朝の起床介助で、ベッドの端に座ったご本人を車椅子へ移す。1日に何度も繰り返すこの動作で、介護するご家族の腰が先に悲鳴を上げることがあります。「ぎっくり腰をやってしまって、1週間ほど介護ができなかった」。町田市や相模原市のご家庭に伺っていると、この話を年に何度も聞きます。移乗介助は、在宅の介護動作の中でもっとも腰に負担がかかる場面です。相手の体重を前かがみで受け止め、そのままひねって回す。しかも1日1回では終わりません。起床、トイレ、食事、入浴、就寝。回数が積み上がるほど、腰は確実に削られていきます。ただ、移乗介助で腰を痛める原因ははっきりしていて、対策も決まっています。姿勢の作り方と、持ち上げないための道具の使い方。町田市・相模原市の訪問で、ご家族に実際にお伝えしている順番に沿って解説します。この記事でわかること移乗介助で腰を痛める仕組みと、ご家族が陥りやすい介助のくせボディメカニクスの8原則を、ベッドから車椅子への移乗介助に落とし込んだ使い方ベッドから車椅子へ、車椅子からベッドへの手順と、一人での移乗介助のコツ片麻痺・体格差・全介助など、状態別に変える移乗介助のポイントスライディングボードやリフトの選び方と、介護保険でレンタルする方法ベッドから車椅子への移乗介助、なぜ家族の腰を痛めやすいのかベッドから車椅子への移乗介助で腰を痛めやすいのは、前かがみと体のひねりが同時に起きる姿勢のまま、相手の体重を腰の一点で受け止めているからです。厚生労働省は、腰痛が休業4日以上の職業性疾病の約6割を占める労働災害だとしたうえで、平成25年に「職場における腰痛予防対策指針」の適用範囲を福祉・医療分野の介護・看護作業全般へ広げました(出典:厚生労働省「『腰痛予防対策指針』による予防のポイント」)。研修を受けた介護職でさえ組織的な対策が必要な動作を、ご家族は道具も教わる機会もないまま毎日こなしています。腰に負担が集中する4つの動作動作腰で起きていること負担を下げる方向前かがみで抱える自分の上体と相手の体重が腰に集中する膝と股関節を曲げて腰を落とす抱えたままひねる圧縮する力にねじれる力が上乗せされる足を踏みかえて体ごと向きを変える相手を持ち上げる浮かせる瞬間に最大の力が必要になる持ち上げず、滑らせる・回す腕を伸ばして支えるてこの腕が長くなり必要な力が何倍にもなる相手に体を近づけてから支えるこの4つは単独でも腰に負担がかかります。厄介なのは、実際の移乗介助ではほぼ同時に起きること。ベッドの端に座った方の脇から手を回し、前かがみで抱え、腕を伸ばしたまま車椅子へひねる。ご家族が自然にやっている流れが、腰には最も避けたい組み合わせです。指針でも、作業対象に身体を近づけ、前屈やひねりをなるべく小さくし、頻度と時間を減らすことが作業姿勢の基本に挙げられています。訪問先で「どの移乗介助がいちばんつらいですか」と伺うと、返ってくるのはたいてい夜間のトイレ。眠い、暗い、急いでいる、体が固まっている。悪条件がそろう時間帯ほど姿勢は崩れます。近づく、ひねらない、回数を減らす。家庭で使える原則はこの3点です。やってはいけない移乗介助のくせよくあるくせ何が起きるか置き換える動き脇の下に腕を入れて引き上げる相手を真上に持ち上げる形になる骨盤と肩甲骨を支え、前方へ重心を移す足を閉じたまま介助する支える面が狭く、崩れると一緒に倒れる足を前後・左右に開いて構える相手の腕を引っ張る高齢者では肩や皮膚を傷めるおそれがある引かずに体幹を支えて誘導する車椅子のブレーキを忘れる座る瞬間に車椅子が逃げて転倒する座面に触れる前に左右を指で確認掛け声なしで急に動かす相手が身構えて固まり、必要な力が増える「1、2の3で立ちますね」と予告する移乗介助で絶対に避けたいのはこの5つ。中でも脇の下から引き上げる介助は、ご家族がもっともやりがちで、もっとも腰に来ます。ブレーキ忘れは、腰ではなく事故に直結するくせ。日本リハビリテーション医学会も「リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン 第2版」を刊行し、事故防止の考え方を示しています(出典:日本リハビリテーション医学会「診療ガイドラインのご案内」)。