1. 【まず知りたい】「心臓が大きい」とは?—心拡大・心肥大の基礎知識「心臓が大きい」と診断される仕組み(心胸比とは)検査名内容基準値・目安異常があるときの可能性胸部レントゲン胸の中で心臓がどれくらいの割合を占めているかを調べる心胸比(CTR)50%以下(PA立位・深吸気時)心拡大、心不全、弁膜症など心エコー検査超音波で心臓の動きや弁の状態を確認するEF(駆出率)53〜73%が目安(ASE/EACVI基準)心機能低下、弁の異常CT・MRI立体的に心臓の形や厚みを観察する―心筋症、構造的異常など胸部レントゲンで測る「心胸比(CTR)」は、心臓の横幅が胸の中でどのくらいの割合を占めているかを示す指標です。50%を超えると心拡大の疑いがありますが、姿勢や息の吸い方、撮影角度によっても変わるため、「心臓が大きい」と言われてもすぐに病気とは限りません。CTや心エコーなどで再確認することが重要です。心胸比の変化は高血圧や心不全の初期サインでもあり、定期的な健診が早期発見の鍵となります。「心肥大」と「心拡大」の違いと原因用語起きている変化主な原因よくある病気心肥大心臓の筋肉(心筋)が厚くなる高血圧・弁膜症左室肥大・肥大型心筋症心拡大心臓の内腔が広がる心不全・弁の逆流拡張型心筋症・重症弁膜症「心肥大」は心臓が強く働こうとして筋肉が厚くなる状態で、主に高血圧などが原因です。一方、「心拡大」は心臓の中に血液が溜まりやすくなって内側が広がる状態で、心不全や弁膜症などで見られます。どちらも心臓に負担がかかる状態で、放置するとポンプ機能が低下し、息切れやむくみ、不整脈などを引き起こします。定期的な検査で進行を確認し、早めの治療や生活改善を行うことが大切です。アスリート心と病的心肥大の見分け方比較項目アスリート心(生理的肥大)病的心肥大原因運動による一時的負荷高血圧・心疾患など心筋の厚さ均等にやや厚くなる特定部位のみ極端に厚くなる心機能正常または良好低下することが多い回復運動を休むと改善持続・悪化することも運動を続けている人の心臓が一時的に大きくなることがあります。これは「アスリート心」と呼ばれ、病気ではなく心臓が鍛えられた状態です。運動を休むと自然に戻るのが特徴ですが、もし休んでも戻らない、息切れや動悸がある場合は病的な心肥大の可能性があります。特に高血圧や家族に心疾患のある人は注意が必要で、症状のあるときは循環器内科で心エコー検査を受けることが安心につながります。2. 心肥大と心拡大の違い—構造と機能から理解する心筋が厚くなる「心肥大」のメカニズム原因起こる負担結果高血圧圧力に耐えるための圧負荷心筋が厚くなる(求心性肥大)弁膜症(大動脈弁狭窄など)押し出す力が必要になる左室の壁が厚くなる運動習慣一時的負荷可逆的な肥大(運動中止で改善)心臓は全身に血液を送るポンプです。血圧が高い状態が続くと、血液を押し出すために大きな力が必要になり、心臓の筋肉が厚くなります。これが心肥大です。初期のうちはしっかりと血液を送り出せますが、長期間続くと心筋が硬くなり、血液を取り込む力が弱まります。その結果、息切れや疲れやすさが現れます。早い段階で血圧をコントロールし、減塩(1日6g未満)を心がけることが予防の基本です。心腔が広がる「心拡大」の仕組み原因起こる負担主な影響弁の逆流血液が心臓に戻る心室が広がる(拡張)心筋症筋肉が弱る収縮力が低下心不全慢性的な容量負荷CTR上昇・息切れなど「心拡大」は、血液が心臓の中に溜まりすぎて風船のように広がってしまう状態です。血液を送り出す力が弱まると、体に水分がたまり、息切れやむくみが出てきます。原因として多いのは心不全や弁膜症で、早期に治療を始めることで進行を止められる場合があります。胸部レントゲンで心胸比が50%を超えたら、心エコーで心臓の動きを詳しく確認することが重要です。