在宅での医療ニーズが高まる中、訪問看護の重要性が増しています。その中でも「特別管理加算」は、特定の医療的ケアが必要な利用者に対し、質の高い訪問看護サービスを提供するために設けられた加算制度です。本記事では、特別管理加算の概要から対象者、要件、注意点まで、訪問看護の現場で役立つ情報をわかりやすく解説します。1. 特別管理加算とは特別管理加算とは、在宅療養を支える訪問看護において、特に医療的管理が必要な利用者に対して計画的な管理を行うことで、月1回算定できる加算です。医療依存度の高い方に対して、質の高いサービスを継続的に提供する目的があります。加算は、利用者の状態に応じて「区分I」「区分II」の2種類に分かれており、対象となる医療処置内容に基づいて区別されます。2. 特別管理加算の区分と対象者以下の表は、2024年度診療報酬改定に基づいた対象者の分類です。区分対象となる処置・状態主な対象者例区分I- 在宅悪性腫瘍等患者指導管理- 在宅気管切開患者指導管理- 気管カニューレ使用- 留置カテーテル使用(胃瘻・膀胱瘻・腎瘻など)高度な医療処置や管理が常時必要な方区分II- 在宅酸素療法指導管理- 在宅中心静脈栄養法(CVポート等)- 経管栄養(胃瘻・経鼻)- インスリン自己注射- 人工肛門・人工膀胱保有者- 真皮を超える褥瘡(Ⅲ度以上)- 週3回以上の点滴注射- 在宅自己腹膜灌流・血液透析- 自己導尿・持続陽圧呼吸療法- 自己疼痛管理・肺高血圧症管理継続的に複数の医療的支援が必要な方対象者の状態や使用する医療機器の有無によって、適切な区分が異なるため、初回のアセスメントが重要です。3. 算定要件と必要書類特別管理加算を算定するには、以下の要件を満たす必要があります。訪問看護指示書に記載された医療処置に該当すること月1回以上の訪問があり、実際に医療管理を行っていること特別管理加算の対象である旨が計画書および記録に明記されていることまた、医師の指示書、訪問看護計画書、記録書類の整備が求められます。書類不備は返戻や指導の対象になるため注意が必要です。4. 加算額と報酬改定の影響2024年度の診療報酬改定により、特別管理加算の報酬にも若干の見直しが行われました。概算で以下のように設定されています(地域や条件により異なる場合があります)。区分I:約5,000円/月区分II:約2,500円/月今後も制度改定により要件や額の変更があるため、定期的な制度情報のチェックが重要です。5. 現場での実務ポイント訪問看護師が加算対象者を見極める際には、以下のポイントを意識するとよいでしょう:初回訪問での全身状態・医療機器使用状況の確認医師との密な連携と指示書の内容精査記録は簡潔かつ詳細に(処置内容・時間・患者反応など)実務では「対象者かどうか判断に迷うケース」も多く、定義の確認とチーム内の情報共有がカギとなります。6. よくあるQ&AQ1. 月に複数回訪問した場合、加算も複数回算定できる?A1. いいえ、加算は月1回のみの算定となります。Q2. 区分IIの対象でも、後から区分Iに変更できる?A2. 利用者の状態変化や医療処置内容の変更があれば、変更可能です。医師の指示書や記録の整備が必要です。Q3. 訪問看護計画書に記載がない場合でも加算できる?A3. 加算要件を満たしていても、計画書や記録に明記されていなければ算定できません。7. 特別管理加算を活用するメリット利用者にとって:より手厚い医療管理が自宅で受けられる看護師にとって:訪問の目的が明確になり、ケアの質が向上事業所にとって:適切な加算により経営的な安定性にも寄与正しく算定・活用することで、全関係者にとってプラスになる制度です。まとめ特別管理加算は、医療依存度の高い利用者に対して質の高い訪問看護を提供する上で欠かせない制度です。制度の理解と実務への適用が訪問看護の質向上にもつながります。要件や注意点を押さえて、適切に活用しましょう。関連記事【訪問看護】別表7・8に該当するとどう変わる?保険・回数・処置のポイント総まとめ通所リハビリと訪問リハビリは併用できる?制度と現場の実態を解説 東京都の訪問系介護スタッフ向け熱中症対策支援とは?補助制度と現場の工夫町田市で訪問看護や介護サービスについて知りたい方は、ピース訪問看護ステーションの公式サイトもあわせてご覧ください。▶ https://island-piece.jp/service/houmonkango