退院時に「これからは家で酸素を使いましょう」と言われ、鼻に細いチューブを付けたご家族と一緒に自宅へ戻ってきた。うれしい反面、頭の中は疑問だらけではないでしょうか。「機械はどう扱えばいいのか」「火は使っていいのか」「もし夜中に苦しがったらどうすればいいのか」。在宅酸素療法(HOT:Home Oxygen Therapy、自宅で酸素を吸入しながら生活する治療)は、正しい知識があれば決して怖いものではありません。ただ、家族が自己流で管理してしまうと、火災や酸素不足といった思わぬ事故につながることもあります。特に夜間の不安は大きく、この記事でも夜間の連絡体制にふれていきます。この記事では、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などで在宅酸素療法を始めたご本人を支える家族に向けて、機器の扱い方から火気の安全対策、災害時の備え、急変のサインまで、訪問看護の現場で実際に伝えている注意点をまとめました。この記事でわかること在宅酸素療法(HOT)の基礎知識と、家族がまず押さえるべき注意点火気・停電・地震など安全にかかわる具体的な対策入浴・外出・食事といった生活場面での工夫「これは病院へ連絡すべき」という急性増悪のサインと受診の目安家族の負担を軽くするために訪問看護に相談できること在宅酸素療法(HOT)と暮らす家族が抱える不安とは在宅酸素療法と暮らす家族が最初に抱える不安の中心は、「自分たちだけで医療機器を扱いきれるのか」という管理責任への戸惑いです。病院では看護師が24時間そばにいて、酸素の流量も機器の異常もすべて管理してくれました。ところが自宅に戻ると、その役割の多くが家族に移ります。専門職ではない家族が、慣れない機械と向き合いながら「これで合っているのか」と手探りで介護を続けることに。この不安は大げさなものではなく、多くのご家族が同じ思いを口にします。町田市・相模原市で在宅酸素療法の利用者を訪問する中で、ご家族からよく聞かれるのが「苦しそうなときは流量を上げてもいいのですか」という質問です。これは本人の命に直結する不安であり、後述のように自己判断での変更は危険を伴います。「夜寝ている間に外れていないか心配で眠れない」「外出させてあげたいが何を持っていけばいいか分からない」といった声も多く寄せられます。特に夜間の不安には、業者・主治医・訪問看護の連絡先を電話のそばにまとめ、迷ったら夜でも相談できる体制を先に整えておくと安心です。こうした不安を一つずつ正しい対処法とつなげることが、在宅生活を続ける第一歩。この記事で家族の疑問に順に答えます。家族が感じやすい3つの不安在宅酸素療法を始めた家族が感じやすい不安は、大きく「機器」「安全」「急変」の3つに分けられます。不安の種類具体的な内容機器への不安操作方法・チューブの管理・アラームの意味が分からない安全への不安火気・停電・地震のときにどうすればいいか急変への不安どんな症状が出たら病院へ連絡すべきか不安を漠然と抱えたままだと家族自身が疲弊しますが、「何が起きたらどう動くか」がはっきりしていれば日々の緊張は大きく和らぎます。それぞれの不安には対応する具体策が必ずあり、一人で抱え込む必要はありません。訪問看護・業者・主治医が、家族と一緒に支える体制を組めます。なぜ家族の理解が本人の安全を左右するのか在宅酸素療法では、家族が正しい知識を持っているかどうかが、本人の安全と生活の質を直接左右します。在宅酸素を使う方は体力の予備力が少なく、ちょっとした環境の変化やトラブルが体調悪化につながりやすい状態です。本人が機器を管理しきれない場面も多く、隣にいる家族が「異常に気づけるか」「落ち着いて対処できるか」が分かれ道になります。家族の役割具体的な行動観察者呼吸の様子・顔色・むくみなど日々の変化に気づく管理補助者チューブの折れ・機器のアラーム・酸素残量を確認する連絡者異常時に主治医・訪問看護・業者へ連絡する生活支援者火気管理・入浴・外出の付き添いで安全を守る家族に求められるのは医療の専門知識そのものではなく、「いつもと違う」に気づく観察力と、困ったとき誰へ連絡すればよいかを知っておくこと。