合併・進行のパターンと重症化リスク段階状態対応の目安代償期自覚症状がない定期健診と生活改善非代償期息切れ・むくみ出現薬物療法開始末期呼吸困難・夜間発作入院・在宅医療が必要心肥大や心拡大は、最初のうちは自覚症状がほとんどありません。しかし、進行すると息切れやむくみなどが現れ、さらに進むと夜間に呼吸が苦しくなることもあります。これらの状態は心不全へと進行するサインです。自覚症状が出る前に血圧や体重を管理し、定期的に検査を受けることで、重症化を防ぐことができます。3. 主な原因—高血圧・弁膜症・心筋症など高血圧・動脈硬化による負荷原因起きること結果高血圧心臓に強い圧力がかかる心筋が厚くなり心肥大へ動脈硬化血管が硬くなる心臓の負担が増える放置心不全・脳卒中・腎障害命に関わることも血圧が高い状態が長く続くと、心臓は常に強い圧力に逆らって血液を送り出す必要があり、筋肉が厚くなってしまいます。これが心肥大の代表的な原因です。動脈硬化も同時に進むと血管の弾力がなくなり、さらに心臓への負担が増えます。血圧を安定させるには、減塩・適正体重の維持・ストレス管理が重要です。特に減塩6g/日未満が予防の基本とされています(出典:日本高血圧学会)。弁膜症や心筋症など器質的疾患疾患名内容起きる変化僧帽弁閉鎖不全症弁が閉じず血液が逆流左心房・左心室の拡大大動脈弁狭窄症弁が狭く血液が出にくい左室肥大拡張型心筋症心筋が弱くなり広がる心拡大・収縮力低下心臓の弁や筋肉そのものに異常があると、血液が逆流したり流れにくくなったりします。これが長く続くと、心臓はその負担に耐えるために筋肉を厚くしたり、内腔を広げたりします。早めに心エコー検査を受けることで、原因の特定と治療方針の決定ができます。生活習慣・ホルモン・遺伝的要因要因影響アルコール多飲アルコール性心筋症の原因になる甲状腺異常心拍数・血圧の変動を起こす家族歴遺伝性心筋症・弁疾患のリスク飲酒や喫煙、ストレス、睡眠不足などは、知らず知らずのうちに心臓へ負担をかけます。特にアルコールの多飲は心筋を弱らせる原因となり、若い世代でも心臓が大きくなるケースがあります。また、家族に心臓病の既往がある場合は、遺伝的な影響があることも。日常の生活習慣を見直すことが、最も身近で効果的な予防法です。4. 症状チェック—心臓が大きいときに出るサイン息切れ・むくみ・動悸などの初期症状症状主な原因見られやすいタイミング息切れ血液を送り出す力の低下階段・坂道・入浴時などむくみ血流の滞り・うっ血足首やすね、靴下跡の残り動悸心拍リズムの乱れ横になった時・夜間など心臓が大きくなると、血液をうまく送り出せなくなり、体のすみずみに酸素が届きにくくなります。その結果、軽い動作でも息切れを感じたり、足や顔にむくみが出たりします。心臓がリズムを崩すことで動悸を感じることもあります。これらの症状は「年齢のせい」と思われがちですが、放置すると心不全の初期段階であることもあります。早めに循環器内科を受診し、原因を確認することが大切です。夜間の呼吸困難・体重増加などの進行症状サイン起こる仕組み注意すべき点夜間の息苦しさ心臓のうっ血で肺に水がたまる横になると悪化急な体重増加体内に水分がたまる3日で2kg、1週間で2〜3kg増は注意疲労・だるさ酸素が体に届かない日中の活動量が減る心臓の機能がさらに弱まると、夜間に呼吸が苦しくなり眠れなくなることがあります。これは心臓から送り出せない血液が肺にたまってしまうためです。また、短期間で体重が急に増えるのは、体内に余分な水分が溜まっているサインです。特に「3日で2kg」または「1週間で2〜3kg」の増加が見られる場合は、すぐに医師へ相談が必要です。息切れや体重変化の記録を毎日つけることが、再発防止にも役立ちます。無症状でも放置できない理由状態問題点対応方法無症状の心拡大自覚がないまま進行定期健診で早期発見軽度心肥大健診でしか分からない血圧管理・生活改善が重要放置心不全・不整脈に進行医療介入が必要になる心臓が大きくても、最初は全く症状が出ないことがあります。