健康診断で「腎機能の低下」を指摘され、戸惑っていませんか。腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、悪くなっても自覚症状がほとんど出ません。気づいたときには進行していた、という方も少なくないのが実情です。この記事では、腎臓が悪くなる原因を生活習慣と病気の両面から整理します。あわせて、見逃しやすい初期サインや健診数値の読み方、受診の目安まで具体的にわかる内容です。町田市・相模原市・多摩市で訪問看護を行う私たちが、在宅支援の現場で得た視点も交えてお伝えします。ご自身の体を守る手がかりとして、ぜひ最後までお読みください。この記事でわかること腎臓が悪くなる原因となる生活習慣と病気見逃しやすい腎臓病の初期サインと尿の変化eGFR(推算糸球体濾過量)やクレアチニン、尿蛋白の数値の見方受診すべきタイミングとかかるべき診療科訪問看護を活用した自宅での腎臓病管理の方法腎臓が悪くなる原因は生活習慣と病気の両方にある腎臓が悪くなる原因は一つではなく、塩分の取りすぎなどの生活習慣と、高血圧や糖尿病といった病気が重なり合って腎臓を傷めていきます。腎臓は血液をろ過して老廃物を尿として排出する臓器です。細い血管が集まった繊細な構造のため、血管を傷める要因すべてが腎臓の負担になります。まずは原因を三つの視点から見ていきましょう。生活習慣に潜む腎臓が悪くなる原因日々の何気ない習慣が、長い年月をかけて腎臓の血管を傷めます。代表的な生活習慣と腎臓への影響を表にまとめました。生活習慣腎臓への影響塩分の取りすぎ血圧が上がり、ろ過を担う糸球体に負担がかかる喫煙血管が収縮し、腎臓への血流が減って組織が傷む肥満・運動不足糖尿病や高血圧を招き、腎臓の負担を増やす過度の飲酒血圧上昇や脱水を通じて腎臓に負担をかける水分不足・脱水血流が減り、老廃物を排出する力が落ちるとくに注意したいのが塩分です。日本人の食塩摂取量は1日平均で約10グラムと報告されています(出典:厚生労働省「国民健康・栄養調査」)。目標量を大きく上回る水準です。塩分が多い食事を続けると血圧が上がります。高い圧力にさらされた糸球体は少しずつ壊れ、ろ過機能が低下していきます。壊れた糸球体は再生しません。喫煙も見逃せない要因です。たばこに含まれる成分は全身の血管を収縮させ、腎臓の血流を慢性的に減らします。禁煙は腎臓を守る確実な一歩といえるでしょう。肥満や運動不足は、それ自体が腎臓を直接傷めるわけではありません。しかし糖尿病や高血圧の引き金となり、結果として腎臓を悪くする土台を作ります。心当たりのある習慣が複数ある方ほど、腎臓への負担は積み重なっています。すべてを一度に変える必要はなく、できるものから一つずつ手をつけることが現実的です。腎臓に負担をかける代表的な病気生活習慣に加えて、腎臓が悪くなる原因として大きいのが基礎疾患です。代表的な病気を整理します。病気腎臓への影響糖尿病高血糖が糸球体の血管を傷め、糖尿病性腎症を起こす高血圧腎臓の細い動脈が硬くなる腎硬化症につながる慢性糸球体腎炎免疫の異常で糸球体に炎症が続き、機能が低下する高尿酸血症・痛風尿酸の結晶が腎臓にたまり、組織を傷める多発性嚢胞腎遺伝性の病気で、腎臓に嚢胞が増えて機能を圧迫するなかでも糖尿病は最大の要因です。新たに透析を始める原因の第1位は糖尿病性腎症とされています(出典:厚生労働省「腎疾患対策検討会報告書」)。糖尿病と診断されている方は、血糖の管理がそのまま腎臓の保護につながります。定期的な尿検査で腎症の兆しを早く捉えることが大切です。高血圧による腎硬化症も、高齢化とともに増えています。血圧が高い状態が続くほど腎臓の動脈は硬くなり、ろ過能力が静かに落ちていく点が怖いところです。