台風の接近がニュースで報じられるたびに、「もし停電したら、この機械はどうなるのだろう」と不安になる方は少なくありません。在宅酸素や人工呼吸器、吸引器、電動ベッドなど、電気を前提とした医療機器とともに暮らすご本人やご家族にとって、停電は生活の困りごとにとどまらず、療養そのものに関わる問題です。一方で、停電への備えは「何を・いつ・誰に確認するか」がはっきりしている分野でもあります。手順を知り、台風シーズンの前に準備を済ませておけば、実際に電気が止まっても落ち着いて対処しやすくなります。この記事では、東京都町田市で訪問看護・訪問リハビリに携わる作業療法士が、在宅医療機器の停電対策、薬の備え、避難の判断、連絡体制づくりまでを順番に整理します。今日から手をつけられるチェックリストも用意しましたので、ご家族と一緒に確認してみてください。なぜ在宅療養者に台風・停電への備えが重要なのか気象庁の統計では、日本への台風の接近は例年8月から9月にかけて集中します。秋雨前線と重なる9月は大雨や暴風による被害が起きやすく、停電のリスクが一年で最も高まる時期のひとつです。停電の規模と長さは、想像より大きくなることがあります。経済産業省の検証資料によると、2019年の台風15号では関東地方を中心に最大約93万戸が停電し、地域によっては復旧までに1週間を超える時間を要しました。「停電しても数時間で戻るだろう」という前提だけで備えると、長引いた場合に対応が難しくなります。在宅で使われる主な医療機器と、停電時に起こることを整理すると次のようになります。機器停電時に起こること酸素濃縮器(在宅酸素療法)運転が停止し、酸素の供給が止まる人工呼吸器内部バッテリー駆動に切り替わる(駆動時間は機種による)電動吸引器充電式でなければ使えなくなる電動ベッド・エアマットレス背上げなどの操作ができなくなる。エアマットは空気圧の維持が課題になる冷蔵庫インスリンなど冷所保存の薬の温度管理が難しくなるこのように、停電の影響は機器ごとに異なります。だからこそ、「うちで使っている機器は停電時にどうなるのか」を一つずつ確認しておくことが、備えの出発点になります。台風の影響は停電だけではありません。断水すれば経管栄養の準備や清潔ケアに使う水が不足し、通信障害が起きれば主治医や機器業者への連絡が難しくなります。暴風雨の間は、訪問看護やヘルパーなどの在宅サービスも安全のために訪問を見合わせることがあり、その時間帯は家族だけでケアを担うことになります。つまり台風への備えとは、「電気・水・連絡手段・人手が一時的に細くなる数時間から数日を、自宅でどう乗り切るか」を前もって設計しておくことだと言えます。なお、台風の時期は気圧の変動によって頭痛やだるさなどの体調変化を感じる高齢者も多くいらっしゃいます。気圧と体調の関係やそのケアについては[内部リンク:気圧の変化で高齢者の体調が崩れるのはなぜ?頭痛・だるさへの在宅ケアと訪問看護の活用]で詳しく解説していますので、そちらをご覧ください。本記事では、停電・避難といった防災の実務に絞ってお伝えします。医療機器別に見る停電対策機器ごとに「電気が止まったときの代替手段」と「事前に確認しておくこと」を押さえていきましょう。在宅酸素療法(HOT)を利用している場合自宅に設置する酸素濃縮器は、電気で空気中から酸素を取り出す機器のため、停電するとその場で止まります。停電時の基本は、外出用に貸与されている携帯用酸素ボンベへの切り替えです。日本呼吸器学会の酸素療法マニュアルでも、停電に備えた患者指導の重要性が示されています。平時から確認しておきたいのは、ボンベの残量計の見方、処方された流量で何時間使えるかの目安、そして切り替えの手順です。ボンベの使用可能時間は、ボンベの容量と残圧、設定流量、呼吸同調器(吸うときだけ酸素を流す装置)の有無で大きく変わります。「自分の設定なら1本で何時間」という数字を、酸素供給事業者に計算してもらい、目に付く場所にメモしておきましょう。切り替え操作は、月に一度でも手を動かして練習しておくと、夜間の停電でも慌てずに済みます。ボンベの本数を増やせるかどうか、台風接近時に追加配送を頼めるかどうかは、酸素供給事業者に事前に相談しておきましょう。フクダ電子など主要な事業者は、災害時の対応窓口や連絡方法を公開しています。