判断に迷う場面は必ず出てきますが、そのときこそ専門職に頼る場面だと割り切ることが、家族が長く介護を続けるコツです。在宅酸素療法(HOT)の基礎知識と導入の目安在宅酸素療法(HOT)とは、慢性的に体内の酸素が不足する状態に対し、自宅で酸素を吸入しながら日常生活を送る治療です。呼吸器の病気が進行すると、肺で十分に酸素を取り込めず、血液中の酸素が慢性的に足りない状態(慢性呼吸不全)になります。放置すれば心臓に負担がかかり、活動量が落ちて生活の質が下がります。在宅酸素療法は、足りない酸素を補って臓器への負担を減らし、住み慣れた自宅での生活を続けられるようにする治療です。日本呼吸器学会は、COPDをはじめとする慢性呼吸器疾患に対し、適切な基準を満たした患者への在宅酸素療法を推奨しています(出典:日本呼吸器学会「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2022〔第6版〕」)。在宅酸素療法の対象となる病気と導入の目安在宅酸素療法の対象は、安静時や労作時に慢性的な低酸素状態が続く呼吸器・循環器の病気です。代表的な対象疾患と導入の目安を整理します。実際の導入は血液中の酸素濃度(動脈血酸素分圧やSpO2)などの検査結果をもとに主治医が判断します。対象となる主な病気特徴COPD(慢性閉塞性肺疾患)喀煙などで気道・肺胞が傷み息切れが進む間質性肺炎・肺線維症肺が硬くなり酸素を取り込みにくい慢性心不全一定の基準を満たす重症例が対象肺高血圧症肺の血管の圧が高くなる在宅酸素療法の導入は退院時や外来で決まることが多く、導入直後にこそ正しい使い方を身につけておくと、その後の生活が楽になります。町田市内で退院直後のフォローに入ると、最初の2週間ほどはチューブの扱いや流量の確認に戸惑うご家族が多いもの。訪問看護がこの時期に集中して支援することで、自信を持って管理できるようになっていきます。酸素を供給する機器の種類在宅酸素療法で使う機器は、自宅に据え置く「酸素濃縮器」と、外出用の「携帯用酸素ボンベ」が基本の組み合わせです。それぞれの特徴を知っておくと、電源管理や外出の計画が立てやすくなります。機器役割家族が気をつける点酸素濃縮器(設置型)空気中から酸素を濃縮し供給する電源が必要。停電時は代替が要る携帯用酸素ボンベ外出時に酸素を供給する残量管理と予備の確保が必要呼吸同調器息を吸うときだけ酸素を出し節約する装着・設定の確認が必要多くのご家庭では、日中も夜間も酸素濃縮器を使い、外出時に携帯用ボンベへ切り替える運用になります。呼吸同調器は吸気に合わせて酸素を出すため使用時間を延ばせますが、機種によっては吸い始めの反応にわずかな遅れを感じる方もいます。違和感があれば連続的に流れる方式へ変更できることもあるので、主治医や業者に相談してください。機器は業者からレンタルされ、定期点検やトラブル対応も業者が担います。業者・主治医・訪問看護の連絡先を電話のそばに貼っておくと、困ったときにすぐ相談でき、家族の心理的な支えになります。機器の取り扱いと日常管理で家族が知っておきたいこと機器の日常管理で最も大切なのは、酸素の流量を主治医の指示どおりに保ち、チューブや加湿器を清潔に維持することです。在宅酸素療法の機器は、正しく使えば難しいものではありません。ただし基本ルールを外すと、酸素が十分に届かなかったり衛生上の問題が起きたりします。家族が日々確認するポイントを整理しておきましょう。酸素の流量・濃度は自己判断で変えない酸素の流量は主治医が病状に合わせて決めた指示値であり、家族や本人が自己判断で変えてはいけません。「苦しそうだから流量を上げる」という行動は、一見親切に見えて危険を伴います。特にCOPDなどでは、酸素を上げすぎることで体内の二酸化炭素がうまく排出できなくなり、意識がもうろうとするCO2ナルコーシスという状態を招くことがあるのです。逆に、勝手に下げれば必要な酸素が届かなくなります。