しかし、その間にも心臓には負担がかかり続け、ある日突然、息苦しさやむくみが強くなることがあります。特に高血圧や糖尿病がある人は、心肥大や心拡大が進みやすい傾向にあります。症状がない段階から定期的に検査を受け、生活習慣を見直すことが、心臓病を未然に防ぐための第一歩です。5. 検査方法—診断の流れと重要ポイント胸部レントゲンと心胸比(CTR)の見方検査内容目安値判定胸部レントゲン胸の中で心臓が占める割合を確認心胸比(CTR)50%以下50%を超えると心拡大の疑いあり胸部レントゲンは、最も一般的な検査方法で、心臓の形や大きさを簡単に確認できます。撮影時の吸気量や体位によっても数値は変化するため、PA立位(立った姿勢で息を吸い込んだ状態)での撮影が前提です。CTRが50%を超えていても、すぐに病気とは限りません。体格や姿勢、呼吸状態でも数値が変動します。異常が見つかった場合は、心エコーやCT検査で再確認することが大切です。心エコー・心電図で分かること検査見るポイント分かること心エコー心臓の動き・弁の開閉・血流心機能・弁の異常・心肥大の有無心電図電気信号の流れ不整脈・負担の有無ホルター心電図24時間記録日常生活中のリズム異常心エコー検査は、痛みがなく安全に心臓の動きを確認できる検査です。心臓の厚さや広がり、血液の流れがリアルタイムで分かり、心肥大や弁膜症の診断に役立ちます。心電図では、心臓のリズムや電気信号の異常を確認し、不整脈や心筋の負担を把握します。特に息切れや動悸があるのにレントゲンで異常がない場合、エコーやホルター心電図で詳しく調べることが早期診断につながります。血液検査・CT・MRIの役割検査主な項目判定できる内容血液検査BNP・NT-proBNP心不全の進行度の把握CT立体画像で確認弁や冠動脈の異常を可視化MRI詳細な断層画像心筋の質や損傷の有無を評価心臓の病気は、画像検査だけでなく血液検査の数値からも分かります。BNPやNT-proBNPは心臓の負担を示す重要な指標で、値が高いほど心不全のリスクが高くなります。また、CTやMRIを行うことで心臓の形や内部構造を立体的に確認でき、心筋症や弁膜症などの詳しい診断が可能です。検査を組み合わせることで、より正確に「心臓が大きく見える原因」を突き止められます。6. 生活改善の方法—日常でできる心臓ケア食事療法(減塩・バランス栄養・体重管理)取り組み目安・ポイント効果減塩1日6g未満(日本高血圧学会推奨)血圧を下げ心臓の負担軽減バランス食野菜・魚・豆類を中心に栄養バランスを整える体重管理BMI22前後を目標に血圧・血糖の安定塩分を多く摂ると体に水分が溜まりやすくなり、血圧が上昇します。心臓に負担をかけないためには、減塩6g未満/日を目標にしましょう。しょうゆやみそを控え、だしやスパイスを活用して味に変化をつけると続けやすくなります。また、野菜や魚、豆類を多く摂り、体重を適正に保つことも重要です。体重が1kg減るだけでも心臓への負担は軽くなります。無理のない範囲で、バランスの良い食生活を意識しましょう。運動療法(安全な有酸素運動・強度・頻度)運動の種類目安注意点ウォーキング1日20〜30分、週合計150分会話ができる程度の強度でストレッチ毎日5〜10分呼吸を止めずゆっくりと行う体操・軽い筋トレ週に2〜3回主治医の許可のもとで実施心臓病の予防には、軽めの有酸素運動が効果的です。特にウォーキングは続けやすく、血流を改善して心臓の働きを助けます。強すぎる運動は逆に負担となるため、「息が弾むが会話ができる程度」を目安にします。週150分程度の中強度運動を目標に、主治医や理学療法士と相談しながら安全に進めましょう。運動は少しずつでも続けることが大切です。