慢性糸球体腎炎は自覚症状が乏しく、健診の尿検査で偶然見つかる場合が多い病気です。尿蛋白や尿潜血を指摘されたら、放置せず精密検査を受けてください。腎臓と血圧、血糖はお互いに影響し合う関係にあります。どれか一つが悪化すると他も悪くなる悪循環に入るため、まとめて管理する視点が欠かせません。薬剤や加齢など見落としやすい原因病気や生活習慣のほかにも、腎臓が悪くなる原因は身近に潜んでいます。見落としやすいものを表にまとめました。見落としやすい原因内容鎮痛薬の常用一部の痛み止めは腎臓の血流を減らし、機能を落とすことがある加齢腎機能は加齢とともに少しずつ低下していく脱水の繰り返し夏場や発熱時の脱水が腎臓に急な負担をかける極端な食事法たんぱく質の取りすぎなどが腎臓の負担になる場合がある感染症や検査薬重い感染症や造影剤が一時的に腎機能を下げることがある市販の鎮痛薬を長期間、自己判断で飲み続けている方は注意が必要です。腰痛や頭痛で毎日のように服用しているなら、一度医師や薬剤師に相談しましょう。加齢による低下は誰にでも起こります。年齢を重ねた腎臓は予備力が小さく、脱水や薬の影響を受けやすい状態です。高齢の方ほど夏場の水分補給を意識してください。健康のためのつもりで始めた極端な糖質制限や、たんぱく質を大量に取る食事法が、腎臓には負担となる場合もあります。すでに腎機能の低下がある方はとくに慎重な判断が必要です。造影剤を使う検査や一部の抗生物質でも、腎機能が一時的に下がることがあります。検査や処方の際は、腎機能を指摘された経験を必ず伝えましょう。お薬手帳に健診結果のメモを挟んでおくと、医療機関ごとの説明がスムーズです。自分の腎機能を把握しておくこと自体が、腎臓を守る備えになります。気づきにくい腎臓病の初期サイン腎臓が悪くなる原因が体をむしばんでいても、初期の自覚症状は乏しく、むくみやだるさ、尿の変化といった小さなサインが数少ない手がかりです。腎臓には高い予備力があり、機能が半分ほどに落ちるまで症状が出にくいとされています。だからこそ、些細な変化に気づく目が頼りになるのです。体に現れやすい初期サイン「年のせい」「疲れのせい」と片づけてしまいがちな症状の中に、腎臓からのサインが隠れています。体のサイン特徴むくみ夕方の足のむくみ、朝のまぶたの腫れぼったさが続くだるさ・疲れやすさ休んでも取れない倦怠感が長引く夜間頻尿夜中に2回以上トイレに起きる状態が続く貧血のような症状立ちくらみ、動悸、顔色の悪さが目立つ食欲の低下老廃物の蓄積により食欲が落ち、吐き気が出ることもあるむくみは腎臓のサインとして比較的知られています。靴下の跡が夜まで残る、指輪がきつくなる、といった変化が続くなら要注意です。夜間頻尿は前立腺や膀胱の問題と思われがちですが、腎臓の濃縮力が落ちて夜間の尿量が増えている場合があります。回数を数えて記録しておくと受診時に役立つでしょう。だるさや貧血のような症状は、腎臓が作る造血ホルモンの減少と関係することがあります。原因のはっきりしない倦怠感が1か月以上続くなら、血液検査を受けてください。これらの症状はどれも腎臓以外の原因でも起こります。自己判断で決めつけるのではなく、「腎臓の可能性もある」と頭の隅に置いておくことが大切です。複数のサインが同時に出ている場合や、健診で腎機能の指摘を受けたことがある場合は、様子を見ずに医療機関へ相談しましょう。尿の変化でわかるサイン腎臓の状態をもっとも直接的に映すのが尿です。毎日のトイレで確認できる変化をまとめます。尿の変化考えられる背景泡立ちが消えにくい尿に蛋白が漏れ出ている可能性がある赤っぽい・茶色っぽい色尿に血液が混じっている可能性がある尿量が減った腎臓のろ過機能が落ちている可能性がある夜間の尿量が増えた尿を濃縮する力が低下しているサイン強い濁りやにおい感染症など腎臓や尿路の異常が疑われる健康な人の尿でも多少は泡立ちます。