専門職でも毎回確認する項目。家庭で指差し確認をしても大げさではありません。腰に負担をかけない移乗介助の基本「ボディメカニクス」とはボディメカニクスとは、骨格や筋肉の働きを力学的に使い、少ない力で安全に人を動かす考え方で、移乗介助の腰痛予防の土台になります。特別な筋力は要りません。同じ体格でも、この原則を知っているかどうかで移乗介助の楽さは変わります。腰痛と職業の関係、腰痛予防に有用な方法は、「腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)」でもクエスチョンとして設定されているテーマです(出典:日本整形外科学会・日本腰痛学会「腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)」)。ボディメカニクス8つの原則原則移乗介助での具体的な使い方支える面を広くとる足を前後・左右に肩幅以上に開いて立つ重心を低くする膝と股関節を曲げ、背中は丸めずに腰を落とす重心を近づける相手の体に自分の体を密着させてから動かす体を小さくまとめる相手の腕は胸の前で組み、膝は曲げてもらう大きな筋群を使う腰ではなく太ももとお尻の筋肉で動かす水平に移動する座面の高さをそろえて滑らせる体をひねらない上半身と足の向きをそろえ、足を踏みかえるてこの原理を使う支点を決め、相手の重心を前や横へ転がす8つ全部を同時に意識するのは難しいので、移乗介助では上から3つ、「広く・低く・近く」をまず覚えてください。支える面は両足で囲まれた床の面積。狭いほど崩れやすく、相手がふらつくと一緒に倒れます。よくある失敗は、膝を曲げずに腰だけ折ること。一見低く見えますが、腰には最悪の姿勢です。膝が曲がっているか、背中が丸まっていないかを鏡で確認してください。「体を小さくまとめる」も効果の大きい原則。腕を胸の前で組み、膝を曲げて足を手前に引いてもらうだけで回しやすさが変わります。持ち上げずに「滑らせる・回す」へ切り替える考え方やること向いている場面滑らせる座ったまま横方向へずらす座面の高さをそろえられるとき回すかかとを支点に体の向きを変える立位が少しでも保てるとき転がす側臥位を使って体位を変えるベッド上の移動、着替え、おむつ交換押す・引く車椅子やベッドの位置をこちらが動かす相手を動かす前に環境を整える段階移乗介助で腰を守る最大のコツは、「持ち上げる」を選択肢から外すことです。厚生労働省の指針は、福祉・医療分野の介護・看護作業について「人を抱え上げる作業は、原則、人力では行わせない。福祉用具を活用する」と明記しています。職場向けですが、毎日介助するご家族にも同じ考え方が当てはまります。人力だけで取り扱う重量の目安も指針に示されています。満18歳以上の男性で体重のおおむね40%以下、女性は男性が取り扱う重量の60%程度です。体重60kgの男性なら24kg前後、体重60kgの女性なら14kg前後という計算になります。成人の体重は、どう見てもこの範囲を超えます。そこで発想を「浮かせる」から「移す」へ切り替えます。座面の高さをそろえて横に滑らせる、立った状態でかかとを軸に回す、ベッド上では転がす。抱え上げないという一点を守るだけで、腰にかかる負担の質が変わります。ベッドから車椅子へ・車椅子からベッドへ|移乗介助の手順とコツベッドから車椅子への移乗介助は、準備を整える、端座位を安定させる、足を踏みかえて回すの3段階に分けると、腰を痛めずに安全に行えます。端座位とは、ベッドの端に腰かけて両足を床に下ろした姿勢のこと。ここが不安定なまま立ち上がりに入ると、そのぐらつきを介助者が腕で引き受けることになります。移乗介助の前に整える5つの準備準備項目整え方目安車椅子の位置ベッドに対して斜めに寄せる訪問の現場で使う目安は20〜30度ブレーキ左右とも必ずかける座面に触れる前に指で確認フットレスト上げるか外す足を下ろす動線から完全にどけるベッドの高さ足裏が床につく高さに合わせる膝が股関節と同じかやや低い位置履物と床滑らない靴を履き、床の水気を拭くスリッパやサンダルは使わない準備の出来で移乗介助の8割が決まります。中でも効くのが車椅子の角度。