朝、隣で眠る配偶者の寝息を確かめてから、自分の腰をかばいつつそっと起き上がる。トイレへの付き添い、食事の介助、薬の管理、夜中に何度も起きる見守り——気づけば一日が介護で埋まり、自分の通院はもう何カ月も後回しのまま。「私が倒れたら、この人はどうなるのだろう」。そんな不安を抱えながら、誰にも言えずに一人で介護を背負っている高齢の方が、町田市にも相模原市にもいます。この記事は、高齢の配偶者や家族を在宅で介護する、自分自身も高齢の介護者に向けたものです。介護する人が我慢を重ねた末に先に倒れてしまう「共倒れ」を、どうすれば防げるのか。頼ることは決して申し訳ないことではなく、介護を続けるための正しい選択です。私たちは町田・相模原の訪問看護の現場で、介護する高齢のご家族が限界寸前まで頑張ってしまう姿を数多く見てきました。あなた自身を守るために今日からできることを、具体的にお伝えします。この記事でわかること老老介護とは何か(実態の数値と背景、認認介護の危うさ)「共倒れ」がなぜ起きるのか、見逃したくないSOSサイン一人で抱え込まないための在宅の具体的な工夫介護する人自身の心と体を守る方法まず地域包括支援センターへ——相談先と使える制度町田・相模原の訪問看護が介護する人にできること老老介護とは|高齢の配偶者・家族が支える在宅介護老老介護という言葉を「自分の家のこと」として見つめ直すと、その実態は決して特別な話ではないと分かります。まずは、この状態が何を指し、なぜこれほど広がっているのかを整理します。老老介護とはどんな状態か(実態の数値)老老介護(ろうろうかいご)とは、高齢者が高齢者を介護している状態を指す言葉です。高齢の妻が夫を、夫が妻を介護する。あるいは高齢のきょうだい同士、高齢の親を高齢になった子が支えるといった形もあります。共通するのは、介護する側もまた加齢や持病、体力の低下を抱えながらケアを担っている、という点です。これは決して珍しいことではありません。内閣府「令和6年版高齢社会白書」によれば、要介護者等と同居している主な介護者の年齢は、男性の75.0%、女性の76.5%が60歳以上となっており、いわゆる老老介護のケースも相当数存在するとされています(出典:内閣府「令和6年版高齢社会白書」 https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2024/html/zenbun/s1_2_2.html )。同居して介護する人の多くが、すでに高齢の域に入っているということです。つまり、「介護する人が高齢である」ことは例外ではなく、むしろ在宅介護のごく当たり前の風景になっています。だからこそ、介護する側の心身をどう守るかが、家庭を持続させるうえで欠かせない視点になるのです。なぜ老老介護が増えているのか老老介護がこれほど広がった背景には、いくつかの社会の変化が重なっています。第一に、平均寿命が延びたことです。長く生きられるようになった一方で、介護が必要な期間も長くなり、配偶者やきょうだいといった同世代が支え手になる場面が増えました。第二に、家族のかたちが変わったことがあります。子世代と離れて暮らす核家族化が進み、近くに頼れる若い手がいない家庭が増えました。子が遠方にいる、あるいは子自身も仕事や子育てに追われていると、日々のケアは結局、同居する高齢の配偶者が一手に担うことになります。高齢の夫婦二人だけ、あるいは高齢のきょうだい二人だけの世帯では、片方が要介護になればもう片方が介護者になるしかありません。第三に、頼れる地縁が薄くなったことも見逃せません。かつては近所同士で助け合い、自然と見守りの目があった地域社会も、つながりが薄れて「困っても声をかけにくい」家庭が増えました。介護を担う高齢者が、地理的にも心理的にも孤立しやすくなっているのです。こうした変化は、誰の家にも起こりうるものです。「うちは特別に大変なのだ」と感じる必要はなく、多くの家庭が同じ構造の中にいる——その事実が、外に助けを求める一歩を後押ししてくれます。