1. パーキンソン病の基本知識(定義・原因・指定難病)パーキンソン病とは何か(神経変性疾患の概要)項目内容分類神経変性疾患主な障害部位中脳の黒質病態ドパミン神経の減少主症状振戦・固縮・動作緩慢・姿勢保持障害発症年齢平均60歳前後パーキンソン病は、脳の「黒質」という部分でドパミンを作る神経細胞が減ってしまう病気です。ドパミンは「体をスムーズに動かす」ために欠かせない神経伝達物質で、不足するとふるえ、動きの遅さ、筋肉のこわばり、転びやすさなどの症状が出ます。日本では指定難病(難病情報センター No.6)に含まれています。患者さんの多くは60歳前後で発症しますが、40歳以下で発症する「若年性パーキンソン病」もあります。出典:難病情報センター「パーキンソン病」 https://www.nanbyou.or.jp/entry/169発症メカニズムと原因(ドパミン・黒質・αシヌクレイン)原因仮説内容ドパミン欠乏運動制御に必要なドパミンが不足αシヌクレイン蓄積神経細胞に「レビー小体」ができる遺伝的要因特定の遺伝子(LRRK2, PARK2など)が関与環境因子農薬曝露・頭部外傷などがリスク要因と報告正確な原因はまだわかっていませんが、αシヌクレインというタンパク質が神経細胞にたまり「レビー小体」という異常構造を作ることが発症の中心と考えられています。遺伝要因と環境要因が複雑に絡み合うことも指摘されています。つまり「誰にでも起こる可能性がある病気」であり、完全に予防することは難しいのが現状です。出典:日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン2018」指定難病・患者数・発症年齢の傾向項目データ指定難病番号6日本の推定患者数約29万人(2020年推計)発症年齢平均60歳前後若年性割合5〜10%程度厚生労働省の調査によると、日本におけるパーキンソン病の患者数は2020年時点で約29万人と推定されています。これは超高齢社会の進行に伴い、今後さらに増えると予想されています。若年性発症は全体の5〜10%程度と少数ですが、社会的・経済的影響が大きいため注目されています。出典:厚生労働省「患者調査(2020年)」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/10-20.html2. 症状の全体像:運動症状と非運動症状4大運動症状(振戦・固縮・無動/寡動・姿勢反射障害)運動症状特徴振戦静止時に手や足が震える固縮筋肉がこわばり、動きが硬い無動/寡動動作が遅く、小さな動きしかできない姿勢反射障害転びやすくなるパーキンソン病といえば「手の震え」が有名ですが、実はそれだけではありません。筋肉のこわばり(固縮)や動作が遅くなる(無動・寡動)、そして姿勢を保ちにくく転びやすい(姿勢反射障害)の4つが代表的な症状です。特に転倒は骨折につながりやすく、寝たきりや寿命の短縮に直結することがあるため注意が必要です。非運動症状(便秘・睡眠障害・起立性低血圧・抑うつ等)非運動症状内容便秘発症初期から多い睡眠障害不眠・レム睡眠行動異常症起立性低血圧立ち上がると血圧が下がりふらつく抑うつ気分が落ち込みやすくなるパーキンソン病では、運動症状以外のトラブル(非運動症状)も生活の質を大きく左右します。例えば便秘や睡眠障害は発症前から現れることがあり、診断の手がかりにもなります。起立性低血圧や抑うつもよく見られ、これらが重なることで生活のしづらさが増すことが知られています。病期ごとに現れやすい症状の違い病期主な症状初期片側のふるえ、便秘、嗅覚障害中期両側の症状、歩行障害、薬の効き目の変動進行期転倒、嚥下障害、幻覚末期寝たきり、認知症、全身の衰弱症状は時間とともに変化するのが特徴です。初期は軽い震えや便秘といった症状が目立ちますが、進行すると歩行障害や嚥下障害が現れます。末期には寝たきりになり、認知症を伴うこともあります。つまり「症状の出方は人によって違う」ことを理解し、その時期に合った支援を取り入れることが大切です。3. 