朝は新聞を読んで感想まで話していた父が、夕方には自分の部屋が分からなくなっている。昨日はデイサービスの支度を一人で済ませたのに、今日は靴下の履き方で止まってしまう。血管性認知症のあるご家庭では、この落差にご家族が一番消耗していると感じます。落差が大きいと、家族は「本当はできるのに、わざとやらないのでは」と考えてしまいます。そこから強い口調が出て、本人が黙り込み、翌日はさらに動かなくなる。悪循環の入口は「できたりできなかったりする理由が分からない」ことにあります。血管性認知症のまだらな症状に家族が対応するとき、最初に必要なのはコツの暗記ではありません。症状の波は気分の問題ではなく、脳のどこが傷んでいるかという構造の問題です。理由が分かると、責める言葉は自然に減ります。町田市・相模原市で訪問看護に伺う立場から順に整理します。この記事でわかること血管性認知症とアルツハイマー型認知症の違いが、原因・初期症状・経過で分かる日によって「できる・できない」が変わる、まだらな症状の仕組みが分かる症状の波を悪化させない記録の付け方と、声かけの言い換えが分かる血圧・生活習慣の管理と、訪問看護に頼める内容が分かる症状の波が起きるのは、脳の傷んだ場所が一部に限られているから血管性認知症で症状に波があるのは、脳の傷んだ場所が一部に限られ、残った部分の働きがその日の体調で変わるためです。認知機能が全体的に均一に落ちるわけではありません。「昨日はできたのに今日はできない」と家族が振り回される場面家族が戸惑う場面受け取られがちな意味実際に起きていること朝は会話が成立し、夕方は噛み合わない気分屋になった疲労や脱水で脳の働きが落ちている計算はできるのに日付が答えられないふざけている障害された機能と保たれた機能が分かれる昨日できた着替えが今日はできない甘えているその日の体調で処理速度が変動しているデイでは動き、家では動かない家族をなめている手がかりの多い環境では力を発揮できるどの場面も、本人の意思や性格では説明がつきません。血管性認知症では、働きが落ちた部分と保たれた部分が虫食い状に混在するためです。前に出る部分が日ごとに入れ替わり、家族には態度が変わったように見えてしまう。町田市内で訪問していると、朝一番と夕方で別人のように様子が違うという相談を月に何件も受けます。ご家族の多くは夕方の姿を本当の状態と受け取りますが、幅そのものがこの病気の特徴。できた日には理由があります。よく眠れた、水分が足りていた、部屋が暖かかった。条件を再現できれば、できる日は増えます。まだらな症状に振り回されないための四つの順番順番やることねらい1仕組みを知る波を「本人のせい」から切り離す2記録するできた日とできない日の条件を見つける3環境と声かけを変えるできる日を増やす4再発を防ぐ一段下がる出来事そのものを減らす順番を飛ばすと、たいていうまくいきません。仕組みが腑に落ちないまま声かけだけ変えても、腹が立つ場面では元の言い方に戻ります。記録を二番目に置いたのも理由があってのこと。人の記憶は、うまくいかなかった日ほど濃く残るもの。「最近まったくできない」と話すご家族が、記録を見ると週の半分はできていたと気づく場面によく立ち会います。四番目の再発予防は、この病気で特別な位置を占めます。国立長寿医療研究センターも、生活習慣病を悪化させないことと脳卒中の予防が最も大切だと説明しています(出典:国立長寿医療研究センター「意外と身近な『血管性認知症』」)。血管性認知症とは|アルツハイマー型認知症との違い血管性認知症とは、脳梗塞や脳出血、細い血管の傷みによって脳の一部が働かなくなり、生活に支障が出た状態です。原因が血管にある点が、他の認知症との最大の違いです。日本神経学会が監修する診療ガイドラインでも、アルツハイマー型認知症は第6章、血管性認知症は第14章と、別の章に分けて整理されています(出典:日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン2017」)。原因が違えば、進み方も打てる手も変わるためです。