1. 糖尿病予防の基本:なぜ「今」始めるのか糖尿病とは?(2型を中心に予防可能性を理解)種類原因特徴主な予防の方向性1型糖尿病自己免疫反応により膵臓のβ細胞が破壊される若年発症が多く、インスリン注射が必要早期発見・適切な治療が重要2型糖尿病過食・運動不足・肥満など生活習慣要因日本の糖尿病の約9割を占める食事・運動・体重管理で予防可能妊娠糖尿病妊娠中のホルモン変化でインスリン作用が低下出産後に改善することも妊娠中の体重・食事管理が大切糖尿病とは、血糖を下げるホルモン「インスリン」の作用が十分に働かなくなり、血糖が慢性的に高くなる状態です。日本人の約9割を占める2型糖尿病は、生活習慣の見直しで発症を防げる可能性がある病気です。特に食事・運動・体重の3要素を整えることで、発症を遅らせたり軽症で済ませることができます。診断は、空腹時血糖126mg/dL以上、HbA1c6.5%以上、または随時血糖200mg/dL以上が基準ですが、単回ではなく再検査で確認されます。出典:厚生労働省「e-ヘルスネット 糖尿病の予防」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/life/ll-03-001.html生活習慣と発症リスクの関係(血糖値・インスリン抵抗性の基礎)リスク要因メカニズム改善策過食・高カロリー食脂肪蓄積によりインスリンの効きが低下バランス食・腹八分目運動不足筋肉による糖の消費が減少日常的に歩行・活動を増やす睡眠不足ホルモンの乱れで食欲増進就寝時間を整え、規則的な生活ストレスコルチゾール分泌により血糖上昇リラックス法・深呼吸・趣味を持つインスリンは血糖を細胞に取り込む「鍵」のような役割を果たします。運動不足や過食、ストレスなどが続くとこの働きが鈍り、「インスリン抵抗性」と呼ばれる状態になります。結果として血糖値が上昇し、放置すれば糖尿病に進行する可能性があります。生活習慣の改善は治療の第一歩であり、最大の予防策でもあるという点が重要です。特に「体を動かす」「よく寝る」「ストレスをためない」という基本行動が血糖を安定させます。出典:国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター「糖尿病と生活習慣」https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/010/まず押さえたい予防の要点(食事・運動・健診)予防の柱内容実践ポイント食事主食・主菜・副菜をバランスよく野菜から食べ、腹八分目を心がける運動有酸素+筋トレ+日常活動歩行60分/日、運動60分/週を目標に健診特定健診・血液検査の活用年1回以上、自分の数値を確認する糖尿病は「サイレント病」と呼ばれるほど、自覚症状が出にくい病気です。特定健診を毎年受けて血糖・血圧・脂質を確認し、異常が出る前に生活を整えることが大切です。食事では野菜を先に食べ、ゆっくりよく噛むことが血糖上昇を抑えます。運動は厚生労働省の最新基準(2023年)では、歩行などの身体活動を1日60分以上、週2〜3回の筋力トレーニングを推奨しています。この「食事・運動・健診」の3本柱が、糖尿病予防の最も確実な方法です。出典:厚生労働省「健康日本21(第二次)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21.html厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_30273.html2. 糖尿病になりやすい人の特徴とチェックポイント体重・BMI・内臓脂肪(肥満と発症リスク)指標基準値状況改善の目安BMI18.5〜24.9標準体重25以上は肥満傾向腹囲男性85cm以上・女性90cm以上内臓脂肪型肥満(メタボ基準)食事・運動で減量を目指す体脂肪率個人差あり(年齢・機器で異なる)参考値として活用BMIや腹囲を主指標にする肥満、特に内臓脂肪が多い「内臓脂肪型肥満」は糖尿病の最大の危険因子の一つです。脂肪細胞から分泌されるホルモン(アディポカイン)がインスリンの働きを妨げ、血糖を上昇させます。厚生労働省のメタボリックシンドローム基準では、腹囲が男性85cm以上・女性90cm以上で生活習慣病リスクが上昇します。体脂肪率は機器や年齢により異なるため、BMIや腹囲を主要指標として定期的に測定し、体重より“内臓脂肪を減らす意識”が重要です。