秋は朝晩の寒暖差や気圧変動、生活リズムの変化が重なり、だるさ・食欲不振・睡眠の質低下・めまいなどの体調不良(秋バテ)が増える季節です。高齢者や慢性疾患を抱える方、子ども、在宅療養中の方では影響が大きく、放置すると転倒・感染症・フレイルの悪化にもつながります。本記事では、最新知見と在宅現場の工夫を交え、原因、セルフチェック、日中の過ごし方、食事・睡眠・運動・メンタルケア、疾患別の注意点まで網羅。ご家族や支援者、訪問看護ご利用者にも役立つ実践ガイドです。1. 秋に体調不良が起こる理由とは秋は「季節の変わり目」。気温・湿度・気圧の急変に、自律神経が追いつかず、だるさや頭痛、消化器症状が出やすくなります。夏の疲労蓄積や生活リズムの乱れも拍車をかけます。特に高齢者では体温調節能・循環調整能が低下しやすく、脱水や循環不全、転倒リスクが上がる点に注意が必要です。自律神経の視点交感・副交感のバランスが崩れ、睡眠の質低下、胃腸の蠕動低下、血管収縮/拡張の過剰反応(頭痛・立ちくらみ)低気圧時のセロトニン低下、痛覚感受性の亢進現場のコツ:朝は「温かい飲み物+軽いストレッチ」で交感神経を穏やかに立ち上げ、夜は湯温40℃・10~15分の入浴で副交感優位へ切替え。出典:日本気象協会「気圧と体調の関係」https://www.jma-net.go.jp/contents/education/pressure_health.html2. 秋バテのセルフチェックと体調不良のサイン1週間の自己観察で傾向を掴みましょう。合計が3点以上は「要調整」、5点以上は「要相談」の目安です。チェック項目はい=1/いいえ=0コメント日中の強い疲労感が続く睡眠と栄養の再点検入眠/中途覚醒が週3回以上夕方以降のカフェイン・スマホ光制限食欲低下・食欲の変化たんぱく+ビタミンB群を意識立ちくらみ・めまい起立動作をゆっくり、起床時は深呼吸便秘または下痢が続く発酵食品・水分と歩行量を調整気分の落ち込み/不安増強ルーティン運動と日光曝露咽頭痛・咳・発熱インフルエンザ流行期は検査相談出典:日本看護協会「生活リズムとセルフケア」https://www.nurse.or.jp/nursing/practice/health/rythm.html3. 体調を崩しやすい人のリスク因子対象リスク予防の焦点高齢者脱水、低栄養、起立性低血圧、転倒循環・体温管理、たんぱく/水分、環境調整心不全・COPD気圧変動で呼吸・循環負荷増大体重・SpO₂・浮腫の毎日モニタ糖尿病感染症で血糖悪化ワクチン、シックデイルール遵守うつ・不安障害日照時間減少で抑うつ傾向朝散歩、行動活性化小児新学期ストレス、睡眠不足生活変化の見える化、就寝前ルーティン出典:日本老年医学会「高齢者のフレイル予防」https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/jsge_guideline.html4. 日中の過ごし方:予防の基本戦略キーワードは“温・栄・動・眠・整”。温:重ね着で寒暖差を吸収。室温18℃以上(高齢者・持病ありは20℃前後)、湿度40〜60%。栄:ビタミンB群+たんぱく質で代謝促進。鉄・亜鉛不足にも注意。動:1日60分の身体活動+週60分の運動+週2〜3回の筋トレ(厚労省アクティブガイド2023)。眠:入眠90分前の入浴、就床・起床時刻固定。昼寝は15〜20分まで。整:毎朝の日光曝露で概日リズム調整。呼吸法・趣味活動でやる気を回復。出典:厚生労働省「アクティブガイド2023」https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001222159.pdf5. 感染症シーズンの備え(インフルエンザ/COVID-19)秋はインフルエンザ流行の立ち上がり期。ワクチンは12月中旬までの接種完了が望ましいと厚労省が推奨。予防策実践ポイント訪問看護の支援ワクチン毎年流行前に接種予約・体調確認、副反応観察手指衛生石けんと流水20秒手順指導、皮膚トラブル対策換気定期的な窓開け・対角換気保温調整、動線設計SpO₂:感染症自宅療養中に93%以下になったら医療相談を。