脳梗塞で入院していた父が退院してきた。話しかけてくれるのは分かるのに、何を言っているのかが聞き取れない。三回聞き返したところで父が黙ってしまい、その日から口数が減った。訪問看護でご家庭に伺うと、こうした場面の相談を本当によく受けます。聞き取りにくさの正体が分からないと、家族は「耳が遠くなったのでは」「頭がぼんやりしてきたのでは」と見当違いの心配を重ねます。実際には理解する力は保たれ、音を作る筋肉だけが動きにくい方が多くいます。構音障害の家族対応で最初に必要なのは、コツの暗記ではありません。何が起きているかを正しくつかみ、聞き手の姿勢を変え、声だけに頼らない道具を足す。この順番で家庭の会話は戻ります。町田市・相模原市で訪問看護に伺う立場から、今日から使える会話の工夫と、筆談ボード・五十音表・コミュニケーションノートの作り方を順に整理します。この記事でわかること構音障害と失語症の違い、そして家庭での見分け方口・舌・声帯のどこがつまずくと、どんな聞こえ方になるのか聞き手である家族が今日から変えられる会話のポイント本人が意識すると伝わりやすくなる話し方のコツ筆談ボード・五十音表・コミュニケーションノートの作り方家族が陥りやすい三つの落とし穴と、受診・連絡が必要になる目安言葉が出てこない、話の理解が難しいという症状が中心の場合は、失語症の家族との接し方|脳卒中で言葉が出なくても「伝わる」会話の工夫とコツも合わせて読んでください。家族の言葉が聞き取りにくいと感じたら、まず知ってほしいこと聞き取りにくさの原因が構音障害であれば、本人の理解力も判断力も保たれているため、家族が接し方を変えるだけで会話は大きく改善します。構音障害と失語症は原因疾患が重なりますが、困っている場所が違います。取り違えると本人の自尊心まで削ります。「言葉が作れない」のか「音が出しにくい」のかを分ける家庭での判断材料は、書いたり指さしたりすれば意思が正確に伝わるかどうかです。確かめること構音障害でよくある反応失語症でよくある反応紙に書いてもらう内容の通じる文が書ける書字も同じように崩れる「はい・いいえ」で聞く正しく答えられる答えが場面と食い違う五十音表を指さす目的の文字を選べる選ぶこと自体が難しいこちらの話の理解ほぼ問題なく通じる長い文になると崩れる書けば伝わる、指させば伝わる、こちらの話は分かる。この三つがそろえば言葉を扱う力は残っています。困っているのは中身ではなく出口で、完成した言葉が音になる段階で崩れます。書字も理解も崩れるなら失語症の可能性があります。接し方は失語症の家族とのコミュニケーション|タイプ別の接し方と訪問リハビリの活用を参照してください。両方が重なる方も珍しくなく、その場合も構音障害への対応から整えると全体が動き出します。聞き取れないときに家族がやりがちな三つの反応聞き返し方を少し変えるだけで、本人が話すのをやめてしまう流れは止められます。家族の反応本人側で起きること置き換える言い方「え?」と短く聞き返す全否定されたように感じる「前半は分かりました」何度も言い直しを求める疲れて発話をあきらめる紙やボードに切り替える分からないまま相づちを打つ誤解のまま話が進む「〇〇ということですか」一番避けたいのは三つ目の分かったふりです。通院日を間違えるといった実害が後から出ます。聞き取れた部分と聞き取れなかった部分を分けて伝えれば、言い直す量が減ります。在宅では、退院してしばらくたつと発話量が落ちる方がいます。訪問で伺う限り、症状そのものの悪化より、伝わらなかった経験の蓄積が背景にある場面が多い印象です。話す機会が減れば口や舌の動きはさらに鈍ります。会話を続けられる形に整えることは、構音障害のリハビリの土台でもあります。構音障害とは何か、失語症との違いと原因になる病気構音障害とは、言葉を選ぶ力は保たれているのに、発声や発音に関わる筋肉が思うように動かず音が不明瞭になる状態です。言語聴覚士が扱う言語障害には失語症・構音障害・高次脳機能障害などがあり、検査と評価を経て訓練や助言が行われます(出典:一般社団法人日本言語聴覚士協会「言語聴覚士とは」)。