9月の終わりから10月にかけて、訪問先で「今年は血圧が高い日が多いんです」と血圧手帳を差し出されることが増えます。夏のあいだは落ち着いていた数字が、朝だけ150mmHgを超えるようになった。ご本人もご家族も、薬が効かなくなったのではないかと心配して相談されます。秋に血圧が上がるのは、薬が効かなくなったからとは限りません。気温が下がると血管が縮んで血圧は上がりやすくなり、その振れ幅は年齢とともに大きくなります。最初にやることは薬を疑うことではなく、家庭で正しく測った数字をそろえて主治医に見せることです。この記事では、秋に血圧が上がる仕組みから測り方、数値の見方、受診と救急の目安、秋冬の生活の整え方までを、町田市・相模原市で在宅の方に伺っている訪問看護の視点で整理します。この記事でわかること秋の寒暖差で高齢者の血圧が上がる仕組みと、気をつける時間帯家庭血圧の正しい測り方(測る時刻・姿勢・回数)家庭血圧の正常値と高血圧の基準を、数字の表で確かめる方法受診を考える数値の目安と、迷わず救急車を呼ぶべき症状血圧手帳の書き方と、主治医・訪問看護師への伝え方秋の寒暖差で高齢者の血圧が上がるのはなぜか秋の寒暖差で高齢者の血圧が上がるのは、気温の低下で血管が縮んで血圧が押し上げられるうえ、加齢によって血圧を一定に保つ調節が追いつかなくなるためです。夏は汗をかいて水分が減り血管も広がるため、血圧は1年でもっとも低くなりやすい時期です。気温が下がる秋は、その値が戻る季節でもあります。夏の数字を基準にしていると、秋の値を見て急に悪くなったと受け取ってしまうのです。寒さで血管が縮むと、血圧はその場で上がる体は寒さを感じると熱を逃がさないために手足の血管を細くし、同じ量の血液が細い管を通るぶん血圧が上がります。国立循環器病研究センターは、暖かいところから急に寒いところへ出ると血管が収縮して血圧が上がること、血圧は冬のほうが夏より高くなることを示しています(出典:国立循環器病研究センター「高血圧」)。場面体に起きていること血圧への影響暖かい布団から出る皮膚が冷え、手足の血管が縮む起き抜けの数分で上がる冷えたトイレ・脱衣所に入る急な冷えで血管が一気に縮む短時間で大きく振れるごみ出しで外へ出る外気との差で全身の血管が縮む屋内より高い値になる血圧が上がるのは、寒い場所にいるあいだだけではありません。暖かい部屋と冷たい廊下を行き来する移動そのものが血圧を振らせます。対策は外出を控えることではなく、家の中の温度差を小さくすることです。厚生労働省の資料でも、運動不足や睡眠不足、過重労働、過剰飲酒とならんで寒冷とストレスが要因に並びます(出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」)。季節の変わり目の寝不足や疲れが重なっていないかも合わせて見ます。秋は「1日の中の寒暖差」が血圧を揺さぶる冬との違いは、1日の中の気温差が大きいことです。日中は半袖で過ごせても、明け方と日没後は10度以上下がる日があります。冬なら服装も暖房も一定にできますが、秋は同じ日の中で条件が変わります。時間帯秋に起きやすいこと家でできる工夫明け方から午前8時室温が下がり切り、1日で最も高い起床30分前に暖房が入る設定日中日差しで室温が上がり、値が戻る上着で調節できる服装にする入浴前後脱衣所と湯船の差が最大になる脱衣所と浴室を先に暖める秋の血圧は、1日のどの時間に高いのかを分けて見ます。朝だけか、夜だけか、一日中か。ここで、薬を飲む時間を変えるのか量を変えるのかという主治医の判断が分かれます。在宅では、朝の高値の背景に住まいの条件が絡みます。北向きの寝室、隙間風の入る廊下、暖房のないトイレ。数字だけで薬を増やす前に、朝その家で何が起きているかを見に行けるのが訪問看護です。高齢者ほど血圧が振れやすい理由と、10月からという時期高齢になると血管が硬くなり、血圧の変化を打ち消す働きも鈍ります。水分不足、降圧薬や利尿薬の服用、持病による自律神経(立ち上がったときなどに血圧を素早く戻す体の仕組み)の働きの低下も重なりやすく、同じ寒暖差でも振れ幅が大きくなります。