧迫感や胸の重さ刺すよう肋間神経痛・胸膜炎呼吸や姿勢で変化するズキズキ筋肉痛・炎症性疾患動作で悪化チクチク心因性・ストレス軽度だが繰り返す胸の痛みの「感じ方」も重要です。心臓由来の痛みは締めつけられるような重苦しさで、しばしば「胸の奥が苦しい」と表現されます。これに対し、神経や筋肉が原因の痛みは「刺すよう」「チクチク」と表現されることが多く、姿勢や呼吸で痛みが変化するのが特徴です。押すと痛みが強まる場合は、肋軟骨炎など筋骨格系の痛みが疑われます。とはいえ、自己判断は危険です。痛みの種類を医師に伝えることで、正確な鑑別診断につながります。一時的な痛みと続く痛みの違いを知ろう持続時間疑われる疾患数秒〜数分神経痛・筋肉痛5〜10分狭心症30分以上心筋梗塞・大動脈解離長時間続く消化器・精神的要因痛みの持続時間は、緊急度を判断するうえで極めて重要です。数秒〜数分で消える痛みは神経や筋肉の問題であることが多いですが、5〜10分続く痛みは血流障害による狭心症の可能性があります。さらに、30分以上続く強い痛みは心筋梗塞や大動脈解離など命に関わる状態を示唆します。こうした痛みは安静にしても治まらず、冷や汗や吐き気を伴うことが多いため、ためらわず救急要請(119)を行うことが大切です。2. 危険な胸の痛みとは?すぐに受診が必要なサイン冷や汗・息苦しさ・意識が遠のくような症状があるとき症状疑われる疾患対応冷や汗・吐き気心筋梗塞直ちに救急要請息切れ・動悸心不全・不整脈早急に受診意識消失大動脈解離・重度不整脈救急車を呼ぶ胸の痛みに冷や汗や吐き気、息苦しさを伴う場合は、命に関わる心筋梗塞や大動脈解離の可能性があります。特に「締めつけられるような痛み」「胸が重い」「息が吸えない」「意識が遠のく」などの症状がある場合は、時間との勝負です。次のような場合は迷わず119(判断に迷うときは♯7119)を利用しましょう。30分以上続く胸の圧迫感冷や汗・吐き気・息切れを伴う首・肩・あご・腕・背中への放散痛安静にしても改善しないニトログリセリンを3回使用しても改善しない(服用中の方のみ)こうした症状は一時的に軽くなっても危険です。「様子を見る」は禁物です。「安静にしても痛い」「30分以上続く」胸痛は要注意状況疑われる疾患行動安静時も痛い心筋梗塞救急要請持続30分以上大動脈解離即受診繰り返す胸痛狭心症数日以内に循環器受診安静時にも続く胸痛や30分以上続く痛みは、軽く見てはいけません。特に痛みが背中に抜ける、呼吸で増す、体勢を変えても治まらない場合は、心筋梗塞や大動脈解離の危険があります。これらは発症後1時間以内の対応が生死を分けるため、自力で移動せず救急車を呼ぶのが原則です。高齢者や糖尿病の方は痛みが軽い、または感じにくいこともあり、倦怠感や息切れのみでも早めに受診を。命に関わる病気(心筋梗塞・大動脈解離・肺塞栓など)の特徴疾患名特徴緊急度心筋梗塞胸の圧迫感、冷や汗、吐き気最重度大動脈解離背中まで走る激痛、痛みが移動最重度肺塞栓急な息苦しさ、脈の乱れ高命に関わる胸痛には共通点があります。それは「突然」「強烈」「長く続く」ことです。心筋梗塞では胸の中央から左胸にかけて圧迫感が出て、冷や汗や吐き気を伴います。大動脈解離は「裂けるような痛み」が背中に走り、時間とともに場所が移動することもあります。肺塞栓では突然の息苦しさ、脈の乱れ、失神が起こることも。長時間同じ姿勢でいた、脱水、経口避妊薬の使用、肥満などがある方は特に注意が必要です。3. 心臓の病気が原因の胸の痛み狭心症とは?動いたときに出る締めつけるような痛み特徴内容痛み運動時や階段昇降で胸が締めつけられる持続時間数分でおさまる改善法安静とニトログリセリン狭心症は、心臓に酸素を送る冠動脈が一時的に狭くなり、心筋への血流が不足することで起こります。運動や緊張、寒冷刺激などで発作が起こり、胸の中心や左胸に「締めつけられるような痛み」が出ます。痛みは数分で治まることが多いですが、繰り返す場合は進行性の動脈硬化が疑われます。