高齢者は年齢とともに体内の水分量が減少し、脱水症のリスクが高まります。しかし、「どれくらい水を飲めばよいのか」「食事からの水分で足りるのか」など、具体的な水分摂取量についてはあまり知られていません。この記事では、高齢者に必要な水分摂取量の目安、リスクと対策、実践的な工夫まで、わかりやすく解説します。1. なぜ高齢者にとって水分摂取が重要なのか高齢者は加齢に伴って「のどの渇き」を感じにくくなるため、自発的に水を飲む機会が減ってしまいます。また、腎機能の低下により体内の水分調整能力も弱まります。これにより、気づかないうちに脱水症状になることがあり、夏場だけでなく冬場も注意が必要です。高齢者が脱水しやすい理由原因内容渇きの感覚低下のどが渇いていなくても脱水状態になっていることがある腎機能の低下老廃物の排出と水分バランスの調整能力が下がる薬の影響利尿剤などの服用により水分が失われやすい2. 高齢者に必要な1日の水分摂取量とは?一般的に高齢者の1日の水分摂取目安は体重1kgあたり30〜40mlとされています。例えば体重50kgの方であれば、1500〜2000mlが必要です。ただし、これは飲み水だけでなく食事に含まれる水分も含まれます。体重別の目安表(1kgあたり30〜40ml)体重必要な水分量(目安)40kg約1200〜1600ml50kg約1500〜2000ml60kg約1800〜2400ml食事から約600〜1000mlの水分が摂取できるとされるため、飲み水としては500〜1500mlを目安にするとよいでしょう。また、寝たきりの高齢者の場合は、1kgあたり20〜25ml程度が適量とされています。例えば体重40kgであれば、800〜1000ml程度が目安となります。3. 季節別の水分摂取の注意点夏場は発汗による水分喪失が増えますが、冬場も湿度の低下により体内の水分が失われがちです。また、暖房によって空気が乾燥することで知らず知らずのうちに脱水状態になることもあります。季節ごとの脱水リスクと対策季節リスク要因対策夏発汗の増加冷たい飲料や水分の多い食事をこまめに摂る冬乾燥・暖房常温の飲料やスープなどで水分補給4. 高齢者の水分摂取を妨げる要因高齢者が水分を十分に摂取できない理由は身体的・心理的なものが複合しています。たとえば**「トイレが近くなるから控える」という声**もよく聞かれます。よくある妨げと対策妨げ原因対策トイレの心配夜間頻尿など日中にこまめに水分を摂り、夜間は控えめに飲み物の好み味が単調で飽きる麦茶・レモン水・スポーツドリンクなどを使う飲み込みの不安嚥下機能の低下ゼリー飲料やとろみ剤を活用5. 水分補給のタイミングと工夫高齢者の水分摂取には、一度に大量ではなく、こまめに摂ることが大切です。起床時・食事中・入浴前後・就寝前など、生活リズムに合わせて習慣化しましょう。おすすめのタイミング起床後:体内が軽い脱水状態になっているため食事中:消化吸収を助ける入浴前後:発汗による脱水を防ぐ就寝前:夜間の水分不足を防止6. 食事から摂れる水分も活用しよう高齢者は飲み水だけでなく、食事に含まれる水分からも多くを補えます。特に煮物・味噌汁・果物などは水分含有量が高いため、積極的に取り入れましょう。水分の多い食材例食品水分量(100gあたり)きゅうり約95%スイカ約92%りんご約85%豆腐約87%味噌汁約90%(スープ部分)7. 現場でよくある工夫と実例紹介訪問看護や介護の現場では、水分補給の習慣化にさまざまな工夫が行われています。たとえば、「水分チェック表」で摂取量を可視化したり、家族が一緒に飲む時間を決めて取り組む例もあります。よく使われる工夫水分摂取チェックリストを冷蔵庫に貼る飲みやすいカップを使用一緒に住む家族と「水分タイム」を共有まとめ高齢者にとっての適切な水分摂取は、健康維持の鍵です。体重や季節、生活習慣に応じて必要な水分量を意識し、飲みやすさやタイミングの工夫を取り入れることで、脱水や健康リスクを予防できます。ぜひ今日から、ご自身やご家族の水分摂取を見直してみましょう。関連記事高齢者の熱中症対策完全ガイド、予防・症状・室内での注意点まで夏場の訪問リハビリはここに注意!快適に続けるための実践ポイント高齢者の足のむくみは病気のサイン?訪問看護で行う観察・ケア・予防と家族支援ピース訪問看護ステーションのご案内自宅での療養や介護に、不安やお悩みはありませんか?ピース訪問看護ステーションでは、東京都町田市を中心に、医療依存度の高い方や在宅でのリハビリを希望される方への支援を幅広く行っています。24時間緊急対応が可能な体制を整えており、看護師・リハビリ職(PT・OT・ST)・ケアマネジャーが在籍。医療と介護の両面から、ご本人とご家族を多職種で支え、安心して在宅生活を続けられるようサポートしています。退院支援を担う医療機関の皆さま、地域のケアマネジャーの皆さま、訪問看護をご検討中のご本人・ご家族も、どうぞお気軽にご相談ください。新規のご依頼・ご質問は、お電話またはお問い合わせフォームより承っております。📞 鶴川本部 直通TEL:042-860-4404(平日9:00〜18:00)▶ お問い合わせフォームはこちら▶ 訪問看護・訪問リハビリのサービス詳細はこちら本記事の執筆者・監修者プロフィール【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理に長け、地域医療連携や在宅看取り支援にも積極的に取り組んでいる。