在宅医療が拡大する中、24時間対応の体制を整えるために導入された「緊急時訪問看護加算」。この制度は、訪問看護ステーションが急変時にも迅速に対応できるよう整備されており、利用者にとって安心材料となるだけでなく、看護提供体制の評価指標にもなっています。本記事では、緊急時訪問看護加算の仕組みと算定要件、実務での工夫や注意点について、現場の視点も交えて詳しく解説します。1. 緊急時訪問看護加算とは何か?緊急時訪問看護加算とは、訪問看護事業所が24時間連絡体制を整備し、緊急対応が可能な体制を確保している場合に算定される加算です。この体制とは、利用者やその家族が夜間や休日など、通常の訪問時間外に急変などがあった際にも、看護師へ連絡が取れ、必要に応じて迅速に対応できる仕組みのことを指します。緊急時訪問看護加算の概要加算の種類単位数10割負担額1割負担額(利用者負担)対象者緊急時訪問看護加算(医療保険)574単位約6,000円〜6,380円約600円〜640円全利用者緊急時訪問看護加算(介護保険)574単位約6,140円〜6,420円約615円〜640円要介護・要支援認定者この加算は「24時間体制加算」と混同されやすいですが、緊急時訪問看護加算は緊急時の訪問が実施されたかにかかわらず、体制を整備しているだけで算定可能という点が特徴です。2. 緊急時訪問看護加算の算定要件この加算を算定するためには、いくつかの明確な要件を満たしている必要があります。単に「対応可能」とするだけでなく、その体制が実際に機能する準備が整っていること、そしてそれを利用者や家族にきちんと伝え、同意を得ていることが不可欠です。算定対象の整理要件詳細連絡体制電話、携帯、コールセンター等で24時間連絡可能実施体制夜間・休日含む訪問可能な体制同意取得書面または記録として残る形での同意同意取得の記録がない場合は加算対象外となるため、確実に記録を残すことが重要です。たとえば、初回訪問時に同意書を取得し、それを電子カルテや記録システムに保存することで算定の根拠が明確になります。3. 緊急時訪問看護加算と24時間対応体制加算の違い両者はよく似た加算ですが、制度上の目的や適用される保険が異なるため、混同しないよう注意が必要です。加算名内容加算の種類緊急時訪問看護加算体制を整備するだけで月1回算定医療保険、介護保険24時間対応体制加算主治医の指示による体制で介護保険のみ算定介護保険のみ緊急時訪問看護加算は主治医の指示不要で算定可能という点が大きな特徴です。これは訪問看護ステーション側の自主的な体制整備によるもので、医師の関与が不要なため、比較的導入しやすい加算でもあります。4. 現場での実務対応と工夫加算を算定するだけでなく、実際に緊急対応が求められた際に、スムーズに対応できる体制づくりが重要です。そのためには、看護師の業務負担を軽減しつつ、信頼性の高い仕組みを構築する必要があります。実務でのポイント当番制を導入して、オンコール対応の負担を平準化することで、スタッフの負担感を軽減し、持続可能な体制を維持します。緊急連絡の初動対応マニュアルを整備しておくことで、急変時にも慌てることなく、標準的な対応が可能になります。緊急訪問時の記録テンプレートを用意することで、訪問内容の抜け漏れを防ぎ、後日の監査や情報共有にも役立ちます。スタッフ間の連携と情報共有が鍵となります。夜間・休日の対応では、日中の情報がきちんと引き継がれているかが非常に重要です。そのため、申し送りの仕組みを整えることが現場では強く求められています。5. 利用者・家族への説明と信頼構築利用者や家族に安心して在宅生活を送ってもらうためには、緊急時の対応体制についての説明を明確かつ丁寧に行う必要があります。その際、単なる「24時間対応です」という説明にとどまらず、どういった場合に連絡すべきか、どのような対応が可能かについて、具体例を交えて説明することが有効です。具体的には、緊急連絡先の周知(紙媒体、マグネット等での掲示)連絡可能な時間帯の明示(例:夜間帯は携帯に直接連絡)対応範囲の明確化(発熱・転倒・呼吸苦など)などがあげられます。利用者との信頼関係は、こうした丁寧な説明と日々の対応の積み重ねによって築かれます。6. 緊急時訪問看護加算の算定漏れを防ぐ方法制度上は整っていても、記録や同意取得に不備があると加算を算定できないことがあります。そのため、運営管理の観点からも、以下のような工夫が必要です。初回契約時に同意書を取得し、電子カルテに添付する運用を徹底する加算対象者を一覧化し、毎月確認するチェック体制を設ける定期的に内部監査を行い、記録や体制に不備がないかを確認する特に定期的なチェックリスト運用により、現場のスタッフが自発的に確認できる仕組みを整備することが重要です。7. 2024年度改定の影響と今後の動向2024年度の診療報酬・介護報酬の同時改定では、在宅医療に対する体制強化が求められる中で、緊急時訪問看護加算の重要性も再認識されました。主な動きとしては、緊急対応の質や記録の正確性が、加算評価の指標としてより重視される訪問看護記録の電子化が進められ、対応の迅速性と透明性が求められるといった傾向があります。今後は、ICTを活用したオンコール管理や、AIによるリスク予測など、新しい技術の導入も進むと予想されます。まとめ緊急時訪問看護加算は、訪問看護における安心の象徴であり、質の高い在宅医療を支える制度です。体制整備だけでなく、日々の実務における丁寧な対応や記録の工夫が、信頼を生み、適切な加算算定にもつながります。今後の制度改定や技術進展に対応しながら、常に「利用者本位」の視点での体制づくりが求められています。関連記事訪問看護の【初回加算】完全ガイド、算定要件・点数・注意点を徹底解説【2025年対応】訪問看護における退院時共同指導加算とは?算定要件や注意点を解説 訪問看護における特別管理加算とは?要件・対象者・注意点まで徹底解説町田市で訪問看護や介護サービスについて知りたい方は、ピース訪問看護ステーションの公式サイトもあわせてご覧ください。▶ https://island-piece.jp/service/houmonkango