出典:厚生労働省「健康日本21(第二次)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21.html家族歴・妊娠糖尿病歴・年齢などのリスク要因要因内容傾向家族歴両親・兄弟に糖尿病がある場合発症リスクが2〜3倍高い妊娠糖尿病歴出産後も耐糖能異常が残る場合あり将来2型糖尿病の発症率上昇加齢40歳以降でリスク上昇筋肉量低下・代謝減少が要因高血圧・脂質異常合併しやすく相乗的に悪化総合的な生活改善が必要糖尿病の発症には、遺伝的要素と生活環境の両方が関係します。家族歴のある方は体質的にインスリン分泌が少ない傾向があり、同じ生活でも血糖値が上がりやすくなります。また、妊娠糖尿病の既往がある女性は将来の糖尿病リスクが高いため、出産後も定期的な健診が推奨されます。加齢による筋肉量の減少や基礎代謝の低下も発症に影響するため、40歳を過ぎたら意識的な運動習慣と食事管理が大切です。出典:国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター「糖尿病のリスク因子」https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/020/日常のサインとセルフチェック(「ちょっと血糖が高め」と言われたら)サイン考えられる状態対応策のどが渇く・尿が多い高血糖による脱水水分補給・受診の検討体重減少・疲れやすいインスリン不足医師相談・食事・運動見直し健診で「血糖が高め」と言われた境界型糖尿病の可能性生活習慣の早期改善糖尿病の初期はほとんど自覚症状がありませんが、軽い疲労感や口渇、頻尿、体重減少などのサインが現れる場合があります。健診で「血糖が少し高い」と言われた段階で行動を起こすことが、発症を防ぐ最大のチャンスです。特に空腹時血糖値が110〜125mg/dL(いわゆる境界型)の場合、食事と運動の改善で正常域に戻せる可能性があります。この段階で放置せず、かかりつけ医に相談しながら生活を整えることが最も効果的な予防行動です。出典:厚生労働省「特定健診・特定保健指導」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177221.html3. 食事で防ぐ:血糖コントロールの食べ方・選び方主食・主菜・副菜のバランス(食事バランスガイドを活用)食事区分主な食材例摂取の目安ポイント主食ご飯・パン・麺類1食につき片手2杯分程度主食は抜かず、種類と量を調整主菜魚・肉・卵・豆腐1日2〜3品良質なたんぱく質を中心に副菜野菜・海藻・きのこ1日5皿分(約350g)野菜から食べる「ベジファースト」糖尿病予防の基本は「主食・主菜・副菜のバランス」です。炭水化物を過度に制限するとエネルギー不足を起こすことがあり、厚生労働省や農林水産省は「主食を適量摂り、バランス全体で整える」ことを推奨しています。また、野菜から先に食べることで血糖上昇をゆるやかにできることが研究で確認されています。主食は白米を玄米や雑穀米に変える、麺類は具沢山にするなど、食べ方の工夫が効果的です。出典:農林水産省「食事バランスガイド」https://www.maff.go.jp/j/balance_guide/間食・飲み物の工夫(血糖値を上げない選び方)種類控えたいもの代わりにおすすめ理由飲料清涼飲料水・甘い缶コーヒー無糖茶・炭酸水糖分摂取を防ぐおやつ菓子パン・スナック菓子ナッツ・ヨーグルト血糖上昇を抑え満腹感維持デザートケーキ・アイス果物(適量)食物繊維とビタミン補給清涼飲料や甘いお菓子は、一気に血糖値を上げる原因になります。特に糖分入り飲料は、食事以上に急激な血糖上昇を起こすため注意が必要です。間食をとる場合は、ナッツやヨーグルトなど低糖質で腹持ちの良いものを選びましょう。また、果物も健康的な食品ですが、量が多いと糖分の摂りすぎになります。1日100g程度(みかん1個・りんご半分)を目安に、食後に取り入れるのが安心です。出典:厚生労働省「食生活指針」https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/pdf/all.pdf食べ方と時間の工夫(よく噛む・規則正しく・遅い夕食を避ける)食習慣改善ポイント効果早食いよく噛んで20分以上かける満腹感が得やすく血糖上昇抑制夜遅い食事就寝2〜3時間前までに済ませる夜間の高血糖を防ぐ朝食抜き朝に軽くでも食べる代謝リズムを整え血糖安定食事の内容だけでなく、「食べ方」も血糖コントロールに直結します。早食いは血糖値を急上昇させる原因となるため、よく噛んでゆっくり食べることが大切です。また、夜遅い食事は消費エネルギーが少なく、血糖や脂質の値が高くなりやすいため、就寝の2〜3時間前までに夕食を済ませましょう。