毎年秋が近づくと「インフルエンザの予防接種はいつから受けるべき?」というご相談が一気に増えます。この記事では、厚生労働省やWHO、日本小児科学会などの公的情報をもとに、接種開始の目安、年齢別・疾患別の具体的スケジュール、2回接種が必要なケース、効果が出るまでの期間と持続、よくある疑問までを一つの記事に集約。実際の訪問看護の現場で役立つコツも織り交ぜ、流行シーズンを安心して迎えるための最短ルートをご案内します。1. 今年の接種は「いつから」が正解?流行カーブと最適タイミングの考え方(結論)例年、日本の季節性インフルエンザは秋から増え始め、冬に流行のピークを迎えます。厚生労働省は定期接種対象者(65歳以上など)を中心に「秋冬に1回の接種」を基本に案内しており、12月中旬までに接種を終えることが望ましいと示しています。一般の方は10月〜11月上旬の接種がベスト。効果は接種後およそ2週間で立ち上がり、5か月前後ゆるやかに低下していきます。したがって、ピークが1〜2月(年によっては1〜3月)に来ることを想定すると、10〜11月接種が理にかないます。対象推奨接種時期理由一般成人10〜11月上旬効果発現に2週間、流行ピーク1〜2月に対応高齢者・基礎疾患あり10月上旬重症化予防のため早めに確保小児(2回接種必要)10月上旬に1回目 → 11月上旬に2回目流行前に2回目完了が必須妊婦妊娠時期を問わず早めに母体・胎児双方の重症化予防医療・介護従事者10月上旬感染拡大防止のため優先出典:厚生労働省「インフルエンザQ&A(令和6年度)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2024.html出典:日本小児科学会「B-13 インフルエンザワクチン(保護者向け説明文書)」https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_B-13inhuruenza20241212.pdf2. インフルエンザワクチンの効果の立ち上がりと持続時期免疫の状態ケアのポイント接種〜2週間免疫形成中マスク・手洗い・換気の徹底2週間〜3か月予防効果が最も高い学校・職場・施設などでの感染予防を徹底3〜5か月徐々に効果低下高齢者や慢性疾患では重症化予防の意義大5か月以降効果が低下進行翌シーズンの株更新を待ち、毎年接種が基本ワクチンの効果は接種から約2週間で最大化し、その後5か月前後で減弱します。特に高齢者や慢性疾患のある方は、効果が低下しても重症化予防の意義は継続する点が重要です。出典:日本小児科学会「B-13 インフルエンザワクチン」https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_B-13inhuruenza20241212.pdf3. 年齢・背景別スケジュール:誰が・いつから・何回?対象接種回数・間隔“いつから”の実践ポイント6か月〜13歳未満2回(2〜4週、できれば4週)10月上旬に1回目→11月上旬に2回目完了が理想13歳以上1回(医師判断で2回可)10〜11月上旬に1回65歳以上(定期接種対象)1回自治体の案内に沿い10月上旬から妊婦1回(時期は問わず)流行前に早めの接種を検討医療・介護従事者1回利用者保護の観点から10月上旬に優先小児は2回接種が基本で、2回目は4週空けて打つのが望ましいとされています。高齢者や基礎疾患を持つ方は重症化予防のため早めの接種が勧められます。出典:厚生労働省「小児に対するインフルエンザワクチンについて」https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001256393.pdf出典:日本小児科学会「予防接種スケジュール(2025/5/23版)」https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20250523_vaccine_schedule.pdf4. 日本で使うワクチンの種類と安全性種類対象特徴注意点不活化ワクチン(IIV)全年齢注射型。毎年使われる主流インフルエンザを発症することはない経鼻生ワクチン(LAIV)2歳〜19歳未満鼻スプレーで投与。IIVと同等の効果喘息・免疫不全・妊婦・無脾・授乳婦・同居家族に免疫不全がいる場合は避ける不活化ワクチンはウイルスを含まないため接種でインフルエンザにかかることはありません。一方、経鼻ワクチンは投与が簡便で痛みも少なく、特に小児や思春期世代に適していますが、対象者の条件に制限があります。出典:日本小児科学会「予防接種スケジュール(2025/5/23版)」https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20250523_vaccine_schedule.pdf出典:厚生労働省「インフルエンザQ&A(令和6年度)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2024.html5. 高齢者・慢性疾患・妊婦・医療介護職の優先性対象優先理由実務ポイント65歳以上重症化・死亡リスクが高い予防接種法の定期接種対象。自治体助成あり慢性疾患(心疾患・糖尿病・呼吸器疾患など)入院や重症化のリスク増大主治医と相談し早期接種妊婦母体・胎児双方の重症化リスク妊娠週数を問わず接種可能。安全性が確認済み医療・介護従事者感染源となり得る/高齢者への伝播リスク10月上旬に優先的に接種、施設内クラスター予防WHOも同様の優先接種群を提示しており、日本の制度と整合しています。訪問看護や介護現場では、利用者と職員双方の感染を防ぐために、職員の接種歴を管理する取り組みが重要です。出典:WHO「Vaccines against influenza: WHO position paper – May 2022」https://www.who.int/publications/i/item/who-wer9719出典:厚生労働省「インフルエンザワクチン(季節性)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/influenza/index.html6. 