医師から処方されているニトログリセリンは、座って舌の下に置いて使用します。立位での使用は血圧低下を起こすことがあるため注意が必要です。心筋梗塞とは?安静にしていても続く強い痛み特徴内容痛み安静時でも続く激しい圧迫痛随伴症状冷や汗、吐き気、息切れ持続30分以上心筋梗塞は、冠動脈が完全に詰まって心筋の一部が壊死する病気です。痛みは非常に強く、「胸を押しつぶされるような圧迫感」が30分以上続きます。冷や汗、吐き気、呼吸困難、顔面蒼白を伴うことが多く、放散痛として左腕や顎、背中に痛みが広がることもあります。特に発症後1時間以内の治療開始が命を左右します。女性や高齢者、糖尿病患者では痛みが軽い・感じないケースもあり、息切れや極度の倦怠感でも心筋梗塞を疑う必要があります。心不全や不整脈で胸が苦しい・動悸がする場合疾患主な症状心不全息切れ、むくみ、体重増加不整脈動悸、立ちくらみ、失神心不全は心臓のポンプ機能が低下し、血液を十分に送り出せなくなる状態です。息切れ、体重増加、足のむくみなどが現れ、進行すると夜間の呼吸困難や咳を伴います。不整脈は心臓のリズムが乱れ、脈が速くなったり遅くなったりする状態で、胸のドキドキ感や立ちくらみ、失神を起こすことがあります。これらの症状は心電図や血液検査(BNP・トロポニンなど)で早期に診断でき、定期的な循環器内科のフォローが重要です。4. 心臓以外の病気で起こる胸の痛み肺や気胸など「呼吸器」が原因の胸の痛み疾患名主な症状特徴肺炎・胸膜炎発熱・咳・息苦しさ呼吸や咳で痛みが強くなる気胸突然の片側の胸痛・息切れ10〜30代の痩せ型男性に多い肺塞栓急な息苦しさ・冷や汗長時間座位や脱水が誘因呼吸器疾患も胸の痛みを引き起こします。肺炎や胸膜炎では炎症が胸膜を刺激し、呼吸や咳のたびに痛みが強くなります。気胸は、肺に穴が開いて空気が漏れ、片側の肺がしぼむ病気で、特に痩せ型の若い男性に多くみられます。肺塞栓(肺血栓塞栓症)は長時間の同一姿勢や脱水、手術後、経口避妊薬などが原因で血栓が肺に詰まる病気です。突然の息苦しさ、動悸、冷や汗を伴うときは直ちに救急要請が必要です。胃・食道など「消化器」が原因の胸の痛み疾患名主な症状特徴逆流性食道炎胸やけ・みぞおちの痛み食後・前屈で悪化胃潰瘍空腹時の痛み胃酸の刺激で悪化胆石症右上腹部から胸への痛み食後に強く出る消化器疾患も胸痛の原因になります。逆流性食道炎では胃酸が逆流して食道を刺激し、「焼けるような痛み」や「胸やけ」「喉の違和感」を引き起こします。胃潰瘍は空腹時にみぞおちが痛むのが特徴で、胆石症では右上腹部から胸にかけて痛みが広がることがあります。これらは心臓由来の痛みと間違われやすいため、「痛みが食後に起こるか」「体勢で変化するか」などをメモし、消化器内科で検査を受けることが大切です。肋間神経痛・肋骨骨折・帯状疱疹など「体の外側」が原因の痛み疾患名主な症状特徴肋間神経痛動作や姿勢で痛みが変化ピリピリ・刺すような痛み肋骨骨折咳や深呼吸で痛み悪化打撲・転倒後に発症帯状疱疹皮膚の発疹と強い痛み発疹前から痛み出ることも肋間神経痛や帯状疱疹、肋骨の損傷も胸の痛みを引き起こします。肋間神経痛は、体をひねる・咳をする・深呼吸をするなどの動作で痛みが強まるのが特徴です。帯状疱疹では皮膚に発疹が出る前からチクチク・ズキズキとした痛みが現れることがあり、早期の抗ウイルス薬治療で症状を抑えられます。肋骨骨折は転倒や強い咳で起こることもあり、押すと痛みが増す場合は整形外科受診をおすすめします。5. ストレスや不安で起こる胸の痛み(心臓神経症など)ストレス・緊張で胸が痛くなることがある?状況原因特徴強い緊張・不安自律神経の乱れチクチク・重い痛み長時間のストレス血管収縮・過呼吸息苦しさを伴う感情の高ぶり一時的な血流低下数分でおさまる強い緊張やプレッシャー、不安を感じたときに胸が痛くなることがあります。これは自律神経の乱れによって心臓や血管が一時的に収縮し、血流が変化するためです。特に「仕事でのストレス」「睡眠不足」「過労」などが重なると、胸のチクチク感や圧迫感が出やすくなります。