睡眠・ストレス・飲酒・喫煙習慣の見直し生活習慣改善ポイント効果睡眠6〜8時間を確保自律神経を整え血圧安定ストレス深呼吸・趣味などで発散動悸や不整脈を防ぐ飲酒・喫煙節酒・禁煙を徹底心臓への酸素供給改善睡眠不足やストレスは血圧を上げ、心拍を乱す原因になります。毎日6〜8時間の睡眠を確保し、リラックスできる時間を持つことが大切です。アルコールは控えめに、喫煙は完全にやめることが理想的です。たばこは血管を細くし、酸素の供給を妨げるため、心臓病を悪化させる要因になります。生活習慣を整えることが、薬に頼りすぎない心臓ケアの第一歩になります。7. 心不全との関係—「心臓が大きい」が進むとどうなる?心不全とは何か?用語意味主な症状心不全心臓のポンプ機能が低下した状態息切れ・むくみ・疲れやすい急性心不全症状が急に悪化するタイプ夜間呼吸困難・体重急増慢性心不全徐々に進行するタイプ日常動作で息切れが出る「心不全」とは、心臓が血液を十分に送り出せず、全身に酸素が届きにくくなった状態をいいます。心臓が大きくなるのは、その負担に耐えようとする結果であり、心不全の前段階であることも多いです。初期は疲れやすい・階段で息切れがする程度でも、進行すると呼吸困難やむくみが強くなり、入院が必要になる場合があります。早めに原因を見つけて治療を始めることで、心臓の働きを保ち、生活の質を維持できます。心不全が進行する仕組み段階心臓で起きる変化自覚症状代償期心臓が大きくなり力を保つ無症状〜軽い息切れ非代償期心臓が疲れて血液を送り出せないむくみ・夜間の息苦しさ末期心臓が伸びきり機能低下体重増加・呼吸困難心不全はゆっくり進行する病気です。初期のうちは心臓が代わりに頑張るため症状が出ませんが、その分発見が遅れることがあります。やがて心臓の筋肉が疲れ、血液を送り出す力が弱まると息切れやむくみが悪化します。定期的に体重・血圧・脈拍を測定し、日々の変化を記録することが悪化防止の第一歩です。心不全の早期サインを見逃さない変化意味対応体重の急増体に水分が溜まっている3日で2kg・1週間で2〜3kg増は注意むくみうっ血のサイン足首やすねを毎日確認夜間呼吸困難心臓の負担増加横になって苦しい場合は受診「むくみ」「体重の急増」「夜間の呼吸苦」は心不全悪化の代表的サインです。体の中に水分がたまると、夜になると横になっただけで息が苦しくなります。こうした変化は毎日の体重記録で早めに気づけます。3日で2kg、または1週間で2〜3kg増えたら医師へ連絡を。早期に調整を行えば、入院を防ぐことが可能です。8. 自宅での支援—訪問看護・訪問リハビリの活用訪問看護の役割と利用できる人内容詳細制度上の定義医師の指示に基づき、看護師などが自宅で療養上の世話や必要な医療処置を行う対象心臓病・高血圧・糖尿病など慢性疾患のある方、退院後のケアが必要な方提供内容バイタル測定・服薬確認・症状観察・医師への報告・緊急対応など訪問看護は、医師の指示に基づいて行われる医療サービスで、自宅に看護師が訪問し、体調管理や医療処置を行います。心臓の病気を持つ方の場合、血圧や脈拍、体重のチェック、服薬の確認、息切れ・むくみなどの変化を観察します。変化があれば主治医へ報告し、必要に応じて受診や処方の調整を行います。24時間対応の体制がある事業所もあり、夜間や休日の体調変化にも迅速に対応できる安心の仕組みです。訪問リハビリでできること内容詳細対応職種理学療法士・作業療法士・言語聴覚士主な支援運動プログラムの作成・体力維持・生活動作訓練目的息切れを軽減し、自宅での生活を続けるための体づくり心臓病や心不全の方にとって、動くことは大切ですが、無理な運動は危険です。訪問リハビリでは、専門のリハスタッフが心臓や体調に合わせた安全な運動プログラムを作成します。たとえば、「息切れが出ない程度の歩行」「立ち上がりやすい動作訓練」などを自宅環境に合わせて実施します。継続することで体力が維持され、再入院のリスクを減らすことができます。