進行度・重症度分類と経過Hoehn & Yahr(ヤール)重症度分類と進行の目安ステージ特徴ステージ1片側だけに軽い症状ステージ2両側に症状、まだ生活自立は可能ステージ3姿勢保持障害が出現、転びやすいステージ4介助が必要になるステージ5車椅子または寝たきりパーキンソン病の進行度を示す指標に「Hoehn & Yahr重症度分類」があります。ステージ1・2ではまだ自立した生活が可能ですが、ステージ3から転倒リスクが増えます。ステージ4・5になると介護が欠かせなくなり、誤嚥性肺炎や栄養不良といった合併症が寿命に影響を与えることがあります。出典:日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン2018」4. 寿命・余命の考え方と平均寿命の最新知見パーキンソン病の平均寿命と健常者との差項目傾向日本人の平均寿命男性81.09歳・女性87.14歳(2023年簡易生命表)パーキンソン病の方健常者より数年短いと報告されることが多い差数年程度の差だが、研究により結果は異なる研究によると、パーキンソン病の方は一般の方より寿命がやや短くなる傾向があるとされています。ただし、その差は数年程度であり、「必ず短命になる」とは言えません。国や時代、医療体制によって報告値は異なり、近年は薬やリハビリ、訪問看護の普及で寿命の差は縮まっているとも言われています。つまり、「病気そのもの」よりも「合併症を防げるかどうか」が大切です。出典:厚生労働省「簡易生命表 2023」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life23/出典:Macleod AD, et al. Mortality in Parkinson’s disease: a systematic review. Mov Disord. 2014予後に影響する要因(年齢・発症タイプ・合併症)因子傾向年齢高齢で発症するほど寿命が短くなる傾向病型振戦優位型は進行がゆるやか合併症誤嚥性肺炎・転倒・認知症が寿命に影響ケアリハビリ・口腔ケア・在宅支援でリスクを下げられる可能性予後を左右する要因の中で重要なのは、年齢と合併症です。特に誤嚥性肺炎(食べ物や飲み物が気管に入り肺炎を起こすこと)は主要な死因のひとつです。また、転倒による骨折や認知症も余命に影響します。一方で、訪問リハビリでの歩行訓練や、歯科・言語療法士による嚥下訓練は、合併症のリスクを下げる可能性があると報告されています。つまり「治療+生活支援」の両輪が長生きにつながります。出典:van Rumund A, et al. Causes of death in Parkinson’s disease. NPJ Parkinsons Dis. 2022若年性パーキンソン病の寿命・就労と生活設計項目ポイント発症年齢40歳以下を「若年性」と呼ぶ進行高齢発症よりゆっくり進むことが多い就労長く働けるが、職場の理解と配慮が必要課題長期の医療費・介護費用への備えが必要若年性パーキンソン病は、進行が比較的ゆっくりである一方で、同年代の健常者と比べると健康リスクがやや高いとする研究もあります。治療期間が長期にわたるため、就労や生活設計が大きな課題になります。在宅勤務や短時間勤務といった働き方の工夫、障害年金や医療費助成などの社会制度の利用が現実的な支えになります。家族や職場と早めに情報を共有し、ライフプランを見据えた準備を行うことが安心につながります。出典:Hustad E, et al. Excess mortality in young- and middle-aged Parkinson’s disease patients. J Mov Disord. 20215. 合併症と寿命の関係誤嚥性肺炎・窒息・栄養障害合併症内容誤嚥性肺炎主な死因のひとつ、再発しやすい窒息食事中に起こりうる栄養障害食欲低下や飲み込みにくさが影響パーキンソン病の方は、飲み込みが難しくなる「嚥下障害」が起こりやすく、これが誤嚥性肺炎につながります。肺炎は再発しやすく寿命に大きく影響するため、訪問看護やリハビリでの嚥下訓練・食事形態の工夫が重要です。また、食欲低下や飲み込みにくさから栄養障害が起こると体力が落ち、さらに合併症リスクが増す悪循環に陥ることもあります。