朝食を抜くと空腹時間が長くなり、昼食後に血糖値が急上昇する傾向があります。「ゆっくり・規則的・適量」が、糖尿病予防のための理想的な食事スタイルです。出典:厚生労働省「健康日本21(第二次)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21.html4. 運動で防ぐ:有酸素+筋トレ+日常活動ウォーキング・軽いジョギングの効果と目安種類強度の目安時間・頻度効果ウォーキング少し息が弾む程度1日60分(約8,000歩)を目安血糖・血圧の改善、体脂肪減少軽いジョギング会話ができる強度週2〜3回、20〜30分インスリン感受性向上サイクリング・水中歩行関節にやさしい運動30分〜60分膝や腰への負担軽減運動は、糖をエネルギーとして使う「体の代謝スイッチ」です。ウォーキングなどの中強度の有酸素運動は、筋肉での糖利用を促進し、血糖値を下げる作用があります。厚生労働省の最新ガイドでは、1日60分以上の歩行や身体活動が推奨され、これを継続することで糖尿病・高血圧・脂質異常のリスクが減少します。息が弾む程度の運動を、日常生活の中で「こまめに動く」形で取り入れることがポイントです。出典:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_30273.html筋トレで基礎代謝・筋量を維持する理由種目回数・頻度ポイントスクワット・腕立て・腹筋10〜15回×2セット、週2〜3回正しいフォームで呼吸を意識チューブ運動・軽ダンベル無理のない強度で筋肉を刺激し続けることが重要体幹トレーニングバランス改善転倒予防・姿勢維持に有効筋肉は「血糖の貯蔵庫」であり、筋力を保つことは血糖コントロールに直結します。筋トレ(レジスタンス運動)は、基礎代謝を上げて脂肪を燃焼させるほか、インスリン感受性を高める科学的根拠が確立しています。特に高齢期では、筋肉量の減少が血糖上昇や転倒のリスクを高めるため、週2〜3回の筋力トレーニングを習慣化することが推奨されています。体調に合わせて、軽負荷・短時間から始めるのが安全で効果的です。出典:日本糖尿病学会「運動療法の指針」https://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=1日常で「こまめに動く」環境づくり(階段・通勤・家事)シーン行動例続けるコツ通勤・外出エスカレーターを使わず階段に歩数計やアプリでモチベーション維持家事掃除・洗濯・買い物などで活動量アップ家事も立派な運動と意識するデスクワーク1時間に1回立ち上がり軽いストレッチ座位時間を減らす工夫を「運動の時間が取れない」と感じる方でも、日常動作を運動に変える発想が有効です。厚生労働省は「座位行動(座っている時間)を減らす」ことを推奨しており、1時間ごとに立ち上がる、掃除や買い物を積極的に行うなど、小さな工夫が血糖管理に役立ちます。特別なトレーニングを行わなくても、“動く時間を増やす”こと自体が糖尿病予防に効果的です。「ジムに行くより、階段を使う」――その積み重ねが健康づくりの第一歩です。出典:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_30273.html5. 体重管理・禁煙・節酒・睡眠・ストレス体重管理の考え方:BMIと生活リズムの両面から指標基準値改善の方向性BMI18.5〜24.925以上は肥満傾向、22前後が理想的範囲腹囲男性85cm未満/女性90cm未満メタボ基準以下を目指す体重変化月1〜2kg減を上限に急激な減量はリバウンド・筋力低下を招く肥満、とくに内臓脂肪型肥満は糖尿病や高血圧の大きなリスク要因です。「体重を減らすこと」よりも、生活全体のリズムを整えることが本質的な改善につながります。朝食を抜かない、夜食を控える、間食を減らすだけでもエネルギー収支は改善します。BMI22前後が生活習慣病予防に最も望ましい体型とされており、急な減量ではなく“半年で5%減”を目標に無理なく進めるのが安全です。出典:厚生労働省「健康日本21(第二次)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21.html禁煙・節酒が血糖に与える影響(減らす一歩を継続する)習慣糖尿病への影響対策喫煙インスリン抵抗性を悪化させる禁煙外来・サポートアプリを活用飲酒アルコールで血糖変動を起こす週2日休肝日を設ける甘いお酒カクテル・果実酒など無糖炭酸やお茶に置き換える喫煙は血管を収縮させ、インスリンの働きを妨げることが知られています。