検査で異常が見つからなくても症状が続く場合、ストレス由来の「心因性胸痛」である可能性が高く、深呼吸や軽い運動、リラックス法を取り入れることが改善につながります。「心臓神経症」とはどんな病気?内容詳細原因ストレスや不安による自律神経の乱れ症状胸の圧迫感・動悸・息苦しさ・不安感対応心療内科・循環器内科で併診心臓神経症とは、検査で心臓に異常がないにもかかわらず、胸の圧迫感や動悸、息苦しさなどが続く状態をいいます。主な原因はストレスや心理的負担による自律神経のアンバランスです。特徴として、検査結果が正常でも本人は強い不安を感じ、症状が再発することがあります。治療は心療内科と循環器内科の併診が推奨され、薬物療法に加え、生活習慣の見直しや認知行動療法などの心理的サポートが有効とされています。睡眠不足や生活リズムの乱れとの関係原因症状対策睡眠不足動悸・胸痛6〜9時間を目安に過労息苦しさ・だるさ十分な休息夜型生活自律神経の乱れ朝日を浴びる習慣睡眠不足や夜型生活も胸痛の原因になることがあります。自律神経は睡眠と密接に関係しており、不規則な生活や夜更かしが続くと交感神経が優位になり、血管が収縮して胸の違和感や動悸を引き起こします。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針2014」では、成人の理想的な睡眠時間を6〜9時間とし、朝に太陽の光を浴びる・就寝前にスマホを見ないなどの習慣改善が勧められています。質の良い睡眠が心臓にも「休息」を与えるのです。6. どの病院に行けばいい?受診の目安と診療科の選び方救急車を呼ぶべき症状とタイミング症状対応激しい胸痛・冷や汗・吐き気119番通報意識が遠のく・息ができない救急搬送高齢者や持病のある人の突然の痛み躊躇せず受診胸の痛みが強く、冷や汗や吐き気、息苦しさを伴う場合は、自力での移動は避けて救急車を呼ぶことが原則です。判断に迷うときは、全国どこからでも利用できる救急安心センター(♯7119)へ電話すれば、看護師が受診の可否を助言してくれます。特に心筋梗塞・大動脈解離・肺塞栓は発症から1時間以内の治療が命を左右します。夜間や休日でも「様子を見る」ことはせず、少しでも不安を感じたら迷わず救急要請を行いましょう。受診の前に整理したい「痛みの記録」ポイント記録項目例痛みの場所左胸・真ん中・みぞおちなど発症時間○時頃〜○分間続いたきっかけ運動・食後・ストレスなど病院を受診するときは、痛みの特徴を簡単に記録しておくと診断が早まります。特に「どこが」「いつ」「どれくらい」「どんな痛みか」「どんな状況で出たか」を整理すると有効です。スマホのメモや紙に記入しておくのもおすすめです。また、「服薬歴」「既往歴」「家族に心臓病があるか」も大切な情報です。これらを伝えることで、医師がより正確に原因を判断し、適切な検査や治療へつなげることができます。診療科の選び方:循環器・呼吸器・消化器・総合内科症状受診科動悸・息切れ・圧迫感循環器内科咳・発熱呼吸器内科胸やけ・みぞおち痛消化器内科不明・複数症状総合内科胸痛の原因はさまざまな臓器に関連しており、どの診療科に行くか迷う人は少なくありません。胸の中央や左胸の痛み、動悸、息切れがある場合は循環器内科が第一選択です。咳や発熱、息苦しさがある場合は呼吸器内科、食後の胸やけやみぞおちの痛みは消化器内科が適しています。症状が複雑で原因が特定できないときは総合内科を受診すれば、必要に応じて専門科を紹介してもらえます。7. 病院で行う検査と診断の流れ心電図・血液検査・レントゲンなどの基本検査検査内容心電図不整脈・虚血を検出血液検査心筋逸脱酵素(トロポニン)を確認胸部X線心臓・肺の異常を確認胸痛で受診した場合、最初に行われるのが心電図・血液検査・胸部レントゲンの3つです。心電図は数分で結果が出る検査で、狭心症や心筋梗塞、不整脈を確認できます。血液検査では心筋のダメージを示すトロポニンの上昇をチェックし、心筋梗塞かどうかを早期に見分けます。