出典:Won JH, et al. Risk and mortality of aspiration pneumonia in Parkinson’s disease. Sci Rep. 2021転倒・骨折・外傷後の長期予後合併症内容転倒姿勢保持障害で頻度が高い骨折大腿骨頚部骨折が多く、要介護につながる影響骨折後は死亡率が上がると報告転倒はパーキンソン病でよく見られる合併症のひとつです。特に大腿骨の骨折はその後の生活に大きく影響し、寝たきりの原因となります。研究でも「骨折後は死亡率が高まる」と報告されています。そのため、訪問リハビリでのバランス訓練、住環境の工夫(手すり設置、段差解消)、転倒予防教室の利用などが重要です。出典:日本整形外科学会「高齢者の転倒予防ガイドライン」認知症・精神症状(幻覚・抑うつ)症状内容認知症進行期に多い、生活の自立が難しくなる幻覚薬の副作用や進行によって出やすい抑うつ気分の落ち込みが強くなるパーキンソン病は「運動の病気」と思われがちですが、認知症や精神症状も重要な合併症です。進行すると記憶力や判断力が低下し、生活の自立が難しくなります。薬の副作用で幻覚が出たり、抑うつが強まることもあります。これらは患者本人だけでなく、介護する家族の負担も大きくします。精神科医や訪問看護のサポートを取り入れることが、安心して暮らすためのポイントです。出典:厚生労働省「認知症施策推進総合戦略」6. 性差・年齢差による寿命の違い男性と女性の違い(発症率・症状・予後)項目傾向発症率男性にやや多い症状男性は振戦、女性は抑うつ傾向が強いことも予後研究によって結果が異なる統計的には、パーキンソン病は男性の方がやや多いとされています。症状の出方にも性差があると報告されており、男性は振戦が目立つ一方、女性は抑うつや不安の症状が強く出る傾向があります。寿命に関しては「女性の方が長い」とする報告もありますが、研究により結果は異なります。つまり「性別による寿命の差」は一概には言えません。出典:Moisan F, et al. Parkinson disease male-to-female ratios by age. Neurology. 2016高齢発症と若年発症の寿命比較発症年齢傾向高齢発症進行が早く、合併症が出やすい若年発症進行はゆるやかだが、長期的には介護期間が長い高齢で発症した場合は、短期間で進行しやすく、肺炎や骨折などの合併症による寿命への影響が大きくなります。一方、若年性発症は進行が比較的ゆるやかですが、介護が必要な期間が長くなるのが特徴です。寿命の長さだけでなく「介護期間」も生活設計に影響します。高齢者特有のリスク(フレイル・多疾患併存)リスク内容フレイル加齢による体力低下が重なる多疾患併存糖尿病・心疾患・高血圧を併発しやすい影響合併症が重なり寿命に影響する高齢の方では、パーキンソン病に加えてフレイル(体力や筋力の低下)や生活習慣病を抱えていることが多くなります。これらが重なることで合併症のリスクが増し、寿命に影響を及ぼすことがあります。つまり「パーキンソン病そのもの」だけでなく「加齢や他の病気」との複合的な影響を考える必要があります。出典:厚生労働省「フレイル予防の手引き」7. 診断・検査の流れ診断基準・神経学的診察・画像検査の役割方法内容神経学的診察手のふるえ、歩行、筋肉のこわばりを確認診断基準MDS(国際パーキンソン病学会)の診断基準画像検査MRI・DATスキャン(ダットスキャン)など診断の中心は医師の診察です。手の震えや歩行の特徴を確認し、MDS(国際パーキンソン病学会)の診断基準に照らして判断します。MRIは脳梗塞や腫瘍など、別の病気が原因でないことを確認するために行います。さらに「DATスキャン」という核医学検査は、脳内のドパミン神経の働きを可視化し、診断の補助になります。ただしDATスキャンは2013年に日本で承認された補助的検査で、単独で診断が確定できるわけではありません。出典:日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン2018」出典:日本核医学会「イオフルパン静注製剤(ダットスキャン)使用指針」8. 