問題なのは、きめ細かい泡がしばらく消えずに残る状態が毎日続く場合です。尿蛋白が出ているサインかもしれません。尿の色は水分量で濃くも薄くもなります。十分に水分を取っているのに濃い色が続く、赤みがかって見える、という場合は尿潜血の検査を受けてください。尿の変化は入浴やトイレのたびに確認できる、費用のかからない健康チェックです。気になる変化があった日はメモを残しておきましょう。写真や記録があると、受診時に医師へ正確に伝えられます。「いつから」「どのくらいの頻度で」を伝えられるだけで、診察の精度は大きく変わります。なお、一度きりの変化で慌てる必要はありません。数日から数週間にわたり続く変化こそ、受診を後押しするサインと考えてください。健診数値の見方(eGFR・クレアチニン・尿蛋白)健診の数値は腎臓が悪くなる原因がどの程度体に影響しているかを映す鏡であり、eGFR(推算糸球体濾過量)と尿蛋白の両方の確認が欠かせません。健診結果を「異常なし」の判定だけ見て捨てていませんか。数値の意味を知れば、腎臓の状態を毎年自分で追いかけられるようになります。eGFR(推算糸球体濾過量)の区分と意味eGFR(推算糸球体濾過量)は、腎臓が1分間にどれだけ血液をろ過できるかを示す指標です。区分ごとの意味を確認しましょう。eGFRの区分腎機能の状態90以上正常または高値60〜89正常または軽度低下45〜59軽度〜中等度の低下30〜44中等度〜高度の低下15〜29高度の低下15未満末期腎不全に相当する状態eGFRが60未満の状態、または尿蛋白などの腎障害が3か月以上続くと、慢性腎臓病(CKD)と診断されます(出典:日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン」)。慢性腎臓病(CKD)の患者数は約1,480万人と推計されています(出典:日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」)。決して珍しい病気ではありません。注意したいのは、60以上でも安心とは限らない点です。前年より大きく下がっていれば、その変化自体が腎臓の異変を示すサインといえます。eGFRは年齢とともに緩やかに下がるのが自然な経過です。1年で5以上下がるような急な低下は、加齢だけでは説明がつきません。早めの受診を検討してください。毎年の健診結果を1枚の紙やノートに書き写し、推移を折れ線でつないでみましょう。数値の流れが見えると、自分の腎臓の変化が実感を持って理解できます。クレアチニンと尿蛋白のチェックポイントeGFR(推算糸球体濾過量)とあわせて見たいのが、クレアチニンと尿蛋白です。それぞれの見方を整理します。検査項目見方のポイント血清クレアチニン老廃物の一種。腎機能が落ちると数値が上がる尿蛋白陰性が正常。プラスマイナスや1プラス以上は再検査の対象尿潜血陰性が正常。陽性が続く場合は腎炎などの精密検査が必要尿アルブミン糖尿病の方の腎症を早期に捉える検査クレアチニンは筋肉量の影響を受けるため、数値そのものより、そこから計算されるeGFR(推算糸球体濾過量)で判断するのが基本です。尿蛋白は腎臓の傷を直接示すサインです。eGFR(推算糸球体濾過量)が保たれていても、尿蛋白が続く人は腎機能が下がりやすいことが知られています。「プラスマイナスだから大丈夫」と自己判断せず、翌年も続くようなら医療機関で再検査を受けましょう。早朝の尿で調べ直すと、より正確な判定ができます。糖尿病のある方は、通常の尿蛋白検査では捉えられない微量アルブミン尿の検査が有効です。かかりつけ医に検査の実施を確認してみてください。