レントゲンでは心臓の大きさや肺の異常(胸水・気胸など)を確認します。これらの検査を迅速に行うことで、命に関わる疾患を早期に発見できるのです。CT・心エコー・ホルター心電図などの精密検査検査対象疾患CT大動脈解離・肺塞栓心エコー弁膜症・心不全ホルター心電図発作性不整脈初期検査で重大な疾患が疑われた場合には、さらにCTや心エコー、ホルター心電図などの精密検査を行います。CTでは大動脈や肺の血管を詳細に確認し、大動脈解離や肺塞栓の診断に欠かせません。心エコー(超音波検査)は、弁膜症や心不全の評価に有用で、放射線被曝がない安全な検査です。ホルター心電図は24時間装着し、発作的に起こる不整脈を見つけることができます。これらの検査によって、胸痛の原因をより正確に特定できるのです。観察入院と重症度評価方法目的トリアージ緊急度判断スコアリング心筋梗塞リスク評価観察入院経過観察胸痛の原因がすぐに特定できない場合や、軽症に見えても心疾患が疑われる場合には、観察入院を行うことがあります。病院ではトリアージによって重症度を判断し、緊急度の高い患者を優先的に対応します。さらに、心筋梗塞の発症リスクを点数化するスコアリングシステム(TIMIスコアなど)を用いて治療方針を決定します。短期間の経過観察により、見逃しを防ぎ、夜間や安静時の発作を確実に捉えることが可能になります。8. 痛みが出たときの応急処置と自宅での対応まずは安静にして深呼吸を。体勢や環境を整える方法状況推奨される行動注意点胸が痛いとき安静にして動かない動作で痛みが強まる場合あり息苦しいとき上体を少し起こす横になると悪化することも家族がいる場合一人にせず見守る意識変化に注意胸に痛みを感じたときは、まず安静を保ち、深呼吸で落ち着くことが大切です。動くと心拍数が上がり、心臓への負担が増すため、無理に歩いたりしゃべったりしないようにします。息苦しい場合は上体を少し起こして座る姿勢(半座位)をとり、衣服をゆるめて呼吸をしやすくしましょう。家族がいる場合は、意識の変化や冷や汗、顔色の悪化がないか見守ります。突然倒れたときは、すぐに119へ通報し、心肺蘇生(CPR)やAEDの準備を行います。ニトログリセリンなど薬がある場合の正しい使い方薬の名称使用目的注意点ニトログリセリン狭心症発作の緩和座って使用・立位禁止硝酸イソソルビド予防薬定期的な服用で効果β遮断薬脈拍・血圧を下げる勝手に中止しない医師からニトログリセリンを処方されている人は、胸の痛みを感じたらすぐに使用します。座った状態で舌の下に置き、飲み込まずに自然に溶かすのが正しい使い方です。1回使用しても5分以内に痛みが取れない場合は、5分間隔で最大3回まで使用し、それでも改善しなければ心筋梗塞の可能性があるため救急要請を行いましょう。立ったまま使用すると急激な血圧低下を起こすことがあるため、必ず座って行います。絶対にしてはいけない行動(我慢・鎮痛剤の自己判断など)禁止事項理由痛みを我慢する治療が遅れ命に関わる鎮痛剤を自己判断で服用心筋梗塞を見逃す恐れ入浴・飲酒で様子を見る心拍上昇・血圧低下の危険胸が痛いときに痛みを我慢することは最も危険な対応です。特に「仕事中だから」「もう少し様子を見よう」と判断を先延ばしにすると、心筋梗塞などの発見が遅れて命に関わることがあります。市販の鎮痛剤(ロキソニン・バファリンなど)を自己判断で服用するのも避けましょう。痛みが一時的に軽くなっても病気は進行します。入浴や飲酒も心臓への負担を増やすため、胸痛時には安静と救急要請が最優先です。9. 胸の痛みを防ぐための生活習慣食事・運動・睡眠・禁煙でできる心臓のケア生活習慣具体的な方法効果食事塩分を控え、野菜・魚中心血圧・脂質を改善運動1日30分のウォーキング血流促進・動脈硬化予防睡眠6〜9時間の良質な睡眠自律神経を整える禁煙喫煙を完全にやめる冠動脈疾患リスクを半減胸の痛みを予防するには、生活習慣の見直しが基本です。