真横だと横移動が長く、真正面だと回す角度が大きくなります。斜めなら両方を小さくできます。ベッドの高さは、持ち上げるかどうかを分ける決定的な要素。低いと立ち上がりに力が要り、高すぎると足が床につかず踏ん張れません。高さ調整のできるベッドがなければ高齢者向けベッドを介護保険でレンタルする方法とそのメリットもご覧ください。履物も見落とせません。指針は作業時の靴について、足に合ったものを使用しハイヒールやサンダルは使用しないことと明記しています。ベッドから車椅子への手順手順動作腰を守るポイント1これからの動きを予告する短く具体的に伝え、身構えさせない2膝を曲げ、横を向いて端座位になってもらう肩と骨盤を支え、頭は自分で上げてもらう3足裏を床につけ、浅く座り直すお尻を左右交互に動かして前へ出てもらう4腕を胸の前で組んでもらう首に腕を回させない5足を前後に開き、腰を落として密着する自分の膝が相手の膝を支える位置に入る6「1、2の3」で前方へ重心を移し、お辞儀の形で立つ上に引き上げず、前に転がす感覚7足を踏みかえて向きを変え、ゆっくり座ってもらう体はひねらず、足で方向転換する手順3の「浅く座り直す」は飛ばされがちです。深く腰かけたままだと立ち上がりに大きな力が要ります。お尻を片側ずつ浮かせて前に出す動きは多くの方がご自分でできるので、ここを丁寧にやると介助者が支える力は目に見えて軽くなります。手順6が移乗介助の山場。人が立ち上がるとき、重心は真上でなく前方へ移ります。鼻がつま先の上に来るくらいまでお辞儀をしてもらってから膝が伸びる。この流れに沿えば、介助者は支えるだけで済みます。手順7の足の踏みかえは腰のねじれを防ぐ要。足を床に固定したまま上半身だけ回すと、腰椎にねじれの力がかかります。車椅子からベッドへの手順手順動作注意点1車椅子をベッドに斜めに寄せ、ブレーキをかける移る側のアームサポートは跳ね上げる2フットレストから足を下ろし、足裏を床につけるフットレストは上げるか外す3浅く座り直し、腕を胸の前で組んでもらう車椅子から落ちないよう支えながら4前方へ重心を移して立ち上がりを支える自分の膝で相手の膝を支え、膝折れに備える5足を踏みかえてベッドへ向きを変える膝裏がベッドの縁に触れる位置まで6ゆっくり腰を下ろし、端座位を安定させる落ちるように座らせない車椅子からベッドへ戻るのは、ベッドから出るときより疲れているタイミング。筋力も集中力も落ちるため、膝折れが起きやすくなります。備えは、自分の膝を相手の膝の前に置いておくこと。抱えて支えようとした瞬間に全体重が腰へ来ます。見落とされがちなのが、横になったあとのベッド上での移動。体が斜めのまま真ん中へ寄せようと引っ張る場面で腰に来ます。膝を立ててもらってから骨盤を少しずつ滑らせるか、横向きにして転がしてください。摩擦が皮膚トラブルにつながることもあるため、褥瘡(床ずれ)の在宅予防|体位変換とスキンケアの正しい方法も参考になります。一人で移乗介助をするときのコツ困りごと一人でできる工夫支えきれるか不安立ち上がりの直前に一度止まり、姿勢を確認する移動距離が長い車椅子を先に動かし、相手が動く距離を最短にする相手が急に力を抜く挟まれないよう、自分は斜め前に立つ途中で手が離せない介助バーを設置し、相手に片手でつかんでもらう夜間で判断が鈍るポータブルトイレを使うなど移乗自体を減らす一人での移乗介助で最も効くのは、「相手が動く距離を最短にする」という考え方。車椅子をぎりぎりまで寄せる、先にベッドの端へ寄っておいてもらう。この2つで移動距離は縮まります。二人で行ったほうが安全な場面もあります。体格差が大きいとき、膝折れの不安があるとき、新しい手順を試すとき。ただし息が合わないと不自然な姿勢になるため、掛け声の役を一人に決めておいてください。住まい全体の手すりを検討するなら介護保険で手すりを設置するには?条件・費用・申請手続きのすべてが参考になります。移乗介助のたびに腰が痛む、支えきれずヒヤッとした。そうした状態が続くなら、やり方を変える時期です。町田市・相模原市で在宅療養をされている方はピース訪問看護ステーションへお問い合わせください。実際の寝室で動作を見ながら手順を組み立てます。