また、酸素を使用している間は、火気から2メートル以上離れるという日頃の注意が停電時にも変わらず必要です。停電中はろうそくやカセットコンロを使う場面が増えるため、置き場所に気を配ってください。人工呼吸器を使用している場合多くの在宅用人工呼吸器は内部バッテリーを備えており、停電すると自動的にバッテリー駆動へ切り替わります。ここで重要なのが、内部バッテリーでの駆動時間が機種や使用年数によって大きく異なることです。取扱説明書や機器業者への確認で、「自分の機器は満充電で何時間動くのか」を具体的に把握しておきましょう。そのうえで、外部バッテリーや蓄電池、発電機といった予備電源の確保を検討します。なお、ガソリンやカセットガスで動く発電機は、排気ガスに一酸化炭素が含まれるため屋内では使えません。屋外の雨がかからない場所で使う前提で、置き場所と延長コードの経路まで考えておきましょう。人工呼吸器のような精密な医療機器に発電機の電気をそのままつないでよいかは機種により考え方が異なるため、購入前に機器業者へ適合を確認することが欠かせません。なお、暴風雨が強まってからの屋外での設置作業は危険です。風雨が強まる前に準備を済ませるか、内部バッテリーで動いているうちに早めの避難を検討してください。東京都には、在宅で人工呼吸器を使用する難病の方を対象にした非常用電源設備の整備事業があり、対象要件を満たせば発電機や蓄電池の貸与を受けられる場合があります。制度の詳細は変わることがあるため、保健所や難病の相談窓口、主治医に確認してください。停電時は、機器のアラーム音が電源の切り替わりを知らせてくれます。どのアラームが何を意味するのかを整理した一覧を、機器のそばに置いておくと夜間でも判断しやすくなります。血中の酸素飽和度を測るパルスオキシメーターは電池式のものが多く、停電中の状態把握に役立つため、予備の電池とあわせて備えておきたい機器です。あわせて備えておきたいのが、手動で換気を補助するバッグバルブマスク(アンビューバッグ)です。すべての電源が使えなくなった場合の最終的な手段となるため、家族が使い方の指導を受けておくことが勧められます。訪問看護師の訪問時に、実物を使った練習を依頼するのもよい方法です。呼吸器回路や加温加湿器の予備、電源が不要な人工鼻の用意についても、主治医や業者と相談しておきましょう。吸引器を使用している場合たんの吸引が日常的に必要な方にとって、吸引器が止まることは切実な問題です。まず、いま使っている吸引器が充電式かどうか、充電式なら満充電でどのくらい使えるのかを確認してください。電気を使わない代替手段として、手動式や足踏み式の吸引器が市販されています。医療的ケア児の支援団体や医療機関の防災資料でも、停電時の備えとして手動式・足踏み式の吸引器やシリンジ(注射筒)による吸引が紹介されています。どの方法が適しているかは吸引の頻度や部位によって異なるため、訪問看護師や主治医に相談して選び、平時に一度は試しておきましょう。電動ベッド・エアマットレスを使用している場合電動ベッドは停電すると背上げや高さ調整ができなくなります。背上げした状態で停電した場合に手動で水平へ戻す方法(機種によってはレバーや工具を使います)を、福祉用具の事業者に確認しておくと落ち着いて対応できます。床ずれ予防のエアマットレスには、停電時に空気圧を保持できる機種と徐々に空気が抜ける機種があります。抜けるタイプの場合の対処(送気チューブを折って留める、クッションやタオルで補うなど)も、あわせて確認しておきたいポイントです。電力会社への事前登録と機器業者との関係づくり在宅で人工呼吸器を使用している方を対象に、事前登録を受け付けている電力会社があります。たとえば東京電力パワーグリッドでは、登録した方へ停電や復旧見通しの情報を個別に連絡する仕組みを設けています。ただし、対象となる機器の範囲や運用は契約する電力会社により異なり、在宅酸素の機器は登録の対象外とされている場合もあります。また、東京電力パワーグリッドの管内では、自治体の窓口を通じて登録する地域もあります。契約中の電力会社またはお住まいの自治体に「在宅で医療機器を使っている場合の登録制度はあるか」と問い合わせてみてください。