良かれと思った調整が、かえって命を危険にさらしかねません。場面やってはいけないこと正しい対応苦しそうに見える流量を勝手に上げる指示値のままで主治医・訪問看護へ連絡調子が良さそう流量を勝手に下げる・外す指示どおり継続する労作時と安静時自己判断で切り替える主治医の指示(労作時○L等)に従う指示値のままで明らかに苦しそうな様子が続くなら、流量を変える場面ではなく、病状の変化を疑って医療機関へ連絡する場面です。迷ったときは、まず訪問看護や主治医に電話で相談してください。チューブ・カニューレと加湿器の管理チューブ(カニューレ)は折れ・抜け・汚れを毎日確認し、加湿器の水は毎日交換して清潔を保つことが基本です。酸素は目に見えないため、「機械は動いているのに酸素が届いていない」というトラブルに気づきにくいのが落とし穴です。チューブが家具の下敷きになって折れていたり、鼻から外れていたりしても、本人が気づかないことがあります。確認項目ポイントチューブの折れ・ねじれ家具やベッドの下敷きに注意カニューレの装着位置鼻から外れていないか加湿器の水毎日交換。規定量まで入れ継ぎ足さない鼻・耳の皮膚当たる部分の赤み・痛みを確認フィルターの清掃業者の指示どおり目詰まりを防ぐ長いチューブは部屋の中を移動しやすい半面、足に引っかかって転倒したり折れて酸素が止まったりするリスクも上がります。カニューレが長時間当たる鼻の下や耳の後ろは皮膚が傷つきやすいので、ガーゼやスポンジで保護する工夫も有効です。こうした管理は訪問看護の訪問時に一緒に確認し、家庭に合ったやり方を決められます。アラーム・異常時のサインへの対応酸素濃縮器のアラームが鳴ったら、まずチューブの折れや電源、酸素残量を確認し、解決しなければ業者へ連絡します。機器はトラブルが起きるとアラームや表示で知らせます。意味を知っておけば、慢てずに対処できます。アラーム・異常考えられる原因家族の対応流量低下・供給停止のアラームチューブの折れ・詰まりチューブを確認しまっすぐにする電源のアラーム停電・コンセント抜け電源とプラグを確認する濃縮器が動かない故障・電源不良携帯用ボンベに切り替え業者へ連絡いつもと違う音・臭い機器の不具合使用を止め業者へ連絡アラームが鳴ったときに慢てないよう、対応の手順を紙に書いて機器のそばに貼っておいてください。特に「濃縮器が止まったら携帯用ボンベに切り替える」という動作は、普段から練習しておくと安心です。業者の緊急連絡先は24時間対応のことが多いので、すぐ分かる場所に控えておきましょう。火気・災害時(停電・地震)の安全対策在宅酸素療法で最も重大な事故は火災であり、酸素チューブや機器から2メートル以内で火気を使わないことが絶対の原則です。酸素そのものは燃えませんが、周囲の酸素濃度が高くなると、わずかな火でも爆発的に燃え広がります。過去には在宅酸素療法中の喀煙などが原因で、死亡を含む重大な火災事故が繰り返し報告されてきました。家族全員がこの危険性を正しく理解しておくことが、命を守るうえで欠かせません。火気からの距離と厳守すべきルール酸素を使用している機器・チューブ・本人から、火気を2メートル以上離すことが厚生労働省の示す基本ルールです。厚生労働省は、在宅酸素療法中の火気の取り扱いについて、火気を2メートル以上離すことや、喀煙をしないことなどを強く注意喚起しています(出典:厚生労働省「在宅酸素療法における火気の取扱いについて」)。特に注意が必要なのは、本人の顔や衣服の近くに酸素が滞留するため、口元でのタバコやライターがきわめて危険だという点です。火気の種類危険度対策タバコ・ライター非常に高い酸素使用中は絶対に喀煙しない・本人も家族もガスコンロ・ガスレンジ高い酸素をつけたまま調理しない。2m以上離す仏壇のろうそく・線香高い火を使わないLEDタイプに替えるストーブ・ファンヒーター高い火のある暖房を避けエアコンにする電気コンロ・IH中高温部への接近を避ける町田市・相模原市の訪問で特に注意して確認するのが、仏壇の線香とガスコンロです。