片麻痺や体重が重い方など状態別の移乗介助のポイント移乗介助の基本は同じでも、片麻痺・体格差・全介助では、どこを支えてどちら側から動かすかが変わります。片麻痺の方を車椅子へ移乗させるとき項目基本の考え方車椅子を置く側麻痺のない側(健側)に斜めに置く立ち上がりの軸健側の足と手を使ってもらう介助者の立ち位置麻痺のある側(患側)の斜め前患側の手膝の上に置くか胸の前で組む回る方向健側へ回る。患側へは引っ張らない片麻痺の方の移乗介助は、麻痺のない側である健側をどう使うかで決まります。健側に車椅子を置けば、健側の手でアームサポートをつかみ、健側の足で踏ん張って回れます。逆に麻痺のある患側へ回そうとすると、支えのない方向へ体を投げ出すことになり、介助者が全部受け止めることになります。介助者は患側の斜め前に立ちます。崩れるのは患側だから。患側の膝が折れないよう自分の膝で支え、骨盤で上体を支える。健側は本人に任せ、手を出しすぎないほうがうまくいきます。麻痺のある肩は関節がゆるみやすいため、患側の手は膝の上か胸の前に置いてもらいます。詳しくは片麻痺でも自宅で暮らし続けるための生活の工夫と訪問リハビリの活用にまとめています。体重が重い方・介助者との体格差が大きいとき状況リスク対応相手の体重が介助者より重い支えきれず共倒れになる人力をやめ、福祉用具に切り替える身長差が大きい介助者が背伸びや前かがみになるベッドの高さで差を吸収する相手が力を入れられない全体重が介助者にかかるリフトやボードを導入する介助者に腰痛の既往がある再発しやすい二人介助か用具の使用を前提にする体格差の問題は、気合いや慣れで埋まりません。前述した人力で扱う重量の目安に照らせば、体重50kgの方が60kgの方を支えるのは大きく超えています。現実的な解決策は2つ。ベッドの高さで差を吸収するか、道具を入れるかです。身長の低い介助者ならやや低めに、高い介助者は高めに。介助する人によって最適な高さは違います。腰痛の既往がある方は無理をしないと決めておいてください。腰痛は再発しやすく、指針でも休職からの復帰時には産業医などの意見を聴いて必要な措置をとることとされています(出典:厚生労働省「腰痛予防対策」)。立てない方・指示が通りにくい方の移乗介助状態移乗の選び方立位がまったく取れないスライディングボードか移動用リフトを使う数秒なら立てる立ち上がり介助と回転移乗を短時間で行う声かけの理解が難しい動作を一つずつに分け、体に触れて方向を伝える移乗を嫌がる、抵抗するいったん中止し、時間や介助者を変えて試す座位が保てないベッド上での体位変換とリフトを組み合わせる立位がまったく取れない方を人力で移乗介助するのは、腰の負担でも安全でも無理があります。迷わず道具を使ってください。認知症などで指示が通りにくい方には、言葉を増やすより動作を減らすほうが伝わります。「立ちましょう」ではなく、まず「足を引きますね」と触れながら足を動かす。次に「お辞儀してください」と肩に手を添える。一度に一つずつ伝えてください。抵抗が強いときは、いったん中止する勇気も要ります。力ずくで続けると相手が身をよじり、思わぬ方向に体重がかかります。時間を置く、別の人がやる、テレビを消す。環境を変えると通ることがあります。寝て過ごす時間が増えると体力も落ちるため、廃用症候群を防ぐために、寝たきりを防ぐ訪問リハビリと生活の工夫もご確認ください。「持ち上げない」移乗介助を叶える福祉用具の選び方移乗介助で腰を守る最短の道は、福祉用具を使って持ち上げる工程そのものをなくすことです。移乗介助で使える福祉用具の全体像用具できること向いている状態スライディングボード座ったまま横へ滑って移乗できる座位は保てるが立てないスライディングシートベッド上で体を滑らせて移動できる寝た姿勢での上下・左右移動介助バーつかまって起き上がり・立ち上がりができる部分的に力を発揮できる特殊寝台(電動ベッド)高さと背上げを調整できる起き上がり・移乗の負担を減らしたい移動用リフト吊り具で体を持ち上げて移動できる立位が取れない、体格差が大きい体位変換器少ない力で向きを変えられるベッド上での体位変換が多い福祉用具は「立てなくなってから」ではなく「介助がきつくなってきたら」検討するもの。