「立ち上がったとたんに顔色が悪くなって、座り込んでしまうんです」。町田市で訪問看護に伺っていると、多系統萎縮症のご家族からこうした声が届きます。多系統萎縮症は、ふらつきや動かしにくさに加え、血圧・排尿・呼吸を整える働きにも変化が出る病気です。在宅介護では、家族が気づく小さな変化が転倒や窒息を防ぐ手がかりになります。国の指定難病(17)で、リハビリテーションは寝たきりになる時期を少しでも遅らせるうえで大切とされています(出典:難病情報センター「多系統萎縮症(1)線条体黒質変性症(指定難病17)」)。診断を受けたばかりで何から手をつければよいか迷うときは、最初の章の「診断を受けたら、まず取りかかる3つ」から読んでください。この記事でわかること多系統萎縮症の3つの症状と、パーキンソン病との違い発症から車いす・寝たきりまでの期間の目安起立性低血圧・食後低血圧・排尿障害への家庭での工夫誤嚥と睡眠中の喘鳴・無呼吸のサイン、呼吸を助ける装置(CPAP)の考え方診断直後にまず進めたい手続きと、医療保険で使える訪問看護多系統萎縮症とは|指定難病17号と在宅生活の基本比較的進行が早い病気だと知り、症状が変わる前から医療・介護・費用の支えを整えておくことが、多系統萎縮症の在宅介護の出発点です。多系統萎縮症の基本情報項目内容指定難病の番号17発症する年代成年期(30歳以上)で、多くは40歳以上起こっていること脳の神経細胞と、それを支える細胞にアルファシヌクレインというたんぱく質がたまる患者数11,733人(平成24年度の医療受給者証所持者数。指定難病の要件判定に用いられた値)遺伝ほとんどは家族に同じ病気のない孤発例病名が示すとおり、動きを調整する仕組みや自律神経など、複数の系統に症状が出ます。神経細胞や、それを支えるオリゴデンドログリアという細胞にアルファシヌクレインがたまることが分かっています(出典:難病情報センター「多系統萎縮症(1)線条体黒質変性症(指定難病17)」)。なぜたまるのかは十分に解明されていません。治療は対症療法とリハビリテーションが中心。家族の気づきが、薬や生活の調整に生きてきます。3つの旧病名と現在の分類以前の病名最初に目立つ症状現在の呼び方オリーブ橋小脳萎縮症立つ・歩くときのふらつき(小脳性運動失調)MSA-C(小脳症状が優位)線条体黒質変性症動作の遅さや体のこわばり(パーキンソン症状)MSA-P(パーキンソン症状が優位)シャイ・ドレーガー症候群立ちくらみや排尿の問題(自律神経症状)多系統萎縮症に統合以前は最初に出る症状の違いから3つの病名で呼ばれていましたが、現在は1つにまとめられ、小脳症状が目立つMSA-Cと、パーキンソン症状が目立つMSA-Pに分けられています(出典:難病情報センター「多系統萎縮症(1)線条体黒質変性症(指定難病17)」)。発症から約2年で運動症状と自律神経症状がそろうことが多く、初めは脊髄小脳変性症と区別がつきにくい場合もあると示されています(出典:日本神経学会「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018」)。似た症状の病気は脊髄小脳変性症の初期症状から進行・生活の工夫・訪問看護まで詳しく紹介も参考になります。診断を受けたら、まず取りかかる3つ診断の直後は、気持ちが追いつかないまま手続きの話が続きます。一度に全部を進めなくても、まずは次の3つから始めれば十分です。順番やること主な相談先① 難病医療費助成の申請主治医が難病指定医かを確かめ、臨床調査個人票(診断書)を書いてもらう保健所・自治体の窓口② 介護保険の申請40歳以上は特定疾病として申請できる地域包括支援センター・ケアマネジャー③ 訪問看護の相談主治医に訪問看護指示書を書いてもらう主治医・訪問看護ステーション助成を先にするのは、さかのぼれる期間が原則1か月と短いためです。介護保険の特定疾病にあたり40歳から使えることは、ガイドラインにも整理されています(出典:日本神経学会「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018」)。まだ自分で動ける時期は申請を先延ばしにしがちですが、転倒をきっかけに急に介助が必要になることもあります。手すりや歩行器などの福祉用具は、困る前に試しておくほど使い慣れやすくなります。