これは社会全体の課題であり、だからこそ、それを支える公的な仕組みも整えられてきました。認認介護という危うさ老老介護の中でも、とりわけ見えにくく危ういのが「認認介護(にんにんかいご)」です。これは、認知症の人を介護する側もまた認知症である状態を指します。高齢の夫婦のどちらにも認知症の症状があり、互いに支え合っているつもりで、実は二人とも適切な判断が難しくなっている、というケースです。認認介護の怖さは、本人たちも周囲も気づかないうちに進んでいく点にあります。薬の飲み忘れや飲み間違いが重なる、火の消し忘れが増える、食事をとったかどうかが分からなくなる。介護する側に判断力の低下があると、こうした変化に自分では気づけず、危険が静かに積み重なっていきます。本人や家族からのSOSが出にくいぶん、周囲や専門職が早めに気づくことが何より大切です。私たちは町田・相模原の現場で、ご夫婦の片方の訪問に入って初めて、もう片方にも認知症の兆しがあると分かることがあります。だからこそ、家庭の中に専門職の目が定期的に入ることには大きな意味があるのです。介護される人とともに、介護する人の様子にも目を配る——そのまなざしが、静かに進む危険に気づく手がかりになります。認認介護が疑われるときは、後の章で触れる地域包括支援センターへの相談が、最初の安全網になります。「共倒れ」はなぜ起きるか|介護する側が見落とすSOS老老介護で最も避けたいのが、介護する人が先に倒れてしまう「共倒れ」です。なぜ介護者が限界を超えるまで頑張ってしまうのか、その構造とSOSサインを見ていきます。介護する人に起きていること介護する高齢の方の体と心には、知らないうちに大きな負担が積み重なっています。毎日の介助で腰や膝を痛める、夜中の見守りで睡眠が細切れになり慢性的な寝不足になる、自分の持病の通院や服薬が後回しになる。介護に追われて外出や人との交流が減り、家の中に閉じこもりがちになることも少なくありません。心の面でも消耗は進みます。「いつまで続くのだろう」という先の見えない不安、思うようにいかない苛立ち、そんな自分を責める罪悪感。気分が沈み、眠れず、何をする気力もわかない——介護する人自身が、うつに近い状態に追い込まれていくことがあります。介護する側もまた高齢で、もともと体力や回復力が落ちているため、こうした負担が一気に健康をむしばみやすいのです。しかも、これらの変化は痛みや発熱のようにはっきり目に見えるわけではありません。じわじわと進むからこそ、本人も家族も「まだ大丈夫」と見過ごしてしまう。気づいたときには介護する人自身が動けなくなっていた、ということが起こりうるのです。「自分がやらなければ」が招く悪循環共倒れの背景には、介護する人の強い責任感と、日本の家庭に根強い「介護は身内がやって当たり前」という意識があります。長年連れ添った配偶者を、あるいは育ててくれた親を、自分の手で世話したい——その気持ちは尊いものです。けれど「自分がやらなければ」という思いが強すぎると、助けを求めることが「投げ出すこと」のように感じられ、SOSを出せなくなります。「人に頼るのは申し訳ない」「他人を家に入れたくない」「サービスを使うほどではない」。そう考えて我慢を重ねるうちに、負担は静かに限界へ近づきます。介護する人が頑張れば頑張るほど周囲には「あの家は大丈夫そうだ」と映り、かえって手が差し伸べられにくくなる。本人が限界を口にしないために支援が遅れ、ある日ぷつりと糸が切れる——これが共倒れの典型的な道筋です。ここではっきりお伝えします。頼ることは、介護を投げ出すことではありません。むしろ、介護を長く続けるための前向きで正しい選択です。一人で抱え込んで倒れてしまえば、介護される人の暮らしも一緒に立ち行かなくなる。あなたが倒れないことそのものが、いちばんの介護になるのです。見逃したくない共倒れのSOSサイン共倒れは、ある日突然やってくるように見えて、実はその前に小さなサインを出しています。介護する人自身や周りの家族が早めに気づけるよう、代表的なSOSサインを下の表に整理しました。