長年の習慣で線香をあげ続けているご家庭は多く、酸素チューブを付けたまま仏壇に近づいて事故になりかけた例もありました。線香やろうそくはLED式に替える、調理は家族が代わるといった生活習慣に踏み込んだ確認が事故防止につながります。火は「まさか」の油断から起こります。危険性を一度きちんと説明し、家族全員でルールを共有してください。停電・機器トラブルへの備え停電時は酸素濃縮器が使えなくなるため、携帯用酸素ボンベへ速やかに切り替えられるよう普段から備えておきます。酸素濃縮器は電気で動くため、停電するとすぐに供給が止まります。数分でも酸素が途切れると体調悪化につながる方もいるので、停電時の手順を決めておきましょう。備え具体的な内容携帯用ボンベの確保常に予備を用意し、残量を定期確認する切り替え手順の練習濃縮器→ボンベの切り替えを家族が習得しておく業者への事前登録停電時に優先連絡する利用者として登録できる場合がある連絡先の掲示業者・主治医・訪問看護の番号を電話のそばに在宅酸素の業者には停電時の対応窓口があり、多くの場合は事前に「優先連絡する利用者」として登録できるので、導入時に確認しておきましょう。ボンベの残量は「まだ大丈夫」と思ううちに減っていることがあるため、週に一度は残量計をチェックする習慣を。地震・災害時の行動地震などの災害時は、酸素ボンベを転倒・破損から守り、火災に注意しながら安全な場所へ避難できるよう準備しておきます。災害時は停電・断水・避難など複数の困難が重なります。酸素を使う方は避難にも時間がかかるため、平時からの準備が命綱に。場面準備・行動ボンベの保管倒れないよう固定し、火気のない場所に置く非常持ち出し携帯用ボンベ・予備カニューレ・連絡先メモをまとめる避難先の確認電源が使える福祉避難所などを自治体で確認情報の共有近隣・自治会・民生委員に在宅酸素の利用を伝える災害時は自力での避難や情報収集が難しくなるため、日頃から近隣や自治体とつながっておくことが助けに。多くの市区町村には、災害時に支援が必要な人をあらかじめ登録する「避難行動要支援者名簿」の制度があります。町田市・相模原市でも同様で、訪問看護が地域包括支援センターやケアマネジャーと連携して登録を後押しすることもあります。外出・入浴・食事など生活場面での注意点在宅酸素療法をしていても、酸素を正しく使いながらであれば外出・入浴・食事といった日常生活はこれまで通り続けられます。「酸素を付けているから何もできない」と諦める必要はありません。むしろ酸素を上手に使えば活動範囲を保ち、生活の質を維持できます。ただし、それぞれの場面で押さえるべき注意点があります。入浴時の注意点入浴は体に負担がかかりやすいため、酸素は付けたまま、湯温はぬるめ、動作はゆっくりを心がけます。入浴は思った以上に体力を使い、呼吸が苦しくなりやすい場面です。酸素を外すのは危険なので、原則付けたまま入浴します。項目注意点酸素の扱い原則つけたまま入浴(主治医の指示に従う)湯温40度前後のぬるめ。熱い湯は負担が大きい動作立ち座り・洗髪はゆっくり。急がない換気浴室に湯気がこもると息苦しさが増すため換気する見守り一人での入浴が不安なら家族が近くで待機する浴室に酸素濃縮器は持ち込めないため、長いチューブを伸ばして入浴します。濷れた床で足に絡まないよう配置に気をつけてください。洗髪時に前かがみになると息苦しくなる方が多いので、椅子に座って洗う、家族が手伝うといった工夫を。入浴の可否や方法は病状で異なるため主治医の指示を確認し、不安があれば訪問看護に入浴支援を相談してください。外出・旅行時の注意点外出時は携帯用酸素ボンベの残量を余裕をもって確認し、移動時間に見合った本数を準備することが基本です。外出は気分転換になり、体力維持にも役立ちます。ボンベの管理さえきちんとすれば、買い物や通院、短い旅行も十分可能です。場面注意点ボンベの残量外出時間の1.5〜2倍を目安に余裕を持って準備呼吸同調器節約できるが設定・電池残量を確認移動手段長距離は事前に業者へ相談(旅行先への手配も可)気候真夏・真冬・高地は体に負担。