症状の3つの特徴と進行の流れ|自律神経障害・パーキンソン症状・小脳性運動失調症状は3つの系統に分かれ、どれがいつ加わるかを知っておくと、家族は次の備えを早めに始められます。3つの症状と家庭で気づきやすい場面症状の系統主な症状家庭で気づきやすい場面小脳性運動失調立つ・歩くときのふらつき、ろれつが回りにくい歩くときに体が左右に揺れる、話し方がゆっくりになるパーキンソン症状筋肉のこわばり(筋強剛)、動作の遅さ(無動)、倒れやすさ(姿勢反射障害)動き出しに時間がかかる、方向転換でよろける自律神経障害起立性低血圧、頻尿・尿失禁、頑固な便秘、汗が出にくい立ちくらみ、トイレが間に合わない、暑い日でも汗をかきにくい表は、難病情報センターが系統ごとに示す主な症状をもとにしています(出典:難病情報センター「多系統萎縮症(1)線条体黒質変性症(指定難病17)」)。初期症状は人それぞれ。ふらつき、動作の遅さ、立ちくらみや排尿の問題のどれから始まるかは決まっていません。診断の時点か、それより前に約80%の方が下部尿路症状(頻尿や尿の出にくさなど)を持っていることが分かっています(出典:日本神経学会「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018」)。トイレの回数の増加も年齢のせいと片づけず、主治医へ伝えてください。パーキンソン病との違い比べる点多系統萎縮症パーキンソン病安静時のふるえ少ないよく見られる進行の速さ早い緩やか抗パーキンソン病薬効きにくい(初期には一定の効果がある場合も)効果が出やすい転倒病気の早い時期から起こりやすい病気が進んでから増えることが多いパーキンソン症状が目立つタイプでは、初期にはパーキンソン病と区別がつきにくいことがあります。難病情報センターは、パーキンソン病に比べて安静時のふるえが少なく、進行が早く、薬が効きにくいと説明しています(出典:難病情報センター「多系統萎縮症(1)線条体黒質変性症(指定難病17)」)。ただし初期には薬が一定の効果を示すこともあり、試す価値があるとも述べられています。パーキンソン病より早い時期から転倒しやすい点も、ガイドラインに示されています(出典:日本神経学会「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018」)。パーキンソン症状を持つ病気の違いはパーキンソン病とパーキンソン症候群の違いを徹底解説、症状・診断・治療・生活支援まででも紹介しています。進行の流れと期間の目安先の見通しを数字で知るのはつらいことですが、準備の時期を考える材料になります。段階発症からの期間(中央値)生活の変化の例歩くときに補助が必要約3年杖・歩行器・手すりを使う車いすを使う約5年屋内や外出の移動に車いす寝たきり(臥床状態)約8年食事・排泄・体位交換に介助罹病期間(亡くなるまで)約9年呼吸・栄養の管理と、本人の希望に沿った療養表の期間は、日本の研究をもとにガイドラインが示した中央値です(出典:日本神経学会「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018」)。これは多くの方の真ん中の値で、実際の経過には大きな個人差があります。MSA-PはMSA-Cより進行が早い傾向があり、早い時期からの排尿障害や声帯の働きの低下も経過の早さと関係するとされます。車いすの前に住まいを見直し、食事が難しくなる前に栄養の方針を話し合っておけば、本人の希望に沿って選べるでしょう。起立性低血圧・排尿障害への在宅での対応家族がまず備えたいのは起立性低血圧と排尿障害で、姿勢の変え方とトイレ環境の工夫が、多系統萎縮症の在宅介護で転倒を減らす力になります。起立性低血圧の対策場面家庭でできる工夫注意点起き上がるとき寝た姿勢から座る、座ってから立つと段階を分け、各段階で少し待つ目の前が暗くなったら、すぐ座るか横になる日中の過ごし方水分を多めにとる、脚を弾性包帯などで圧迫する心臓や腎臓の病気で水分制限がある方は主治医に確認薬主治医がドロキシドパやミドドリンなどを処方することがある吐き気止めのメトクロプラミドで悪化することがある記録寝た姿勢と、座った・立った姿勢で血圧を測る測った時刻と症状を一緒に書く立ちくらみや失神などを伴う起立性低血圧は、68〜75%に見られると報告されています(出典:日本神経学会「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018」)。