数値は単年で判断せず、複数年の流れで読む姿勢が大切です。健診結果は捨てずに保管し、受診の際は過去の分も持参すると診断の助けになります。腎臓が悪くなるとどう進行するか腎臓が悪くなる原因を放置すると腎機能は静かに低下を続け、貧血や心臓病などの合併症を経て、透析や移植が必要な段階へ進むことがあります。怖がらせるためではなく、早く手を打つ意味を知っていただくために、進行の道筋を確認しておきましょう。進行段階ごとの体の変化慢性腎臓病(CKD)は、進行の段階によって現れる症状が変わります。おおまかな流れを表に示します。段階主な状態初期(軽度低下)自覚症状はほぼなく、健診の数値だけが手がかり中期(中等度低下)むくみ、夜間頻尿、だるさ、貧血が出始める後期(高度低下)食欲低下、吐き気、息切れ、強いむくみが現れる末期(腎不全)老廃物が排出できず、透析や移植の検討が必要になる初期の段階では、体は何も教えてくれません。この時期に気づけるかどうかは、健診を受けているかどうかにかかっています。中期に入ると症状が出始めますが、加齢や疲労と区別がつきにくいのが厄介な点です。数値と症状を突き合わせて考える必要があります。後期は、生活への影響が大きくなる段階です。ただし、この段階でも治療と生活改善によって進行を緩やかにする余地は残されています。一度失われた腎機能は基本的に元へ戻りません。だからこそ、今ある機能をどれだけ長く保つかという発想への切り替えが求められます。進行を左右するのは血圧、血糖、塩分、薬の管理といった日々の積み重ねです。次の章で紹介する生活習慣が、そのまま進行予防の柱になります。腎機能の低下がもたらす合併症腎臓の働きが落ちると、影響は全身に及びます。代表的な合併症を知っておきましょう。合併症内容心筋梗塞・脳卒中腎機能の低下は心血管の病気の危険を高める腎性貧血造血ホルモンが減り、貧血とだるさが進む骨のもろさミネラルの調整が乱れ、骨折しやすくなる高カリウム血症カリウムが排出できず、不整脈の原因になる尿毒症老廃物が全身にたまり、意識障害などを起こす慢性腎臓病(CKD)は、心筋梗塞や脳卒中など心血管疾患の重大な危険因子とされています(出典:厚生労働省「腎疾患対策検討会報告書」)。腎臓だけの問題ではないのです。腎性貧血は「なんとなくだるい」という形で現れます。鉄剤を自己判断で飲む前に、腎臓由来の貧血でないか血液検査で確かめることが先決です。末期の腎不全に至った場合は、血液透析や腹膜透析、腎移植といった腎代替療法が選択肢になります。透析は週3回、1回4時間程度の通院が標準的です。生活の変化が大きい治療だからこそ、そこへ至る前の対策に価値があります。合併症の芽を早く摘むためにも、定期受診を途切れさせないでください。健診の数値をどう受け止めればよいか、通院と生活をどう両立するか。迷ったときは一人で抱え込まず、身近な医療職に相談しましょう。ピース訪問看護ステーションでも、町田市・相模原市・多摩市にお住まいの方から腎臓病の療養に関するご相談を受け付けています。腎臓を守るために今日からできる生活習慣腎臓が悪くなる原因の多くは生活習慣と深く関わるため、減塩や血圧管理などの毎日の積み重ねが、腎臓の働きを長く保つ力になります。特別な道具や費用は必要ありません。今日の食卓と明日の習慣から変えられる工夫を紹介します。減塩を中心とした食事の工夫腎臓を守る食事の第一歩は減塩です。無理なく続けるための工夫を表にまとめました。工夫具体例麺類の汁を残すラーメンやうどんの汁を半分以上残す調味料は後がけしょうゆは、かけずに小皿につけて使う香りと酸味を活用レモン、酢、香辛料、だしで薄味を補う加工食品を減らすハム、練り物、漬物、干物の頻度を減らす汁物は1日1杯みそ汁は具を多く、汁を少なくする成人の食塩摂取の目標は、男性で1日7.5グラム未満、女性で6.5グラム未満とされています(出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」)。