当てはまるものが増えてきたら、それは「もっと頼っていい」という体と心からの合図です。サインの種類こんな様子が見られたら意味すること体のサイン腰痛・膝痛が慢性化、よく眠れない、食欲が落ちた体力が限界に近づき、自分の持病も悪化しやすい心のサイン気分が沈む、涙が出る、イライラして当たってしまう心の余裕が失われ、うつに近づいているおそれ生活のサイン自分の通院をやめた、外出や人との交流が激減介護者自身の健康と社会とのつながりが先細る介護のサイン「もう無理かもしれない」と感じる、投げ出したくなる我慢が限界を超えつつある重要な警告この表で大切なのは、これらが「弱さ」ではなく「頑張りすぎのサイン」だということです。とくに「もう無理かもしれない」という気持ちが芽生えたら、それは恽ずべきことではなく、助けを求めるべき明確なタイミングです。一つでも当てはまるなら、それを我慢の理由にせず、相談の理由に変えてください。サインに早く気づくほど、共倒れは手前で防げます。私たちが町田・相模原の現場で介護するご家族に「眠れていますか」「ご自身の通院はできていますか」と尋ねるのは、こうしたサインを介護される人ではなく介護する人の中に探しているからです。介護者の体と心の小さな変化こそ、共倒れを防ぐ最初の手がかりになります。共倒れを防ぐ在宅の工夫|一人で抱えない共倒れを防ぐ最大の鍵は、ただ一つ——「一人で抱え込まないこと」です。ここでは、介護する人が自分の時間と休息を取り戻すための、在宅での具体的な工夫を紹介します。「頼ること」は正しい選択工夫の前に、もう一度だけ確かめておきたいことがあります。それは、頼ることへの後ろめたさを手放してよい、ということです。「介護サービスを使うのは家族の手抜きではないか」「他人に任せるのは冷たいのではないか」——多くの介護者がこの思いに縛られています。けれど考えてみてください。介護は、何年も続くことが珍しくない長い道のりです。短距離走のように全力で走り続ければ、必ずどこかで息切れします。介護サービスや周囲の手を借りて休息をとることは、長い道のりを歩き通すために欠かせない給水であり、休憩です。プロの手を借りれば、介護される人もより安全で専門的なケアを受けられます。頼ることは、介護される人のためにもなるのです。だからまず、「自分が全部やらなくていい」と自分に許可を出してください。この一言が言えるかどうかで、その後の暮らしが大きく変わります。次に挙げる工夫は、すべてこの「頼っていい」という前提の上に成り立っています。レスパイト(休息)で介護者の時間をつくる介護する人が休息をとるための仕組みを「レスパイト」と呼びます。レスパイトとは「休息・小休止」を意味し、介護を一時的に専門職や施設に委ねて、介護者が体と心を休める時間をつくる考え方です。代表的なものを下の表にまとめました。サービスどんな仕組みか介護者にとっての効果デイサービス(通所介護)日中、施設で食事・入浴・レクリエーションを受ける日中の時間が空き、介護者が休息や用事をこなせるショートステイ(短期入所)数日〜1週間ほど施設に宿泊して介護を受ける介護者がまとまった休息や通院、旅行の時間を取れる訪問介護(ヘルパー)ヘルパーが自宅を訪れ、身体介護や生活援助を行う入浴・排泄・家事の負担を分担し、介護者の手が空く訪問看護看護師等が自宅を訪れ、健康管理や医療的なケアを行う体調管理を任せられ、介護者の不安と負担が軽くなるこれらは介護保険のサービスとして、要介護認定(どれくらい介護が必要かを判定する仕組み)を受ければ利用できます。とくにショートステイは、介護者が体調を崩したとき、冠婚葬祭や自分の入院のとき、あるいは「ただ少し休みたい」というときにも使える心強い仕組みです。「介護される人がかわいそう」と感じる方もいますが、介護者が倒れずに在宅生活を続けられることこそ、本人にとっての安心になります。どのサービスをどう組み合わせるかは、ケアマネジャー(ケアプランを作る専門職)と相談しながら決められます。「週に一度でも自分の時間を持つ」ことから始めてみてください。