血管性認知症の原因は「脳の血管の事故」項目内容原因脳梗塞・脳出血、細い血管の傷み代表的な病変ラクナ梗塞、白質病変、脳微小出血などの脳小血管病背景の病気高血圧、糖尿病などの生活習慣病気づかれ方もの忘れより先に、意欲の低下や夜間の不眠で気づかれる対応の柱再発予防と、残っている力を使う生活の組み立てラクナ梗塞は細い血管が詰まって起きる小さな梗塞、白質病変は脳の深い部分が傷む変化、脳微小出血はごく小さな出血の跡。まとめて脳小血管病と呼びます。いずれも高血圧や糖尿病と関係が深く、初期症状として意欲低下や自発性低下、夜間不眠や不穏が現れることがあります(出典:国立長寿医療研究センター「意外と身近な『血管性認知症』」)。脳の血管の事故は、必ずしも派手に起きるとは限りません。気づかないうちに小さな梗塞が積み重なり、別の検査の画像ではじめて指摘されることもあります。つまり「脳卒中を起こしていないから関係ない」とは言い切れません。血圧が高いまま何年も過ごしてきた、糖尿病の通院が途切れている。こうした背景があれば、血管性の変化は静かに進みます(脳梗塞の原因とは?予防と再発防止における訪問看護の役割)。アルツハイマー型認知症との違いを6項目で比べる比較項目血管性認知症アルツハイマー型認知症主な原因脳梗塞・脳出血・脳小血管病脳の神経細胞の変性初期に目立つもの意欲の低下、動作の遅さ新しいことを覚えられない症状のばらつき機能ごと・日ごとに差が大きい全般的に低下していく経過の形階段状に一段ずつ下がることがあるゆるやかに右肩下がり病識比較的保たれやすい傾向早い段階で乏しくなりやすい体の症状麻痺・歩きにくさを伴いやすい初期には目立たない家族が実感しやすいのは病識の違いでしょう。血管性認知症では、できなくなっている自覚が比較的保たれやすい傾向があります。ただし脳の前方に病変が及ぶと自覚も薄れるため、あくまで傾向。できない日に指摘されると強く落ち込み、時に怒ります。「怒りっぽくなった」の中身が、自覚のある悔しさであることは少なくありません。体の症状を伴いやすい点も在宅では大きな違いです。認知面の相談で訪問を始めた家庭でも、実際は歩き方の不安定さや尿の近さが生活を圧迫していた、という場面をよく見ます。タイプごとの違いは認知症の種類と特徴を徹底解説!違いがわかる一覧表&訪問看護の活用方法も参考になります。「どちらか」ではなく混ざっていることも多いタイプ見え方の特徴家族が気をつけること血管性が主体波が大きく、体の症状を伴う再発予防と転倒予防を優先するアルツハイマー型が主体もの忘れが前面に出て波は小さい生活の手順を一定に保つ両方が混ざるもの忘れがあり日ごとの差も大きい波の記録と物忘れへの備えを両方脳卒中の直後急に落ちるが回復の余地もある数か月は焦らず経過を見る高齢になるほど、脳の変性と血管の傷みは同時に存在しやすくなります。「結局どっちなんですか」と聞かれますが、正確な答えは「どちらの要素も持っている」。血管の要素が混ざるぶん、血圧や血糖の管理という打つ手があるとも言えます。一方で見立ては複雑です。「まだらだから血管性」という当てはめは危険で、診断は画像検査と診察を踏まえて主治医が行うもの。家族に求められるのは、何ができて何ができないかを具体的に伝えることです。「もの忘れが増えました」より「いつも座る椅子に座らなくなりました」が役に立ちます。なぜ日によって「できる・できない」が変わるのか|まだらな症状の仕組み血管性認知症で日によって「できる・できない」が変わるのは、障害された脳の場所が限られ、その部分の働きが体調・時間帯・環境に左右されるためです。落差そのものが症状であって、努力不足ではありません。「まだら認知症」とは、能力が虫食いのように残る状態を指す通称「まだら」の意味具体的な現れ方家族が受ける印象能力のまだら計算はできるのに日付が答えられないふざけているように見える能力のまだら昔の話は詳しいのに朝食の内容が出ない都合よく忘れていると感じる時間のまだら午前は受け答えができ、午後は混乱する気分屋になったと感じる場面のまだら慣れた家事はできるが手続きは無理できるはずと期待してしまうまだら認知症は正式な診断名ではなく、こうした状態を指す通称です。血管性認知症でまだらな現れ方が目立つため、両者は近い意味で語られてきました。