特に食事では、塩分の摂りすぎが高血圧を引き起こすため、1日6g未満を目標にしましょう(厚生労働省「日本人の食事摂取基準2025」より)。脂質の多い食事を控え、魚や野菜を中心にバランスよく摂ることが大切です。また、ウォーキングなどの有酸素運動を週に150分程度行うことで、血流が改善し心臓への負担を軽減できます。十分な睡眠と禁煙の継続も、心臓を守るための重要な要素です。ストレスを減らすためのメンタルケア方法内容効果深呼吸・瞑想副交感神経を活性化血圧・脈拍を安定趣味・会話ストレスホルモン低下精神的リラックスカウンセリング専門家による支援心身の安定を促す慢性的なストレスは、自律神経を乱し血管を収縮させて胸痛を悪化させます。心臓病とストレスの関連は科学的にも明らかであり、日本循環器学会もストレス対策を心疾患の一次予防として推奨しています。深呼吸や瞑想、軽いストレッチは副交感神経を整え、心拍や血圧を安定させる効果があります。趣味の時間や家族との会話など、心を解放する時間を意識的に作ることが、胸痛を繰り返さない心のケアになります。定期健診や健康チェックで早期発見を検査項目目的頻度血圧・心電図高血圧・不整脈の確認年1回以上血糖・脂質糖尿病・高脂血症の確認年1回胸部X線・心エコー構造異常の発見必要時に医師が判断心臓病の多くは、自覚症状が出る前に進行します。そのため、定期健診で血圧・血糖・脂質などの数値を確認し、リスクを早めに見つけることが大切です。特に家族に心疾患のある人、高血圧や糖尿病の既往がある人は、年1回以上の心電図・血液検査を推奨します。職場健診の結果も放置せず、異常があれば早めに循環器内科へ相談することで、心筋梗塞などの重症化を防ぐことができます。10. 性別・年齢によって違う胸の痛みの特徴女性に多い「更年期やホルモンバランス」の影響状況原因主な特徴更年期女性ホルモン(エストロゲン)の減少動悸・息切れ・胸の圧迫感自律神経の乱れストレス・睡眠不足不安感と胸の違和感心臓神経症ホルモン変動+精神的負担検査異常なしでも症状あり女性は更年期前後にエストロゲンの減少が起こり、自律神経のバランスが崩れやすくなります。その結果、動悸や息切れ、胸の圧迫感、チクチクするような痛みなどが出ることがあります。検査で異常がなくても、ホルモンやストレスの影響で胸の痛みを感じるケースは少なくありません。また、女性の心筋梗塞は男性よりも痛みが軽く、背中やみぞおちの違和感として現れることがあるため注意が必要です。高齢者や持病がある人の胸痛の特徴と注意点状況特徴注意すべき点高齢者痛みが軽い・非典型的息切れ・倦怠感が主症状糖尿病患者神経障害により痛みを感じにくい無痛性心筋梗塞に注意高血圧・腎疾患あり血管障害リスクが高い定期検査が重要高齢者や糖尿病、高血圧などの持病を持つ人は、胸の痛みが軽いまたは全くないまま心筋梗塞を起こすことがあります。これは「無痛性心筋梗塞」と呼ばれ、息切れ・極度のだるさ・食欲不振などが主なサインになります。こうした人は、少しの体調変化でも受診を遅らせないことが大切です。また、動脈硬化や血管の老化により症状が出にくい場合もあるため、定期的な血圧・血糖・脂質チェックが予防の鍵となります。若い人や学生に多い胸の痛み(ストレス・気胸など)原因主な症状特徴肋間神経痛・筋肉痛チクチク・ピリピリ姿勢や動作で変化気胸片側の痛み・呼吸困難背の高い痩せ型男性に多いストレス・過換気症候群息苦しさ・めまい精神的緊張が引き金若い世代の胸痛は、命に関わるものよりもストレスや姿勢、気胸などの一過性の原因が多い傾向があります。長時間のデスクワークやスマホ操作で肩・胸の筋肉がこわばることで、肋間神経痛を起こすケースもあります。また、受験や人間関係などの精神的ストレスによる「過換気症候群」では、息苦しさや胸の締めつけ感が出ることがあります。命に関わる病気ではないことも多いですが、痛みが続く・呼吸がしづらい場合は早めに医師へ相談しましょう。11. スマートウォッチで心拍をチェック!