「10月から打つと早すぎる?」――Q&Aで解説Q. 早く打ちすぎると冬に効き目が切れませんか?A. 効果は約5か月持続。高齢者や基礎疾患のある人、小児は早めに打つメリットが大きいです。Q. 一般成人はいつがベスト?A. 10〜11月上旬です。12月中旬までに接種を終えることが推奨されています。Q. 遅れて12月に打っても意味はありますか?A. はい。流行が3月まで長引く場合もあるため、遅れても接種する価値は十分あります。出典:日本小児科学会「B-13 インフルエンザワクチン」https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_B-13inhuruenza20241212.pdf出典:厚生労働省「インフルエンザQ&A(令和6年度)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2024.html7. 小児の2回接種を流行前に間に合わせるモデル1回目2回目流行期想定ポイント標準10/511/2頃12月〜1月余裕を持って2回完了遅れリカバリ10/2511/22頃12月〜1月行事や受験と重ならない日程に調整小児は2回目接種後2週間で抗体価がピークに達するため、流行期前に2回目を終えるスケジュール管理が極めて重要です。保護者が接種予定をカレンダーに記録しておくことが有効です。出典:厚生労働省「小児に対するインフルエンザワクチンについて」https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001256393.pdf8. よくある質問(Q&A)Q. 卵アレルギーでも接種できますか?A. 軽度なら多くの場合は可能。重度アレルギー歴がある場合は医師に必ず相談を。Q. 他のワクチンと同時接種できますか?A. 不活化ワクチンは可能。生ワクチン(経鼻含む)は一定の間隔を空ける必要があります。Q. 接種後に腕の腫れや発熱が出ました。大丈夫ですか?A. よくある副反応で、2〜3日で軽快します。強い症状が出たら医師に相談を。Q. 解熱鎮痛薬は飲んでいい?A. アセトアミノフェンなどが一般的。ただし既往歴によって制限があるため、医師・薬剤師に確認してください。出典:日本小児科学会「B-13 インフルエンザワクチン」https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_B-13inhuruenza20241212.pdf10. まとめて理解する:「いつから」の判断フロー65歳以上 or 基礎疾患あり → 10月上旬から接種開始6か月〜13歳未満(2回必要) → 10月上旬に1回目 → 4週後に2回目医療・介護従事者 → 10月上旬から優先接種一般成人 → 10〜11月上旬に接種完了出典:厚生労働省「インフルエンザQ&A(令和6年度)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2024.htmlまとめ結論:迷ったら10〜11月上旬に接種。小児(6か月〜13歳未満)は10月上旬に1回目、4週あけて2回目を完了。高齢者・基礎疾患・妊婦・医療介護職は10月上旬から優先。理由:免疫は2週間で立ち上がり、5か月前後持続。流行前に完了させるのが合理的。現場の工夫:2回接種は逆算・予約の前倒し・家族カレンダー共有で取りこぼしを防止。特に町田市にお住まいの方で、「接種のタイミングに不安がある」「体調や持病があるため在宅での生活を守りたい」といった場合は、訪問看護を活用する選択肢もあります。ピース訪問看護ステーションでは、町田在住の方に向けて、ワクチン接種を含めた健康管理や日常生活のサポートを行っています。安心して冬を迎えるために、ぜひご相談ください。関連記事インフルエンザはいつ流行する?時期・予防・受診の目安を、訪問看護の視点でわかりやすく解説【2025年最新】新型コロナ自宅待機期間は何日?陽性者・濃厚接触者の最新ルールまとめ季節の変わり目に体調不良が起きやすい理由と対策まとめ—自律神経・睡眠・栄養で整える参考文献一覧厚生労働省「インフルエンザQ&A(令和6年度)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2024.html厚生労働省「インフルエンザワクチン(季節性)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/influenza/index.html厚生労働省「小児に対するインフルエンザワクチンについて」https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001256393.pdf厚生労働省(審議資料)「インフルエンザHAワクチン」https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000034lcq-att/2r98520000034m34.pdf日本小児科学会「B-13 インフルエンザワクチン(保護者向け説明文書)」https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_B-13inhuruenza20241212.pdf日本小児科学会「予防接種スケジュール(2025/5/23版)」https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20250523_vaccine_schedule.pdfWHO「Vaccines against influenza: WHO position paper – May 2022」https://www.who.int/publications/i/item/who-wer9719本記事の執筆者・監修者プロフィール【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理に長け、地域医療連携や在宅看取り支援にも積極的に取り組んでいる。