治療は、まだ軽いうちに始めるほうが効果を得やすいとされています。起き上がりを段階に分けて少し待つ方法は、訪問看護の現場でお伝えしている目安です。訪問先で血圧を測ると、横になっているときは普段どおりの値でも、座っただけで大きく下がる方もいます。血圧は寝た姿勢と座った姿勢の両方で測り、その差を主治医に伝えることが、薬の調整の手がかりになります。食後低血圧への対応工夫具体的なやり方注意点食事の回数と量1回の量を減らし、回数を増やす1日に必要な量は保つ食事の内容炭水化物を控えめにし、たんぱく質を多めにする栄養の偏りは主治医・管理栄養士に相談食前の水分食事の前に水を飲む飲み込みが弱い方は誤嚥に注意食後の過ごし方食後30〜60分は運動を避けて安静にする食後すぐに一人で立ち歩かない。横になるときも、飲み込みが弱い方は上半身を起こした姿勢で休む(食後すぐ平らに寝ると逆流・誤嚥につながりやすい)食事のあとに血圧が下がる食後低血圧も、この病気で起こる症状の一つです。食後30〜60分は運動を避けて安静にする(横になる)、食前に水分をとる、少量頻回で炭水化物を減らしたんぱく質を増やす。いずれもガイドラインが挙げる対策です(出典:日本神経学会「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018」)。食後にぐったりする様子があれば、そのときの血圧を測っておくと受診時の相談材料になります。排尿障害への対応時期起こりやすい症状家族ができること・治療早い時期急な尿意、頻尿、間に合わずに漏れるトイレまでの動線を片づける、夜はポータブルトイレを置く進んだ時期尿が出にくい、残尿、尿が出なくなる(尿閉)残尿が100mL以上なら間欠自己導尿、最終的に留置カテーテルになることもどの時期も夜間のトイレでの転倒、睡眠不足、便秘夜間の照明、トイレの手すり、排便の記録早い時期は尿意切迫・頻尿・切迫性尿失禁が中心で、進むと尿を出し切れない排出障害や尿閉が加わると整理されています(出典:日本神経学会「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018」)。排尿の問題は転倒や骨折、睡眠の問題、家族の介護負担にもつながると指摘されています。頻尿の薬(抗コリン薬)は尿閉を起こしうるため残尿100mL以下を確かめて使い、尿を出しやすくするアルファ1遮断薬は起立性低血圧を悪くすることがあります。残尿が100mL以上なら間欠自己導尿が勧められます。決まった時間に細い管(カテーテル)を尿道から入れて尿を出す方法で、本人か家族が行い、手技は看護師と一緒に練習できます。最終的に尿道カテーテルの留置が必要になることも多いとされます。夜間のトイレは、立ちくらみと急な尿意が重なりやすい時間帯。転んだときの対応は高齢者が家で転倒した後の対応|起こし方・様子見と受診の目安にまとめています。頑固な便秘は、排便の回数を記録しておくと薬の調整を相談しやすくなります。立ちくらみや夜間のトイレでの転倒が心配なときは、訪問看護師がご自宅で血圧の測り方や動線を一緒に確認します。まずはお問い合わせから、今の様子をお聞かせください。嚥下障害と睡眠時の呼吸への備え|誤嚥・無呼吸のサイン飲み込みと睡眠中の呼吸の変化は命に関わるため、誤嚥と無呼吸のサインを家族が早めに知っておいてください。誤嚥のサインと食事の工夫サイン家族が気づく場面できること飲み込みにくさ本人が「のどにつかえる」と話す主治医・言語聴覚士に相談し、飲み込みの評価を受ける食事時間の延長以前より食べ終わるのが遅い一口量を減らし、疲れる前に休憩をはさむむせ汁物や水でむせる食べ物の形やとろみを調整する痰の増加食後に痰がからむ、ゴロゴロした声になる痰を出す練習、口腔ケアを丁寧にする表の4つは誤嚥のサインとして示され、口腔ケア、食形態の調整、痰の除去、言語聴覚士の関わりが勧められています(出典:日本神経学会「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018」)。咳の強さ(咳のピークフロー)を測り、咳を助ける方法を身につけておくことも挙げられています。