記憶・言葉・段取りは、それぞれ脳の別の場所と回路に支えられています。一部の回路が切れても、残りは動き続ける。能力の差は、その日の気分ではなく脳の構造の差です。 相模原市のご家庭で、洗濯物はたためるのに洗濯機のボタンが押せない例がありました。たたむ動作は体が覚えている手続き、ボタンの順番は段取りを組む力。使う力が違えば差が出ます。傷んだ場所が限られるから、残る力と落ちる力が分かれる傷みやすい場所現れやすい変化家庭での見え方脳の深い部分を通る回路動作や思考の速度が落ちる返事までの間が長くなる前方の脳とつながる回路意欲・自発性が落ちる声をかけないと一日中座っている感情の調整に関わる回路感情の抑えがきかなくなるすぐ泣く、すぐ怒る散らばった小さな病変全体の処理効率が落ちる疲れやすく、夕方に崩れる国立長寿医療研究センターは、感情失禁として「自分の感情がコントロールできずに、すぐに怒ったり泣いたりする」状態を説明しています(出典:国立長寿医療研究センター「意外と身近な『血管性認知症』」)。家族が「性格が変わった」と感じる変化の多くは、この回路の問題です。穏やかだった方が急に怒鳴るとき、人格が壊れたのではなく、ブレーキの回路が働きにくくなっています。怒りの中身より、止められないことのほうが本人にはつらい体験です。処理速度の低下は、一番気づきにくい変化かもしれません。返事が遅いだけで内容は正しいとき「聞こえていないのかな」と思われがちですが、実際は考えがまとまるまでに時間がかかっているだけ。待つ時間を伸ばすと会話が成立する家庭は珍しくありません。体調・時間帯・環境で波はさらに大きくなる波を大きくする要因家庭で見えるサイン先にできる手当て脱水口の中が乾く、尿の色が濃い起床時・食事時・入浴後にコップ一杯睡眠不足・夜間の不穏昼間うとうとして反応が鈍い日中に日光を浴び、昼寝は短く便秘食欲が落ちる、落ち着かない排便を記録し、続けば主治医に相談発熱・薬の変更急に会話が噛み合わなくなる体温を測り、お薬手帳を持参するこの表は、訪問先で「今日はいつもと違う」と感じたときに確かめる順番です。急に症状が強くなったように見えるとき、脳そのものより体の状態が原因のことが少なくありません。ただし心臓や腎臓の病気で水分量の指示が出ている方は、その指示が優先です。増やす前に主治医に確認してください。見落とされやすいのが脱水と便秘です。どちらも本人からの訴えが出にくく、家族も「年だから」で流します。夏場の町田市では、エアコンをつけずに過ごしていた家庭で夕方に会話が成立しなくなる場面に毎年出会います。水分と室温を整えると落ち着いたという声を多くいただきますが、戻り方には個人差があります。ただし急な変化を体調のせいと決めつけるのは危険です。水分を補っても翌日に戻らない、片側の手足が使いにくい、ろれつが回らない。あらたな脳血管障害を疑い、その日のうちに主治医か訪問看護へ連絡してください。血管性認知症でみられる主な症状と進行の特徴(階段状進行)血管性認知症の症状はもの忘れにとどまらず意欲の低下や歩きにくさにまで及び、経過は再発のたびに一段下がる階段状をとることがあります。ゆるやかに進む形と混ざることも珍しくありません。進行の形を知っていれば、下がった段でいったん立ち止まり、生活を組み直せます。初期症状はもの忘れより「意欲の低下」で気づかれることが多い初期に出やすいサイン家庭での見え方見過ごされやすい理由意欲・自発性の低下趣味をやめ、テレビの前から動かない年のせいと解釈される動作や返答の遅さ支度に時間がかかる高齢だから当然と流される夜間の不眠・不穏夜中に起き出して歩き回る加齢による眠りの浅さと混同される段取りの崩れ料理の手順が飛ぶ、通帳の管理が滞る一度きりなら偶然と見なされる血管性認知症では、初期症状として意欲低下や自発性低下、夜間不眠や不穏が現れると説明されています(出典:国立長寿医療研究センター「意外と身近な『血管性認知症』」)。もの忘れから始まると思い込んでいると、この時期を見逃します。町田市内の訪問では、「デイサービスを勧めても行きたがらない」という相談から関わりが始まります。ご家族はわがままと受け取りますが、実際は何かをしたい気持ちが湧きにくい状態でした。