治療法:薬物療法・リハビリ・手術(DBSなど)薬物療法(レボドパ・ドパミン作動薬・MAO-B阻害薬ほか)薬の種類特徴レボドパ最も効果的、症状を改善する中心的な薬ドパミン作動薬効果が長続きするが副作用に注意MAO-B阻害薬ドパミンを壊れにくくするCOMT阻害薬レボドパの効果を持続させる治療の中心はレボドパです。服用すると体の中でドパミンに変わり、症状を大きく改善します。ただし長期使用で「効き目が切れやすい」「効きすぎで体が勝手に動く」などの副作用が出ることがあります。そのため、ドパミン作動薬やMAO-B阻害薬などを組み合わせ、効果を安定させます。薬の効果は服薬のタイミングに左右されるため、訪問看護による服薬管理が生活の安定につながります。出典:日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン2018」リハビリテーション(理学・作業・言語/嚥下訓練)種類内容理学療法歩行練習、バランス改善、筋力維持作業療法着替えや調理など日常動作の練習言語療法声が小さくなる、飲み込みにくさへの訓練リハビリは薬と同じくらい大切です。たとえば理学療法士は歩行訓練やストレッチを行い、転倒を防ぎます。作業療法士は自宅の環境を利用して生活動作の練習を行います。言語療法士は「声が小さい」「飲み込みにくい」といった症状に対応します。研究では、運動や声の訓練を続けることで、進行を遅らせたり生活の質を改善する可能性があると報告されています。出典:WHO「Parkinson disease Fact sheet」2023デバイス補助療法・手術(DBS・デュオドーパ・ヴィアレブ・MRgFUS)方法内容DBS(脳深部刺激療法)脳に電極を入れ電気刺激で症状を抑えるデュオドーパ(LCIG療法)腸に薬を持続的に送り、効果を安定させる(2016年承認)ヴィアレブ(皮下注持続レボドパ)皮下注射で薬を持続的に投与(2022年承認)MRgFUS(集束超音波治療)超音波で振戦を軽減、日本では2020年からPDにも適用薬で症状が安定しない場合には、外科的治療やデバイス療法が検討されます。DBS(脳深部刺激療法)は脳に電極を入れて症状を抑える方法で、日本でも多くの方に実施されています。LCIG療法(デュオドーパ)は胃ろうを通して薬を腸に持続投与し、薬の効き目を安定させる方法で2016年に承認されました。2022年には、皮下注射で持続投与する「ヴィアレブ」も登場しました。また、MRgFUSという最新技術では、頭を切らずに超音波で脳の一部をピンポイントに加熱し、振戦を軽くすることができます。これらは適応条件があるため、専門医との相談が不可欠です。出典:PMDA「イストラデフィリン・LCIG療法・ヴィアレブ承認情報」出典:厚生労働省「先進医療技術情報DB」9. 日常生活でできるQOL向上の工夫食事・運動・ストレッチの実践ポイント工夫内容食事レボドパ服用時は高タンパクを避ける(蛋白再配分療法)運動散歩やリズム運動を毎日続けるストレッチ毎日少しでも柔軟性を保つ食事では、レボドパを飲む時間に合わせて高タンパク食を避ける工夫(蛋白再配分療法)が有効な場合があります。ただし低栄養のリスクがあるため、医師や栄養士と相談しながら行うことが推奨されています。運動では散歩や音楽に合わせたリズム運動が有効で、体を動かすことで転倒予防や気分改善につながります。ストレッチは「1日5分」でも毎日続けることがポイントです。出典:日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン2018」誤嚥予防の食事形態・姿勢・口腔衛生工夫内容食事形態刻み食、とろみをつける姿勢背もたれを立て、あごを軽く引く口腔ケア毎食後の歯磨き・入れ歯の清掃飲み込みにくさ(嚥下障害)がある場合、食事形態の工夫が重要です。食べ物を小さく刻んだり、とろみをつけることで誤嚥を防げます。食事中は背筋を伸ばし、あごを軽く引く姿勢をとるのが安全です。また、口の中を清潔に保つことも肺炎予防につながります。