訪問先では、介助者が腰を痛めてから相談が来るのが実情。それでは用具が届くまでの数週間を乗り切れません。選ぶ順番は、まずベッドの高さ調整と介助バー。この2つで足りるご家庭が最も多いためです。持ち上げる工程が残るならスライディングボード、座位も保てないならリフトへ進みます。制度上の位置づけは介護保険で利用できる福祉用具とは?レンタル・購入のしくみと選び方を解説【2025年最新版】、車椅子の選び方は車椅子を介護保険でレンタルするには?利用条件と選び方を徹底解説をご覧ください。スライディングボードの正しい使い方手順動作注意点1車椅子をベッドの真横にできるだけ近づけるアームサポートを跳ね上げるタイプが必要2ベッドと車椅子の座面の高さをそろえる移る側をわずかに低くすると滑りやすい3体を横に傾け、お尻の下にボードを差し込む坐骨がボードに乗るまで深く入れる4反対端を車椅子の座面にしっかり掛ける掛かりが浅いとボードが外れて落下する5骨盤を支え、少しずつ横へ滑らせる一気に動かさず2〜3回に分ける6移り終えたら体を傾けてボードを抜く抜くときも姿勢を崩さないよう支えるスライディングボードは、ベッドと車椅子の間に橋を架ける板。持ち上げる工程がなくなるため、介助者の腰への負担が大きく下がります。決め手は、高さをそろえることと掛かりを深くとることの2点。車椅子の置き方も切り替えます。立って回る移乗は斜め、ボードを使うときは真横に置いてください。失敗しやすいのは手順3。坐骨(お尻の下で座面に当たる左右の骨)が乗る手前までしか差し込んでいないと、滑り出した瞬間にボードから落ちます。手順5も焦らないこと。一気に滑らせると勢いが止まらず、反対側へ行きすぎます。皮膚が弱い方では摩擦で表皮がはがれることもあるため、衣類の上から使う、専用のカバーを併用するなどの配慮をしてください。導入時は福祉用具専門相談員や訪問リハビリに使い方を見てもらうと安心です。介護保険でレンタル・購入するときの区分と条件用具介護保険での扱い軽度者の給付制限車椅子・付属品福祉用具貸与要支援・要介護1は原則対象外特殊寝台・付属品(介助バー含む)福祉用具貸与要支援・要介護1は原則対象外体位変換器福祉用具貸与要支援・要介護1は原則対象外移動用リフト(つり具を除く)福祉用具貸与要支援・要介護1は原則対象外移動用リフトのつり具部分特定福祉用具販売購入費支給の対象スライディングボード・シート厚労省の品目一覧に名称の記載なし商品ごとに事業者へ要確認介護保険の福祉用具貸与では、手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえ以外の種目について、要支援・要介護1の方は原則対象外とされています(出典:厚生労働省「福祉用具・住宅改修」)。移乗介助で使う車椅子・特殊寝台・移動用リフトは、いずれもこの制限の対象です。ただし例外があります。同じページには、身体の状態等によっては、要介護認定における基本調査結果に基づく判断や市町村への申請により、給付の対象となる場合もあると記載されています。対象となる状態像は用具の種目ごとに定められており、該当するかどうかはケアマネジャーが確認します。要介護1だから無理と決めつけず、まず相談してください。表の最後の行だけは性質が違います。スライディングボード・シートは、このページが挙げる福祉用具貸与・特定福祉用具販売の対象品目一覧のどちらにも名称が登場しません。商品によって貸与にも購入にもなるため、使いたい商品が決まったら福祉用具貸与事業者とケアマネジャーへ確認してください。段差解消や手すり工事は介護保険でできる住宅改修とは?対象工事や申請の流れ、注意点を徹底解説もご確認ください。訪問看護が支える移乗介助と福祉用具の見直し訪問看護と訪問リハビリは、実際の住まいで動作を見たうえで、その方とご家族に合う移乗介助の方法と福祉用具を一緒に決められる立場にあります。訪問看護・訪問リハビリでできること支援内容具体的に行うこと動作の評価残っている力、立位の安定性、危ない場面を見極める介助方法の指導ご家族の体格に合わせた手順を実際の寝室で練習する環境の調整ベッドの向き、車椅子の置き場所、動線を整える用具の提案ケアマネジャー・福祉用具専門相談員へ橋渡しする経過の確認状態の変化に合わせて手順と用具を見直す動画やパンフレットで学べるのは一般的な手順まで。