高血圧や慢性腎臓病(CKD)と診断された方には、1日6グラム未満というより厳しい目安が示されています(出典:日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン」)。いきなり半分に減らすと食事がつらくなり、長続きしません。まずは麺類の汁を残す、漬物を1品減らすなど、確実にできる工夫から始めましょう。舌は2〜4週間ほどで薄味に慣れるといわれます。最初の数週間を乗り越えれば、以前の味付けを濃く感じるようになるはずです。たんぱく質やカリウムの制限は、腎機能の段階によって必要性が変わります。自己判断で極端に制限せず、必ず医師や管理栄養士の指示を確認してください。血圧・血糖・体重の管理腎臓を守る三本柱が血圧、血糖、体重の管理です。日々の目安を整理します。管理項目ポイント家庭血圧朝晩の決まった時間に測り、手帳に記録する血糖糖尿病の方はヘモグロビンエーワンシーの目標値を主治医と共有する体重毎朝同じ条件で測り、急な増減を見逃さない服薬降圧薬や糖尿病薬を自己判断で中断しない家庭血圧は診察室より低く出やすく、日々の変動も見えるため、腎臓を守る管理の要になります。上腕で測るタイプの血圧計を使い、朝は起床後1時間以内に測りましょう。目標とする血圧の値は、年齢や尿蛋白の有無によって一人ひとり異なります。手帳の記録を持参し、自分の目標値を主治医と確認しておくと管理がぶれません。体重の急な増加はむくみ、つまり体に水分がたまっているサインの場合があります。2〜3日で1〜2キロ増えたときは、塩分と水分の取り方を振り返ってください。血圧の薬を飲むと「腎臓に悪いのでは」と心配する方がいますが、適切な降圧はむしろ腎臓を保護します。自己判断での中断がもっとも危険です。記録はスマートフォンのアプリでも紙の手帳でも構いません。続けられる方法を選び、受診のたびに医師へ見せる習慣を作りましょう。運動・水分・禁煙のポイント食事以外にも、腎臓を守る生活の工夫があります。無理のない範囲で取り入れてみてください。項目ポイント運動1日20〜30分の早歩きなど、続けられる有酸素運動を行う水分喉が渇く前にこまめに飲む。制限の指示がある方は指示を優先禁煙禁煙外来の活用も含め、本数を減らすのではなくやめる睡眠6〜8時間を目安に、夜間の高血圧を防ぐ飲酒休肝日を設け、量を決めて飲むかつて腎臓病では安静が勧められた時代もありました。現在は、状態に応じた適度な運動がむしろ腎臓や心臓の保護に役立つと考えられています。運動の強さは「会話しながら続けられる程度」が目安です。息が上がりきる運動よりも、毎日続けられる早歩きのほうが腎臓には優しい選択といえます。水分については誤解が多い分野です。たくさん飲めば腎臓が良くなるわけではなく、脱水を避けることが目的になります。心不全などで制限がある方は主治医の指示が最優先です。夏場は汗で失う水分が増え、高齢の方は喉の渇きも感じにくくなります。時間を決めてコップ1杯ずつ飲む方法なら、飲み忘れを防げるでしょう。禁煙は腎臓だけでなく心臓や肺も同時に守る、費用対効果の高い健康行動です。自力で難しければ、保険適用となる禁煙外来という道もあります。受診の目安と何科にかかるべきか腎臓が悪くなる原因や進行度を自分だけで判断するのは難しいため、健診結果と症状を手がかりに、早めに腎臓内科などへ相談することが安心につながります。「これくらいで受診していいのか」と迷う方は多いものです。目安を知っておけば、迷う時間を減らせます。受診を考えたい数値と症状の目安受診のきっかけになる数値と症状を整理しました。