持病がある場合は症状があればそれ以上でも早めに。出典:厚生労働省「インフルエンザQ&A」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2024.html出典:厚生労働省「COVID-19自宅療養の手引き」https://www.mhlw.go.jp/content/001074199.pdf6. 食欲不振・胃腸不調への具体策重要ポイント:温かい・消化に優しい・たんぱく質を確保。朝は具だくさん味噌汁+卵/豆腐を基本形に。昼は主食・主菜・副菜の栄養バランスを意識。香味野菜(生姜・大葉)や発酵食品で食欲刺激。冷たい飲食の摂り過ぎを避ける。便秘には水分と食物繊維(果物は皮ごと)、下痢時は脂質・乳糖を控え、電解質補給。補足:どうしても食欲が出ない場合は、経口補水液や栄養補助ドリンク(医師・管理栄養士に確認の上)を補助的に使用。食事が細くても、1日3回よりも小分けに4~5回に分けて摂取することで負担を減らせます。出典:日本栄養士会「季節の食事と体調管理」https://www.dietitian.or.jp/consultation/season/7. 睡眠の質を上げるホームプログラムベッドルーティン:ストレッチ→入浴→就寝準備→就床(同時刻)→呼吸法3分。環境調整:照度300lux以下、騒音<40dB、室温18℃以上(高齢者や持病がある方は20℃前後を目安)、寝具の摩耗確認。朝スイッチ:カーテンを10cm開けて寝る/目覚めたら座位→深呼吸→コップ1杯の水。補足:高齢者や認知症のある方では「昼夜逆転」が起こりやすく、昼間の散歩や日光曝露で活動を増やすことが効果的です。昼寝は15〜20分、夕方以降は避けましょう。夕方以降は刺激物を控え、夜間は静かな環境を保つよう支援が重要です。出典:日本看護協会「睡眠と健康の基礎知識」https://www.nurse.or.jp/nursing/practice/health/sleep.html8. だるさを断つ“10分×3”運動メニュー在宅でも続くショートブロック運動を紹介します。モーニング:座位足踏み2分→足首回し1分→肩回し1分→立位スクワット軽め(5回×2セット)デイ:家事歩行+階段1往復→つま先立ち20回→壁押しプッシュアップ10回イブニング:股関節ストレッチ→タオル肩甲骨エクササイズ→ポンピングでむくみ軽減補足:転倒リスクがある場合は、壁や手すりの近くで実施し、滑りにくい靴下や運動靴を使用してください。必要に応じて歩行器や杖の併用も検討しましょう。👉 作業療法士からのワンポイントアドバイス:運動を「家事や日常動作」と結びつけると習慣化が容易です。例えば「歯磨きの後にスクワット5回」「テレビのCM中に足首回し」など、短時間でも生活の流れに組み込むと継続につながります。出典:日本理学療法士協会「自宅でできる運動」https://www.japanpt.or.jp/about/health/athome/9. メンタルと社会参加:やる気を取り戻す小さな工夫1日のToDoは3つだけに圧縮し達成感を確保。週1回は誰かと話す(電話/オンライン含む)。独居高齢者は地域包括支援センターへ相談。趣味(園芸、手工芸、音楽)を「午前中」に配置し、活動の循環を作る。補足:町田市の地域包括支援センターやボランティア活動に参加することも、孤立予防や気分安定に有効です。身近な地域資源を活用しましょう。出典:日本社会福祉士会「地域で支える孤立予防」https://www.jacsw.or.jp/10. 持病がある方の“秋の注意点”Q&AQ1:心不全があり、寒暖差で息切れが増えます。体重±1~2kgの変動、むくみの出現は受診目安。塩分6g/日以下、水分量は医師指示に従う。Q2:パーキンソン病で便秘と眠気がつらい。服薬時間の再調整、食物繊維と水分、午後の短時間歩行で覚醒度を上げる。Q3:糖尿病で食欲が落ちた。シックデイルールに沿い、補食で低血糖を回避。発熱時は早めに相談。補足:認知症の方では、秋の生活リズム変化で「夕暮れ症候群(サンセット症候群)」が増える場合があります。