実際の家では、壁付けで近づけない、廊下が狭くて車椅子が回らないといった条件が出ます。そこに合わせて手順を組み替えるのが在宅の専門職の役割です。ご家族への指導では、まず今やっている方法を見せてもらい、腰に来ている一箇所だけを直します。一度に多くを変えると続きません。町田市・相模原市の訪問現場からよくある住環境の課題現場での調整例寝室が和室で布団を使っている介護用ベッドを入れ、立ち上がりの高さを確保するベッドが壁付けで片側しか入れない向きを変え、健側から介助できる配置にする廊下やトイレが狭く車椅子が回らない移乗位置を変更し、移動距離を短くする玄関に段差があり外出のたび抱えるスロープの貸与や住宅改修を検討する町田市・相模原市で訪問看護を提供する中で、移乗介助は最も多く相談を受けるテーマの一つです。特に多いのが、和室に布団で寝ていた方が退院後も同じ環境に戻り、床からの立ち上がり介助でご家族の腰が悲鳴を上げているケース。床からの立ち上がりはベッドからより負担が大きく、訪問先でもご家族の腰の訴えが集中する場面です。もう一つ多いのが、ベッドが壁付けで片側からしか介助できない配置。麻痺のある側からしか入れないと、どうしても患側へ引っ張る形になります。ベッドの向きを90度変えただけで介助が楽になったご家庭もあり、用具を買わずに解決できます。腰が痛い、支えきれない、このやり方で合っているのか分からない。移乗介助にこうした迷いがあるなら、ピース訪問看護ステーションの問い合わせ窓口からご相談ください。よくある質問Q1. ベッドから車椅子への移乗介助で腰を痛めないコツは何ですか。足を前後左右に広く開き、膝を曲げて腰を落とし、相手に体を密着させる。この「広く・低く・近く」が基本です。そのうえで持ち上げず、前方への重心移動と足の踏みかえで回します。ベッドの高さを足裏が床につく位置に合わせ、車椅子を斜めに寄せるだけでも負担は下がります。Q2. 移乗介助のボディメカニクスとはどういう意味ですか。骨格や筋肉の働きを力学的に使い、少ない力で安全に人を動かす考え方です。支える面を広くとる、重心を低く近くする、体をひねらない、大きな筋群を使う、てこの原理を使うなど8つの原則があります。Q3. 移乗介助に便利な福祉用具にはどんなものがありますか。スライディングボード、スライディングシート、介助バー付きの特殊寝台、移動用リフト、体位変換器が代表的です。まず検討したいのは高さを調整できる電動ベッドと介助バー。座位は保てるが立てない方にはボード、立位が取れない方にはリフトが向いています。Q4. スライディングボードの正しい使い方は。車椅子をベッドの真横につけ、両方の座面の高さをそろえます。体を横に傾け、坐骨がしっかり乗る位置までボードを差し込み、反対端を車椅子の座面へ深く掛けます。骨盤を支えて2〜3回に分けて滑らせ、移り終えたら体を傾けて抜きます。浅い差し込みが事故のもとです。Q5. 片麻痺の人を車椅子に移乗させるにはどうすればいいですか。麻痺のない健側に車椅子を斜めに置き、健側の手と足で立ち上がって健側へ回ってもらうのが基本です。介助者は患側の斜め前に立ち、患側の膝を自分の膝で支えます。患側の手は膝の上に置くか胸の前で組んでもらい、引っ張らないでください。麻痺のある肩は傷めやすいためです。Q6. 一人で移乗介助をするのは大変ですか、コツはありますか。一人でも、環境と道具を整えれば安全に行えます。相手が動く距離が最短になるよう車椅子をぎりぎりまで寄せる、介助バーにつかまってもらう、ベッドの高さを自分の体格に合わせる。この3つが効きます。体格差が大きいときや膝折れの不安があるときは、二人で役割を決めてください。Q7. 移乗用のリフトは介護保険でレンタルできますか。移動用リフト(つり具の部分を除く)は福祉用具貸与の対象です。ただし要支援・要介護1の方は原則として給付の対象外で、身体の状況によっては市町村への申請により対象となる場合があります。