無理をしない飛行機や新幹線での長距離移動、宿泊を伴う旅行では酸素の手配が必要です。業者は旅行先への機器手配に対応していることが多いので、早めに相談しましょう。近所への外出でも「あと少しだけ」と歩き続けて息切れがひどくなることがあるため、途中で休憩をはさみ無理をしないことが大切です。食事・日常動作の工夫食事は少量ずつゆっくり摂り、食後すぐの動作を避けることで、呼吸への負担を減らせます。呼吸器の病気がある方は、食事のときにも息苦しさを感じることがあります。満腹になると横隔膜が押し上げられて呼吸がしにくくなるため、少量を数回に分ける工夫が有効です。場面工夫食事量一度に食べすぎず、少量を数回に分ける食事のペースゆっくり噛んで、息を整えながら食べる食後すぐに動かず休憩をとる日常動作「息を吐きながら動く」を意識する在宅酸素の方は体を動かすときに息を止めがちですが、これが息切れを強めます。「重い物を持ち上げるとき、立ち上がるときは息を吐きながら」を意識すると楽に。呼吸リハビリテーションでは、こうした呼吸法や動作の工夫を専門的に指導します(出典:日本呼吸器学会・日本呼吸ケア・リハビリテーション学会ほか「呼吸リハビリテーションに関するステートメント」)。日常動作に呼吸を合わせるコツは、訪問看護や訪問リハビリで一緒に練習できます。こんな症状は要注意|急性増悪のサインと受診の目安在宅酸素療法中に、いつもより息苦しさが強い・痰の色や量が変わる・発熱・むくみといった変化が出たら、急性増悪のサインとして早めに医療機関へ連絡します。COPDなどの慢性呼吸器疾患は、風邪や感染などをきっかけに急に悪化する「急性増悪」を起こすことがあります。急性増悪は入院や命にかかわることもあるため、早期に気づいて対応することが何より重要です。日本呼吸器学会のガイドラインでも、急性増悪の早期発見と早期対応の重要性が示されています(出典:日本呼吸器学会「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2022〔第6版〕」)。受診・連絡が必要な症状のサイン家族が「いつもと違う」と感じる変化こそが、急性増悪を見つける最大の手がかりです。日々そばにいる家族だからこそ気づける小さな変化があります。以下のサインを覚えておいてください。サイン具体的な変化対応の目安息苦しさの増強安静時でも苦しい・会話が途切れる早めに主治医・訪問看護へ連絡痰の変化色が黄色〜緑に・量が増える・血が混じる感染の可能性。早めに連絡発熱いつもより体温が高い感染の可能性。連絡むくみ足のむくみ・急な体重増加心臓への負担の可能性。連絡意識・様子ぼんやりする・眠りがち・応答が鈍い緊急性が高い。すぐ連絡特に「呼びかけへの反応が鈍い」「唇や爪が紫色になる(チアノーゼ)」といった症状は、酸素が全身に足りていない危険な状態を示すため、ためらわず連絡・受診してください。パルスオキシメーターで酸素飽和度(SpO2)を測れる場合は、普段よりはっきり下がったとき、とりわど90%を下回る状態が続くときが注意の目安です。ただし目標値は病状によって主治医が個別に決め、COPDなどでは低めに設定されることもあります。まずは主治医から示された「連絡する数値の目安」を確認しておきましょう。迷う段階でも電話で相談すれば、様子を見てよいか、すぐ受診すべきかの判断を助けてもらえます。先延ばしより早めの相談が本人にとって安全でしょう。緊急時に慢てないための準備緊急時に落ち着いて動けるよう、連絡先・症状の記録・受診の判断基準をあらかじめ紙にまとめておきます。いざ本人の様子がおかしくなると、家族は動揺してうまく対応できないもの。事前の準備が、その差を埋めてくれます。準備するもの内容緊急連絡先リスト主治医・訪問看護・在宅酸素業者・救急(119)症状メモいつから・どんな症状か記録できる用紙内服薬リスト服用中の薬の一覧(受診時に役立つ)受診の目安メモ「こうなったら連絡」の基準を書いておく保険証・診察券すぐ持ち出せる場所にまとめる連絡先リストは電話のそばと本人のベッド近くの2か所に貼っておくと、すぐ対応できます。