歯科衛生士や訪問歯科の支援を受けると安心です。出典:厚生労働省「口腔ケアマニュアル」住環境・福祉用具・転倒予防チェックリスト工夫内容住環境段差をなくし、手すりを設置する福祉用具杖・歩行器・滑り止めシートを活用照明夜間のトイレに人感センサーライトを設置転倒予防のためには、住環境の工夫が欠かせません。特に段差をなくし、手すりをつけることが有効です。杖や歩行器も転倒リスクを減らします。夜間のトイレ移動では、人感センサーライトを設置すると安全です。これらの改修や用具レンタルは介護保険制度を利用できるため、ケアマネジャーに相談しましょう。出典:厚生労働省「介護保険制度の概要」10. 在宅介護・支援制度の活用介護保険サービス・ケアプラン・訪問看護の使い方サービス内容訪問看護看護師が体調管理・服薬サポートデイサービス運動・入浴・交流の場を提供ショートステイ家族が休めるように一時利用できるパーキンソン病は進行性の病気であり、在宅での支援が大切です。介護保険を利用すれば、訪問看護やデイサービスを使うことができます。訪問看護では「薬を正しく飲めているか」「転倒していないか」などをチェックし、医師と連携します。デイサービスは運動や入浴のサポートがあり、家族の介護負担を軽くします。ショートステイは、家族が休養をとりたいときに役立ちます。出典:厚生労働省「介護保険制度」特定医療費(指定難病)助成・身体障害者手帳制度内容特定医療費助成医療費の自己負担を軽減できる身体障害者手帳障害福祉サービスや税制優遇を受けられる高額療養費制度医療費が高額になった際に補助されるパーキンソン病は指定難病に含まれるため、特定医療費助成の対象となります。これにより医療費の自己負担が軽くなります。また、症状に応じて身体障害者手帳を取得できることがあり、介護サービスや税制優遇を受けることができます。さらに高額療養費制度を利用すれば、急な出費も抑えられます。出典:難病情報センター「パーキンソン病」相談窓口・地域支援(家族会・サポートグループ)窓口内容自治体の難病相談窓口制度やサービスの案内家族会・患者会同じ立場の人と交流できる医療ソーシャルワーカー生活設計や制度利用をサポートパーキンソン病は長く付き合う病気なので、心理的・社会的な支えも大切です。自治体には難病相談窓口があり、制度や支援の情報を教えてもらえます。患者会や家族会では、同じ悩みを持つ仲間と交流でき、孤独感が和らぎます。病院にいる医療ソーシャルワーカーも、生活設計や制度利用の相談にのってくれる心強い存在です。出典:東京都福祉保健局「難病相談・患者会」11. パーキンソン病と訪問看護・訪問リハビリの活用訪問看護が果たす役割(服薬管理・症状観察・医療連携)サービス内容ポイント服薬管理飲み忘れ・誤薬を防ぐ症状観察転倒・嚥下障害・幻覚の早期発見医療連携医師・薬剤師と連絡し迅速対応訪問看護では看護師が自宅に訪問し、体調管理や薬の服薬状況を確認します。特にパーキンソン病は薬の服用タイミングが症状の安定に直結するため、看護師によるチェックは安心につながります。また、転倒や嚥下障害、幻覚といった変化を早期に把握し、医師へ報告できることは、合併症の予防と寿命の延伸にも関わります。出典:厚生労働省「訪問看護の利用対象」訪問リハビリの効果(運動機能維持・ADL改善・嚥下訓練)リハの種類内容理学療法(PT)歩行・バランス訓練作業療法(OT)家事や着替えなど生活動作訓練言語療法(ST)飲み込み・発声の改善訓練訪問リハビリでは、実際の生活環境で運動や生活動作の練習ができます。特に嚥下訓練は、誤嚥性肺炎のリスクを減らすために欠かせません。研究では、理学療法や作業療法を受ける人は転倒率が下がる傾向が報告されており、継続的なリハビリは生活の質だけでなく寿命にも良い影響を与える可能性があります。出典:日本リハビリテーション医学会「在宅リハビリの手引き」ピース訪問看護ステーションのサポートと強み在宅でパーキンソン病と向き合うことは、患者さんご本人にとっても、ご家族にとっても大きな挑戦です。「転倒の不安」「薬の管理の難しさ」「介護者の疲れ」――これらを一人で抱えるのは容易ではありません。