構音障害の定義と、話す仕組みのどこでつまずくのか話す動作は四つの工程に分かれ、構音障害でつまずくのは後半の二つです。工程担う働き構音障害での状態言葉を選ぶ伝えたい内容を言語にする保たれている声を出す呼気と声帯で音の元を作る声量が落ちる音を作る舌・唇・あごで音を分ける不明瞭になる響かせる鼻や口で音色を整える鼻に抜けた声になる上の二段が言葉を扱う工程、下の二段が音を作る工程で、構音障害は下だけが崩れます。だから書けば伝わり、指させば伝わります。中身は完成しているからです。家族がここを理解しているかで接し方が変わります。短い単語だけで話しかけると子ども扱いに感じられます。静かな環境、正面の位置、書く道具。実際に効くのはこの三つです。失語症との違いを場面ごとに見分ける同じ「話が通じない」でも、どの場面で崩れるかが違います。場面構音障害失語症こちらの話を聞く理解できる理解が難しいことがある文字を書く書ける書字も障害される数字や日付正しく扱える混乱することがある発音の明瞭さ崩れる保たれることが多い見分けの軸は、言葉という記号そのものを扱えるかどうかです。在宅で確かめるなら新聞の見出しを読んでもらうのが早いです。声が不明瞭でも内容を理解できていれば構音障害を疑います。電話番号を書いてもらう方法もあります。正確に書けたなら言葉を扱う力は保たれている見込みが高くなります。ただし数字と言葉では脳の使う経路が一部異なるため、これだけで失語症を否定はできません。正式な診断は医師と言語聴覚士の評価によります。家庭での見分けは接し方を選ぶ目安として使ってください。構音障害を起こす代表的な病気脳卒中と神経難病が二大原因で、それぞれ症状の進み方が違います。原因となる病気起こり方経過の特徴脳梗塞・脳出血急に発症する回復期に改善が見込める筋萎縮性側索硬化症ゆっくり進む進行に合わせた手段が要るパーキンソン病ゆっくり進む声量や抑揚が変化する頭部外傷・脳腫瘍経過はさまざま治療方針で変わる脳卒中では発症直後に症状が出そろい、そこから改善に向かうのが一般的です。治療とリハビリテーションの考え方は日本脳卒中学会がガイドラインを公開しています(出典:日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕」)。筋萎縮性側索硬化症では、のどの筋肉に力が入らなくなることで発音しにくくなり、飲み込みの障害も一緒に進みます(出典:難病情報センター「筋萎縮性側索硬化症(ALS)(指定難病2)」)。パーキンソン病は、ふるえ・動作緩慢・筋強剛・姿勢保持障害を主な運動症状とする病気です(出典:難病情報センター「パーキンソン病(指定難病6)」)。全身の動きの鈍さが発声にも及びます。これらの神経疾患は、日本神経学会が疾患ごとの診療ガイドラインを整備しています(出典:日本神経学会「ガイドライン」)。進行する病気か回復に向かう病気かで、用意する道具の順番も変わります。なぜ聞き取りにくくなるのか、口・舌・声帯の動きと原因疾患構音障害による聞き取りにくさは、舌・唇・声帯・軟口蓋という発音を担う器官のどれが動きにくいかで、まったく違う崩れ方をします。どこが弱っているか分かれば、家庭で整える順番も変わります。発音を作る四つの器官と、障害されたときの聞こえ方崩れ方の特徴から、弱っている場所はある程度推測できます。器官担う音動きが悪いときの聞こえ方舌タ行・サ行・ラ行音が濁る、区別がつかない唇パ行・バ行・マ行語頭がつぶれる声帯声の大きさと高さ声がかすれる、小さい軟口蓋鼻に抜ける音の調整鼻声になる舌の動きが鈍るとタ行とサ行の区別がつかず、「さかな」が「たかな」に近く聞こえます。唇の力が落ちるとパ行やバ行の語頭がつぶれます。単語の頭が抜けるため推測しにくくなります。声帯の動きが悪い場合は明瞭さより先に声量が落ち、テレビを消すだけで会話が成立することもあります。家族がここまで分類する必要はありません。どの音が聞き取りにくいかは言語聴覚士に伝える情報になります。病気のタイプで変わる話し方の特徴原因によって、構音障害の現れ方には傾向があります。