飲み込みの問題は早い時期から出ることもあり、食事時間が延びてきたら評価を受ける目安です。食べ物の形の目安には、日本摂食嚥下リハビリテーション学会がまとめた段階分類があります(出典:日本摂食嚥下リハビリテーション学会「嚥下調整食分類2021」)。のどを詰まらせたときは、本人の様子に合わせて次のように動きます。本人の様子その場でできること咳ができているできるだけ咳を続けてもらう声が出ない、のどを押さえる、顔色が急に真っ青になる大声で助けを呼び、119番とAEDを頼む。咳もできなければ、後ろから左右の肩甲骨の間を手のひらの付け根で強く何度も叩く反応がないただちに心肺蘇生を始める東京消防庁も、窒息が疑われたらすぐに119番通報とAEDを頼み、異物の除去を始めるよう呼びかけています(出典:東京消防庁「餅などによる窒息事故に注意!」)。食後しばらくして熱が出る、痰が増えて息苦しそうにしている。誤嚥性肺炎を見逃さないよう、その日のうちに主治医か訪問看護へ伝えてください。むせへの具体的な対策は高齢者のむせ(嚥下)への対応と誤嚥予防|家族ができることやパーキンソン病の嚥下障害でむせる時|家族ができる食事対策も参考になります。胃ろうを考えるタイミング状態考えられる選択肢家族が押さえたい点口から食べられる食形態の調整、飲み込みのリハビリ体重と食事時間の変化を記録する食べる量が減る、誤嚥が続く経管栄養、胃ろうの早めの検討本人の希望を早めに聞いておく胃ろうをつくった後胃ろうと口からの食事の併用楽しみとしての食事を続けられることもある口から食べるのが難しくなれば経管栄養とし、胃ろうを早めに検討すること、口からの摂取と併用できることが示されています(出典:日本神経学会「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018」)。その判断は本人の意思を尊重して行うことも明記されています。胃ろうの話は、食べられなくなってからではなく、まだ話し合える時期に始めておきたいものです。病気が進むと、話すことや意思を伝えることが難しくなる場合があるためです。在宅での胃ろうの管理は胃ろうの在宅管理で家族が知っておくべきこと|日常の注意点とトラブル対処法で紹介しています。睡眠中の喘鳴・無呼吸とCPAP呼吸の変化家族が気づくサイン医療での対応声帯が開きにくくなる(声帯外転障害)睡眠中の高い音の喘鳴(馬のいななきのような音)喉の内視鏡検査、CPAP、重い場合は気管切開の検討睡眠時無呼吸呼吸が止まる、いびきが途切れる睡眠の検査、CPAP、不十分ならBPAP喉頭蓋の変化(喉のふたがやわらかくなる)外から見分けるのは難しい内視鏡で確認、CPAPで悪化することがあるガイドラインによると、呼吸の障害には複数の種類があり、喘鳴は声帯の働きの低下と経過の悪さのサインです。突然死は睡眠中に多く、気管切開や人工呼吸器を使っていても起こりうるとされています。CPAPは、鼻や口にマスクをつけて空気を送り、眠っている間ののどの通り道を広げる装置で、夜間の喘鳴を改善します。BPAPは、吸う息と吐く息で空気の強さを変えられるタイプです。ただしガイドラインが紹介する日本の29例の調査では、呼吸器の感染症、呼吸不全、機械になじめない(CPAP不耐症)といった理由で66%が中止していました。喉頭蓋の変化がある方では、かえって気道の閉塞を悪化させることもあります(出典:日本神経学会「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018」)。町田市・相模原市のご家庭では、「最近いびきの音が前と違う」とご家族から相談されることがあります。そんなときは、夜間の音をスマートフォンで録音し、受診時に主治医に聞いてもらってください。呼吸リハビリテーションには、日本リハビリテーション医学会の「神経筋疾患・脊髄損傷の呼吸リハビリテーションガイドライン」があります(出典:日本リハビリテーション医学会「診療ガイドラインのご案内」)。進行して息苦しさが出てきたときの緩和にも、診療ガイドラインがあります(出典:日本緩和医療学会「進行性疾患患者の呼吸困難の緩和に関する診療ガイドライン 2023年版」(日本医療機能評価機構))。難病医療費助成と使える制度|指定難病17号の申請在宅介護を続ける家族の負担は、難病医療費助成と介護保険・障害福祉の制度を組み合わせることで軽くできます。