ピース訪問看護ステーションは町田市を拠点に、地域の医療機関や介護サービスと連携しながら、安心して在宅生活を送れるようサポートしています。必要に応じていつでも連絡できる体制を整えており、「もしものときに頼れる存在」です。スタッフ体制(2025年9月時点)職種人数特徴看護師9名医療的ケアや症状観察、夜間対応も可能リハビリスタッフ13名理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が在籍ケアマネジャー6名医療と介護をつなぐ役割を担当ピース訪問看護ステーションの特徴特徴詳細夜間対応夜間の急な体調不良や転倒にも対応可能リハビリ専門職の充実在宅生活に合った支援が受けられるケアマネジャー連携医療・介護・リハビリをまとめてサポートパーキンソン病支援経験多数の症例に関わり専門性を蓄積地域連携町田市内のクリニックと連携し、定期的に勉強会を開催ピース訪問看護ステーションは、パーキンソン病をはじめとした神経疾患の支援経験が豊富です。ご本人の体調管理だけでなく、ご家族の介護負担を軽減しながら、利用者が住み慣れた自宅で安心して暮らせるよう全力でサポートしています。👉 ぜひ町田市およびその近隣にお住まいの方は、ピース訪問看護ステーションにご相談ください。12. 末期症状と終末期ケア(在宅看取りを含む)末期に多い変化(嚥下・呼吸・せん妄・褥瘡)症状内容嚥下障害食事が難しくなり、誤嚥のリスク増呼吸障害浅い呼吸や痰が絡むせん妄夜間の混乱や幻覚褥瘡長期臥床で皮膚トラブルが出やすい末期には飲み込みや呼吸が弱まり、肺炎や栄養不良のリスクが高まります。夜間の混乱(せん妄)もよく見られます。これらは自然な経過の一部であるため、本人と家族がどう過ごしたいかを話し合っておくことが大切です。症状緩和と意思決定支援(ACP)ケア内容症状緩和痛みや呼吸苦を和らげる薬の調整無理に延命するより生活の質を重視ACP人生会議で希望を共有する終末期には「症状を和らげること」と「生活の質を守ること」の両立が大切です。薬を増やすよりも、生活の質を重視する判断がされることもあります。厚生労働省はアドバンス・ケア・プランニング(ACP)=人生会議を推奨しており、本人・家族・医療者が希望を話し合うことで、安心して最期を迎える準備ができます。出典:厚生労働省「人生の最終段階における医療体制整備」在宅医療・ホスピス・施設入居の選択肢選択肢特徴在宅医療自宅で訪問診療や訪問看護を受けるホスピス苦痛を和らげる専門施設施設入居家族の介護負担を軽減できる「どこで最期を迎えるか」は人によって異なります。在宅医療を選べば住み慣れた自宅で過ごせます。ホスピスは苦痛を和らげる専門施設で、精神的なケアも充実しています。施設入居は家族の負担を軽くできる選択肢です。大切なのは早めに情報を知り、希望を共有することです。13. よくある質問(FAQ)「寝たきり」になった場合の余命は?「寝たきりになったら余命はどれくらいか」という質問をよく受けます。しかし、これは個人差が非常に大きく、一概には言えません。高齢発症や肺炎の既往があると影響は出やすい一方、訪問看護やリハビリを続けている方は長く生活している例もあります。つまり「寝たきり=すぐ余命が短い」とは限らず、合併症の予防が鍵となります。運転・就労・介護負担に関する実務的な疑問初期であれば運転や就労を続けられる方もいますが、進行に伴い反応の遅さや判断力の低下が出てきます。就労については障害者雇用制度や在宅勤務の活用が現実的です。介護負担は大きいため、ショートステイやレスパイトケアを取り入れ、介護者が休める環境づくりが重要です。受診間隔・副作用(幻覚・ジスキネジア)への対処受診間隔は症状の安定度により異なりますが、初期は3〜6か月ごと、中期以降は1〜2か月ごとが一般的です。薬の副作用として幻覚やジスキネジア(体の勝手な動き)が出る場合は、薬の種類や量を調整する必要があります。気になる症状があれば早めに主治医へ相談することが大切です。14. まとめ(安心して長く暮らすために)パーキンソン病は長く付き合う病気ですが、正しい知識と支援制度の活用により安心して暮らすことができます。