高齢者に多く見られる浮腫(むくみ)は、単なる加齢による変化ではなく、心疾患や腎機能障害、栄養不良といった深刻な疾患のサインである場合も少なくありません。訪問看護の現場では、こうした浮腫に対して早期発見と適切な対応が極めて重要です。本記事では、高齢者の足のむくみの原因、疾患の見分け方、訪問看護師が実践するケア方法、予防法まで、地域医療と連携した実例を交えながら詳しく解説します。1. なぜ高齢者に浮腫が多いのか?高齢者が浮腫を訴える背景には、以下のような身体機能の変化や生活習慣が影響しています。原因内容関連疾患対応策加齢による循環機能の低下心臓や血管の働きが低下し、血液やリンパ液の流れが悪くなる心不全、静脈瘤バイタルチェック、医師連携筋力低下・運動不足足のポンプ機能が衰え、血液の戻りが悪化深部静脈血栓症(DVT)訪問リハビリ、軽運動の指導長時間の座位・臥位体内の血流停滞により、むくみやすくなるDVT、褥瘡体位変換、ポジショニング支援2. 浮腫に潜む疾患とその見分け方浮腫の背景に重大な病気が隠れていることがあります。特に以下のようなケースでは、見逃しが禁物です。疾患名主な症状訪問看護での観察ポイント医療連携心不全両足のむくみ、体重増加、呼吸困難頸静脈怒張、聴診でラ音、仰臥位での呼吸苦医師指示のもと利尿薬管理・緊急報告腎不全全身性のむくみ、尿量減少、倦怠感顔の腫れ、皮膚乾燥、食欲不振透析施設との連携、水分・尿量記録肝硬変腹水、下肢のむくみ、黄疸皮膚所見、栄養状態、慢性疲労栄養士・主治医と服薬・食事指導深部静脈血栓症(DVT)片足の急な腫れと痛み、熱感ホーマンズ徴候陽性、色調変化安静管理、早期の医師連絡3. 訪問看護での浮腫の観察ポイント浮腫の評価は、疾患の重症度やリスクの把握に不可欠です。左右差の有無:片側性ならDVTの疑い圧迫痕の戻り方:指で押して戻る時間で重症度を確認皮膚の状態:乾燥、びらん、発赤の有無体重変化・呼吸状態:体液貯留の指標既往歴の確認:心・腎・肝の疾患の有無4. ケアでできる対処法と工夫訪問看護では、以下の非薬物的アプローチも組み合わせて行います。● 弾性ストッキング医師の指示をもとに、適切な圧とサイズを選定・装着指導。誤った使用はDVTリスクを高めます。● 足の挙上とマッサージ心臓より足を高く保つことで静脈還流を促進。軽度の浮腫には特に効果的ですが、疾患によっては注意が必要です。● 塩分・水分管理心・腎疾患を持つ利用者では塩分制限や水分調整が重要。栄養士や医師との連携が求められます。5. 浮腫を予防するためにできること家族や介護者が日常的に実践できるセルフケアの工夫を紹介します。予防策解説こまめな体位変換同じ姿勢を避けて血流を保つ足首の回旋・つま先立ち在宅中でもできる簡単な運動室内歩行・立ち上がり運動筋肉ポンプの活性化を促す水分摂取のバランス摂りすぎ・不足を防ぎ、循環を安定6. 家族・介護者との連携の重要性浮腫の早期対応には、多職種連携と家族支援が不可欠です。毎日のむくみ観察の共有症状悪化時の報告体制の整備食事・水分管理の役割分担緊急時の訪問看護ステーションとの連絡手段の確認7. 浮腫の早期発見が予後を左右する高齢者の足のむくみは、命に関わる疾患の兆候であることもあります。だからこそ、訪問看護師の目と感覚が大切です。早期に異変を察知し、地域の病院や医療機関とのスムーズな連携を行うことが、生活の質(QOL)の維持・向上につながります。まとめ高齢者の浮腫は、生活習慣や運動不足だけでなく、重大な病気の初期症状である可能性があります。訪問看護の立場からは、「日々の観察」「的確な対応」「家族との連携」が非常に重要です。浮腫に気づいたら、早めの受診・相談を心がけましょう。関連記事ケアマネ・ご家族必見!高齢者の心不全を支える訪問リハビリの活用法高齢者の熱中症対策完全ガイド、予防・症状・室内での注意点まで【訪問看護で支える】脱水症の見分け方と正しい対応町田市で訪問看護や介護サービスについて知りたい方は、ピース訪問看護ステーションの公式サイトもあわせてご覧ください。▶ https://island-piece.jp/service/houmonkango