意欲の低下は高齢者のうつとも見分けがつきにくいもの。見分け方は高齢者のうつと認知症の見分け方|家族が早く気づくチェックに整理しました。早く気づけば再発予防に取り組める時間が長くなります。感情失禁や体の症状を伴いやすい症状の種類具体的な例家庭での対応の方向感情失禁些細な場面で急に泣く、怒鳴る内容を議論せず、場面を変えて待つ歩行の不安定さ歩幅が狭い、方向転換でふらつく動線の障害物を減らし手すりを足す排尿の変化頻尿、間に合わないトイレまでの距離と衣類を見直す飲み込みにくさ食事中にむせる、食べるのが遅い姿勢と一口量を調整し、続けば相談感情失禁や表情の乏しさは、血管性認知症で特徴的な症状とされます。脳の血管障害が原因である以上、手足の動かしにくさや排尿の変化を伴いやすいのも自然なこと。在宅で最も生活を左右するのは、実は歩行と排尿でしょう。夜間にトイレへ向かう途中で転び、骨折して入院。退院した頃には認知面も体力も一段落ちている。この流れを現場で繰り返し見てきました。だからこそ、認知面の相談で伺った家庭でも、最初に確認するのは手すりの位置です。感情失禁への対応では、内容に付き合わないことが助けになります。飲み物を出す、窓を開ける、場所を移る。状況を変えるほうが早く落ち着きます。進行は階段状|再発のたびに一段下がる経過の型イメージ家族が備えること階段状再発のたびに一段下がり、しばらく横ばい下がった段で生活を組み直すゆるやかな進行画像上の変化とともに少しずつ低下半年ごとに介護度と支援を見直す混ざった形階段状の低下と緩やかな低下が同居変化の時期を記録して主治医に伝える一時的な悪化感染や脱水で数日だけ強く出る体調を確認し、回復するかを見る血管性認知症では、脳梗塞の再発や生活習慣病による画像上の変化の悪化とともに認知障害も進行すると説明されています(出典:国立長寿医療研究センター「意外と身近な『血管性認知症』」)。大切なのは、横ばいの期間があるという点。下がった直後の数週間は混乱しますが、その後しばらくは安定します。この時期に手すりの追加、サービスの見直し、書類の整理を済ませておくと、次の段に備えられます。誤解しやすいのは、一時的な悪化を「一段下がった」と受け取ることです。感染や脱水による悪化は原因が治れば戻ります。現場での目安は、数日で元に戻るかどうか。ただし境目がはっきりしないこともあり、判断は主治医に委ねてください。家族の関わり方|症状の波を悪化させない観察・記録と声かけのポイント血管性認知症の家族の関わり方で最も効果が大きいのは、症状の波を記録して条件を見つけ、できない日には環境のほうを変えることです。できない日に頑張らせる努力は、多くの場合うまくいきません。道具も費用も要らず、今日から始められます。一日一行の記録が、波のパターンを見える化する記録する項目書き方の例何に使うか日付と天気8/26 晴れ 蒸し暑い気温との関係を見る起床・就寝6:30起床 22:00就寝 夜2回起きた睡眠と翌日の状態を比べるできたこと新聞を読んだ、洗濯物をたたんだできる条件を探すできなかったこと服を選べず立ち尽くした落差の大きさを把握する記録は一日一行で十分です。 立派なノートを用意すると続きません。訪問先では、冷蔵庫に貼ったカレンダーに書き込む家庭が一番長続きしています。書けない日が続いてもやめる必要はありません。○△×の記号だけでも十分です。それも難しい時期は、訪問時に一緒に振り返ってこちらで書き留めています。一行の記録が力を発揮するのは二つの場面です。一つは診察のとき。「最近調子が悪くて」より「今月は夜中に起きた日が12日あり、その翌日は必ず反応が鈍いです」のほうが主治医の判断材料になります。もう一つは家族自身のため。一か月見返すと、できていた日の多さに気づきます。本人に隠れて書くものではありません。「先生に伝えるために書いているよ」と伝えておくと、「昨日は眠れなかった」と本人から補ってくれることがあります。声かけは「できない日を責めない」「できる形に変える」よくある声かけ受け取られ方言い換えの例昨日はできたでしょう比べられていると感じる今日はここまで一緒にやりましょうなんでできないの自分でも分からず追い詰められるどこで止まっているか教えてください早くして焦って余計に手が止まる時間はあるのでゆっくりで大丈夫です私がやるから座ってて役割を奪われ意欲が下がるこの部分をお願いできますか言い換えの共通点は、比較と評価を外していることです。