原因話し方の傾向家庭での対応の軸脳卒中による麻痺片側が動かず音が崩れる短い文に区切ってもらうパーキンソン病声が小さく単調になる静かな環境と近い距離筋萎縮性側索硬化症進行に伴い発話量が落ちる早めに代替手段を導入小脳の障害抑揚が乱れ途切れがちになる区切りで確認する脳卒中後は口の片側だけ動きにくくなることが多く、動く側が聞き手に向くよう座り直すだけで違います。パーキンソン病では、普通に話しているつもりでも声量が足りていないことがあります。促すより距離を詰めるほうが現実的です。進行性の病気では聞き取れる時期のうちに文字盤やノートを用意します。話せなくなってから選ぶと負担が大きくなります。小脳の障害ではリズムが乱れて途切れます。口を挟まず、一区切りついてから確認してください。本人の努力だけで解決する問題ではありません。環境と道具を先に整えます。聞き手側の工夫、家族が今日からできる会話のポイント構音障害の家族対応でもっとも効果が出やすいのは、聞き手である家族が環境と聞き方を変えることです。発音を良くする訓練には時間がかかります。聞き手側の工夫は今日から変えられ、その日のうちに効きます。会話が成立する環境を先に作る静かな環境と正面の位置を確保するだけで、聞き取れる割合は目に見えて変わります。整えること具体的にすること狙い音テレビ・換気扇・水音を止める小さい声を拾う距離と向き一メートル以内で正面に座る口の形を手がかりにする明るさ顔に光が当たる位置に座る口元が見えるようにする時間帯疲れていない時間を選ぶ発話の力が残る時に話す台所で洗い物をしながら背中越しに返事をする。この形が一番伝わりません。手を止めて向き合うだけで聞き返しは減ります。口の形が手がかりなので、マスクのままだと難しくなります。夕方に発話が崩れる方は多く、大事な相談は午前中のほうが確実です。訪問でも、伺う時間帯は本人が話しやすい時間に合わせています。聞き方そのものを変える選択肢を出して選んでもらう形にすると、本人が発話する量を減らせます。聞き方具体例効果はい・いいえで聞く「痛いのは足ですか」一音で答えられる選択肢を出す「お茶か水か、どちらですか」発話量が減る最初の一文字を聞く「何行の音ですか」五十音表につなげられる復唱して確認する「散歩に行きたい、ですね」誤解をその場で防げる自由に答えてもらう質問は負担が大きくなります。「今日はどうでしたか」より「痛みはありましたか」が答えやすいのはそのためです。一度に一つの用件だけにすることも効きます。まとめて聞けば、答える側は二重の負担を負います。ただし二択ばかりでは会話が事務的になります。急がない場面では自由に話す時間も残してください。聞き返す回数の目安を決めると双方が楽になります。二回で伝わらなければ道具に切り替える、という取り決めです。話し手側の工夫、本人が意識したい話し方のコツ構音障害のある本人の側では、ゆっくり・大きく・一息で短くの三点を意識するだけで、聞き取ってもらえる割合が上がります。速く話そうとするほど音は崩れます。急がないことが最大のコツです。話す前に整える姿勢と呼吸音の元になるのは息です。息が足りなければ、口の動きが良くても声になりません。準備すること具体的にすること理由姿勢背もたれから離れて座る息を吸いやすくする呼吸話す前に一度深く吸う一文を言い切る息を作る口の準備唇と舌を数回動かす動きの立ち上がりを良くする口の乾燥一口水を含む舌の動きを滑らかにする寝たままでは声量が出ません。座れる方は座って話すだけで違います。話し始める前に一度息を吸う。この一拍で文の後半が消えにくくなります。口の乾きは見落とされがちです。薬の影響で口が渇いている方は多く、水を一口含むだけで明瞭さが変わります。これらは訓練ではなく準備で、日常に組み込めば特別な時間は要りません。話し方そのものを変える長い文を短く割ることが、構音障害でもっとも効果の大きい工夫です。工夫具体例効果文を短く切る「明日、病院、十時」一息で言い切れる語尾まで言い切る最後の音を落とさない意味の取り違えを防ぐ話題を先に言う「薬のことだけど」相手の推測を助ける大事な語を繰り返す数字や日付を二回言う聞き違いを減らす助詞を省いて単語を並べる形は不自然かもしれません。