特に大切なポイントは:合併症予防(肺炎・転倒・認知症)生活習慣の工夫(食事・運動・住環境)訪問看護・リハビリの活用👉 ぜひ町田市およびその近隣にお住まいの方は、ピース訪問看護ステーションにご相談ください。関連記事パーキンソン病とパーキンソン症候群の違いを徹底解説、症状・診断・治療・生活支援までパーキンソン病の原因を徹底解説、遺伝・環境・生活習慣との関係パーキンソン病のヤール分類とは?重症度の目安と在宅ケア・リハビリとの関係パーキンソン病のウェアリングオフ現象とは?症状と対応策を解説パーキンソン病リハビリ徹底ガイド、訪問看護と在宅支援で生活機能を守る最新実践参考文献一覧厚生労働省「難病情報センター パーキンソン病」https://www.nanbyou.or.jp/entry/169厚生労働省「患者調査(2020年)」https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/10-20.html厚生労働省「簡易生命表 2023」https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life23/厚生労働省「介護保険制度の概要」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/厚生労働省「人生の最終段階における医療体制整備」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/jinsei/index.htmlWHO「Parkinson disease Fact sheet」2023https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/parkinson-disease日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン2018」https://www.neurology-jp.org/guidelinem/parkinson.html日本リハビリテーション医学会「在宅リハビリの手引き」https://www.jarm.or.jp/van Rumund A, et al. Causes of death in Parkinson’s disease. NPJ Parkinson’s Disease, 2022https://www.nature.com/articles/s41531-022-00375-9Hustad E, et al. Excess mortality in young- and middle-aged Parkinson’s disease patients. J Mov Disord, 2021https://www.e-jmd.org/journal/view.php?doi=10.14802/jmd.21012Macleod AD, et al. Mortality in Parkinson’s disease: a systematic review. Mov Disord, 2014https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24846889/Won JH, et al. Risk and mortality of aspiration pneumonia in Parkinson’s disease. Sci Rep, 2021https://www.nature.com/articles/s41598-021-84051-1Moisan F, et al. Parkinson disease male-to-female ratios by age. Neurology, 2016https://n.neurology.org/content/87/9/859本記事の執筆者・監修者プロフィール【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理に長け、地域医療連携や在宅看取り支援にも積極的に取り組んでいる。