できなくなっている自覚が残る方は少なくなく、そこへ「昨日はできた」と言われると、自覚している分だけ強く刺さります。もう一つの共通点は、行動の入口を具体的に示している点。意欲が落ちた状態では「着替えて」は大きすぎる指示。「靴下から」と次の一手だけを示すと動けます。相模原市に伺っている家庭でも、朝の支度が毎日けんかの種になっていました。「早く着替えて」を「今日はこのシャツにしましょうか」に変え、服を2枚だけ出す。選ぶ手間が減ると支度が進みやすくなるという声をよくいただきます。暴言や暴力が出る場合は抱え込まず、認知症の暴言・暴力で家族が限界を感じたときの対応と相談先を参考にしてください。急に変わったときは様子を見ない|受診・連絡の目安場面目安連絡先顔のゆがみ、片側の脱力、ろれつが回らないが突然起きた様子を見ずに救急要請119番突然の激しい頭痛、意識がもうろうとする救急要請119番数日で急に会話が噛み合わなくなったその日のうちに相談主治医・訪問看護転倒して頭を打った直後に元気でも相談主治医・救急上の二つは、あらたな脳血管障害を疑う場面です。顔・腕・言葉の異常が突然現れたときの見分け方は脳梗塞の前兆を見逃すな!FASTで気づく初期症状と予防策を解説で扱っています。家族全員で共有しておいてください。迷ったときの原則はひとつ。いつもと違うと感じたら、様子を見るより連絡する。訪問看護を利用していれば電話で一緒に判断できます。夜間や休日の連絡先は、紙に書いて電話のそばに貼っておいてください。こうした判断を家族だけで背負うと長くは続きません。ピース訪問看護ステーションでは、症状の波の記録をご家族と一緒に組み立て、受診で何を伝えるかまで整理してお渡ししています。再発予防|血圧・生活習慣の管理と訪問看護でできること血管性認知症の進行対策の中心は、あらたな脳血管障害を起こさないことです。血圧と生活習慣の管理は、そのまま進行予防につながります。脳卒中の治療と予防の指針は、日本脳卒中学会が「脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕」として公開しています(出典:日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン」)。家庭血圧は「測る・書く・見せる」で完成する手順やることつまずきやすい点時間を決める朝は起床後トイレを済ませてから、夜は就寝前気になったときだけ測ると比較できない姿勢を整える椅子に座り、腕を心臓の高さに置く直前まで動いていると高く出るそのまま書く良い値も高い値も選ばずに全部残す高い日を書かずに飛ばしてしまう目標値を確認するこの人の目標値を主治医に聞いておく一般論の数値を家族が当てはめる血圧の目標値は、年齢や合併症、脳梗塞の既往で一人ひとり異なります。数値を当てはめて一喜一憂するより、主治医に「この人はいくつを目指しますか」と聞くほうが確実です。高い値を書かずに飛ばす家族はかなりいます。上下の幅が見えることこそ大切です。主治医から毎日測るよう言われている場合は、その指示に従ってください。そのうえで毎日が続かないときの現場の目安として、週3日でも同じ条件で測れていれば薬の調整の手がかりになります。服薬が続いているかも確認してください。飲み忘れがある状態で血圧だけ記録しても正しく判断できません。在宅での血圧と服薬の管理は脳梗塞の再発予防|在宅でできる血圧・服薬管理と家族の対応にまとめています。生活習慣は「全部」ではなく「続く一つ」から項目在宅での現実的な形つまずきやすい点減塩汁物を1日1杯までにし、卓上の調味料を下げる急に薄味にして続かない水分起床時・食事時・入浴後にコップ一杯を決める本人任せでは進まない運動家の中で立って行う家事を1つ担当してもらう散歩を目標にして中止になる通院次回の予約を家族が把握し、送迎を組み込む本人任せで受診が途切れる減塩の目標量は、厚生労働省が「日本人の食事摂取基準」として示しています。