それでも伝わることが優先です。語尾は最初に消えます。「行かない」の「ない」が落ちると意味が逆になるため、言い切る意識が要ります。数字は特に間違えやすい情報です。時刻や日付は二回繰り返すか書いて渡します。これらは言語聴覚士の訓練内容とも重なります。家庭で意識できる範囲から始めてください。伝わらないときの代替手段、筆談ボード・五十音表・コミュニケーションノートの作り方構音障害で声が伝わらない場面に備えて、筆談ボード・五十音表・コミュニケーションノートの三つを家庭に用意しておくと会話が止まりません。書き言葉が残ることは構音障害の強みです。話す機能が落ちても、書く力と読む力は保たれていることが多いためです。筆談ボードの作り方と選び方筆談ボードは本人の手が動くかで選ぶのが基本です。種類向いている状態注意点紙とペン手の動きに問題がない紙の補充が要るホワイトボード何度も書き直したい消す動作に力が要る電子メモパッド筆圧が弱い内容が残らない大きめの罫線ノート字が大きくなるかさばるまずは紙とペンで十分です。道具を買う前に、伝わるかどうかを試してください。麻痺のある方は利き手が使えません。太めのペンと大きめの紙を用意します。置き場所は固定します。ベッドサイド、食卓、玄関の三か所に置けば探さずに済みます。電子メモパッドは筆圧が弱くても書けますが、消すと残りません。五十音表の作り方と使い方五十音表は最後の手段ではなく、早い段階から用意しておく道具です。作る要素目安理由用紙A4かB5の厚紙傾けても曲がらない文字の大きさ指先で押さえられる程度誤って隣を指さない配置縦書きの五十音順習った並びで探せる追加する語「はい」「いいえ」「痛い」頻出の意思を一手で示す厚紙に五十音を書き、よく使う言葉を四隅に足すだけです。透明な袋に入れれば濡れても破れません。使い方には順番があります。本人が指さす方法が一番速いので、まずそれを試します。手が動かない場合は、家族が行を順に指さして本人が合図で止め、そこから一文字ずつ進めます。一文字ずつ確認し、区切りで復唱してください。長い文ほど見失いやすくなります。コミュニケーションノートに書いておく内容伝えたいことを毎回作らずに済むよう、頻出の内容を先に書き溜めておきます。項目書いておく内容使う場面体調痛い場所を示す体の図不調を伝えるとき生活食事・トイレ・入浴の希望日々の介助の場面医療服薬中の薬と主治医の連絡先受診・救急のとき人家族・ケアマネジャーの連絡先連絡が必要なとき会話本人の趣味や話したい話題訪問者との会話づくり体の図は一枚あると重宝します。痛みの場所を指さすだけで伝わります。医療情報のページは救急搬送で役立ちます。家族が説明できない場面でも、ノートが代わりに話してくれます。趣味や経歴のページを入れると、初対面の訪問者との会話が広がります。ノートは一冊にまとめ、玄関近くの決まった場所に置きます。誰が見ても分かる場所が条件です。道具の選び方に迷ったら、ピース訪問看護ステーションへのお問い合わせからご相談ください。必要なものだけをそろえるお手伝いをしています。やってはいけない対応、家族が陥りやすい3つの落とし穴構音障害の家族が陥りやすいのは、代弁・言い直しの強要・子ども扱いの三つで、いずれも本人の発話意欲を削ります。善意から出ている行動ばかりなので、気づきにくいのが厄介なところです。落とし穴1、先回りして代弁してしまう代弁しないという一線を家庭で共有してください。場面やりがちな対応置き換える対応診察室家族が症状を全部説明する本人が話し、家族が補う買い物家族が注文する本人が指さし、家族が支える訪問時家族が体調を代弁する本人に先に聞いてもらう電話家族がすべて代わる内容を書いて本人が確認する代弁は速くて確実です。だからこそ習慣になり、気づくと本人が話す機会がなくなります。診察室での代弁は特に注意が要ります。医師が話し方を確認できず、リハビリの必要性が過小に評価されます。本人が話し終えるのを待ち、足りない情報だけを補う。この順番を守ってください。