一方で、アルコールは少量ならリラックス効果がありますが、過剰摂取は血糖の乱高下を招くため注意が必要です。厚労省の指針では、節酒の目安を「1日あたり純アルコール20g以下(ビール中瓶1本程度)」としています。完全にやめるのが難しい場合でも、「休肝日を週2日」「1回の量を減らす」など、少しずつ“減らす工夫”を続けることが改善の第一歩です。出典:厚生労働省「e-ヘルスネット:たばことアルコール」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-02-001.html良質な睡眠でホルモンバランスを整える(眠る力も予防の一部)改善ポイント内容効果就寝・起床時間を一定に体内時計を安定させる食欲と代謝リズムを整える寝る前の刺激を減らすスマホ・強い光を避けるメラトニン分泌を促す寝酒・夜食を控える消化・覚醒を防ぐ深い睡眠を得られる睡眠は「体のリセット時間」であり、血糖コントロールにも密接に関わります。睡眠不足が続くと、食欲を増やすホルモン(グレリン)が増え、満腹ホルモン(レプチン)が減少して過食につながります。厚労省の睡眠指針では、「十分な睡眠時間を確保し、規則正しい睡眠習慣を整える」ことが基本です。特定の時間(例:6〜8時間)を断定せず、翌日に疲労を残さない質の高い睡眠を意識することが推奨されています。出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針2014」https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000042749.htmlストレス対処とメンタルケア(頑張りすぎない健康管理)ストレス要因対策効果仕事・人間関係趣味・運動・深呼吸血糖上昇ホルモンの抑制孤立・不安感家族・友人との会話安心感・睡眠の改善完璧主義無理をしない・休む勇気継続できる生活改善ストレスは血糖値を上げるホルモン「コルチゾール」の分泌を増やします。そのため、ストレス対処も立派な糖尿病予防です。会話や軽い運動、深呼吸など、気持ちを切り替える行動を生活に取り入れましょう。厚労省は「こころの健康づくり」を重要施策としており、気持ちの落ち込みや不眠が続く場合は、早めの相談が勧められています。“頑張りすぎない健康管理”こそが、長く続くセルフケアの基本です。出典:厚生労働省「こころの健康づくり」https://www.mhlw.go.jp/kokoro/index.html6. 健診・数値管理:早期発見と合併症予防特定健診・血液検査の見方(空腹時血糖・HbA1c)項目基準値判定の目安空腹時血糖110mg/dL未満126mg/dL以上は糖尿病型(要再検)HbA1c6.0%未満6.5%以上は糖尿病型(要再検)随時血糖200mg/dL以上糖尿病が強く疑われる値健診結果は「自分の健康の履歴書」です。空腹時血糖やHbA1cは、その時だけでなく過去1〜2か月の血糖状態を反映します。1回の検査で糖尿病と診断されるわけではなく、再検査や問診、尿検査などを組み合わせて確定します。異常値が出た段階で医療機関を受診すれば、生活改善で正常化できるケースが多く、「早めの気づき」が最大の予防になります。出典:日本糖尿病学会「糖尿病の診断基準(2024)」https://www.jds.or.jp/modules/diagnosis/index.php?content_id=1血圧・脂質・体重の総合管理(個別目標の考え方)項目推奨目標(一般成人)注意点血圧130/80mmHg未満を目安に年齢・既往により調整(JSH2019)LDLコレステロール個別リスクにより設定(JAS2022)合併症・既往で異なる体重(BMI)22前後が理想急激な減量を避ける糖尿病・高血圧・脂質異常症は「生活習慣病の三兄弟」と呼ばれ、互いに悪化を促し合います。管理目標は一律ではなく、年齢・合併症・動脈硬化リスクによって医師が個別に設定します。日本高血圧学会では「多くの成人で130/80mmHg未満を目標」とし、日本動脈硬化学会ではLDL-C値を「絶対リスクに応じて設定」と定めています。血糖だけでなく、体重・血圧・脂質をまとめて見ることが合併症予防の鍵です。出典:日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」https://www.jpnsh.jp/guideline.html日本動脈硬化学会「脂質異常症治療ガイド2022」https://www.j-athero.org/受診タイミングと医療機関の選び方状況推奨対応健診で血糖値が高い内科または糖尿病内科を受診倦怠感・頻尿・口渇医療機関へ早めの受診を改善が見られない管理栄養士・保健師の指導を活用「少し高いだけ」と放置してしまうと、糖尿病は知らぬ間に進行します。