食べること、飲み込むこと。それは私たちの生活の中で当たり前のように行っている動作ですが、加齢や病気などでその機能が衰えると、誤嚥(ごえん)による肺炎などのリスクが高まります。そうしたリスクを減らすために注目されているのが「嚥下訓練」、特に「パタカラ体操」です。本記事では、パタカラ体操の基本から正しいやり方、注意点までをわかりやすく解説します。1. パタカラ体操とは?パタカラ体操とは、「パ・タ・カ・ラ」という4つの音を繰り返し発音することで、お口のまわりや舌、のどの筋肉を元気にする体操です。音鍛えるところ働きパ唇(くちびる)食べ物をこぼさずに口の中に保つ力を高めるタ舌の先食べ物をまとめたり、言葉をはっきり発音する動きを助けるカ舌の奥飲み込むときの力をつけるラ舌全体舌をしなやかに動かしやすくするこの体操は、食事中のむせや誤嚥の予防だけでなく、口の動きを良くして言葉を話しやすくしたり、脳を刺激して認知症予防にもつながるとされています。2. 嚥下機能との関係「嚥下(えんげ)」とは、食べ物や飲み物を口からのど、食道へと飲み込む動作のことです。私たちが普段意識せずに行っているこの動作には、唇や舌、のどのいろいろな筋肉が協力して働いています。これらの筋肉が衰えると、食べ物がうまく飲み込めず、気管に入ってしまう「誤嚥(ごえん)」が起きやすくなります。パタカラ体操を続けることで、こうした筋肉がしっかり働くようになり、むせや誤嚥の予防につながるのです。働き関係する場所弱まったときに起きやすいこと噛む・飲み込む準備舌や頬(ほお)食べ物がうまくまとまらない飲み込む動作のど全体食べ物や飲み物が気管に入りやすくなる咳き込む力気管の周りむせたときにうまく出せない3. 効果的な実施方法パタカラ体操は、特別な道具がいらず、どなたでも気軽に始められます。大切なのは毎日続けることです。基本のやり方:椅子に座って背すじを伸ばす「パ・タ・カ・ラ」と大きな声ではっきりと10回言うこれを1セットとして、1日に3セットを目安に続けるタイミング実施の例朝ごはんの前飲み込みの準備運動として昼ごはんの後唾液の分泌を促し、お口の中もすっきり寝る前口のまわりの筋肉をリラックスさせるコツ:声は大きく、ゆっくり、はっきりと疲れたら無理をせず休む鏡を見ながらやるとより効果的4. パタカラ体操の注意点安心して体操を続けるために、次のようなことに気をつけましょう。1. 医師や専門職に相談を すでに飲み込みが難しいと感じていたり、過去に誤嚥性肺炎を起こしたことがある方は、パタカラ体操を始める前に医師や言語聴覚士(ST)などの専門職に相談しましょう。2. 声の出しすぎに注意 風邪気味のときや、のどが痛いときは無理に声を出さず、休むことも大切です。3. 集中できる環境で テレビや音の少ない、静かで落ち着いた場所で行いましょう。5. その他の嚥下体操と併用するにはパタカラ体操のほかにも、飲み込みを助ける体操があります。併用することで、より効果が期待できます。体操名内容組み合わせのコツ頬(ほお)のマッサージ手で頬を軽くなでたり、たたいたりするパタカラ体操の前にやると準備が整う舌をまわす運動舌で歯ぐきをなぞるように回す口の動きをなめらかにするのに効果的首をゆっくり動かす首を前後・左右に動かすのどの動きがスムーズになりやすい6. 訪問看護での活用パタカラ体操は、自宅でできる簡単な体操として、訪問看護の現場でも多く取り入れられています。言語聴覚士(ST)や看護師が、ひとりひとりに合ったやり方を指導できますご家族と一緒に取り組むことで、日常の会話やコミュニケーションも増えますリハビリや食事介助の前後に取り入れることで、より効果的にサポートできます在宅での療養生活に不安のある方、食事中のむせが気になる方は、訪問看護でのサポートを活用することもおすすめです。まとめパタカラ体操は、口のまわりの筋肉を元気にし、誤嚥を防ぐための大切な習慣です。特別な道具もいらず、誰でも簡単に始められるのが魅力です。毎日の食事を楽しく安全に続けるためにも、まずは1日数分、気軽に取り入れてみましょう。関連記事【高齢者の食事を考える】健康で豊かなシニアライフを支える栄養と工夫パーキンソン病の症状と訪問看護の役割、在宅療養を支えるプロの視点高齢者の食欲不振に潜むリスクとその対策法ピース訪問看護ステーションのご案内自宅での療養や介護に、不安やお悩みはありませんか?ピース訪問看護ステーションでは、東京都町田市を中心に、医療依存度の高い方や在宅でのリハビリを希望される方への支援を幅広く行っています。24時間緊急対応が可能な体制を整えており、看護師・リハビリ職(PT・OT・ST)・ケアマネジャーが在籍。医療と介護の両面から、ご本人とご家族を多職種で支え、安心して在宅生活を続けられるようサポートしています。退院支援を担う医療機関の皆さま、地域のケアマネジャーの皆さま、訪問看護をご検討中のご本人・ご家族も、どうぞお気軽にご相談ください。新規のご依頼・ご質問は、お電話またはお問い合わせフォームより承っております。📞 鶴川本部 直通TEL:042-860-4404(平日9:00〜18:00)▶ お問い合わせフォームはこちら▶ 訪問看護・訪問リハビリのサービス詳細はこちら本記事の執筆者・監修者プロフィール【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理に長け、地域医療連携や在宅看取り支援にも積極的に取り組んでいる。