穏やかな声かけや照明の工夫で安心感を保つことが大切です。また、関節疾患(変形性膝関節症など)の方は冷えにより痛みが悪化しやすく、防寒と関節保護を意識しましょう。出典:日本医師会「かかりつけ医のススメ(慢性疾患管理)」https://www.med.or.jp/people/info/11. 訪問看護の利用を検討すべきタイミング秋バテや慢性疾患で不調が続く場合、「どこまで自宅で対応できるか」「いつ医療に相談すべきか」の判断は難しいものです。訪問看護を利用することで、自宅でのバイタルチェック(血圧・脈拍・SpO₂など)や服薬管理が可能食欲低下や睡眠障害に対する生活支援やリハビリ的関わりが受けられる感染症シーズンに備えた衛生指導やワクチン相談ができるご家族の介護負担が軽減し、安心して療養生活を送れるといったメリットがあります。「ちょっと不安だな」と思ったら、早めに訪問看護を検討することが安心につながります。出典:日本看護協会「訪問看護の提供内容」https://www.nurse.or.jp/home/visiting-nurse/index.html12. 女性のホルモンバランスと秋の体調変動秋はプロラクチン・メラトニン変動や冷えにより、月経随伴症状(PMS/PMDD)が悪化する方も。温活+睡眠整え+鉄分を柱に、必要なら婦人科に相談。セルフケアでは限界があるため、違和感が強い場合はかかりつけ医や専門医へ相談しましょう。出典:厚生労働省「女性の健康支援」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/josei/index.html13. 皮膚の乾燥・かゆみ対策入浴はこすらず泡で。入浴後はなるべく早く(10分以内を目安)に保湿剤(ヘパリン類似物質/ワセリン)を塗布。遅れた場合も1時間以内の保湿は有効です。エアコン暖房期は加湿と保湿のセット運用。衣類はウールの“チクチク”を避ける。出典:日本皮膚科学会「かゆみ・乾燥肌の対策」https://www.dermatol.or.jp/qa/14. 医療に相談すべきサイン38℃以上の発熱が3日以上、呼吸困難、胸痛、意識障害、脱水徴候(尿量減少、口渇)ふらつきで転倒が増えた/急な片麻痺・構音障害(脳卒中疑い)体重の急減・うつ気分が2週間以上出典:厚生労働省「受診の目安と相談先」https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000635178.pdf15. 1週間リセット計画日朝(温)昼(動)夕(整)食(栄)月白湯+ストレッチ10分歩行×1ぬるめ入浴豚肉生姜炒め+野菜火首元を保温家事で中等度活動深呼吸3分豆腐ときのこの味噌汁水日光15分階段1往復画面オフ1時間前鮭のホイル焼き木温かい飲み物室内サーキット湯上がり保湿玄米+納豆金体調メモ更新近所へ買い物歩き音楽タイム鶏むねと彩り野菜土皮膚保湿強化公園で散歩入浴10分さつまいも+ヨーグルト日体重・SpO₂測定家族と会話ストレッチ旬の果物出典:国立長寿医療研究センター「フレイル予防の生活手引き」https://www.ncgg.go.jp/ri/lab/cgss/care_prevention.htmlまとめ秋は季節の変化が重なり体調を崩しやすい時期です。自律神経ケア、栄養・運動・睡眠・メンタルの予防5本柱を整えれば、多くの不調は在宅で改善可能です。持病や高齢者、小児では早めの相談・連携が安全です。訪問看護ではバイタルの継続評価、生活支援、感染対策、環境整備まで一体的に伴走できます。体調に不安を感じたら、ピース訪問看護ステーション へご相談ください。関連記事季節の変わり目に体調不良が起きやすい理由と対策まとめ—自律神経・睡眠・栄養で整える秋のアレルギーの症状と対策を徹底解説大人が秋にかかりやすい病気一覧とその対策執筆者作業療法士/回復期リハ病院7年、町田市で訪問看護・訪問リハ5年。AMPS認定評価者。CI療法外来経験、OBP中心の在宅支援に精通。監修者看護師(訪問看護ステーション管理者)。急性期看護を経て在宅へ。終末期ケア・慢性疾患管理・在宅看取りに精通。