当てはまるものがないか確認してください。状況対応の目安eGFRが60未満と指摘された早めにかかりつけ医か腎臓内科へ相談尿蛋白が1プラス以上放置せず医療機関で再検査を受けるeGFRが前年から大きく低下数値の推移を持参して受診するむくみ・だるさが2週間以上続く内科で血液検査と尿検査を受ける尿量の急な減少、強いむくみ速やかに受診する健診で「要精密検査」「要医療」と判定されたのに受診しない方は少なくありません。腎臓に関しては、この受診の遅れが数年後の大きな差になります。eGFR(推算糸球体濾過量)が60をわずかに下回る程度でも、尿蛋白を伴う場合は進行しやすいことがわかっています。両方引っかかった方は優先度を上げてください。症状がなくても、数値の異常は受診の十分な理由になります。「元気だから大丈夫」という感覚は、沈黙の臓器である腎臓には通用しません。急に尿が出なくなった、顔や全身が強くむくむ、息苦しいといった症状は、急を要する状態の可能性があります。ためらわず当日中に医療機関へ連絡しましょう。受診する診療科と当日の準備どの診療科へ行くべきか、何を持っていくべきかをまとめます。準備があると診察が格段にスムーズです。項目内容まず相談する先かかりつけ医、または一般内科専門的な診療科腎臓内科(腎機能低下や尿蛋白の精査)糖尿病がある方糖尿病内科と腎臓内科の連携先持ち物健診結果(過去数年分)、お薬手帳、血圧手帳伝えること症状の始まりと経過、家族の腎臓病歴、市販薬の使用状況かかりつけ医がいる方は、まずそこで相談するのが近道です。必要に応じて腎臓内科への紹介状を書いてもらえます。かかりつけ医の紹介基準は学会からも示されており、eGFR(推算糸球体濾過量)の値や尿蛋白の程度に応じて専門医へつなぐ流れが整っています(出典:日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン」)。過去の健診結果は、それ自体が貴重な検査データです。数年分を持参すれば、低下の速さを医師がその場で評価できます。家族に腎臓病や透析を受けた方がいる場合は、必ず伝えてください。遺伝性の腎臓病や、体質的な傾向の手がかりになります。市販の鎮痛薬やサプリメントも、腎臓に関わる大切な情報です。飲んでいるものは種類と頻度をメモして持参しましょう。訪問看護でできる腎臓病の療養支援腎臓が悪くなる原因への対策を自宅で続けるのは思いのほか大変で、訪問看護は数値管理や食事の工夫を日常の中で支える身近な選択肢です。通院だけでは、日々の血圧や食事、飲み薬の管理まで細かく確認しきれません。訪問看護は、その隙間を埋める役割を担います。実際の現場の例を紹介します。町田市内で暮らす70代の男性は、健診でeGFR(推算糸球体濾過量)が40台と指摘され、自宅での管理に不安を抱えていました。看護師が週1回訪問し、血圧手帳の確認と食事内容の聞き取り、飲み忘れの多かった降圧薬の整理を一緒に行っています。相模原市のご利用者さま宅では、夏場の脱水予防として1日の水分の目安をコップで見える化し、台所に貼り出す工夫をしました。ご本人が自分で管理できる形を作ることが、私たちの支援の軸です。訪問看護で受けられる主な支援腎臓病の療養で訪問看護が担える支援を、具体的に表へまとめました。支援内容具体例体調の観察血圧、体重、むくみ、尿量の変化を定期的に確認する服薬の支援飲み忘れ防止の仕組み作り、薬の作用の説明食事の助言減塩の工夫、栄養指導の内容を自宅の食卓に落とし込む受診の橋渡し気になる変化を主治医へ報告し、受診の判断を助けるご家族への支援介護するご家族の相談、看護技術の助言訪問看護は医師の指示書に基づいて提供され、医療保険や介護保険を使って利用できます。