空腹時血糖126mg/dL以上、HbA1c6.5%以上の場合は、早めの医療相談が必要です。自覚症状が出る前に行動すれば、薬を使わず改善できる場合もあります。また、特定健診後の特定保健指導(無料の生活支援)も活用し、栄養・運動の専門家と一緒に取り組むことが効果的です。出典:厚生労働省「特定健診・特定保健指導」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177221.html7. 話題のトピック:コーヒー・腸内環境・デジタル活用コーヒーと糖尿病リスクの研究動向(正しい取り入れ方)要素内容注意点成分クロロゲン酸・カフェインインスリン感受性の改善が報告量1日3〜4杯が目安飲みすぎは不眠・胃痛のリスク砂糖入れすぎに注意無糖または少量のミルクで調整国内外の研究では、コーヒー摂取が2型糖尿病リスクを下げる可能性があると報告されています。これはポリフェノールの一種「クロロゲン酸」による抗酸化作用が関係していると考えられています。ただし、砂糖やクリームを多く加えるとカロリー過多となり逆効果です。1日3〜4杯を目安に、無糖・カフェインレスも活用して“楽しみながら予防”が理想です。出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「コーヒーと健康」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-015.html腸内環境を整える食習慣(発酵食品と食物繊維)食材主成分作用納豆・ヨーグルト・味噌乳酸菌・納豆菌善玉菌を増やす野菜・きのこ・海藻食物繊維血糖上昇を緩やかにオートミール・バナナプレバイオティクス腸内環境を改善腸内環境が整うと、血糖値や脂質代謝も安定しやすくなります。腸内の善玉菌が増えると炎症が抑えられ、インスリン抵抗性が改善されることが研究で示唆されています。発酵食品を毎日の食事に加え、食物繊維を1日18g以上摂ることが目標とされています。日本人の摂取量は不足気味のため、野菜・きのこ・豆類を意識して取りましょう。出典:農林水産省「食物繊維の働き」https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/attach/pdf/shokuhin-5.pdfデジタルツールで継続をサポート(歩数・睡眠・食事ログ)管理項目活用例効果歩数スマートウォッチ・アプリ日々の運動を可視化睡眠スマホ連動アプリ睡眠の質を確認・改善食事カロリー・栄養記録アプリ摂取傾向を把握し過剰を防ぐスマートウォッチやアプリを活用すると、運動・睡眠・食事を数値で確認できます。行動が可視化されることで継続のモチベーションが上がり、生活習慣の見直しがしやすくなります。特に血糖値・歩数・体重を記録することで、生活と数値の関係を“見える化”するセルフケアが可能になります。医療機関や訪問看護との情報共有にも役立ちます。出典:厚生労働省「スマート・ライフ・プロジェクト」https://www.smartlife.mhlw.go.jp/8. 在宅での継続支援:訪問看護・訪問リハビリの活用訪問看護の支援内容(血糖・足の観察・服薬管理)内容支援項目対象者健康観察血圧・脈拍・血糖値測定糖尿病・高血圧のある方フットケア爪・皮膚の観察、潰瘍予防糖尿病性神経障害の方服薬確認飲み忘れ・副作用チェック多剤服用者・高齢者在宅療養中でも、血糖や足の観察・服薬管理を訪問看護が支えます。特に糖尿病では、足のしびれや傷の悪化を防ぐための定期的なフットケアが重要です。また、食事・運動・服薬を生活全体で調整し、医療機関と情報共有することで、安定した在宅療養を支援します。自宅にいながら、医療的な目が届く安心を得ることができます。出典:厚生労働省「訪問看護の利用について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000084092.html訪問リハビリの取り組み(運動・呼吸・生活動作の支援)内容目的効果運動訓練筋力・バランス改善活動量増加・血糖安定呼吸リハ呼吸筋維持持久力向上生活動作訓練家事・入浴・移動自立支援・転倒予防糖尿病予防には「動ける体」を維持することが欠かせません。訪問リハビリでは、理学療法士や作業療法士が生活動作の中で運動を指導します。筋力・バランス・呼吸を総合的に整えることで、活動量を増やし、血糖の安定化と再発予防を図ります。