無理をためない暮らしの工夫レスパイト以外にも、日々の暮らしの中で負担をためない工夫があります。一つは、できないことを抱え込まず人に任せること。重い物の移動、入浴の介助、通院の付き添いなど、体に負担がかかる場面は、ヘルパーや家族、地域の支え合いの手を借りて分担します。すべてを自分でやろうとしないことが、結果的に介護を長続きさせます。もう一つは、見守りの目を増やすことです。子世代や親戚に状況を共有し、たとえ遠方でも電話やオンラインで定期的に様子を伝え合う。民生委員や地域の見守りサービス、緊急通報装置などを活用すれば、介護者が一人で抱える緊張が和らぎます。「自分が倒れたら」という不安に対しては、緊急時に誰に連絡し、介護される人をどこに頼むかを、あらかじめケアマネジャーと決めておくと安心です。子世代や親戚との分担も、遠慮せずに話し合ってください。直接の介護が難しくても、お金の面で支える、手続きを代わる、定期的に連絡を入れて介護者の話を聞く——分担の形はさまざまです。介護を「家族みんなの課題」として共有するだけで、介護する人の孤独はずいぶん軽くなります。一人で背負っていた荷物を、少しずつ周りに預けていきましょう。介護する人自身の健康を守る共倒れを防ぐには、介護される人のケアと同じくらい、介護する人自身の健康を守ることが欠かせません。あなたが元気でいることが、介護を続ける何よりの力になります。自分の通院・持病管理を後回しにしない介護に追われていると、真っ先に削られるのが「自分のこと」です。とくに後回しにされやすいのが、介護する人自身の通院と持病の管理です。高齢の介護者の多くは、高血圧や糖尿病、心臓の病気など、自分自身も持病を抱えています。「介護で時間がない」「自分のことは二の次」と通院を中断すれば、その持病が静かに悪化し、ある日倒れる引き金になりかねません。だからこそ、自分の通院は介護の予定と同じくらい大切な予定として、必ず守ってください。自分が受診するあいだ、介護される人をどうするかが心配なら、その時間だけデイサービスやショートステイ、ヘルパーを利用すればよいのです。介護者が受診の時間を確保することは、わがままではなく、家庭を守るための必要な手立てです。自分の薬をきちんと飲めているか、健康診断を受けられているかも、折にふれて振り返ってください。介護する人の健康は、家庭という土台を支える柱です。柱が傾けば家全体が傾く——そう考えれば、自分の体を守ることの大切さが見えてきます。睡眠・栄養・体の負担を減らす毎日の暮らしの土台となるのが、睡眠と栄養、そして体への負担を減らす工夫です。夜中に何度も介護で起こされて睡眠が細切れになると、疲れが抜けず、判断力も気力も落ちていきます。夜間の介護がつらいときは、夜間対応のサービスやショートステイで「まとめて眠れる日」をつくることを、ケアマネジャーに相談してみてください。睡眠の確保は、ぜいたくではなく必要不可欠です。栄養も見落とせません。介護する人は自分の食事を簡単に済ませがちですが、栄養が偏れば体力も免疫も落ちます。手間をかけられないときは、配食サービスや手軽にとれる主食・主菜を活用し、まずは「きちんと食べる」ことを優先してください。体の負担、とくに腰痛は、介護を続けるうえで大きな壁になります。負担を減らす介護の工夫を下の表にまとめました。道具や手すりをうまく使い、無理な姿勢を避けることが、あなたの体を守ります。場面負担を減らす工夫立ち上がり・移動の介助手すりや介助ベルトを使い、自分の腰を落として支える入浴の介助シャワーチェアや滑り止めマット、入浴用の福祉用具を活用するベッド上の介助高さを調整できる介護ベッドを使い、無理に持ち上げないおむつ・移乗の介助スライディングシートなどの福祉用具で体の負担を減らす福祉用具は介護保険でレンタルや購入の補助を受けられるものが多くあります。「気合いで持ち上げる」介護から「道具で支える」介護へ切り替えるだけで、腰や膝の負担は大きく変わります。心の不調に気づく体だけでなく、心の不調にも目を向けてください。