要因起きること家でできる備え動脈硬化で血管が硬い上の値が上がりやすい上の値を中心に記録する血圧を戻す仕組みの働きが鈍る立ち上がりで下がりすぎる立ちくらみの有無も書く降圧薬・利尿薬の服用季節で効き方の見え方が変わる飲んだ時刻を記録するこの時期の注意は体感だけの話ではありません。国立循環器病研究センターは、2005年1月から2008年12月までの4年間の消防庁のウツタイン統計から約19万6千件の心臓由来の心停止を解析し、10月から4月ごろにかけて心筋梗塞の最重症型である心停止の発生が多いことを報告しています(出典:国立循環器病研究センター「冬場は心筋梗塞による心停止が増加」)。10月から、という点が秋の話につながります。真冬に備えるのでは遅い。測る習慣と寒さ対策は、暖かい日が残る9月から10月に始めてください。家庭血圧の正しい測り方|測る時刻・姿勢・回数家庭血圧は朝と夜の1日2回、いすに座って1分から2分安静にしてから測り、毎日同じ条件で続けることが基本です。血圧は動いたり話したりするだけで上下します。測る時刻や姿勢が日によって違うと、上がった原因が季節なのか測り方なのか分かりません。家庭血圧の値打ちは、同じ条件で並べた数字の流れにあります。いつ測るか|朝と夜の条件をそろえる測る時刻は、朝は起床後1時間以内、夜は就寝前が基本です。国立循環器病研究センターは、朝は起床後1時間以内で食事と服薬の前に、夜は就寝前に測ると示しています。日本脳卒中学会が監修する市民向け資料でも、少なくとも朝と夜の2回、安静にしてから自宅で測ることが勧められています(出典:日本脳卒中学会「脳卒中の予防・発症時の対応」)。いつ具体的な条件この順番にする理由朝起床後1時間以内起き抜けの高さを捉えるため朝トイレを済ませたあと尿意があると高く出るため朝朝食と薬の前薬が効く前の値を見るため夜就寝の直前1日の終わりの値を見るため朝の順番は「起きる、トイレ、測る、食べる、薬」と覚えると崩れません。訪問先では、この順番を紙に書いて血圧計のそばに貼るご家庭が多いです。薬を飲んでから測ると下がった後の数字になり、効き目を判断できません。夜は入浴やお酒のあとでかまいませんが、湯上がり直後は下がっているため少し落ち着いてから測ります。どう測るか|姿勢・カフの位置・してはいけないこと姿勢は座位が基本で、座った後に1分から2分安静にしてから測ります。測る前に5分から10分ほど安静にして条件を一定にすることも挙げられています(出典:国立循環器病研究センター「高血圧」)。項目正しいやり方やりがちな失敗姿勢いすに深く座り、足は組まないベッドの端に浅く座る腕腕帯の高さを心臓に合わせる腕を垂らす、肘だけ乗せる部屋静かで過ごしやすい室温冷えた廊下や脱衣所で測る直前たばこ・飲酒・カフェインを避けるコーヒーを飲んでから測る多いのは腕の位置と服の問題です。腕が心臓より低いと高めに、高いと低めに出ます。テーブルに腕を置き、必要ならタオルを重ねて高さを合わせ、厚手の服の上から巻かないでください。手首式の血圧計は高さを合わせにくく値がばらつきます。主治医と共有する目的なら上腕に巻くタイプが確実です。秋以降は測る部屋の寒さも数字を押し上げるため、場所を決めて暖めるところまでが測り方です。何回・何日測るか|1回の数字ではなく平均で見る血圧はその日の体調や気温で動きます。1回の値では判断しません。日本高血圧学会は、1回の機会に原則2回測ってその平均を取ること、週に5日以上測った結果を主治医に見せることを示しています(出典:日本高血圧学会「家庭で血圧を測定しましょう」)。見方やり方何が分かるか1回の機会続けて2回測り、平均を取るその場の値のばらつき1日朝と夜の2つを並べる朝型か夜型かの傾向1週間5日以上を朝と夜で平均する季節や生活の影響受診前直近2週間分をまとめる主治医が使える材料訪問の現場でよくあるのが、1回目が高く出て2回目で落ち着くケースです。平均を取るのが原則ですが、差が大きい日は両方を書き残してください。もうひとつ、高い日だけを書かないこと。低かった日も、測り忘れた日も残っているほうが、季節の変化か一時的なものかを見分けやすくなります。家庭血圧の数値の見方|正常値と高血圧の基準(日本高血圧学会の分類)家庭血圧は135/85mmHg以上で高血圧と判定され、診察室で測る140/90mmHgより低い基準が使われます。