機器業者に対しては、24時間の連絡窓口、停電時・災害時の対応方針、台風接近時の事前連絡の要否を確認しておきます。日頃の点検のついでに災害の話題を一言添えるだけでも、いざというときの連携が進めやすくなります。薬の備え:常備薬リストとお薬手帳、冷所保存薬の扱い医療機器と並んで大切なのが薬の備えです。停電や交通の混乱で受診や調剤が遅れる可能性を考え、次の準備をしておきましょう。備え内容ポイント常備薬リスト薬の名前・用量・服用のタイミング・処方医・調剤薬局を一覧にする家族全員が保管場所を知っておくお薬手帳のコピー紙のコピーを非常持ち出し袋へ。スマートフォンでの撮影も有効内容が最新かを定期的に確かめる残薬の確保台風シーズンは残薬が7日分を下回らないよう意識する受診予定が台風と重なりそうなら早めに相談冷所保存薬の対策保冷バッグ・保冷剤を用意し、停電時の保管方法を薬剤師に確認凍結させないことが重要受診日や薬の受け取りが台風の接近と重なりそうなときは、処方の前倒しができないか、早めに主治医や薬局に相談してみてください。日程の調整は珍しいことではなく、遠慮はいりません。お薬手帳は災害時に大きな力を発揮します。厚生労働省は大規模災害の際、医師の診察を受けることが難しい状況では、お薬手帳などで処方内容が確認できる場合に、処方箋がなくても薬剤師から薬を受け取れる特例的な取り扱いを事務連絡として示してきました。能登半島地震などでも同様の対応が行われています。お薬手帳が手元にあるかどうかで、避難先や薬局での対応の速さが変わる可能性があるのです。冷所保存が必要な薬の代表がインスリンです。未使用のインスリン製剤は冷蔵庫(2〜8℃)で保管しますが、使用中のものは直射日光を避けた室温(30℃以下)での保管が基本とされています。製薬企業の案内では、災害などで冷蔵庫が使えない場合、遮光したうえで室温(1〜30℃)での保管が可能とされています。停電した冷蔵庫も、扉の開閉を減らせば庫内温度の上昇はゆるやかです。慌てて取り出して保冷剤に直接当てると凍結の恐れがあるため、扱い方は事前にかかりつけの薬剤師に確認しておきましょう。インスリンのほかにも、一部の点眼薬や坐薬、経管栄養剤など温度管理が必要なものがあります。ご自身の薬に冷所保存のものが含まれるか、この機会に確かめてみてください。服薬管理の面では、お薬カレンダーや一包化された薬をそのまま持ち出せるようにしておくことも有効です。血圧の薬、心臓の薬、抗けいれん薬、抗凝固薬など、飲み忘れが体調に影響しやすい薬は、避難や停電の混乱の中でも服薬のリズムを崩さない工夫が求められます。「どの薬を優先して持ち出すか」を、平時に薬剤師へ相談しておくと迷いが減ります。服薬時の水も忘れがちな備えのひとつで、飲料水の備蓄は1人1日3リットルが目安とされています。避難の判断と準備:名簿・個別避難計画・福祉避難所台風は地震と違い、接近の数日前から進路や勢力の予測が報じられます。この時間の余裕を生かせるかどうかが、在宅療養者の避難では大きな分かれ目になります。避難を始めるタイミング自治体が発令する避難情報のうち、警戒レベル3「高齢者等避難」は、高齢の方や障害のある方、医療機器を使用している方など、避難に時間がかかる人が避難を始める段階とされています。全員に発令される警戒レベル4「避難指示」を待つ必要はありません。移動に介助や車が必要な方ほど、風雨が強まる前、できれば明るい時間帯のうちに行動を始めることが勧められます。避難行動要支援者名簿と個別避難計画災害対策基本法により、市町村には避難行動要支援者名簿の作成が義務づけられています。自力での避難が難しい高齢者や障害のある方などを把握し、避難支援や安否確認に役立てるための名簿です。さらに令和3年の法改正で、名簿に載る方一人ひとりについて個別避難計画を作成することが市町村の努力義務となりました(内閣府の取組指針による)。個別避難計画には、誰が支援するか、どこへ避難するか、医療機器や薬など何を持っていくかを具体的に書き込みます。名簿への登録方法や計画づくりの進め方は自治体により異なります。お住まいの市区町村の防災担当や福祉担当の窓口、または担当のケアマネジャーに「避難行動要支援者名簿と個別避難計画について知りたい」と伝えてみてください。