代わりに話す場面をゼロにする必要はありません。場面ごとに決めます。落とし穴2と3、言い直しの強要と子ども扱い同じ言葉を何度も言い直させることと、子どもに話すような言い方は、どちらも本人の自尊心を傷つけます。区分具体的な行動本人が受け取るもの落とし穴2 言い直しの強要伝わるまで繰り返させる話すこと自体が苦痛になる落とし穴3 子ども扱い極端に幼い言葉で話す能力を低く見られたと感じる派生しやすい癖 大声耳が遠いと勘違いする怒られていると感じる派生しやすい癖 用件だけ会話を最短で切り上げる会話の楽しみが失われる構音障害は聞こえの障害ではなく、静かにゆっくり話すほうが伝わります。理解力も保たれており、子ども向けの言葉遣いは尊厳を直接傷つけます。二回から三回聞き返して伝わらないなら、手段の問題です。書く方法に切り替えてください。用件だけの会話が続くと家庭での役割が薄れます。天気の話や昔の話も意識して残してください。町田市内で訪問しているご家庭では、聞き返し方を「え、なに?」から「前半は分かりました。後ろだけもう一度お願いします」に変えていただきました。言い直しを求めるのをやめた翌週から発話量が戻る、という変化を何度も見ています。言語聴覚士のリハビリと、家族が知っておく受診の目安構音障害のリハビリは、評価と方針を言語聴覚士が担い、日々の反復を家庭が担うという分担が現実的です。家族が専門家になる必要はありません。生活の中で続けられる形に落とすのが役割です。言語聴覚士が行う評価と訓練言語聴覚士は、問題の本質や発現の仕組みを明らかにするために検査と評価を行い、必要に応じて訓練・指導・助言を行う専門職です(出典:一般社団法人日本言語聴覚士協会「言語聴覚士とは」)。内容行うこと家庭への持ち帰り評価どの器官が動きにくいか調べる苦手な音を家族が把握する発声の訓練息の使い方と声量を整える姿勢と呼吸の習慣にする構音の訓練苦手な音を選んで練習する練習する音を絞る代替手段の指導ボードや文字盤の使い方を決める家庭の道具を統一する嚥下の評価飲み込みの安全を確認する食事形態の判断につなげる訪問リハビリでは生活の場でそのまま評価できます。実際に使う食卓やベッドで確認するため、家庭に持ち帰れます。導入の窓口は主治医かケアマネジャーです。退院前なら退院時のカンファレンスで相談してください。在宅リハビリ全体の組み立ては脳梗塞の訪問リハビリとは?自宅で行う効果的なリハビリ方法と注意点も参考にしてください。受診・連絡が必要になる目安発音と飲み込みは同じ筋肉を使うため、構音障害のある方はむせやすさも一緒に確認してください。気づいたこと家庭での判断連絡先食事や水分で頻繁にむせる次の訪問を待たない主治医・訪問看護・言語聴覚士食後の発熱や咳が続くその日のうちに相談する主治医・訪問看護急に聞き取りにくさが強まった様子を見ずに連絡する主治医・訪問看護顔や手足の動きも同時に変わった脳卒中の再発を疑う救急要請を検討するむせが増えたときは食事量や姿勢も一緒に伝えてください。食後の発熱と咳は誤嚥性肺炎につながる可能性があり、様子見の期間を延ばさないでください。聞き取りにくさが数日で急に悪化した場合は、疲れや加齢ではなく病状の変化を疑います。むせ込みが止まらず息が苦しそうなとき、顔色が変わったときは、迷わず救急要請の判断をしてください。言語聴覚士の関わり方は訪問リハビリで受けられる言語聴覚士(ST)の嚥下・失語支援とは?も参照してください。家庭で続ける練習の組み立て方長く続く形にすることが、内容の完成度より優先されます。組み立て方具体例続けるための工夫時間を決める朝食後に短時間生活動作とセットにする内容を絞る苦手な音を二つだけ毎回同じ内容にする場面を使う買い物の注文を本人が言う練習を生活に混ぜる記録する手帳に丸をつけるだけ続いた実感を残す休む日を作る体調の悪い日はやらない途切れても再開できる練習の内容は必ず言語聴覚士と決めてください。自己流で難しい音を続けると、うまくいかない体験が積み重なります。長い時間を一度より、短い時間を毎日のほうが続きます。歯みがきの後など、既にある習慣にくっつけます。