難病医療費助成でどのくらい軽減されるか項目内容自己負担の割合医療費の2割(又は1割)月ごとの上限額所得に応じて決まり、複数の指定医療機関の合計で管理する高額な医療が長く続く場合「高額かつ長期」として上限額が下がる区分がある人工呼吸器などを使う方上限額は月額1,000円助成の対象となる機関病院・診療所、薬局、訪問看護ステーションなどの指定医療機関難病医療費助成では、指定医療機関で受けた医療の自己負担が医療費の2割(又は1割)になり、さらに所得に応じた月ごとの上限額が決まります(出典:難病情報センター「指定難病患者への医療費助成制度のご案内」)。上限額は、複数の指定医療機関で支払った額を合計し、「自己負担上限額管理票」で管理します。通院・薬・訪問看護を合わせても、その月の上限額までの支払いで済みます。所得区分ごとの金額は、難病情報センターの案内や申請窓口で確認してください。申請の流れ手順内容ポイント1. 診断書難病指定医に臨床調査個人票(診断書)を書いてもらう主治医が難病指定医か確認する2. 申請都道府県・指定都市に申請する受付窓口はお住まいの自治体に確認する3. 審査重症度分類などで判定される軽症でも医療費が高額なら対象になる場合がある4. 更新有効期間は原則1年以内毎年の更新手続きが必要申請には、難病指定医が書いた臨床調査個人票が必要で、申請先は都道府県・指定都市です(出典:難病情報センター「指定難病患者への医療費助成制度のご案内」)。重症度は、日常生活の自立度を表す修正ランキン尺度、食事・栄養、呼吸のいずれかが3以上で助成の対象になります(出典:難病情報センター「多系統萎縮症(1)線条体黒質変性症(指定難病17)」)。重症度に当てはまらなくても、医療費の総額(10割)が月33,330円を超える月が年3回以上あれば、軽症高額該当として対象になります。助成は、基準を満たすと診断された日までさかのぼれます。期間は原則1か月、やむを得ない理由があれば最長3か月です。介護保険・障害福祉サービスとの組み合わせ制度使えるものの例この病気でのポイント介護保険訪問介護、福祉用具、デイサービス40歳以上は特定疾病として申請できる障害者総合支援法ホームヘルプ、補装具障害者手帳がなくても利用できる在宅難病患者一時入院事業一時的な入院介護する家族が休むための仕組み指定難病の方は、障害者手帳がなくても障害者総合支援法のサービスを利用できます。2010年の調査では、手帳の所持率は47.8%でした(出典:日本神経学会「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018」)。相談先は市区町村の障害福祉の窓口です。都道府県の在宅難病患者一時入院事業も、家族が休むための仕組みとして紹介されています。どちらの制度を使うかはサービスごとに決まりがあるため、ケアマネジャーや相談支援専門員に整理してもらうとよいでしょう。家族の休み方はパーキンソン病の介護に疲れたら|限界前の役割分担とレスパイトでも紹介しています。訪問看護でできること|町田・相模原での在宅生活の支え方多系統萎縮症の訪問看護は医療保険で利用でき、家族と一緒に症状の変化を見守りながら暮らしの工夫を続けられます。多系統萎縮症の訪問看護の保険と費用項目内容使う保険介護保険の認定があっても医療保険で利用する難病医療費助成指定医療機関の訪問看護・訪問リハビリも助成の対象支払いの上限通院・薬と合わせて月の上限額の中で管理する利用の始め方主治医の訪問看護指示書が必要介護保険優先が原則である一方、この病気の訪問看護は医療保険の扱いとなり、訪問看護・訪問リハビリは難病医療費助成の対象になります(出典:日本神経学会「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018」)。難病情報センターも、指定医療機関に訪問看護ステーションが含まれることを示しています(出典:難病情報センター「指定難病患者への医療費助成制度のご案内」)。訪問看護が医療保険になるため、介護保険の枠を訪問介護や福祉用具に回しやすくなります。始めるには主治医の指示書が必要なため、受診のときに「訪問看護を使いたい」と伝えてください。