地域によっては、ケアマネジャーや訪問看護師が計画づくりに参加する取り組みも進んでいます。福祉避難所とは一般の避難所での生活が難しい方のために、市町村が指定する二次的な避難先が福祉避難所です。バリアフリー化された施設や介護に慣れた職員の配置など、配慮を必要とする方向けの環境が想定されています。内閣府の「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」は令和3年に改定され、受け入れ対象者を事前に調整したうえで、対象となる方が指定福祉避難所へ直接避難する流れも示されました。ただし、どの施設が福祉避難所か、いつ開設されるか、誰が対象かは自治体ごとに運用が異なります。事前に確認しておかないと「開いていると思ったら開設前だった」という事態も起こり得るため、平時の情報収集が欠かせません。医療機器ユーザーの避難先選び電気を使う医療機器とともに避難する場合、避難先で電源が使えるかどうかが大きな条件になります。一般の避難所ではコンセントの数が限られ、医療機器のための電源が確保されているとは限りません。選択肢としては、電源や介護面の配慮が期待できる福祉避難所、主治医と相談したうえでの一時的な入院やショートステイ、停電していない地域の親族宅などが考えられます。人工呼吸器を使用している方は、災害時にどこへ避難するかを主治医・機器業者・訪問看護師と共有しておくことが特に重要です。やむを得ず自家用車で過ごす場合は、こまめに体を動かしてエコノミークラス症候群を防ぐこと、車内への排気ガスの流入に注意することを忘れないでください。一方で、避難所へ行くことだけが避難ではありません。自宅が浸水や土砂災害の危険区域の外にあり、建物に被害が及ぶ恐れが小さいなら、備えを整えたうえで自宅にとどまる「在宅避難」も選択肢になります。ハザードマップで自宅の位置を確かめ、「うちは避難する側か、とどまれる側か」を家族と支援者で共有しておくと、台風のたびに迷わずに済みます。避難するときの持ち出し品は、一般的な防災グッズに加えて医療関連のものが必要です。医療機器を使う方の持ち出し品の例を挙げます。分類持ち出す物の例機器関連機器本体・電源コード・バッテリー・取扱説明書、酸素ボンベ、吸引カテーテル、延長コード薬・情報薬(7日分程度)、お薬手帳、常備薬リスト、保険証やマイナンバーカード、連絡先一覧ケア用品おむつ・パッド、口腔ケア用品、とろみ剤、経管栄養の物品、ウェットタオルその他眼鏡・補聴器・義歯、モバイルバッテリー、携帯ラジオ、飲料水と食べ慣れた食品すべてを毎回持ち出すのは大変なので、「これだけは」という一次持ち出し品を一つの袋にまとめ、玄関近くに置いておくのが現実的です。停電・断水が起きたときの実務ここからは、実際に電気や水が止まったときの動き方です。事前に読んで、家族で共有しておきましょう。在宅酸素の場合は、酸素濃縮器から携帯用酸素ボンベへ切り替え、酸素供給事業者へ連絡して復旧見込みや追加ボンベの相談をします。このとき、息苦しさを感じても酸素の流量を自己判断で上げないことが大切です。流量は処方に基づいて決められており、病状によっては流量の上げすぎがかえって呼吸の状態を悪くすることがあります。不安なときは流量を変える前に、主治医や訪問看護師へ連絡してください。ボンベを長くもたせるため、切り替え後はできるだけ安静に過ごしましょう。人工呼吸器が内部バッテリーに切り替わったら、残量表示と駆動可能時間を確かめ、外部バッテリーや発電機があれば順に接続します。自家用車から電気をとる方法(シガーソケットとインバーターの利用)もありますが、機器が求める電力に対応したインバーターが必要で、エンジンをかけた車を閉め切った場所に置かないなどの注意点があります。この方法を想定するなら、機器業者に適合を確認したうえで平時に一度試しておきましょう。経管栄養は、注入ポンプを使っている場合に停電の影響を受けます。ポンプのバッテリー駆動時間を確認するとともに、自然滴下(電源を使わない方法)への切り替えができるかどうかを、あらかじめ主治医や訪問看護師に相談しておくと選択肢が広がります。断水に備えて、注入の前後に使う白湯や器具を洗う水も、飲料水とは別に確保しておきたいところです。衛生状態が保ちにくい状況では、注入用の容器やチューブの洗浄・乾燥をいつも以上に丁寧に行います。