生活の場面を練習に使うのが最も自然です。注文する、電話に出る、あいさつをする。体調が悪い日は休みます。義務にすると家族関係のほうが先に壊れます。退院後の生活全体の注意点は【家族向け】脳梗塞 退院後の自宅生活で押さえる注意点|再発予防・後遺症ケア完全ガイドにまとめています。町田・相模原の訪問で実際に行っていること在宅では訓練そのものより、家庭の会話が回る形を作ることに時間を使います。訪問で行うこと具体的な内容会話環境の調整テレビの位置、椅子の向き、照明を見直す道具の設置ボードとノートの置き場所を家族と決める家族への助言聞き返し方と待ち方を実演して伝える状態の共有苦手な音や疲れやすい時間帯を関係者に渡す町田市・相模原市で訪問看護に伺う中で多いのは、道具はあるのに使われていないご家庭です。棚の奥で文字盤が眠っている場面を何度も見ました。相模原市のあるご家庭では「取りに行くのが面倒で、結局聞き返してしまう」とご家族から伺い、五十音表を食卓の引き出しに移しました。それだけで使用頻度が上がっています。退院直後の三週間は、家族が対応の型を身につける時期です。ここで聞き方と待ち方が定着すると生活が安定します。迷っているご家族は、ピース訪問看護ステーションのお問い合わせ窓口からご連絡ください。ご自宅の様子を見たうえで、今日からできることをお伝えします。よくある質問(FAQ)Q1. 構音障害と失語症の違いは何ですか構音障害は、言葉を選ぶ力は保たれているのに発音や発声の筋肉が動きにくく、音が不明瞭になる状態です。失語症は言葉という記号を扱う力に支障が出る状態で、話す・聞く・読む・書くのすべてに影響します。家庭での目安は、書けば伝わるか、指させば伝わるか。書字と理解が保たれていれば構音障害を疑います。併存もあり、最終判断は医師と言語聴覚士の評価によります。Q2. 構音障害はどんな病気が原因で起こりますかもっとも多いのは脳梗塞や脳出血などの脳卒中です。次いで筋萎縮性側索硬化症やパーキンソン病などの神経疾患、頭部外傷、脳腫瘍が原因になります。筋萎縮性側索硬化症では、のどの筋肉に力が入らなくなることで発音しにくくなります。急に起きたのか、ゆっくり進んだのかで備える手段の順番が変わります。根拠となる資料は記事末尾の参考文献一覧にまとめています。Q3. 構音障害は治りますか、改善しますか原因となる病気によって見通しが異なります。脳卒中後は回復期を中心に改善が見込め、その後も工夫と訓練で聞き取りやすさを保てることが多くあります。進行性の神経疾患では機能の回復は難しくても、代替手段を早めに取り入れれば意思の伝達は維持できます。「治る」と断言できるものではなく、経過は主治医と言語聴覚士に確認してください。Q4. 構音障害の人にはどう話しかければいいですかまずテレビや換気扇を止め、正面から一メートル以内に座ってください。聞こえの障害ではないので大声は不要で、静かにゆっくり話すほうが伝わります。質問は一度に一つ、はい・いいえか二択で答えられる形にすると負担が減ります。聞き取れたところまでを言葉にして返し、分からなかった部分だけをもう一度お願いしてください。Q5. 構音障害のリハビリでは何をしますか言語聴覚士が、どの器官がどう動きにくいかを検査と評価で確認し、必要に応じて訓練・指導・助言を行います(出典:一般社団法人日本言語聴覚士協会「言語聴覚士とは」)。息の使い方と声量を整える発声の練習、苦手な音を選んだ構音の練習、ボードや文字盤といった代替手段の使い方の指導などです。飲み込みの評価が一緒に行われることも多くあります。Q6. 構音障害の家族が気をつけることは何ですか代弁しすぎないこと、言い直しを繰り返し求めないこと、子ども扱いしないことの三つです。理解力は保たれているため、幼い言葉遣いや大声は本人を傷つけます。二回から三回聞き返して伝わらないときは、言い方ではなく手段を変えてください。書く、指さす、選択肢から選ぶほうが、お互いに消耗しません。Q7. どんなときに主治医や訪問看護へ連絡すればいいですか食事や水分で頻繁にむせる、食後に発熱や咳が続く、聞き取りにくさが数日で急に強まった。