訪問看護師とリハビリ職が行うこと支援具体的な内容家族にとっての助け体調の確認寝た姿勢と座った姿勢の血圧、排尿、呼吸の音主治医に伝える材料がそろう排泄の支援導尿やカテーテルの管理、便秘への対応夜間の不安が減る食事と口腔ケア食べる姿勢、食形態、口腔ケア、痰の吸引誤嚥を防ぐ工夫を一緒に考えられる呼吸の管理CPAPなどの使用状況の確認機械の不安を相談できる転倒予防歩行・バランス練習、手すりや歩行器、頭を守る帽子家の中で安全に動ける転倒予防としては、バランスと歩行の訓練、杖・歩行器・手すり、頭部保護帽などが挙げられ、失神による転倒への注意も促されています(出典:日本神経学会「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018」)。ピース訪問看護ステーションでは、看護師とリハビリ職が役割を分けて伺い、住まいに合わせた動き方を一緒に考えます。ベッドからトイレまでの数メートルに、つかまる場所がない。町田市の訪問先で、少なからず出会う光景です。実際の動きを見ながら手すりや足元灯の位置を決められるのは、ご自宅に伺う訪問看護ならではの関わりです。家族の疲れにも目を向け、休み方をケアマネジャーと一緒に考えます。負担の減らし方は介護疲れを防ぐ!訪問看護で変わる家族の介護負担、疲弊しないための実践ガイドでも紹介しています。町田・相模原で相談できる窓口相談したいこと相談先介護保険の申請、介護全般地域包括支援センター(町田市では高齢者支援センター)症状や医療的なケア主治医、訪問看護ステーション難病医療費助成の申請保健所・自治体の担当窓口障害福祉サービス市区町村の障害福祉の窓口介護の困りごとは、町田市では高齢者支援センター、相模原市では地域包括支援センターが身近な相談先です(出典:町田市「高齢者支援センター(地域包括支援センター)」、相模原市「地域包括支援センター(高齢者の健康、福祉、介護の相談・支援)」)。町田市でも相模原市でも、訪問看護が入ると主治医・ケアマネジャー・ご家族の情報がつながりやすくなります。症状が少ない時期から顔なじみの訪問看護師がいれば、急に困ったときにも相談しやすいはずです。ふらつきが中心の時期には、脊髄小脳変性症が進行していく中で家族ができること|日常のケアと訪問看護の活用も参考になります。よくある質問Q1. 多系統萎縮症は何年くらいで寝たきりになりますか。余命はどのくらいですか日本の研究では、発症から車いすまで約5年、寝たきりまで約8年、亡くなるまでの期間は約9年(いずれも中央値)と報告されています(出典:日本神経学会「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018」)。個人差は大きく、MSA-PはMSA-Cより進行が早い傾向があります。Q2. パーキンソン病とはどう違いますかパーキンソン病に比べて安静時のふるえが少なく、進行が早く、薬が効きにくいとされます。立ちくらみなどの自律神経症状や、ふらつきなどの小脳症状が加わる点も特徴です。Q3. 初期症状にはどのようなものがありますかふらつき、動作の遅さやこわばり、立ちくらみ、頻尿や尿失禁などから始まります。約80%の方は診断の時点かそれ以前から排尿の症状があり、トイレの変化も見逃したくないサインです。Q4. 多系統萎縮症は遺伝しますかほとんどは家族に同じ病気のない孤発例です。ごくまれに家族内での発症があり、その一部で遺伝子の変異が見つかっています。心配なときは主治医に相談してください。Q5. 家族が日常で気をつけることは何ですか立ちくらみを防ぐ起き上がり方、夜間のトイレでの転倒予防、むせや痰の増加への気づき、睡眠中の喘鳴や呼吸の止まりを主治医に伝えることの4つです。家族自身の休息も欠かせません。Q6. 多系統萎縮症でも訪問看護は利用できますか利用できます。介護保険の認定があっても医療保険で利用し、指定医療機関の訪問看護は難病医療費助成の対象です。まずは主治医に相談してください。Q7. 難病医療費助成でどのくらい負担が軽くなりますか指定医療機関での自己負担が医療費の2割(又は1割)になり、さらに所得に応じた月の上限額が設けられます。人工呼吸器などを使う方の上限は月額1,000円です。Q8. 睡眠時無呼吸にCPAPは使えますか使えます。ガイドラインでは睡眠時無呼吸や声帯外転障害にCPAPを用い、不十分ならBPAPを検討するとされます。