セルフケアのコツ心拍数・不整脈を測るスマートウォッチの使い方機能測定できる内容活用ポイント心拍センサー安静時・運動時の心拍数日常の変化を把握不整脈検出機能心房細動の兆候を検知医療機関受診の目安に睡眠トラッカー睡眠の質・時間を計測自律神経の状態を確認近年のスマートウォッチは、心拍数や不整脈、睡眠の質などを日常的にチェックできる便利なツールです。特にApple WatchやFitbitなどには心房細動の兆候を検知する機能があり、脈の乱れを早期に発見することができます。測定は安静時と活動時の差を比べることがポイントで、安静時に心拍が100以上、または極端に低い状態が続く場合は注意が必要です。データは医師に見せることで、診断の参考になります。胸の痛みを記録する簡単テンプレート記録項目内容の例発症日時〇月〇日 午前8時ごろ痛みの部位左胸の内側、圧迫感あり持続時間約10分併発症状息切れ・冷や汗状況出勤前の歩行中に発症胸痛があるときは、スマートウォッチのデータと併せて発作の詳細をメモしておくと非常に有効です。特に「いつ・どんな状況で・どのくらい続いたか」「痛みの性質」「併発した症状(息切れ・動悸・吐き気など)」を記録することで、医師が原因を正確に判断できます。スマホのメモアプリや紙のノートでも構いません。定期的に記録を振り返ることで、自身の体調変化にも気づきやすくなります。医師に伝えるときに役立つデータのまとめ方伝えるべき情報具体例異常心拍数1分間に120回以上が続いた不整脈の回数1日に3回以上痛みの頻度週に2〜3回出現他症状との関係息切れや冷や汗を伴う診察時にスマートウォッチのデータを共有することで、医師は症状の傾向を把握しやすくなります。ポイントは、データを「そのまま見せる」のではなく、異常値や出現時間を整理して伝えることです。たとえば「1日3回、不整脈を検知」「発作のたびに心拍120以上」「胸の痛みと同時に息苦しさあり」など、具体的にまとめると診断精度が高まります。スマートウォッチは医療機器ではありませんが、自己観察のツールとして非常に有用です。12. 自宅でのケアを支える「訪問看護・訪問リハビリ」という選択肢在宅でも安心できる「訪問看護」のサポート内容サービス内容担当職種主なサポート症状観察・体調管理看護師血圧・脈拍・体重・むくみのチェック医療的処置看護師点滴・吸引・創部処置など緊急対応看護師夜間・休日も連絡・訪問が可能訪問看護は、病気や障害を抱えながら自宅で療養する人を支える医療サービスです。看護師が定期的に訪問し、体調管理や服薬確認、医療処置を行います。心臓病の方では、血圧・脈拍・体重・むくみの変化を継続的に観察し、異常があれば主治医へ即時報告する体制が整っています。特に在宅での生活は「急な体調変化」に不安を感じやすいですが、24時間対応の訪問看護なら夜間や休日も相談でき、家族の安心にもつながります。リハビリ専門職が支える「訪問リハビリ」でできること担当職種具体的支援内容目的理学療法士(PT)歩行・バランス訓練体力・筋力の維持作業療法士(OT)家事・動作の練習生活動作の自立言語聴覚士(ST)呼吸訓練・嚥下練習誤嚥防止・呼吸機能維持訪問リハビリは、自宅に理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が訪問して行うリハビリサービスです。心臓疾患を持つ方には、息切れを軽減する呼吸リハビリや筋力低下を防ぐ軽運動を行い、自宅での生活を安全に続けられるよう支援します。理学療法士は歩行や階段昇降の練習をサポートし、作業療法士は家事動作や生活環境の工夫を提案。言語聴覚士は呼吸リズムの改善や誤嚥防止を指導します。医療とリハビリが連携することで、再入院の予防と生活の質の向上が期待できます。【町田市の方へ】ピース訪問看護ステーションの取り組み職種人数主な対応内容看護師9名医療的ケア・症状観察・夜間対応も可能リハビリスタッフ14名PT・OT・STが在籍、個別リハプラン作成ケアマネジャー7名医療・介護・リハをつなぐ総合支援ピース訪問看護ステーション(町田市)は、心臓病・高血圧・不整脈などの循環器疾患を持つ方の在宅支援に力を入れています。