高齢化が進む日本社会では、在宅医療のニーズが高まり、「訪問看護」の役割がますます重要になっています。中でも「オンコール対応」は、24時間体制の看護提供に不可欠な仕組みですが、看護師にとって精神的・肉体的な負担も大きい業務です。本記事では、訪問看護におけるオンコール対応の実態、課題、現場の工夫、そして今後の方向性について解説します。1. オンコール対応とは何か?訪問看護におけるオンコールとは、日中以外の時間帯(夜間・早朝・休日など)に、看護師が自宅などで待機し、緊急の電話や訪問要請に対応する体制のことを指します。オンコール担当中の看護師は、利用者や家族からの連絡に備えて、すぐに行動できるよう準備している必要があります。オンコール対応の例時間帯状況対応内容夜間23時呼吸苦の連絡電話指示・必要時訪問早朝5時発熱の訴え状況確認後、医師と連携休日午後カテーテル閉塞緊急訪問対応オンコール体制は、利用者の安心と医療安全を支える大切な仕組みです。2. オンコールの頻度と対応内容オンコールの対応頻度は、事業所や地域によって異なります。ある訪問看護ステーションでは、月に3〜5回の待機が平均的とされており、実際の出動はそのうち1〜2回程度というケースもあります。対応内容の内訳(ある事業所の例)内容割合電話相談のみ60%訪問必要あり35%医師への連絡5%電話対応が大半を占めるものの、状況に応じた迅速な判断が求められます。3. 看護師にとっての負担とストレスオンコール業務は、看護師にとって大きな心理的プレッシャーとなることがあります。夜間も緊張感を持って待機出動の可能性があるため、熟睡できない家族との時間の制約判断ミスへの不安これらが**「オンコールがきつい」と感じる主な要因**とされています。4. ステーション側の工夫と対策多くの訪問看護ステーションでは、オンコール負担軽減のための取り組みが行われています。主な工夫対策内容複数人での交代制一人に偏らないよう分担制を導入オンコール手当の充実負担に見合った報酬を支給ICTの活用電子カルテやチャットで情報共有シミュレーション訓練緊急対応力の向上スタッフが安心して対応できる環境整備が、離職防止にもつながります。5. オンコール体制の構築におけるポイントオンコール体制を整備するには、以下の点に配慮が必要です。構築の要素内容の詳細対応マニュアルの整備判断基準を明確にすることで、不安軽減と対応の質向上に寄与オンコール頻度の適正化公平なローテーションで、偏りと過重労働を防止研修・メンタルケア緊急時の判断力やストレス対処法を習得する研修の実施医師との連携体制迅速な判断支援のための連絡ルートと対応フローを明文化フィードバック体制定期的な振り返りと職員の声を活かした改善策の導入組織全体としての安定運用が、質の高い訪問看護サービス提供の礎となります。6. 法的・制度的な位置づけと勤務ルール訪問看護におけるオンコール対応は、「緊急時訪問看護加算」などの加算算定要件の一部として位置付けられています。緊急時訪問看護加算:24時間対応体制の整備が要件実際の出動回数に関わらず、待機体制が求められるまた、オンコール勤務については、労働基準法上も配慮が必要です。例えば:オンコール中に実際の業務(訪問や対応)が発生した時間は、労働時間として扱われるオンコールを担当できる日数に明確な上限はないが、週の労働時間は原則40時間以内とされており、過重労働にならないよう管理が求められる夜間出動後には休息時間の確保が必要労働時間管理の適正化は、職場環境改善とスタッフ定着の鍵となります。7. 今後の課題と展望今後の課題としては、以下が挙げられます。課題解決へのアプローチ看護師の確保と負担の分散オンコール人材の育成と公平なシフト設計オンコールの外部委託オンコール代行サービスによる常勤者の負担軽減テクノロジーの導入AIやセンサー活用で判断支援・訪問要否の迅速化体制の可視化と評価制度対応実績を記録し、報酬や労務評価へ反映社会的理解の促進オンコールの意義を発信し、職種としての価値向上さらに、オンコール勤務に対する社会的な理解促進も課題です。在宅医療を支えるインフラとしての役割が正しく認識されることで、現場で働く看護師のモチベーション向上や、利用者側の安心感の醸成にもつながります。持続可能な体制を構築することが、在宅医療の質を守るカギとなります。まとめ訪問看護におけるオンコール対応は、利用者の生活と健康を24時間支える大切な仕組みです。一方で、看護師にとっては大きな負担にもなり得るため、体制の見直しや工夫が求められます。現場の声を反映しつつ、制度的・技術的なサポートを進めていくことが重要です。関連記事訪問看護に必要な資格まとめ、看護師・認定看護師・専門看護師の違いと取得方法訪問看護の仕事は本当にきついのか?リアルな現場の声とその実情訪問看護はブランクがあっても大丈夫?安心して復職するためのポイント町田市で訪問看護や介護サービスについて知りたい方は、ピース訪問看護ステーションの公式サイトもあわせてご覧ください。▶ https://island-piece.jp/service/houmonkango