断水時の清潔ケアには、からだ拭き用のウェットタオル、口腔ケア用のシートやスポンジブラシ、陰部洗浄用のボトル(ペットボトルのふたに穴を開けたもので代用できます)が役立ちます。おむつやパッドは、洗濯や入浴が難しくなることを見込んで多めに備えておくと、皮膚トラブルの予防につながります。生活用水として浴槽に水を張っておく方法も知られていますが、小さなお子さんのいる家庭では転落への注意が要ります。断水時のトイレは、携帯トイレや凝固剤を人数×日数分そろえておくと衛生を保ちやすくなります。排泄の回数を減らそうと水分を控えるのは、脱水や便秘、床ずれの悪化につながるため避けたい対応です。見落とされがちなのが、停電中の室温管理です。9月はまだ残暑が厳しく、エアコンや扇風機が止まると室温が上がり、高齢の方は脱水や熱中症のリスクが高まります。カーテンで直射日光を遮る、風の通り道をつくる、冷感タオルや保冷剤を使う、水分をこまめにとるといった対策を組み合わせましょう。飲水量の制限がある方は、どこまで水分を増やしてよいかを主治医に確認しておくと判断に迷いません。汗をかいたままの皮膚は床ずれやかぶれの原因にもなるため、着替えとからだ拭きをいつもより意識して行います。家族と支援者の連絡体制をつくる停電や避難の場面で頼りになるのは、日頃から関わっている支援者たちです。連絡先を一枚の紙にまとめ、冷蔵庫の扉や電話の近くなど、家族の誰もが見られる場所に貼っておきましょう。連絡先あわせて確認しておくこと主治医・かかりつけ医療機関夜間・休日の連絡方法、災害時の受け入れ方針訪問看護ステーション緊急時の連絡先、台風接近時の訪問調整ケアマネジャー個別避難計画の相談、福祉用具業者との連携医療機器業者・酸素供給事業者24時間窓口、停電時の対応、ボンベの追加配送調剤薬局処方前倒しの相談、冷所保存薬の扱い電力会社停電情報の確認方法、事前登録制度の有無市区町村の防災・福祉窓口名簿への登録、福祉避難所の場所と開設の考え方台風の接近が予報された段階で、訪問看護ステーションに連絡し、訪問日時の前倒しを相談するのも現実的な備えです。暴風雨の当日はスタッフの移動自体が難しくなるため、入浴介助や吸引、状態観察、薬のセットなどを接近前に済ませておくと、当日を自宅で落ち着いて過ごしやすくなります。離れて暮らす家族とは、停電で携帯電話が充電できなくなる場合に備えて、災害用伝言ダイヤル(171)の使い方や連絡の順番を決めておきましょう。モバイルバッテリーは、連絡手段を保つ備えとして家族の人数分を目安に用意しておくと役立ちます。支援者は専門職だけではありません。停電時に最初に様子を見に来られるのは、多くの場合ご近所の方です。医療機器を使って生活していることを、信頼できる近隣の方や自治会、民生委員に伝えておくと、安否確認や情報の共有がずっと早くなります。どこまで伝えるかはご本人の気持ちに沿って決めることですが、「停電のときは声をかけてもらえると助かります」という一言だけでも、地域とのつながりは備えになります。ピース訪問看護ステーションでも、利用者さまごとの機器や薬の状況に応じた災害時の備えについて、日々の訪問の中でご相談をお受けしています。東京都町田市を拠点に、相模原市・多摩市など近隣地域へ訪問対応しています。今日からできる備えチェックリスト最後に、この記事の内容を「いつやるか」で整理しました。全部を一度にやる必要はありません。今日の欄から一つずつ進めてみてください。時期備えの内容今日できること医療機器の内部バッテリー駆動時間を取扱説明書で確かめる。お薬手帳をスマートフォンで撮影する。懐中電灯とモバイルバッテリーの充電を確かめる今週中にやること常備薬リストを作る。機器業者に停電時の対応と連絡窓口を確認する。酸素ボンベへの切り替えや手動吸引を練習する。連絡先一覧を作って貼り出す今月中にやること電力会社の事前登録制度を問い合わせる。市区町村に避難行動要支援者名簿と福祉避難所について確認する。個別避難計画をケアマネジャーに相談する。冷所保存薬の停電時の扱いを薬剤師に聞く台風接近の予報が出たら残薬と酸素ボンベの残量を確かめ、必要なら追加を手配する。機器と予備電源を満充電にする。訪問看護に前倒し訪問を相談する。