家庭と診察室で基準が違うのは、家庭のほうが緊張が少なく低めに出るためです。同じ人でも、診察室だけ高く出る白衣高血圧と、診察室では正常なのに家庭や早朝だけ高い仮面高血圧があります。日本高血圧学会は、こうした見落としを防げることを家庭血圧の意義に挙げています(出典:日本高血圧学会「家庭で血圧を測定しましょう」)。診療の土台になるのは家庭の数字です。家庭血圧と診察室血圧の分類を数字で確かめる成人の血圧値の分類は、厚生労働省の解説に表として示されています。家庭血圧では上が115mmHg未満かつ下が75mmHg未満で正常血圧、135から144または85から89でI度高血圧という並びです(出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」)。分類家庭血圧(上/下)診察室血圧(上/下)正常血圧115未満 かつ 75未満120未満 かつ 80未満正常高値血圧115から124 かつ 75未満120から129 かつ 80未満高値血圧125から134 または 75から84130から139 または 80から89I度高血圧135から144 または 85から89140から159 または 90から99II度高血圧145から159 または 90から99160から179 または 100から109III度高血圧160以上 または 100以上180以上 または 110以上単位はいずれもmmHgです。つまずきやすいのが「かつ」と「または」の違いで、正常血圧は上と下の両方が基準を下回る必要があり、高血圧はどちらか一方が超えれば当てはまります。上が130台でも下が90を超えれば高血圧です。高血圧を放置したときに増える病気も同じ資料にあります。心臓では狭心症や心筋梗塞、心不全、脳では脳梗塞や脳出血などの脳血管障害と認知症になりやすくなる、という記載です。血圧を見る目的は、脳と心臓と腎臓を守ることにあります。「正常値」を目指すことと、下げすぎないこと日本高血圧学会は国民向けの要点として、上が130mmHg未満・下が80mmHg未満で脳卒中や心臓病が減ること、上の血圧を10mmHg下げると脳卒中・心臓病が約2割減ること、1年間に17万人が高血圧が原因となる病気で亡くなっていることを示しています(出典:日本高血圧学会「高血圧の10のファクト」)。見方考え方家での扱い高血圧の判定家庭血圧135/85mmHg以上超える日が続くかを見る個人の目標値主治医が持病と年齢で決める手帳の表紙に書く下がりすぎふらつき・立ちくらみ・転倒数字と症状を並べて書く気をつけたいのが下げすぎです。高齢の方では下がりすぎが立ちくらみや転倒につながります。数字だけを追って自己判断で薬を増減すると、かえって危ない。受診時に「私の目標はいくつですか」と聞いてください。なお日本高血圧学会は2025年8月29日に『高血圧管理・治療ガイドライン2025』を発行しました。名称が「治療」から「管理・治療」に変わり、予防と生活改善を含む血圧の管理全体を扱う構成になっています(出典:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」)。ご自身に当てはまる目標値は主治医に確認してください。秋に相談が増えるのは、日中は落ち着いていて朝だけ高いパターンです。1日だけの高値で慌てず、同じ条件で測った値が続けて高いかどうかで判断します。この数値が出たら受診を|血圧が高いときの受診・救急の目安家庭血圧の平均が135/85mmHg以上の日が続くときは早めの受診を、強い頭痛や体の片側のまひなどの症状があるときは数値に関係なく救急要請を考えます。血圧の相談が難しいのは、何mmHgで病院に行くべきかをひとつの数字で答えられないことです。もともとの値、持病、薬、症状で判断が変わります。それでも、家庭での動き方は先に決めておけます。受診を考える数値の目安数値は単独ではなく、続いているかどうかと合わせて見ます。以下は在宅の現場で使っている整理の仕方で、学会が定めた一律の基準ではありません。個別の指示がある方はそちらを優先してください。