長く介護を続けていると、気分が沈む、わけもなく涙が出る、これまで楽しめたことが楽しめない、夜眠れない、些細なことで強く落ち込む——そんな変化が現れることがあります。これらは「気の持ちよう」では片づけられない、心が疲れきっているサインです。介護する人が抱えやすい孤独感や罪悪感、「自分さえ我慢すれば」という思い込みは、知らぬ間に心をすり減らします。つらい気持ちを一人で抱え込まず、信頼できる人や専門職に言葉にして伝えることが、心を守る第一歩です。介護者の心の限界と、その手当てについては、介護者の心を守るために:介護ノイローゼの原因・対処法・相談窓口まとめで詳しく整理しています。気分の落ち込みが長く続いたり、眠れない日が重なったりするときは、我慢せずに地域包括支援センターやかかりつけ医に相談してください。介護する人の心のケアは、決して後回しにしてよいものではありません。あなたが笑顔でいられることが、介護される人にとっての何よりの安心になるのです。相談先と使える制度|まず地域包括支援センターへ「どこに相談すればいいのか分からない」——これは老老介護に向き合う多くの方に共通する壁です。迷ったときの入口になるのが地域包括支援センターです。主な相談先と制度を整理します。まず地域包括支援センターへ何から相談すればよいか迷ったら、まずは地域包括支援センターを訪ねてください。地域包括支援センターは、高齢者の暮らしを総合的に支えるために市町村が設置する、地域包括ケアの中核的な相談窓口です。保健師や社会福祉士、主任ケアマネジャーといった専門職が配置され、高齢者の総合相談、介護予防の支援、権利擁護、関係機関との連携などを担っています(出典:厚生労働省「地域包括ケアシステム」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/ )。ここの心強さは、介護のことだけでなく、介護する人自身の困りごとも含めて相談できる点にあります。「介護に疲れてしまった」「自分も体がきつい」「認知症かもしれないが、どうしたらいいか」——どんな入口からでも構いません。相談すれば、状況に応じて必要なサービスや専門機関へとつないでくれます。利用は無料で、本人だけでなく家族からの相談も受け付けています。どこにあるか分からないときは、お住まいの市役所・区役所の高齢福祉の窓口で教えてもらえます。「相談する」という最初の一歩が、共倒れを防ぐいちばん確実な一手です。一人で悩み続けるより、まずは電話一本かけてみてください。介護保険とケアマネジャー在宅介護を支える土台となるのが、介護保険制度です。介護保険のサービスを使うには、まず要介護認定を受ける必要があります。要介護認定とは、その人にどれくらいの介護が必要かを判定する仕組みで、市町村の窓口や地域包括支援センターで申請できます。認定を受けると、その度合いに応じてデイサービスやショートステイ、訪問介護、福祉用具のレンタルなどを、自己負担を抑えて利用できます。認定後に頼れる存在が、ケアマネジャー(介護支援専門員)です。ケアマネジャーは、本人と家族の希望や状態に合わせて、どのサービスをどう組み合わせるかという「ケアプラン」を作る専門職です。介護する人にとっては、サービス調整の相談役であり、困ったときの最も身近な伴走者になります。「介護がつらい」「自分の時間がほしい」という思いも、遠慮せずケアマネジャーに伝えてください。介護される人の状態だけでなく、介護する人の負担も踏まえてプランは組み直せます。介護者が休息をとれるようサービスを調整することも、ケアマネジャーの大切な役割です。一人で背負わず、専門職と一緒に介護の体制を組み立てていきましょう。レスパイト・在宅サービス介護する人の休息を支える具体的な制度・サービスを、改めて下の表に整理しました。これらは介護保険を使って利用でき、組み合わせ方はケアマネジャーが一緒に考えてくれます。なお、対象となる条件や手続き、自己負担の額は、お住まいの自治体や介護される人の状態によって異なります。詳しくは必ず地域包括支援センターや市町村の窓口で確認してください。