町田市在住の方へ:ピース訪問看護ステーションのご案内スタッフ体制職種人数主な対応内容医療スタッフ看護師9名医療的ケア・症状観察・夜間対応も可能リハビリスタッフ理学療法士・作業療法士・言語聴覚士14名ご利用者の体調に合わせた在宅支援ケアマネジャー介護支援専門員7名医療と介護をつなぐ総合支援特徴詳細夜間対応24時間の緊急対応で急な体調変化にも迅速対応リハビリ職の充実体調や心臓疾患にも配慮した個別支援が可能ケアマネ連携医療・介護・リハビリを包括的にサポート継続的な健康管理血圧・体重・むくみを継続的に観察地域連携町田市内クリニックと密に連携し継続ケアを実施ピース訪問看護ステーションは、町田市および近隣地域にお住まいの方を対象に、在宅療養を総合的に支援するチームです。看護師が定期的に訪問し、血圧や脈拍、体重などを丁寧にチェック。変化があれば主治医に報告し、受診や医療連携を調整します。また、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が息切れの軽減や体力維持を目的とした個別リハビリを行い、住宅内の環境も含めてサポートします。24時間の緊急対応と地域医療との連携により、安心して自宅で生活を続けることができます。👉 ぜひ町田市およびその近隣にお住まいの方は、ピース訪問看護ステーションにご相談ください。9. 受診の目安と病院での治療受診が必要なタイミング状況行動の目安息切れ・むくみが続く数日以内に循環器内科を受診夜間に呼吸が苦しい早めの受診を(急性心不全の可能性)体重が急に増えた3日で2kg・1週間で2〜3kg増なら医師へ連絡「心臓が大きい」と指摘されたときに症状がなくても、放置してはいけません。体重の急増・夜間呼吸困難・むくみなどのサインが出たら、すぐに循環器内科を受診しましょう。定期的な血圧測定と体重管理を行い、変化を記録しておくと診察がスムーズです。治療法の種類と目的治療法内容目的薬物療法利尿薬・降圧薬・β遮断薬など心臓の負担軽減・血圧安定カテーテル治療弁膜症・冠動脈狭窄の改善血流の改善ペースメーカー・ICD不整脈・心停止予防心拍を整える治療は原因や進行度に応じて異なります。多くの方では薬での治療が中心となり、症状の安定と再発防止が目的です。弁膜症や冠動脈の病気がある場合は、カテーテル治療や手術が行われることもあります。不整脈が重い場合は、ペースメーカーやICD(植込み型除細動器)が有効です。治療を続けるために大切なこと取り組み内容定期受診薬の調整・副作用確認を行う自己管理血圧・体重・症状を毎日チェック医療連携医師・看護師・リハ職で情報共有治療は「薬を飲むだけ」ではなく、生活全体を整えることが大切です。自己判断で薬を中断すると、再発や悪化の危険があります。定期的に医師の診察を受け、看護師やリハビリスタッフと連携して体調を見守りましょう。治療を継続することで、心臓の働きを保ちながら自宅で安心して暮らす時間を延ばすことができます。10. よくあるQ&A—疑問と不安を解消Q1:「アスリートの心臓」は病気ですか?ポイント内容原因運動による一時的な心筋の発達特徴均等に厚くなり心機能は良好注意点休養で元に戻らない場合は精査が必要スポーツを長く続けている人では、心臓が鍛えられて一時的に大きくなることがあります。これは「アスリート心」と呼ばれ、病気ではなくトレーニングに対する自然な適応反応です。心臓が効率よく働けるように変化している状態で、多くは運動を休めば元に戻ります。ただし、運動をやめても戻らない、息切れや動悸を感じるなどの場合は、病的な心肥大の可能性があるため、循環器内科で心エコー検査を受けることが大切です。Q2:妊娠・産後の心拡大は大丈夫?状況原因対応の目安妊娠中血液量の増加多くは一時的で自然に改善産後すぐ水分・ホルモン変化経過観察で改善することが多い改善しない場合心筋症・弁膜症の可能性早期の循環器受診が望ましい妊娠中や産後は、体を守るために血液量が増えるため、心臓が一時的に大きく見えることがあります。