家庭血圧の状態症状動き方の目安135/85mmHg以上の日が1週間続くなし次の定期受診を待たず、今週中に電話で相談する160/100mmHg以上(III度の範囲)が続くなしその日か翌日に主治医へ電話し、受診を前倒しする数値が高く、頭痛や息苦しさがあるありその場で主治医へ連絡し、つながらなければ♯7119へ普段より明らかに低く、ふらつくあり横になって転倒を防ぎ、その場で主治医へ連絡する大事なのは測った値を持って行くことです。電話でも「今朝が158の92でした」ではなく、「この1週間、朝は150台から160台、夜は130台です」と流れで伝えると、主治医は判断しやすくなります。血圧が高いこと自体に自覚症状はほとんど出ません。頭痛や肩こりがないから大丈夫、という判断はできない。だからこそ記録で見ていきます。迷わず救急車を呼ぶ症状数値より優先して判断するのが、脳卒中を疑う症状です。日本脳卒中学会が監修する資料は、合い言葉としてACT FASTを示し、顔・手・言葉の異常が突然現れたら脳卒中を疑い、症状が出た時刻を確認してすぐ救急車を呼ぶことを勧めています(出典:日本脳卒中学会「脳卒中の予防・発症時の対応」)。突然起きた症状家族が確認できること経験したことのない激しい頭痛今までの頭痛と違うと本人が言う片方の手足・顔半分のまひやしびれ笑うと片側の口角が下がる片方の目が見えない、物が二つに見える見え方の変化を訴えるろれつが回らない、言葉が出ない短い文を言ってもらうと分かる力はあるのに立てない、歩けない支えないと座っていられないいずれも共通するのは「突然」であることです。同じ資料では、発症した時刻、発見した時刻、最後に普段どおりだった時刻の3つを確認することも挙げられています。治療は早いほど効果があり、救急隊が真っ先に聞くのがこの時刻です。血圧計を出して測ってから救急車を呼ぶ、という順番にはしないでください。症状があれば先に119番へ、血圧は救急隊が来てから伝えれば足ります。迷ったときの相談先を先に決めておく救急車を呼ぶほどか分からない場面が一番困ります。相談先を紙に書いて電話のそばに貼ると、迷う時間が減ります。相談先使う場面準備しておくことかかりつけ医数値が続けて高い、薬の相談直近2週間の血圧手帳救急安心センター受診するか迷うとき対象地域かを事前に確認119番上の表の症状があるとき発症時刻と普段の薬救急安心センター事業(♯7119)に電話すると、医師・看護師・救急救命士から助言を受けられます。応急手当の方法や、受診できる医療機関を案内してもらえる窓口です。全国41地域で実施されており、利用できる時間や対象は地域ごとに違います(出典:総務省消防庁「救急安心センター事業(♯7119)ってナニ?」)。お住まいの地域が対象かを、困る前に一度調べておいてください。血圧の数字が気になり始めたとき、ご家族だけで判断しきれないときは、ピース訪問看護ステーションにご相談ください。測り方の確認から主治医への伝え方まで、ご自宅で一緒に組み立てられます。血圧の急上昇を防ぐ秋冬の生活習慣秋冬の血圧対策の柱は、家の中の温度差を減らすこと、入浴の手順を変えること、減塩と水分を切らさないことの3つです。薬を飲んでいても、生活の条件が血圧を押し上げていれば数字は下がりません。逆に、住まいと入浴の手順を変えるだけで朝の値が落ち着く方もいます。家の中の温度差を減らす最初に効くのが室温です。暖かい部屋と寒い場所の行き来を減らすほど、血圧の振れ幅は小さくなります。国立循環器病研究センターも、冬は室内と外気との差をなるべく少なくするよう挙げます(出典:国立循環器病研究センター「高血圧」)。場所危ない場面具体的な対策寝室起き抜けに布団から出る起床30分前に暖房が入る設定廊下・トイレ夜間や早朝の移動小型の暖房を置き、便座を暖める脱衣所服を脱いだ瞬間入浴前に暖房を入れておく家全体を暖めるのが難しければ、朝に必ず通る場所だけでも先に暖めます。寝室からトイレ、トイレから居間という動線を書き出し、小さな暖房を置くだけでも違います。町田市や相模原市の戸建ては廊下とトイレが北側の間取りが多く、訪問時に確認しています。布団から出る前にひと呼吸置くことも役に立ちます。目が覚めてすぐ起き上がらず、布団の中で足首を動かし、上着を羽織ってから立つ。この数十秒で朝の急な上昇は和らぎます。入浴の手順を変える冬季の入浴中の事故は毎年注意が呼びかけられています。