季節の変わり目は、気温差や気圧の変動、日照時間の変化が重なり、「頭痛」「めまい」「だるさ」「眠れない」「食欲がない」などの体調不良が出やすいタイミングです。特に日本の四季は変化が急で、体が環境に適応する前に次の季節がやってくることも少なくありません。本稿では、季節の変わり目に多い不調の原因やセルフケア方法をわかりやすく解説し、在宅での過ごし方や訪問看護の活用方法も紹介します。1. 季節の変わり目に体調を崩しやすい理由人の体は常に一定の体温・血圧・代謝を保とうとしていますが、その調整を担うのが自律神経です。寒暖差が大きい春や秋、梅雨時期の湿度変化、台風シーズンの急激な気圧低下などは、自律神経に過度の負担を与えます。その結果、交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、不調につながります。また、日照時間が短くなる秋から冬にかけては、季節性の気分変調が生じやすく、光(高照度)を活用した対策が有効とされます。チェックポイント気圧が下がる前後に頭痛や肩こりが出やすい。季節の変わり目は「冷え」「睡眠不足」「栄養不足」が重なることで不調が強まる。症状日誌をつけると、発症タイミングと気象条件の関係が見えやすくなる。👩⚕️ 看護師のワンポイントアドバイス:体調不良が天気と連動していると感じたら、天気予報アプリで気圧の変化をチェックし、事前に休養や水分補給を意識すると楽になります。出典:日本医師会「雨の日に体調が悪くなる-天気痛-【健康ぷらざNo.548】」https://www.med.or.jp/dl-med/people/plaza/548.pdf出典:日本精神神経学会『気分障害における過眠への対応』https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1230070424.pdf2. よくある症状と考えられるメカニズム季節の変わり目に出やすい不調は多岐にわたります。代表的なのはだるさ、頭痛、めまい、眠気、不眠、肩こり、食欲不振、気分の落ち込みなどです。これらは一見バラバラですが、背景には自律神経の不安定さや生活リズムの乱れがあることが少なくありません。さらに、既往症を持つ方にとっては、症状が重症化したり合併症につながることもあります。例えば、心疾患や呼吸器疾患のある方は、急な冷え込みが発作を誘発することがあります。高齢者では脱水や転倒にも直結するため注意が必要です。症状背景に多い要因初期対応の例受診の目安頭痛(片頭痛/緊張型)低気圧・寝不足・脱水・冷え水分塩分、カフェイン少量、首肩の温罨法神経症状(しびれ等)を伴う場合めまい・ふらつき気圧変化・自律神経不安定座る/横になる、深呼吸難聴/耳鳴りを伴う場合強い眠気/不眠体内時計の乱れ・日照不足起床時刻の固定、朝光、就寝前の刺激制限日常生活に支障がある場合倦怠感・食欲不振低栄養・脱水少量高たんぱく、経口補水長引く、体重減少がある場合👩⚕️ 看護師のよくある例:訪問看護の現場では、「めまいが出て怖くて外に出られない」という声をよく聞きます。無理をせず、家の中で座ってできる軽い運動や深呼吸から始めましょう。出典:日本医師会「雨の日に体調が悪くなる-天気痛-【健康ぷらざNo.548】」https://www.med.or.jp/dl-med/people/plaza/548.pdf3. 自律神経を整える睡眠と生活リズム睡眠は体調を左右する大きな要因です。厚生労働省が提示する「睡眠12箇条」は、特に季節の変わり目に役立ちます。毎日同じ時間に起きることで体内時計を一定に保つ。朝の光を浴びると脳内でセロトニンが分泌され、日中の活力につながる。朝食をとることで体温リズムと血糖リズムが整う。就寝前の飲酒は深い睡眠を妨げるため避ける。スマートフォンやパソコンの光(ブルーライト)は脳を覚醒させ、入眠を妨げます。寝室環境も重要で、暗さ・静けさ・適切な温度湿度が睡眠の質を高めます。ミニ表:睡眠衛生・やる/やめるやるねらいやめる理由起床時刻を毎日一定体内時計を安定就寝前のアルコール浅い睡眠を増やす朝散歩や朝陽を浴びるメラトニン調整寝る直前の激しい運動入眠を妨げる朝食(たんぱく+炭水化物)血糖・体温リズム整備ベッドでスマホ脳が覚醒して眠れない👩⚕️ 看護師のワンポイントアドバイス:就寝前は「寝酒」よりも「ぬるめのお風呂」の方が効果的です。リラックス効果で自然な眠りにつながります。出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針2014」https://www.mhlw.go.jp/content/001208251.pdf4. 暑さ・寒さへの具体策季節の変わり目では、日中の暑さと朝晩の冷え込みが同時に訪れるため、体温調整が難しくなります。特に高齢者は体温調節機能が低下しているため、熱中症や低体温症のリスクが高まります。熱中症予防にはWBGT(暑さ指数)を確認し、暑さが厳しい日は外出を控えることが推奨されます。冬の冷え込みに対しては、寝室や浴室の寒暖差に注意が必要です。ヒートショック予防のため、脱衣所や浴室の温度を事前に上げておくと安全です。チェックリストチェック実施例WBGTを確認アプリやテレビでチェック室温・湿度管理温湿度計やエアコン水分補給1時間ごとに少量冷え込み対策膝掛け、レッグウォーマー👩⚕️ 看護師のよくある例:高齢者の方が「夜中にトイレに行った時に急に寒くて倒れた」というケースがあります。寝室とトイレの温度差をなくす工夫が大切です。