看護師が定期的に訪問して体重・血圧・脈拍・むくみを丁寧にチェックし、変化があれば主治医へ即時報告。必要に応じて受診調整も行います。リハビリ専門職による個別プログラムでは、息切れの軽減や体力維持を目的に、生活動線や住宅環境も含めたサポートを実施。24時間緊急対応体制と町田市内クリニックとの密な連携により、「自宅で安心して心臓ケアを続けられる環境」を整えています。👉 ぜひ町田市およびその近隣にお住まいの方は、ピース訪問看護ステーションにご相談ください。13. よくある質問(Q&A)Q1. 胸が痛いのはストレスのせいですか?判断のポイント補足ストレスによる胸痛は「心因性胸痛」「心臓神経症」と呼ばれる器質的異常がなくても痛みを感じる場合あり胸の痛みがストレスで起こることはあります。精神的な緊張や不安、過労、睡眠不足が続くと、自律神経のバランスが崩れ、血管が収縮して胸の圧迫感やチクチクとした痛みが出ることがあります。検査で異常がなくても、症状が実際に存在するため、「気のせい」ではありません。まずは循環器内科で器質的異常を除外し、その後必要に応じて心療内科でのケアを受けることが安心です。Q2. 右胸が痛いときは心臓とは関係ないですか?痛みの部位主な原因右胸の痛み肋間神経痛・肺疾患・筋肉痛など心臓の位置は胸の中央からやや左寄りにありますが、右胸の痛み=心臓とは無関係とは言い切れません。大動脈や肺、食道などの臓器の異常でも右胸に痛みを感じることがあります。特に「呼吸で痛みが強くなる」「発熱・咳を伴う」場合は肺炎や胸膜炎の可能性があり、早めの受診が必要です。右胸のチクチクした痛みが姿勢や動作で変化する場合は、肋間神経痛や筋肉痛のことが多いです。Q3. 痛みが時々出るだけなら様子を見ても大丈夫ですか?状況推奨行動繰り返す痛み・動悸を伴う循環器内科を受診安静時にも出る痛み早めの検査が必要胸痛が一時的で軽い場合でも、繰り返すようなら放置は危険です。狭心症などの心臓病は、最初は短時間の痛みを繰り返し、やがて発作が長く強くなる傾向があります。「様子を見る」よりも、早めに循環器内科を受診して心電図・血液検査を受けることで、心筋梗塞の前兆を防げます。Q4. 胸の痛みと一緒に息苦しさがあるときは?主な原因緊急度心不全・不整脈・肺塞栓高いストレス・過換気症候群中程度胸痛+息苦しさは、心臓や肺に関係することが多く、注意が必要です。特に安静時にも息苦しく、体を起こすと少し楽になる場合は心不全の可能性があります。呼吸が浅く速くなり、手足のしびれを伴う場合は過換気症候群かもしれませんが、自己判断せずに医療機関へ。呼吸困難を伴う胸痛は救急要請の目安になります。Q5. 胸が痛いとき、どんな検査を受けるのがよいですか?検査名内容心電図心拍のリズムや虚血の有無を確認血液検査心筋トロポニンの上昇を確認胸部X線肺や心臓の形態をチェック胸痛の原因を調べるには、まず心電図と血液検査が基本です。これで不整脈や心筋へのダメージを確認できます。さらに必要に応じて心エコーやCT検査で心臓や血管の状態を詳しく評価します。検査は痛みも少なく短時間で済むため、早期受診が安心です。まとめ胸の痛みは、心臓の病気だけでなく肺・消化器・神経・ストレスなど多くの要因で起こります。しかし、その中には命に関わるもの(心筋梗塞・大動脈解離・肺塞栓など)もあり、早期対応が何より重要です。「冷や汗」「息苦しさ」「30分以上続く痛み」「左腕や背中への放散」などがある場合は、ためらわず119へ通報してください。日常生活では、食事・運動・睡眠などの生活習慣を整えることが胸痛予防の基本です。また、スマートウォッチなどのツールを活用して体調を記録することも有効です。そして、自宅療養中の方や退院後の心臓ケアには、訪問看護・訪問リハビリという安心できる選択肢があります。👉 ぜひ町田市およびその近隣にお住まいの方は、ピース訪問看護ステーションにご相談ください。