つり具の部分は特定福祉用具販売の扱いで、購入することになります。可否は担当のケアマネジャーへご確認ください。Q8. 移乗介助で絶対にやってはいけないことは何ですか。脇の下に腕を差し込んで真上に引き上げること、相手の腕を引っ張ること、足を閉じたまま介助すること、車椅子のブレーキをかけずに移ること、声をかけずに急に動かすこと。この5つです。特に真上への引き上げは介助者の腰と相手の肩を同時に傷めます。まとめベッドから車椅子への移乗介助で腰を痛めるのは、前かがみとひねりが同時に起きる姿勢で相手の体重を受け止めているからです。足を広く開き、腰を落とし、相手に近づく。そのうえで持ち上げず、重心移動と足の踏みかえで回す。この流れに変えるだけで負担は大きく変わります。厚生労働省の指針は、介護・看護作業について人を抱え上げる作業は原則として人力では行わせず、福祉用具を活用するとしています。ベッドの高さ調整、介助バー、スライディングボード、移動用リフト。持ち上げる工程を道具に肩代わりさせてください。介護は年単位で続きます。介助する側の腰が壊れれば在宅生活そのものが続きません。最初の一手は、担当のケアマネジャーへ「移乗介助で腰が痛い」と伝えること。福祉用具の手配も訪問看護・訪問リハビリの導入も、そこから動き出します。すでに訪問看護が入っているご家庭は、次の訪問で移乗介助の場面を見てもらってください。ピース訪問看護ステーションにご相談くださいこんな方はぜひご相談ください:ベッドから車椅子への移乗のたびに腰が痛み、いつまで続けられるか不安な方ご家族の体格が大きく、一人で支えきれずヒヤッとした経験のある方退院後に自宅の環境が合わず、移乗や起き上がりで困っている方福祉用具を入れるべきか、何を選べばよいのか分からない方ピース訪問看護ステーションができること:実際の寝室でご本人の動作を評価し、その方に合う移乗手順をご家族と一緒に練習ベッドの向き・高さ、車椅子の置き場所など、住まいの環境調整の提案ケアマネジャー・福祉用具専門相談員と連携した用具の選定と導入の橋渡し状態の変化に合わせた介助方法の見直しと、皮膚トラブル・転倒リスクの継続観察東京都町田市・多摩市、神奈川県相模原市・大和市・川崎市麻生区を中心に対応しています。まずはお気軽にお問い合わせください。関連記事介護保険で利用できる福祉用具とは?レンタル・購入のしくみと選び方を解説【2025年最新版】車椅子を介護保険でレンタルするには?利用条件と選び方を徹底解説褥瘡(床ずれ)の在宅予防|体位変換とスキンケアの正しい方法片麻痺でも自宅で暮らし続けるための生活の工夫と訪問リハビリの活用大腿骨骨折の術後、自宅に戻ってからの生活と再骨折の予防参考文献一覧出典:厚生労働省「『腰痛予防対策指針』による予防のポイント」https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/131114-01.pdf出典:厚生労働省「腰痛予防対策」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_31158.html出典:日本整形外科学会・日本腰痛学会「腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)」(日本医療機能評価機構)https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00498/出典:日本リハビリテーション医学会「診療ガイドラインのご案内」https://www.jarm.or.jp/sinryo-guide/index.html出典:厚生労働省「福祉用具・住宅改修」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000212398.html【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理、地域医療連携、在宅看取り支援に積極的に取り組んでいる。island-piece.jp 株式会社isLand|訪問看護・居宅介護支援・訪問介護|町田市