出典:環境省「熱中症環境保健マニュアル2018」https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf出典:環境省「指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)ほか普及啓発資料」https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_pr.php出典:町田市「熱中症に注意しましょう」https://www.city.machida.tokyo.jp/iryo/iryo/kenkoujyouhou/nettyuusyou3.html5. 栄養と水分体調を崩しやすい時期は食欲が落ちやすく、必要な栄養素を摂れないことが多くなります。高齢者は喉の渇きを感じにくいため脱水にも注意が必要です。特にたんぱく質は筋肉量を維持し、免疫機能を支えるために欠かせません。また、消化の良いメニューを少量ずつ複数回摂取することで、負担をかけずに栄養を確保できます。経口補水液は脱水時の補助として有効ですが、持病によっては塩分制限が必要な場合もあるため、医師の指示に従うことが大切です。目的食材/メニュー例ポイントたんぱく質ヨーグルト+きなこ、豆腐みそ汁飲み込みやすい電解質経口補水液、梅干し湯塩分制限は医師と相談エネルギー補給バナナ、オートミール粥少量を回数多く👩⚕️ 看護師のワンポイントアドバイス:食欲がないときは無理に三食食べなくても大丈夫。小分けにして「一日5回の少量食」にすると取り入れやすくなります。出典:全国訪問看護事業協会「高齢者の脱水」https://www.zenhokan.or.jp/wp-content/uploads/dehydration.pdf出典:日本老年医学会「フレイルに関するステートメント」https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20140513_01_01.pdf8. 訪問看護を活用するメリットセルフケアだけでは改善が難しい場合や、持病を持つ高齢者にとっては訪問看護の活用が有効です。専門職が在宅で体調をチェックし、生活習慣の調整をサポートします。訪問看護でできることバイタルサイン(血圧・脈拍・体温)の定期チェック栄養・水分補給の工夫や食事指導睡眠・生活リズムの改善支援季節特有のリスク(熱中症・感染症)の予防指導👩⚕️ 看護師のよくある例:独居高齢者で「水分をあまりとっていなかったために軽い脱水になっていた」ということがありました。訪問看護での声かけや補水習慣の提案が大きな支えになります。出典:日本看護協会「訪問看護師の仕事」https://www.nurse.or.jp/aim/kango/sub/homon/txt02.htmlまとめ季節の変わり目の体調不良は、自律神経の乱れ、睡眠や栄養、環境の変化が主な原因です。セルフケアの基本は、朝のリズム、適切な水分と栄養、無理のない運動、室内環境の調整です。つらい症状が続く場合は医療機関へ相談しましょう。訪問看護は、在宅でのセルフケア支援や体調管理をサポートする存在として活用できます。関連記事熱中症の症状とは?初期症状から重症化までの段階と対処法経口補水液の効果とは?熱中症・脱水症の強い味方を徹底解説コロナか夏風邪か熱中症か?2025年夏に知っておきたい症状の違いと受診目安参考文献一覧日本医師会「雨の日に体調が悪くなる-天気痛-【健康ぷらざNo.548】」https://www.med.or.jp/dl-med/people/plaza/548.pdf日本精神神経学会『気分障害における過眠への対応』https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1230070424.pdf厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針2014」https://www.mhlw.go.jp/content/001208251.pdf環境省「熱中症環境保健マニュアル2018」https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf環境省「指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)ほか普及啓発資料」https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_pr.php町田市「熱中症に注意しましょう」https://www.city.machida.tokyo.jp/iryo/iryo/kenkoujyouhou/nettyuusyou3.html全国訪問看護事業協会「高齢者の脱水」https://www.zenhokan.or.jp/wp-content/uploads/dehydration.pdf日本老年医学会「フレイルに関するステートメント」https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20140513_01_01.pdf日本感染症学会「2024/25シーズンにおけるインフルエンザの現況」https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/influenza_250130.pdf日本看護協会「訪問看護師の仕事」https://www.nurse.or.jp/aim/kango/sub/homon/txt02.html本記事の執筆者・監修者プロフィール【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理に長け、地域医療連携や在宅看取り支援にも積極的に取り組んでいる。