消費者庁は、湯温を41度以下、湯につかる時間を10分までにすること、入浴前に脱衣所や浴室を暖めることを挙げています。あわせて、浴槽から急に立ち上がらないこと、食後やアルコールを飲んだ直後の入浴を控えること、入浴前に同居のご家族へ声をかけることも示されています(出典:消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください」)。手順やること理由入る前家族に声をかける異変に早く気づいてもらう入る前脱衣所と浴室を暖める服を脱いだ瞬間の上昇を防ぐ入る前シャワーで浴室に湯気を立てる暖房がなくても差を縮められる湯船41度以下、10分まで長湯とのぼせを避ける出るとき手すりを持ち、ゆっくり立つ立ちくらみと転倒を防ぐ一人暮らしの方には、入る前に家族や近所の方へ連絡を1本入れる習慣を勧めています。訪問看護で伺う方には入浴の時間帯を共有していただき、その時間を避けて連絡します。食後すぐとお酒のあとは血圧が下がりやすい時間帯です。夕食と入浴の間を30分から1時間空けるだけでも、湯船での意識の遠のきを避けられます。食事・水分・運動・服薬を秋仕様にする減塩は季節を問わず血圧対策の土台です。日本高血圧学会は、日本人の食塩摂取量が1日10gで、高血圧の人は1日6g未満が勧められることを示しています(出典:日本高血圧学会「高血圧の10のファクト」)。項目秋冬に起きやすいこと具体的な工夫食事鍋物・汁物で塩分が上がる汁を残し、だしと酸味で味を作る水分のどが渇かず摂取量が落ちる起床時・入浴前後・就寝前に1杯運動寒さで外出が減る日中の暖かい時間に体を動かす服薬飲み忘れ・自己判断の中断服薬時刻を血圧手帳に書く秋に見落とされやすいのが水分です。夏ほど汗をかかないため飲む量が減り、血液が濃くなります。訪問先では朝の1杯を歯みがきの後に固定し、コップを見える場所に置くところから始めます。運動は寒い時間帯の屋外を避けます。早朝の散歩は血圧が高い時間と重なるため、日が高くなってからに変えるだけでも負担が減ります。薬は、数字が下がったからと自己判断でやめないでください。飲み忘れが増えているなら、回数をまとめられないか主治医と薬剤師に相談してください。訪問看護師がすすめる家庭血圧の記録と医療者への共有方法血圧手帳は数字を並べるだけでなく、測った時刻・体調・服薬の有無を一緒に残すと、主治医が薬を調整するための材料になります。日本脳卒中学会が監修する資料でも、血圧手帳に数字を記録し、医師に確認してもらうことが勧められています。記録は自分のためだけでなく、医療者に判断してもらう資料です。血圧手帳に何を書くか数字だけの手帳は情報が足りません。同じ150でも、寒い部屋で測ったのか薬を飲んだ後なのかで意味が変わります。書く項目具体例医療者が読み取れること測った日時10月8日 6時40分朝型か夜型かの傾向上と下の値158/92分類のどこに当たるか脈拍72(表示される機種のみ)脈の乱れや体調の手がかり服薬朝の薬は測定後に服用薬の前後どちらの値か体調・症状眠れなかった、ふらつき高値の背景と緊急度脈拍は、家庭用の血圧計なら血圧と同時に表示される機種がほとんどです。買い替える必要はありません。項目を増やすと続かないという声もよく聞きます。その場合は日時と上下の値だけを毎日書き、気になった日にひと言メモを足してください。血圧計に記録機能があっても、手帳に書き写す作業には意味があります。書きながら「今週は高い日が多いな」と自分で気づけるからです。書くのがご本人しかいない一人暮らしの方や、書き写しが負担な方は、訪問のたびに看護師が一緒に手帳を開き、平均を出すところまで受け持ちます。受診の場でどう伝えるか診察時間は限られています。何を先に言うかを決めておけば、短い時間でも相談ができます。伝える順番は、1週間の平均、高かった日の状況、いま困っていること、の3つです。順番言い方の例目的1朝は150台、夜は130台が1週間続いています傾向を先に共有する2高い日は寒い朝で、眠れなかった日でした背景を添える3立ち上がるとふらつく日が3日ありました下がりすぎの確認4薬の飲み忘れが週2回あります現実的な調整につなげる5私の目標の血圧はいくつですか家での判断基準を得る手帳をそのまま渡すだけでは、医師が読み取る時間が要ります。