警戒レベル3で避難を始める段取りを家族で共有するよくある質問Q1. 停電は何時間くらい続く想定で備えればよいですか?近年の台風では、数時間で復旧した地域がある一方、2019年の台風15号のように復旧まで1週間を超えた地域もありました。目安として、まず24時間は自宅の備えでしのげる状態を目指し、それ以上長引く場合の避難先や連絡先を決めておく二段構えをお勧めします。人工呼吸器など生命の維持に関わる機器を使っている方は、バッテリーの駆動時間を踏まえて、より早い段階で避難や入院の相談を始める計画にしておきましょう。Q2. 酸素濃縮器が止まったら、すぐに危険な状態になりますか?携帯用酸素ボンベに切り替えれば、酸素吸入そのものは続けられます。大切なのは、切り替えの手順に慣れておくことと、処方流量でボンベが何時間もつかを知っておくことです。切り替え後は安静にして酸素の消費を抑え、酸素供給事業者に連絡して追加ボンベや復旧見込みを確かめてください。息苦しさが強いときや意識がぼんやりするときは、ためらわず主治医・訪問看護師への連絡や救急要請を検討しましょう。Q3. 人工呼吸器の内部バッテリーはどのくらいもちますか?機種や設定、バッテリーの劣化具合によって幅があり、一概には言えません。だからこそ、ご自身の機器の駆動時間を機器業者に確認しておくことが備えの第一歩になります。そのうえで、外部バッテリーや発電機などの予備電源、バッグバルブマスクによる手動換気、早めの避難という複数の選択肢を用意しておくと、駆動時間の範囲内で落ち着いて次の行動に移れます。Q4. 避難所に行けば医療機器の電源は使えますか?一般の避難所では、医療機器のための電源が用意されているとは限りません。非常用電源があっても照明や運営のために使われることが多く、コンセントの数も限られます。医療機器を使う方は、福祉避難所の場所と開設の条件を自治体に確認しておくこと、主治医に災害時の一時入院の可能性を相談しておくことをお勧めします。避難の際は、機器本体だけでなく電源コードやバッテリー、取扱説明書も忘れずに持ち出しましょう。Q5. 停電したら、冷蔵庫の中のインスリンはどうすればよいですか?慌てて取り出す必要はありません。冷蔵庫は扉の開閉を減らせば庫内の温度上昇がゆるやかで、短時間の停電なら影響は小さいとされています。停電が長引く場合、製薬企業の案内では遮光したうえで室温(1〜30℃)での保管が可能とされています。保冷剤を使う場合は、薬に直接当てて凍結させないよう注意してください。凍結したインスリンは使用できません。判断に迷うときは、かかりつけの薬局に電話で確かめましょう。まとめ:台風が来る前の一週間でできることから在宅医療機器や薬とともに暮らす方の台風・停電対策は、「機器の代替手段」「薬とお薬手帳」「避難の計画」「連絡体制」の4つに整理できます。どれも特別な道具や費用が要るものばかりではなく、確認と相談で進められる項目が多くを占めます。台風は、接近の前に予報という時間の猶予がある災害です。予報が出てから慌てるのではなく、シーズン前の今、チェックリストの一つ目から手をつけておきましょう。一度つくった備えは、機器の変更や体調の変化、薬の見直しに合わせて年に1回ほど点検すれば、長く役立つ財産になります。台風シーズンの入り口であるこの時期は、その点検のよい機会でもあります。備えの中身は、使っている機器や病状、家族の体制によって一人ひとり異なります。「自分の場合はどう備えればいいのか」を具体的にしたいときは、日頃の様子を知っている訪問看護師やケアマネジャーに相談するのが近道です。ピース訪問看護ステーションは、東京都町田市を拠点に、相模原市・多摩市など近隣地域へ訪問対応しています。療養環境に合わせた災害への備えづくりも、訪問の中で一緒に考えていきます。ぜひ町田市およびその近隣にお住まいの方は、ピース訪問看護ステーション(island-piece.jp/contact)にご相談ください。【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理、地域医療連携、在宅看取り支援に積極的に取り組んでいる。island-piece.jp 株式会社isLand|訪問看護・居宅介護支援・訪問介護|町田市