看護師・リハビリスタッフ・ケアマネジャーが連携し、「ご自宅でも安心できる医療と暮らし」を全力でサポートします。関連記事『心臓に水が溜まる』は何のサイン?心不全・胸水・心嚢水の違いと受診目安心臓がバクバクする原因と対処法、動悸・不整脈・ストレス・訪問看護まで徹底解説咳をすると肺や胸が痛い?考えられる病気と受診の目安・対処法「肺に水がたまる」とは?肺水腫と胸水の違い・症状・検査・治療を総まとめ気胸はなぜ起こる?原因・治療・再発防止と訪問看護のサポート参考文献一覧厚生労働省「心疾患(虚血性心疾患)対策」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000183318.html厚生労働省「循環器疾患の現状と対策」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000183318.html日本循環器学会「狭心症・心筋梗塞診療ガイドライン(2021年改訂版)」https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/05/JCS2021_kimura.pdf日本心不全学会「心不全の早期発見と予防」https://www.asas.or.jp/jhfs/日本救急医学会「胸痛の初期対応ガイドライン」https://www.jaam.jp/info/総務省消防庁「救急安心センター事業(#7119)」https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/appropriate/appropriate006.html厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針2014」https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000042186.html厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32627.html厚生労働省「ストレスチェック制度について」https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/日本心身医学会「心臓神経症」https://www.jsspnet.com/日本心臓財団「女性の心臓病と更年期」https://www.jhf.or.jp/日本糖尿病学会「糖尿病と心血管疾患の関係」https://www.jds.or.jp/厚生労働省「訪問看護の利用対象と概要」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000661085.pdf日本訪問看護財団「訪問看護とは」https://www.jvnf.or.jp/厚生労働省「医療機器等の適正使用に関する指針」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000189000.html米国心臓協会(AHA)"Consumer wearable heart monitoring: guidance statement, 2020"https://www.ahajournals.org/日本循環器学会「循環器疾患診療実態調査」https://www.j-circ.or.jp/WHO「Cardiovascular diseases (CVDs)」https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/cardiovascular-diseases-(cvds)本記事の執筆者・監修者プロフィール【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理に長け、地域医療連携や在宅看取り支援にも積極的に取り組んでいる。