相談先・サービス役割・できることこんなときに地域包括支援センター高齢者と家族の総合相談、制度・サービスへの橋渡し何から相談すればよいか分からないときケアマネジャーケアプラン作成、サービス調整、介護の伴走具体的なサービスの利用を始めたいときデイサービス・ショートステイ日中・短期の預かりで介護者の休息をつくる休息・通院・まとまった睡眠がほしいとき訪問看護・訪問介護自宅での健康管理・身体介護・生活援助在宅での医療的ケアや介護の手を増やしたいとき介護の負担を軽くするうえで、訪問看護をどう活かせるかについては、介護疲れを防ぐ!訪問看護で変わる家族の介護負担、疲弊しないための実践ガイドもあわせてご覧ください。また、セルフチェックや制度の活用を含めた介護疲れ対策の全体像は、介護疲れ対策のすべて、セルフチェック・制度活用・訪問看護でできることで詳しく解説しています。町田市で在宅介護を始める際の具体的なサービスや相談先は、町田市で在宅介護を始めるには?利用できるサービスと相談先まとめを参考にしてください。制度は知って使ってこそ力になります。町田・相模原の訪問看護でできること|介護する人も支える最後に、私たちピース訪問看護ステーションが、老老介護のご家庭にどう関れるのかをお伝えします。訪問看護は、介護される人の健康を守るだけでなく、介護する人自身を支える役割も担っています。私たちが大切にしているのは、訪問のたびに介護される人だけでなく、介護するご家族の表情や体調にも目を向けることです。「眠れていますか」「腰は痛みませんか」「ご自身の通院はできていますか」。そう声をかけながら、介護する高齢のご家族が無理をしていないかを見守ります。在宅に定期的に専門職が入ることで、家族だけでは気づきにくい共倒れの予兆を、早い段階で察知できるのです。共倒れのサインに気づいたときは、ケアマネジャーや地域包括支援センターと連携し、ショートステイの利用やサービスの調整につなげます。町田市・相模原市の現場からある相模原市内のお宅で、高齢の配偶者がたった一人で介護を担っていたご家庭がありました(個人が特定されないよう、状況は一般化してお伝えします)。介護される方の体調管理のために訪問を始めたのですが、何度か通ううちに、介護するご家族のほうが慢性的な睡眠不足と強い腰痛を抱え、自分の通院も止めたまま限界寸前であることが見えてきました。「自分が倒れたら、この人を看る人がいない」と、不安を一人で抱え込んでこられたのです。私たちはまず、そのご家族の話を時間をかけて聴きました。そのうえで、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターと連携し、定期的なショートステイで介護者がまとまって眠れる日をつくること、デイサービスで日中の負担を減らすこと、福祉用具で腰への負担を軽くすることを一緒に整えていきました。介護するご家族自身が自分の通院を再開できたとき、「ようやく息がつけた」と話してくださった表情を、今も覚えています。介護する人を支えることが、結果として介護される人の暮らしを守る——そのことを、現場で何度も実感しています。町田市でも、夜中の介護で眠れず一人で背負うご家庭に何度も出会ってきました。地域は違っても、抱える重さは同じです。訪問看護でできること私たちが老老介護のご家庭に対してできることを、下の表に整理しました。訪問看護は、介護される人と介護する人の両方を視野に入れて、在宅での暮らしを支えます。支援の領域具体的にできること介護される人の健康管理病状や服薬の管理、日々の健康観察、急変の早期発見介護する人の見守り介護者の体調・睡眠・心の状態に気を配り、疲れに気づく共倒れ予兆への対応SOSサインを早期に察知し、ケアマネ・地域包括へつなぐ介護方法の助言体の負担を減らす介助のコツや福祉用具の使い方を伝える相談先へのつなぎレスパイト・在宅サービス・専門機関への橋渡し訪問看護の強みは、生活の場である自宅に、私たちのほうから継続して出向ける点にあります。だからこそ、外に助けを求められずに頑張っている介護者の小さな変化にも気づける。