在宅でできる軽運動を継続することが、病院での治療に並ぶ価値を持ちます。出典:日本リハビリテーション医学会「在宅リハビリテーションの役割」https://www.jarm.or.jp/ピース訪問看護ステーションのご案内(糖尿病支援・継続フォロー)スタッフ体制人数特徴看護師9名糖尿病・創傷・循環器に精通理学・作業・言語療法士14名運動・生活動作・呼吸リハの専門職ケアマネジャー7名医療・介護・リハを包括連携特徴詳細夜間対応24時間体制で急変に対応糖尿病支援血糖・フットケア・食事指導地域医療連携町田市内の病院・クリニックと連携継続フォロー血糖・血圧・体重を定期観察し再発防止ピース訪問看護ステーションは、町田市と近隣地域で糖尿病や慢性疾患を抱える方々をサポートしています。血糖管理・足のケア・服薬確認などを中心に、在宅でも医療的安心を持てる環境を提供。看護師とリハビリスタッフが連携し、食事や運動、生活リズムの整え方を継続的に支援します。24時間対応の体制で、夜間の不安にも即応可能です。9. 今日から始める1週間アクションプラン食事:買い物と外食での選び方曜日実践のポイント平日野菜・たんぱく質を中心に、主食は適量休日家族と外食時も野菜を先に糖尿病予防は特別な食事法よりも、日常の選び方を少し変えることが大切です。野菜を最初に食べ、炭水化物の量を調整するだけでも血糖変動を抑えられます。外食や中食が多い方は、主菜を魚や鶏肉に、汁物は減塩を選ぶなど、小さな意識が健康につながります。出典:厚生労働省「食生活指針」https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/pdf/all.pdf運動:1日60分・週2回筋トレを基本に種類頻度ポイント歩行・通勤・家事毎日中強度(息が弾む程度)を意識筋トレ・ストレッチ週2〜3回筋肉維持で血糖安定趣味の運動休日に楽しく続けることが最も重要「週150分」ではなく、“1日60分歩く+週2〜3回筋トレ”という形が最新の推奨です。仕事や家事の合間でも体を動かせば効果があります。運動の目的は「体重を減らす」よりも「動ける体を保つ」こと。無理なく続けられる範囲で“毎日少しずつ”が最も確実な方法です。出典:厚生労働省「身体活動・運動ガイド2023」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_30273.html生活習慣:睡眠・禁煙・ストレス管理の習慣化項目具体策効果睡眠就寝・起床を一定にホルモンバランスを整える禁煙専門外来を活用血糖上昇・血管障害を防ぐストレス深呼吸・音楽・散歩血糖値の安定・心の健康維持健康づくりを続けるには、心身のバランスが欠かせません。特に睡眠とメンタルの安定は、ホルモン調整や食欲制御に直結します。禁煙は血流改善に、ストレス緩和は血糖変動の抑制に効果的。「完全を目指す」よりも、“できることを1つずつ増やす”ことが、長期的に見て最大の成果を生みます。出典:厚生労働省「こころの健康づくり」https://www.mhlw.go.jp/kokoro/index.html10. よくある質問Q&AQ1. 「糖尿病予備群」と言われました。もう治らないのでしょうか?A. いいえ。予備群(空腹時血糖110〜125mg/dL・HbA1c5.6〜6.4%)の段階では、生活改善で正常化できる可能性があります。2型糖尿病の発症は、食事と運動の積み重ねで大きく左右されます。野菜から食べる、夕食を早めに済ませる、1日60分の歩行を続ける——それだけでもインスリンの働きが改善します。また、半年後の健診で血糖が安定していれば、薬を使わずに予防が可能です。出典:日本糖尿病学会「糖尿病の診断基準(2024)」https://www.jds.or.jp/modules/diagnosis/index.php?content_id=1Q2. 運動を始めたいのですが、どんな強度が安全ですか?A. 「少し息が弾む程度」が安全で効果的です。厚生労働省の最新ガイド(2023)では、1日60分の歩行(約8,000歩)と週2〜3回の筋トレを推奨しています。運動に慣れていない人は、買い物・掃除・階段利用など日常活動から始めましょう。体調が悪い日や空腹時、血糖が極端に高い場合は無理せず休むことが大切です。出典:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_30273.htmlQ3. 食後の運動は「30分後」がいいと聞きました。本当ですか?A. 「30分後に限定する必要はありません」。