最新版は2025年版(令和7〜11年度)です(出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」)。何グラムを目指すかは腎機能や心臓の状態で変わるため、主治医や管理栄養士の指示に合わせてください。水分も同じです。心臓や腎臓の病気で水分量の指示が出ている方は、その指示が優先です。増やしてよいかを主治医に確認してから始めてください。在宅で失敗しやすいのは、4項目を同時に始めようとすること。介護をしている家族に、それを回す余力はありません。訪問先では一つだけ選んでもらいます。運動を「散歩」に決めると、天候と転倒リスクで簡単に止まります。歩きにくさがある方には、立って行う家事のほうが続きます。洗濯物をたたむ、食器を拭く、玄関を掃く。訪問看護でできること|町田・相模原での実際支援内容具体的に行うこと家族にとっての意味状態の観察血圧・体重・むくみ・歩き方を毎回確認早期発見を一人で背負わずに済む服薬の管理残薬を数え、飲みにくさの原因を探る飲み忘れと重複を防げる環境の調整手すりの位置、動線、照明、トイレの距離転倒による一段の低下を減らせる多職種との連携主治医・ケアマネジャー・薬局と情報共有同じ説明を何度もしなくて済む訪問看護は、医師の指示に基づいて自宅に伺い、療養上の世話や診療の補助を行うサービスです。介護保険または医療保険で利用でき、ケアマネジャーと相談して組み立てます。町田市・相模原市で訪問看護を提供する中で実感するのは、血管性認知症の家庭ほど体の観察が効くということ。認知面の相談で入っても、実際は血圧の乱高下や飲み忘れ、脱水が症状の波を大きくしていることが多くあります。相談先が分からない場合は、地域包括支援センターが入口です。国も認知症施策として基礎知識の普及や行方不明時の捜索支援を進めています(出典:厚生労働省「認知症施策」)。町田市で使える支援は町田市で認知症の家族を支えるには?訪問看護と見守り支援を徹底ガイドにまとめました。よくある質問(FAQ)Q1. まだら認知症とは何ですか?血管性認知症とどう違いますか?A. まだら認知症は正式な診断名ではなく、能力が虫食いのように残り日によって差が出る状態を指す通称です。血管性認知症でこの現れ方が目立つため近い意味で使われますが、同義ではありません。診断名は主治医が画像検査と診察をもとに判断します。Q2. なぜ血管性認知症は日によって症状が変わるのですか?A. 障害された脳の場所が一部に限られ、残った部分の働きがその日の体調や環境に影響されるためです。脱水、睡眠不足、便秘、発熱、薬の変更が重なると、同じ人でも受け答えの質が変わります。体調を整えれば「できる日」は増やせます。Q3. 血管性認知症とアルツハイマー型認知症の違いは何ですか?A. 原因が脳の血管障害、意欲の低下から気づかれやすい、日ごとのばらつきが大きい、階段状に下がる経過をとることがある、麻痺や歩きにくさを伴いやすい。これらが違いです。ただし高齢者では両方の要素が混ざることが多く、一方に割り切れません。Q4. 血管性認知症の初期症状にはどんなものがありますか?A. 意欲低下や自発性低下、夜間不眠や不穏が初期に現れると説明されています(出典:国立長寿医療研究センター「意外と身近な『血管性認知症』」)。趣味をやめた、一日中座っている、些細なことで泣くようになった。こうした変化は年齢のせいと片づけずに受診を検討してください。Q5. 血管性認知症は治療で進行を止められますか?A. 現時点で進行を完全に止める治療はありません。ただし進行は脳梗塞の再発や生活習慣病の悪化と結びつくため、血圧・血糖の管理と脳卒中の予防が、進行を遅らせる取り組みとして重視されています。Q6. 血管性認知症になったとき家族はどう対応すればよいですか?A. まず症状の波の仕組みを理解し、次に一日一行の記録をつけ、声かけと環境を変える順で進めてください。選択肢を減らす、次の一手だけを示す、手伝う範囲を決めておく工夫が効きます。「昨日はできたのに」という比較は避けます。Q7. 血管性認知症の再発を防ぐにはどうすればいいですか?A. 