この三つのどれかが起きたら、次の訪問を待たずに主治医・訪問看護・言語聴覚士へ連絡してください。むせ込みが止まらず息が苦しそうなときや、顔や手足の動きも同時に変わったときは、脳卒中の再発や誤嚥を疑って救急要請を検討します。Q8. 筆談ボードやコミュニケーションノートはどう作りますか筆談ボードは紙とペンから始めて、伝わるかどうかを確かめてください。筆圧が弱い方には電子メモパッドが向きますが、内容が残らない点に注意が必要です。ノートには痛みの場所を示す体の図、食事やトイレの希望、服薬中の薬と主治医の連絡先、家族やケアマネジャーの連絡先、本人の趣味を書いておきます。置き場所はベッドサイド・食卓・玄関に固定してください。まとめ構音障害は、言葉を選ぶ力ではなく音を作る筋肉の働きが落ちる状態で、書けば伝わり、指させば伝わることが多くあります。だからこそ家族が変えるべきは本人の努力の量ではなく、聞き手側の環境と聞き方です。テレビを止めて正面に座る、質問を一度に一つにする、二回聞き返して伝わらなければ書く方法に切り替える。この三つで家庭の会話は戻ります。筆談ボード・五十音表・コミュニケーションノートは話せるうちから用意し、動線上に置いてください。むせが増えたときや急に聞き取りにくさが強まったときは、次の訪問を待たずに主治医や訪問看護へ連絡してください。ピース訪問看護ステーションにご相談ください「何を言っているか分からず、聞き返すのが申し訳ない」「本人が話さなくなってしまった」というご相談を、私たちは日常的にお受けしています。聞き取りにくさへの対応は、その家庭の生活に合った形を作れるかどうかで決まります。こんな方はぜひご相談ください:脳梗塞や脳出血の後、家族の話が聞き取りにくくなって困っている方神経難病の進行に合わせて、意思を伝える手段を用意しておきたい方筆談ボードや文字盤を用意したものの、うまく使えていないご家庭ピース訪問看護ステーションができること:自宅の会話環境の見直しと、聞き方・待ち方を実演でお伝えする家族支援筆談ボード・五十音表・コミュニケーションノートの作成と設置場所の調整訪問リハビリの言語聴覚士や主治医、ケアマネジャーとの連携と情報共有町田市・相模原市・多摩市など東京都南部を中心に対応しています。まずはお気軽にお問い合わせください。関連記事失語症の家族との接し方|脳卒中で言葉が出なくても「伝わる」会話の工夫とコツ失語症の家族とのコミュニケーション|タイプ別の接し方と訪問リハビリの活用訪問リハビリで受けられる言語聴覚士(ST)の嚥下・失語支援とは?脳梗塞の訪問リハビリとは?自宅で行う効果的なリハビリ方法と注意点【家族向け】脳梗塞 退院後の自宅生活で押さえる注意点|再発予防・後遺症ケア完全ガイド参考文献一覧出典:日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕」(2025年)https://www.jsts.gr.jp/stroke_guidelines/index.html2.出典:日本神経学会「ガイドライン」(パーキンソン病診療ガイドライン2018/筋萎縮性側索硬化症(ALS)診療ガイドライン2023ほか)https://www.neurology-jp.org/guidelinem/index.html3.出典:難病情報センター「筋萎縮性側索硬化症(ALS)(指定難病2)」https://www.nanbyou.or.jp/entry/524.出典:難病情報センター「パーキンソン病(指定難病6)」https://www.nanbyou.or.jp/entry/1695.出典:一般社団法人日本言語聴覚士協会「言語聴覚士とは」https://www.japanslht.or.jp/what/【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理、地域医療連携、在宅看取り支援に積極的に取り組んでいる。island-piece.jp 株式会社isLand|訪問看護・居宅介護支援・訪問介護|町田市