最新の研究では、食後に軽く体を動かす(皿洗いや片付け、15分ほどの散歩など)だけでも血糖上昇を抑えられると示されています。大切なのは「座りっぱなしを避けること」。1日の合計で体を動かす時間が増えるほど、血糖・脂質・体重の管理に良い影響があります。出典:厚生労働省「身体活動・運動ガイド2023」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_30273.htmlQ4. 健診で血圧やコレステロールも指摘されました。どうすれば?A. 糖尿病・高血圧・脂質異常は「生活習慣病トリオ」と呼ばれ、同時に管理することが重要です。血圧は130/80mmHg未満を目安に、塩分を1日6g未満へ。脂質管理は個人のリスクに応じてLDL-C値を医師が設定します(JAS2022)。ウォーキング・減塩・野菜摂取・禁煙が共通の予防法であり、薬が必要な場合も早めに医師に相談すればコントロール可能です。出典:日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」日本動脈硬化学会「脂質異常症治療ガイド2022」Q5. どの科を受診すればいいですか?A. 血糖が高い、または「糖尿病予備群」と言われた場合は、糖尿病内科または一般内科が適切です。足のしびれ・視力低下・腎機能異常などがある場合は、神経内科・眼科・腎臓内科など専門医の連携が必要になります。また、かかりつけ医を持つことで、健診結果の変化や服薬状況を継続的にフォローできます。訪問看護や管理栄養士のサポートも活用しましょう。出典:厚生労働省「特定健診・特定保健指導」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177221.htmlまとめ糖尿病は「発症してからの治療」よりも、「発症を防ぐ生活習慣」が何より大切です。厚生労働省の最新運動ガイド(2023)では、「1日60分歩く・週2〜3回筋トレ・座りすぎない」生活を推奨。食事では主食・主菜・副菜を整え、野菜から食べる「ベジファースト」を意識。特定健診や血糖チェックで早めに変化を見つけることで、薬に頼らず予防できます。在宅療養中の方も、訪問看護・訪問リハビリの力を借りて、住み慣れた環境で健康を守る時代へ。関連記事「高血圧と糖尿病の関係:血圧を整える食事と運動」「フットケアで守る足の健康:糖尿病性神経障害の予防」「在宅でできる筋トレとストレッチ:理学療法士が解説」参考文献一覧(推奨版・最終確定)厚生労働省「e-ヘルスネット 糖尿病の予防」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/life/ll-03-001.html厚生労働省「健康日本21(第二次)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21.html厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_30273.html厚生労働省「食生活指針」https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/pdf/all.pdf国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター「糖尿病と生活習慣」https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/010/日本糖尿病学会「糖尿病の診断基準」https://www.jds.or.jp/modules/diagnosis/index.php?content_id=1日本糖尿病学会「運動療法の指針」https://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=1農林水産省「食事バランスガイド」https://www.maff.go.jp/j/balance_guide/日本リハビリテーション医学会「在宅リハビリテーションの役割」https://www.jarm.or.jp/東京都福祉保健局「糖尿病予防のための生活改善」https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/本記事の執筆者・監修者プロフィール【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理に長け、地域医療連携や在宅看取り支援にも積極的に取り組んでいる。