透析を受けている方や、保存期の管理を続ける方まで幅広く対応が可能です。「病院で聞きそびれたことを家で確認できる」という声を多くいただきます。自宅というリラックスできる場だからこそ、生活に即した相談ができるのです。数値の変化を見つけて早めに主治医へつなぐことは、重症化を防ぐうえで訪問看護のもっとも大きな役割の一つです。定期的に体を見る専門職がいる安心感は、ご本人だけでなくご家族の支えにもなります。ご家族の立場での関わり方については、当ステーションのコラム『慢性腎臓病(CKD)の在宅療養|家族ができる食事・血圧管理と注意点を解説』もご覧ください。食事と血圧管理の実践的な内容をまとめています。腎臓の数値に不安がある方、通院と自宅療養の両立に悩む方は、地域の訪問看護に一度相談してみてください。介護保険の申請前の段階でも、利用の道筋を一緒に考えられます。腎臓が悪くなる原因についてよくある質問腎臓が悪くなる原因や受診の判断について、患者さんからよく寄せられる質問をまとめました。疑問の解消と行動のきっかけにしてください。Q1.腎臓は一度悪くなると元に戻らないのですか。A.慢性的に低下した腎機能を元に戻すことは基本的に難しいとされています。ただし、血圧や血糖、塩分の管理によって進行を緩やかにできる可能性は十分にあります。脱水や薬など一時的な原因による低下なら、回復が見込める場合もあるため、まず原因を調べることが大切です。Q2.痛みがないのに腎臓が悪いことはあるのですか。A.あります。腎臓の実質には痛みを感じる神経が乏しく、慢性の腎臓病では痛みがほとんど出ません。背中や脇腹の痛みを伴うのは、結石や感染症など別の病気の場合が中心です。痛みの有無ではなく、健診の数値と尿の変化で判断してください。Q3.水をたくさん飲めば腎臓は良くなりますか。A.水を多く飲むこと自体に腎機能を高める効果は確認されていません。目的は脱水を避けることであり、喉が渇く前にこまめに飲む程度で十分です。心臓や腎臓の状態によっては水分制限が必要な方もいるため、指示がある場合はそちらを優先しましょう。Q4.健診でeGFRが58でした。すぐに受診が必要でしょうか。A.eGFR(推算糸球体濾過量)が60未満の状態が3か月以上続けば、慢性腎臓病(CKD)に該当します。まずはかかりつけ医で再検査を受け、尿蛋白の有無もあわせて確認してください。尿蛋白を伴う場合や、前年から大きく下がっている場合は、腎臓内科への相談が望まれます。Q5.市販の痛み止めやサプリメントは飲んでも大丈夫ですか。A.一部の鎮痛薬は、常用すると腎臓の血流を減らして機能を下げるおそれがあります。腎機能を指摘された方は、購入前に薬剤師へ相談してください。サプリメントも成分によっては腎臓の負担になるため、種類と量を受診時に必ず伝えましょう。Q6.訪問看護は透析をしていなくても利用できますか。A.利用できます。透析前の保存期の方でも、主治医が必要と判断し指示書を交付すれば、医療保険や介護保険で訪問看護を利用可能です。血圧や体重の管理、食事の工夫、服薬の支援など、自宅での療養全般を支えます。費用や手続きは地域のステーションやケアマネジャーに確認してください。腎臓は静かに、しかし確実に毎日働き続けている臓器です。健診の数値という声に耳を傾け、今日できる一歩から始めていきましょう。ぜひ町田市およびその近隣にお住まいの方は、ピース訪問看護ステーション(island-piece.jp/contact)にご相談ください。【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理、地域医療連携、在宅看取り支援に積極的に取り組んでいる。island-piece.jp 株式会社isLand|訪問看護・居宅介護支援・訪問介護|町田市