症状を伝えるときは「いつから」「どんなふうに」「体温やSpO2の数値」を添えると、医療者側も判断しやすくなります。パルスオキシメーター(指にはさんで酸素飽和度を測る機器)があれば、その数値も記録を。家族の心理的負担と訪問看護に相談できること在宅酸素療法を支える家族の心理的負担は決して小さくなく、訪問看護は機器管理から心のケアまで幅広く家族を支えます。24時間、本人の呼吸を気にかけ、機器を管理し、急変に備える生活は、家族にとって大きな緊張の連続です。「自分が見ていないときに何かあったら」という不安から外出もままならず、家族自身が疲れ切ってしまうことも少なくありません。町田市・相模原市で訪問する中でも、介護する配偶者が寝不足や食欲低下を訴えるケースは珍しくなく、家族の健康を守ることが在宅生活を続ける土台だと実感します。この負担を家族だけで抱え込まないことが何より大切です。家族が抱え込みやすい負担在宅酸素の家族は、身体的な介護負担だけでなく、常に気を張り続ける精神的な負担を抱えやすい状態にあります。負担の種類具体的な内容精神的負担急変への不安・「自分の責任」という重圧身体的負担見守り・付き添い・機器管理で休めない社会的負担外出や仕事の制限・孤立感判断の負担「受診すべきか」を家族が抱え込むこうした負担は、責任感の強いご家族ほど大きくなりがちです。「弱音を吐いてはいけない」と頑張り続けた結果、家族が体調を崩す例もあります。家族が倒れれば在宅生活そのものが成り立ちません。だからこそ、家族が休める時間をつくり、負担を分散する仕組みを持つことが本人のためにもなります。訪問看護が家族にできるサポート訪問看護は、機器や体調の管理を専門職の目で担い、家族の不安に寄り添いながら在宅生活を継続できるよう支援します。町田市・相模原市を中心に訪問看護を行う中で、在宅酸素の利用者とご家族に対して提供している支援を整理します。サポート内容具体的な支援体調管理定期訪問で呼吸状態・酸素飽和度・むくみを確認機器の確認チューブ・流量・機器の状態を専門職がチェック急変時の相談「様子見か受診か」の判断を電話でも支援家族の相談相手不安や介護の悩みを聞き、対応策を一緒に考える多職種連携主治医・ケアマネ・在宅酸素業者との橋渡し訪問看護が定期的に入れば、家族は「何かあれば相談できる」という安心感を得られます。退院直後の3週間ほどは不安が強く体調も不安定になりやすいため、訪問頻度を多めに設定してこまめに支えることもあります。介護保険や医療保険の対象になる場合が多く、利用のしかたはケアマネジャーや訪問看護ステーションが相談に乗ります。家族の小さな困りごとこそ、訪問看護が力になれる場面。不安を感じている方は、まずピース訪問看護ステーションへお問い合わせください。よくある質問(FAQ)Q1. 酸素濃度・流量を家族が勝手に変えてもいいですか。いいえ、自己判断で変えてはいけません。勝手に上げると、COPDなどではCO2ナルコーシス(二酸化炭素がたまり意識がもうろうとする状態)を招く危険があります。苦しそうな状態が続くときは主治医や訪問看護に連絡してください。Q2. 在宅酸素療法で火気に近づいてはいけない距離はどれくらいですか。厚生労働省は、機器やチューブ、本人から火気を2メートル以上離すよう注意喚起しています。酸素は濃度が高いと小さな火でも激しく燃え広がるため、口元で火を使う喀煙は特に危険です。Q3. 在宅酸素療法をしながら入浴してもいいですか。多くの場合、酸素を付けたまま入浴できますが、必ず主治医の指示を確認してください。息苦しくなりやすいため湯温はぬるめにし、動作はゆっくり行い、不安があれば訪問看護に相談しましょう。Q4. 在宅酸素は「何リットルまで」上げられますか。デメリットはありますか。上限は病状に応じて主治医が個別に決めるため、家族が数値で判断するものではありません。必要量を使う分に大きなデメリットはなく、むしろ不足の方が心臓や体に負担をかけます。