多くの場合は時間とともに元に戻りますが、息切れ・むくみ・強い疲労感が続く場合は、周産期心筋症などの可能性があります。特に出産後も改善しない場合は早めに受診し、心エコー検査で確認を行いましょう。早期発見で重症化を防ぐことができます。Q3:心臓が大きいと寿命に影響しますか?状態リスク予防策放置した場合心不全・不整脈・突然死リスク増加早期受診と生活改善治療中症状の安定で生活維持可能定期検査と薬物治療改善例血圧・塩分管理で心機能を維持継続的ケアが重要「心臓が大きい」と聞くと心配になりますが、早めに原因を調べ、治療や生活改善を行えば長く元気に過ごせます。 放置して悪化した場合には心不全や不整脈のリスクが上がりますが、血圧を安定させ、塩分や体重をコントロールすることで進行を抑えることができます。医師の指示に従って定期的に検査を受けることが、寿命を延ばす最大のポイントです。Q4:薬は一生飲み続ける必要がありますか?薬の種類主な目的中止の判断利尿薬むくみを取る症状安定で減量可血圧・心不全薬心臓の負担を軽くする医師判断で調整β遮断薬など心拍数の安定自己中止は危険心臓の薬は、症状を抑えるだけでなく再発を防ぐための大切な治療です。体調が良くなっても、医師の判断なしにやめると、症状が再び悪化することがあります。多くの薬は体の状態に合わせて減量や中止が可能なので、定期的に医師と相談しながら調整します。「一生続ける」ではなく、「必要な間続けていく」という考え方が大切です。Q5:CTRが高いが症状がない場合、どうすべき?状況可能性対応方法無症状の心拡大体格・姿勢による影響定期的な経過観察軽度上昇一時的な変動3〜6か月後に再検査高値が続く潜在的疾患の可能性心エコーで確認胸部レントゲンで心胸比(CTR)が高くても、必ずしも病気とは限りません。体格や呼吸の状態、撮影条件によっても数値は変わります。ただし、数値が上がり続ける場合や家族に心臓病がある場合は注意が必要です。半年に一度の再検査や心エコーでの確認を行い、変化がないかを見守りましょう。11. 地域で支える心臓ケア—家族とともに続ける安心の療養家族のサポートと生活管理の工夫取り組み効果体重・血圧を一緒に記録変化を早く発見できる食事・塩分を家族で調整継続しやすくなる外出・運動をサポート体力維持・気分転換になる心臓病のケアは、本人だけでなく家族の協力が大切です。毎日の体重や血圧を家族と一緒に記録することで、小さな変化にも早く気づけます。塩分を減らす食事も家族全員で取り組むと続けやすくなります。また、散歩や買い物など軽い外出をサポートすることが、体力維持や気分の安定にもつながります。家族と共有しながら進めることが、安心して暮らすための大切な支えです。行政・地域包括支援センターの活用支援機関内容地域包括支援センター医療・介護・福祉の総合相談窓口自治体の健康相談血圧測定・栄養指導・健康講座など福祉サービス訪問介護・デイサービス・配食支援など町田市をはじめ、多くの自治体には地域包括支援センターがあります。ここでは、医療や介護、生活支援の相談をまとめて行うことができます。介護保険の申請やデイサービスの利用など、どこに相談してよいか分からない時の頼れる窓口です。自治体主催の健康相談や栄養教室などもあり、無料または低価格で利用できる場合があります。地域の支援制度を上手に使うことが、安心して自宅で過ごす力になります。継続的なフォローアップと地域医療の連携連携内容目的医師・看護師・リハ職の情報共有一貫したケアを行う定期訪問・電話確認体調変化を早期に把握家族・地域との協働安心して在宅生活を続ける退院後も体調を安定させるためには、医療機関・訪問看護・地域支援の連携が欠かせません。症状が落ち着いていても、気候や疲労などで再び悪化することがあります。