血圧を決まった時間に測って記録し、受診のたびに主治医へ見せることが土台です。あわせて服薬を切らさない、水分を取る、通院を途切れさせない、禁煙を主治医と相談する、の順で整えてください。まず一つ選び、続いたら足す形が現実的です。Q8. 血管性認知症になるとどのくらい生きられますか?A. 一概には言えません。原因となった脳血管障害の大きさ、再発の有無、心臓や腎臓など他の病気の状態、転倒や肺炎の有無で経過は変わります。年数を予測するより、再発と転倒と誤嚥を減らすことに力を向けるほうが、ご本人の生活にも家族の負担にも響きます。見通しは主治医に尋ねてください。まとめ血管性認知症で症状に波があるのは、脳の傷んだ場所が一部に限られ、残った部分の働きが体調や環境で変わるためです。差は本人の気分ではなく脳の構造の差だと分かると、家族の声かけは自然に変わります。まず一日一行の記録で波の条件を探し、できない日は選択肢を減らして次の一手だけを示す。進行は再発のたびに階段状に下がることがあるため、血圧の管理と脳卒中の予防がそのまま進行を遅らせる取り組みになります。顔のゆがみや片側の脱力が突然起きたときは様子を見ずに救急要請してください。ピース訪問看護ステーションにご相談ください「できたりできなかったりで、どこまで手伝えばいいのか分からない」「怒鳴られるのが怖くて声をかけられない」。血管性認知症のあるご家庭から、こうしたご相談を日常的にお受けしています。まだらな症状への対応は、その家庭に合う手伝い方を一緒に見つけることで形になります。こんな方はぜひご相談ください:家族の「できる・できない」の差が大きく、対応に迷っている方脳梗塞や脳出血の後、血圧管理と服薬管理を続ける自信がない方転倒や夜間の不穏が増え、在宅での生活に不安を感じているご家族ピース訪問看護ステーションができること:血圧・服薬・水分・排便など、症状の波に関わる体の状態を訪問のたびに確認症状の記録の組み立てと、受診で伝える内容の整理手すりや動線の見直しによる転倒予防と、主治医・ケアマネジャーとの連携東京都町田市・多摩市、神奈川県相模原市・大和市・川崎市麻生区を中心に対応しています。まずはお気軽にお問い合わせください。関連記事脳梗塞の再発予防|在宅でできる血圧・服薬管理と家族の対応認知症の種類と特徴を徹底解説!違いがわかる一覧表&訪問看護の活用方法脳梗塞の原因とは?予防と再発防止における訪問看護の役割町田市で認知症の家族を支えるには?訪問看護と見守り支援を徹底ガイド脳梗塞の前兆を見逃すな!FASTで気づく初期症状と予防策を解説参考文献一覧出典:国立長寿医療研究センター「意外と身近な『血管性認知症』」(病院レター第59号)https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/letter/059.html出典:日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン2017」(2017年)https://www.neurology-jp.org/guidelinem/nintisyo_2017.html出典:日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン」(脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕)https://www.jsts.gr.jp/stroke_guidelines/index.html出典:厚生労働省「認知症施策」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/index.html出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」(2025年版)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理、地域医療連携、在宅看取り支援に積極的に取り組んでいる。island-piece.jp 株式会社isLand|訪問看護・居宅介護支援・訪問介護|町田市