付箋を1枚貼り、今日いちばん聞きたいことを書くと話が早くなります。町田市で伺うご家庭では、受診の前日に訪問看護師が手帳を一緒に見て、平均を出して付箋に書き込むところまでを訪問時間の中で行っています。診察室で説明しきれない部分を記録が伝えてくれます。訪問看護の使い方|測る習慣を家の中に定着させる訪問看護は血圧を測るだけの仕事ではなく、その家で数字がどう動くのかを生活ごと見に行けるのが在宅の強みです。場面訪問看護ができること測り方が定まらない測る場所・時刻・姿勢を家の中で決める数字の意味が分からない手帳を一緒に読み、受診の線を共有する住まいが寒い動線ごとに温度差を減らす方法を提案相模原市に伺っているご家庭で、秋の初めから朝の値だけが上がった方がありました。手帳を見ると高いのは決まって晴れて冷え込んだ朝で、測っている場所が暖房のない北側の部屋でした。測る部屋を居間に移し、起床前に暖房が入るようタイマーを設定したところ、2週間で朝の値が落ち着きました。同じ対応で必ず下がるわけではありませんが、薬を変えずに済んだ一例です。住まいを整えても数字が動かないときは、薬の調整が要る段階です。そこで効いてくるのが記録で、主治医の判断材料になります。生活で対応できる範囲と薬で調整すべき範囲を切り分けること。それが家庭血圧の記録にこだわる理由です。訪問看護の利用には主治医の指示書が必要なので、まずはケアマネジャーかかかりつけ医にご相談ください。よくある質問Q1. 血圧はいつ測るのが正しいですか。朝と夜のどのタイミングですか。朝と夜の1日2回が基本です。朝は起床後1時間以内、トイレのあと、朝食と薬の前。夜は就寝の直前です。入浴やお酒の直後は避けてください。条件をそろえるほど比較がしやすくなります。Q2. 家庭血圧は1回の測定で何回測ればいいですか。日本高血圧学会は、1回の機会に原則2回測って平均を取ることを示しています。1回目が高く出て2回目で落ち着くことはよくあるため、差が大きい日は両方を書き残してください。低い値だけでは変動の大きさが分かりません。Q3. 家庭血圧の正常値と高血圧の基準は何mmHgですか。家庭血圧では、上が115mmHg未満かつ下が75mmHg未満で正常血圧、上が135から144または下が85から89でI度高血圧です。つまり135/85mmHg以上が高血圧の判定ラインです。診察室では140/90mmHg以上が基準で、家庭のほうが低い数字を使います。Q4. 血圧が高い日が続いたら、どのタイミングで受診すべきですか。以下は在宅の現場で使っている整理の仕方で、学会が定めた一律の基準ではありません。家庭血圧の平均が135/85mmHg以上の日が1週間続くなら、次の定期受診を待たず今週中に電話で相談してください。160/100mmHg以上が続く場合は、その日か翌日に主治医へ電話し、受診を前倒しします。頭痛や吐き気、息苦しさを伴うときは、その場で主治医へ連絡し、つながらなければ♯7119へ相談してください。個別の指示がある方は主治医の指示を優先してください。Q5. なぜ秋のように寒暖差の大きい季節に血圧が上がるのですか。気温が下がると体は熱を逃がさないために血管を細くし、そのぶん血圧が上がるためです。秋は1日の気温差が大きく、朝晩と日中で条件が変わるため体の調節が追いつきません。高齢の方は血管が硬く調節も鈍いため、振れ幅が大きくなります。Q6. 血圧が急に上がったとき、脳卒中や心臓の異常とどう見分ければいいですか。数値ではなく症状で見分けます。突然の激しい頭痛、片方の手足や顔半分のまひ、ろれつが回らない、片方の目が見えないといった症状が出たら、血圧を測るより先に119番へ連絡してください。発症時刻、発見時刻、最後に普段どおりだった時刻の3つを控えると治療の判断に役立ちます。Q7. 血圧手帳にはどう記録し、家族や医師にどう伝えればいいですか。日時と上下の値を基本に、血圧計に脈拍が表示される機種ならその数値、服薬の前後か、体調、気になった症状を短く添えます。伝える順は、1週間の平均、高かった日の状況、いま困っていることです。付箋に聞きたいことを書いて手帳に貼ると、短い診察時間でも相談が通ります。Q8. 