医師・看護師・リハスタッフが定期的に情報を共有し、体調変化に早く対応できる体制をつくることが大切です。地域全体で支えることで、入退院を繰り返さずに自宅で安心して過ごすことができます。まとめ「心臓が大きい」と言われたときは、まず原因を知ることが大切です。高血圧や弁膜症、心不全など、原因はさまざまですが、早期に治療と生活改善を始めれば進行を防ぐことができます。 日々の体重・血圧・むくみの記録を習慣にし、異変があれば早めに医療機関に相談しましょう。また、在宅療養やリハビリ、地域支援をうまく活用すれば、入院を繰り返さずに自宅で安心して暮らすことも可能です。ぜひ町田市およびその近隣にお住まいの方は、ピース訪問看護ステーションにご相談ください。関連記事心臓ペースメーカーの生活と注意点、訪問看護とリハビリが支える在宅医療も紹介心臓が痛い?放置は危険!胸の痛みの原因・症状別チェックと受診の目安『心臓に水が溜まる』は何のサイン?心不全・胸水・心嚢水の違いと受診目安心臓がバクバクする原因と対処法、動悸・不整脈・ストレス・訪問看護まで徹底解説咳をすると肺や胸が痛い?考えられる病気と受診の目安・対処法参考文献出典:厚生労働省「心不全対策の現状」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000661085.pdf出典:厚生労働省「指定訪問看護の運営基準(指定居宅サービス等の人員、設備及び運営に関する基準)」https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84aa5296&dataType=0&pageNo=1出典:日本循環器学会/日本心不全学会「2021年度改訂版 心不全診療ガイドライン(2025年追補版参照)」https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/04/JCS2021_Yamada.pdf出典:日本心不全学会「BNP/NT-proBNP測定の手引き(2023)」https://www.asas.or.jp/jhfs/pdf/BNPguideline2023.pdf出典:日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2024(JSH2024)」https://www.jpnsh.org/jsh2024出典:国立循環器病研究センター「心不全の症状とセルフケア」https://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/patient/heart-failure/出典:WHO「Global Recommendations on Physical Activity for Health(2020)」https://www.who.int/publications/i/item/9789241599979出典:ASE/EACVI「Recommendations for Cardiac Chamber Quantification (2021 Update)」https://asecho.org/wordpress/wp-content/uploads/2021/02/Chamber-Quantification-Guideline-Update.pdf出典:東京都町田市公式サイト「高齢者支援・介護サービス」https://www.city.machida.tokyo.jp/kurashi/kaigo/index.html本記事の執筆者・監修者プロフィール【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理に長け、地域医療連携や在宅看取り支援にも積極的に取り組んでいる。