一人で抱え込みやすい老老介護のご家庭にこそ、自宅に入る専門職の存在が活きます。介護される人と介護する人、その両方を守ること——それを、私たちは何より大切にしています。まとめ老老介護は決して珍しいことではなく、介護する人が我慢を重ねた末に先に倒れる「共倒れ」が起こりうる長い道のりです。けれど頼ることは正しい選択で、レスパイトで休息をとり、自分の通院や睡眠を守り、地域包括支援センターに相談すれば、一人で抱え込まずにすみます。あなた自身を守ることが、いちばんの介護です。今日の小さな一歩として、まず電話を一本かけてみてください。ピース訪問看護ステーションにご相談ください私たちは、高齢のご家族を在宅で介護されているご家庭に嬄り添ってきました。介護される方の健康はもちろん、介護するあなた自身も一緒に見守ります。こんな方はぜひご相談ください:高齢の配偶者や家族を在宅で介護し、自分も疲れや限界を感じている方「自分が倒れたら」と不安で、誰にも相談できずにいる方どこに相談し、どんなサービスを使えばよいか分からない方ピース訪問看護ステーションができること:介護される方の健康を管理し、介護する方の疲れやSOSに気づきます休息やサービス調整を地域包括・ケアマネと整えます体の負担を減らす介助の工夫や福祉用具の使い方を助言します町田市・相模原市・多摩市など東京都南部を中心に対応しています。まずはお気軽にお問い合わせください。関連記事介護者の心を守るために:介護ノイローゼの原因・対処法・相談窓口まとめ介護疲れ対策のすべて、セルフチェック・制度活用・訪問看護でできること介護疲れを防ぐ!訪問看護で変わる家族の介護負担、疲弊しないための実践ガイド町田市で在宅介護を始めるには?利用できるサービスと相談先まとめ参考文献内閣府「令和6年版高齢社会白書」 https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2024/html/zenbun/s1_2_2.html厚生労働省「地域包括ケアシステム」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/よくある質問(FAQ)Q1. 老老介護で「もう限界」と感じています。まず何をすればいいですか?まずは地域包括支援センターに相談してください。介護される方のことだけでなく、ご自身の疲れも含めて相談でき、必要なサービスや専門機関へつないでくれます。利用は無料です。Q2. 介護サービスを使うと「家族なのに手抜き」だと思われませんか?そんなことはありません。介護は長い道のりで、休息は続けるために欠かせません。プロの手を借りれば本人も安全なケアを受けられます。頼ることは前向きな選択です。Q3. 自分が入院や通院をするあいだ、介護される人をどうすればいいですか?ショートステイ(短期入所)を使えば、数日から1週間ほど施設に宿泊して介護を受けられます。介護者の入院・通院や休息のためにも使えます。ケアマネジャーに相談してください。Q4. 夫婦とも高齢で、相手も認知症かもしれません。どうすればいいですか?認知症の人が認知症の人を介護する「認認介護」では、薬の管理や火の始末に危険が伴います。気になるときは早めに地域包括支援センターに相談を。専門職が状況を把握し支援につなぎます。Q5. 子どもが遠方にいて手伝えません。介護する高齢の親をどう支えればいいですか?直接の介護が難しくても、電話で話を聞く、お金や手続きを支える、ケアマネジャーと連絡を取り合うなど、できる支えはあります。介護を家族の課題と共有するだけで、孤独は和らぎます。【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理、地域医療連携、在宅看取り支援に積極的に取り組んでいる。island-piece.jp 株式会社isLand|訪問看護・居宅介護支援・訪問介護|町田市老老介護の共倒れを防ぐ方法を訪問看護師が解説。在宅介護に限界を感じる高齢の介護者が、自分の心身を守りながら頼れる相談先と制度まで