ただし指示量を超えて上げるとCO2ナルコーシスの危険があるため、増減は必ず医療者に相談してください。Q5. 訪問リハビリや、家族が休むためのショートステイも使えますか。はい、いずれも利用できます。在宅酸素をしながらの訪問リハビリで呼吸法や動作の練習ができ、介護する家族が休むためのショートステイ(短期入所)も相談可能です。使い方はケアマネジャーや訪問看護に相談してください。Q6. 停電や災害のときに酸素濃縮器はどうすればいいですか。停電すると供給が止まるため、すぐに携帯用ボンベへ切り替えられるよう予備を確保し、手順を家族で練習してください。業者には停電時の連絡窓口があり、優先連絡する利用者として事前登録できる場合があります。Q7. 在宅酸素療法をしている家族を訪問看護はどうサポートしてくれますか。定期訪問で呼吸状態・酸素飽和度(SpO2)・機器を確認し、「様子見か受診か」の判断を電話でも支援します。家族の相談相手となり、主治医・ケアマネジャー・業者との橋渡しも担います。介護保険や医療保険の対象になることが多いので、利用はケアマネジャーにご相談を。まとめ在宅酸素療法は、正しい知識があれば自宅で安心して続けられる治療です。家族が押さえるべき最重要ポイントは2つ。火気を2メートル以上離す火災予防と、酸素の流量を自己判断で変えないことです。加えて、機器の日常管理、停電・災害への備え、急性増悪のサインを知っておくことが本人の安全を守ります。何より大切なのは家族だけで抱え込まないこと。迷ったときは、昼でも夜でも専門職に遠慮なく頼ってください。ピース訪問看護ステーションにご相談ください在宅酸素療法の機器の扱いや急変時の対応に不安はありませんか。ピース訪問看護ステーションが、ご本人とご家族の暮らしを支えます。夜間や休日に急に体調が変わったときの一次連絡先は業者や主治医ですが、「日々の管理が合っているか」「誰に何を相談すればいいか」といった不安は、訪問看護が定期的に伴走しながら整理していけます。こんな方はぜひご相談ください:在宅酸素療法が始まったばかりで、機器の管理や火気の対策に自信が持てない方「いつ病院に連絡すればいいのか」の判断に迷い、不安を抱えている方在宅酸素を使う家族を一人で介護し、負担が大きいと感じている方ピース訪問看護ステーションができること:定期訪問での呼吸状態・機器の確認と、生活に合わせた安全対策の提案急変時に「様子見か受診か」を電話で相談できる体制と主治医・業者との連携ご家族の不安に寄り添い、負担を分散する支援町田市・相模原市・多摩市など東京都南部を中心に対応しています。まずはお気軽にお問い合わせください。関連記事COPDの在宅酸素療法(HOT)、家族が知っておきたい機器の扱いと火災予防|訪問看護のサポート【事例で解説】町田市で在宅酸素療法を支える訪問看護の役割COPDの在宅療養|家族ができる対応と増悪サインの早期発見を解説参考文献一覧出典:日本呼吸器学会「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2022〔第6版〕」(2022年)https://www.jrs.or.jp/publication/jrs_guidelines/出典:日本呼吸器学会・日本呼吸ケア・リハビリテーション学会ほか「呼吸リハビリテーションに関するステートメント」(2018年)https://www.jrs.or.jp/activities/guidelines/statement/出典:厚生労働省「在宅酸素療法における火気の取扱いについて」https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000003m15_1.html【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理、地域医療連携、在宅看取り支援に積極的に取り組んでいる。island-piece.jp 株式会社isLand|訪問看護・居宅介護支援・訪問介護|町田市