ただ日本の調査では66%が中止しており、喉頭蓋の変化があると悪化することもあるため、喉の検査を受けて主治医と決めます。まとめ多系統萎縮症は、ふらつき・パーキンソン症状・自律神経の症状が重なり、比較的早く進む病気です。在宅介護で家族が早めに気づきたいのは、起立性低血圧と排尿障害による転倒、誤嚥、睡眠中の呼吸の変化です。進行の目安を知り、胃ろうや呼吸の補助について本人の希望を早めに話し合っておくと、慌てずに選べます。難病医療費助成と介護保険・障害福祉を組み合わせ、医療保険で使える訪問看護も頼りながら、家族だけで抱え込まない体制をつくってください。ピース訪問看護ステーションにご相談くださいこんな方はぜひご相談ください:多系統萎縮症と診断され、自宅での介護をどう準備すればよいか知りたい方立ちくらみや夜間のトイレでの転倒、むせが増えて不安なご家族睡眠中の喘鳴やCPAPの使い方について相談したい方困りごとがまだはっきりしない、診断直後のご相談でも構いません。ピース訪問看護ステーションができること:血圧・排尿・呼吸の変化を確認し、主治医へ情報をつなぐこと食事の姿勢や口腔ケア、手すりや動線の工夫をご家族と一緒に考えること看護師とリハビリ職が連携し、進行に合わせて支援の内容を見直すこと東京都町田市・多摩市、神奈川県相模原市・大和市・川崎市麻生区を中心に対応しています。まずはお気軽にお問い合わせください。関連記事脊髄小脳変性症が進行していく中で家族ができること|日常のケアと訪問看護の活用脊髄小脳変性症の初期症状から進行・生活の工夫・訪問看護まで詳しく紹介パーキンソン病の介護に疲れたら|限界前の役割分担とレスパイトパーキンソン病の嚥下障害でむせる時|家族ができる食事対策高齢者のむせ(嚥下)への対応と誤嚥予防|家族ができること参考文献一覧出典:難病情報センター「多系統萎縮症(1)線条体黒質変性症(指定難病17)」https://www.nanbyou.or.jp/entry/221出典:難病情報センター「指定難病患者への医療費助成制度のご案内」https://www.nanbyou.or.jp/entry/5460出典:日本神経学会「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018」https://www.neurology-jp.org/guidelinem/sd_mst_2018.html出典:日本リハビリテーション医学会「診療ガイドラインのご案内」https://www.jarm.or.jp/sinryo-guide/index.html出典:日本緩和医療学会「進行性疾患患者の呼吸困難の緩和に関する診療ガイドライン 2023年版」(日本医療機能評価機構)https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00804/出典:日本摂食嚥下リハビリテーション学会「嚥下調整食分類2021」https://www.jsdr.or.jp/doc/classification2021.html出典:町田市「高齢者支援センター(地域包括支援センター)」https://www.city.machida.tokyo.jp/iryo/old/shiminnokatae/mijikanasodan/koureisha_shien_center.html出典:相模原市「地域包括支援センター(高齢者の健康、福祉、介護の相談・支援)」https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/kosodate/fukushi/1026635/korei_shien/1006373.html出典:東京消防庁「餅などによる窒息事故に注意!」https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/nichijo/mochi.html【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理、地域医療連携、在宅看取り支援に積極的に取り組んでいる。island-piece.jp 株式会社isLand|訪問看護・居宅介護支援・訪問介護|町田市