降圧薬を飲んでいても毎日測ったほうがいいですか。体調が悪い日はどうしますか。薬を飲んでいる方こそ、毎日の記録が薬の調整に使われます。数値が落ち着いていても測定は続けてください。測り忘れた日は空欄でかまいません。ふらつきや強い倦怠感があるときは、測れる範囲で記録し、症状と一緒に主治医か訪問看護師に伝えてください。自己判断で薬をやめないでください。まとめ秋に高齢者の血圧が上がるのは、寒暖差で血管が縮み、加齢によって血圧の調節が追いつかなくなるためです。薬が効かなくなったと決めつける前に、朝は起床後1時間以内、夜は就寝前という同じ条件で測り、数字を並べて眺めてください。家庭血圧では135/85mmHg以上が高血圧の判定ラインで、その線を超える日が続くなら定期受診を待たずに相談します。突然の強い頭痛や片側のまひがあるときは、数値に関係なく119番です。秋のうちに測る習慣を作れば、そのまま冬の備えになります。ピース訪問看護ステーションにご相談くださいこんな方はぜひご相談ください:秋になって朝の血圧だけが上がり、薬を変えるべきか判断できずにいる方家庭血圧の測り方や記録の付け方が定まらず、受診時に伝えきれない方一人暮らしで血圧手帳を続けられるか不安な方、高齢のご家族の入浴が心配なご家族ピース訪問看護ステーションができること:訪問時に測る場所・時刻・姿勢を決め、血圧手帳の書き方を整えること記録から平均と背景をまとめ、報告書で主治医へ伝えること住まいの動線ごとに温度差を減らし、入浴の手順を組み直すこと東京都町田市・多摩市、神奈川県相模原市・大和市・川崎市麻生区に対応しています。まずはお気軽にお問い合わせください。関連記事脳梗塞の再発予防|在宅でできる血圧・服薬管理と家族の対応慢性腎臓病(CKD)の在宅療養|家族ができる食事・血圧管理と注意点を解説心不全退院後に家族が気をつけること|体重管理・むくみの受診目安訪問看護の視点でわかる「寒暖差疲労」完全ガイド:在宅療養者と家族が今日からできる対策秋の体調不良(秋バテ)を専門職が徹底解説:原因・セルフチェック・訪問看護の支援まで参考文献一覧出典:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」https://www.jpnsh.jp/guideline.html出典:日本高血圧学会「高血圧の10のファクト」https://www.jpnsh.jp/10_facts.html出典:日本高血圧学会「家庭で血圧を測定しましょう」https://www.jpnsh.jp/data/selfmonitoring.pdf出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/metabolic/m-05-003.html出典:国立循環器病研究センター「高血圧」https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/hypertension/出典:国立循環器病研究センター「冬場は心筋梗塞による心停止が増加」https://www.ncvc.go.jp/pr/release/003108/出典:日本脳卒中学会監修「脳卒中の予防・発症時の対応」https://www.jsts.gr.jp/common/asset/pdf/onset.pdf出典:消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください」https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_013出典:総務省消防庁「救急安心センター事業(♯7119)ってナニ?」https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/appropriate/appropriate007.html【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理、地域医療連携、在宅看取り支援に積極的に取り組んでいる。island-piece.jp 株式会社isLand|訪問看護・居宅介護支援・訪問介護|町田市