高齢者が在宅で安心して暮らし続けるためには、日常生活における様々な支援が必要です。その中でも「買い物」は生活の基本でありながら、加齢や疾患によって困難になる場面が増えていきます。この記事では、介護保険制度を活用した「買い物同行」サービスについて詳しく解説します。利用できる条件や注意点、現場での活用事例も交えながら、制度の理解を深めていきましょう。1. 買い物同行とは?「買い物同行」とは、介護職員(主に訪問介護員=ヘルパー)が利用者と一緒にスーパーや薬局などに出向き、必要な品物を一緒に選んだり、持ち運びのサポートを行う身体介護サービスです。単なる買い物代行ではなく、利用者が主体的に行動できるように支援するのが特徴です。このサービスは、単に「物を買う」という行為にとどまりません。買い物という行動を通して、身体的な運動(歩行や持ち上げ)、認知機能の維持(商品を選ぶ、計算する)、社会的接点の確保(店員とのやりとりや外出)といった、複数の生活機能を自然に維持・向上させる効果があります。支援内容具体例同行支援スーパーまでの歩行介助、商品選びのサポート持ち帰り支援荷物の持ち運び、車の乗降サポート金銭管理支払い時のサポート(見守り・誘導)2. 介護保険で買い物同行は利用できる?結論:「買い物同行」は介護保険の『身体介護中心型』サービスとして利用可能です。訪問介護(ホームヘルプサービス)の一環として位置づけられており、要件を満たせば公的支援の中で提供を受けることができます。買い物同行は本人の身体介護にあたるため、生活援助ではなく身体介護の扱いになります。これにより、利用者本人が買い物に同行することが前提となります。主な要件要支援・要介護認定を受けていることケアプランに「買い物同行」の必要性が明記されていること本人の身体機能や認知機能の維持を目的とした外出支援であることまた、同居家族がいる場合でも、「就労中で不在がち」「高齢や障害で支援困難」など、やむを得ない事情がある場合はサービス利用が認められることがあります。利用の流れ(図解)ステップ内容① 相談地域包括支援センターやケアマネジャーに相談② 申請要介護・要支援の認定申請③ 計画ケアマネがケアプランを作成(買い物同行を含める)④ 契約訪問介護事業所と契約⑤ 利用開始ヘルパーによる買い物同行サービス実施なお、ケアマネジャーとの連携が非常に重要です。「本人の希望」だけではサービス提供が難しい場合もあるため、必要性の根拠を明確に伝えることがポイントになります。3. 利用条件と注意点利用条件条件内容要介護度要支援1〜要介護5すべて対応可能サービス内容ケアマネジャーの作成するケアプラン内に明記回数・頻度原則週1〜2回程度(地域によって異なる)注意点本人のための日用品や食料品など生活に必要な物に限られる娯楽品や贅沢品の購入は対象外本人以外のための買い物(家族の依頼など)は不可長時間のウィンドウショッピングは不可喫茶店やレストランでの食事同行なども原則NGまた、サービス提供中の金銭管理には慎重を期す必要があります。現金をヘルパーに預ける際は、双方での確認と記録が求められます。4. 自費サービスとの違い介護保険での買い物同行と、自費の買い物代行サービスには明確な違いがあります。自費サービスは柔軟性が高く、対象者や内容に制限がありませんが、その分費用負担は大きくなります。介護保険サービスでは「必要最低限の生活支援」が原則であるため、複数店舗を巡ったり、趣味性の強い商品を求める買い物などは対象外です。その点、自費サービスでは利用者の希望により応じやすく、例えば「複数の店舗を回って比較したい」「週に何回も買い物に行きたい」といった要望にも対応可能です。項目介護保険内自費サービス対象者要介護・要支援認定者認定の有無問わず利用可内容必要最低限の生活支援柔軟な対応(複数店舗巡りなど)利用料金1割〜3割負担(収入に応じて)実費全額負担(30分2,000円〜など)手続きケアプランと認定が必要なし(民間業者と直接契約)自由度や回数の柔軟性を重視する場合は自費サービスも選択肢になります。5. よくある質問(Q&A)Q. 家族がいても買い物同行は使えますか?A. 同居家族がいても、やむを得ない事情があれば利用可能です。たとえば就労中で不在が多い、家族自身が高齢・障害などのケースが該当します。ケアマネジャーが総合的に判断し、ケアプランに盛り込まれることでサービスが提供されます。Q. 買い物代行とどう違う?A. 「代行」は本人が外出せずヘルパーが単独で買ってくる形。「同行」は**本人と一緒に出向く支援(身体介護)**です。同行では、本人の意思確認や商品選びの主体性が重視されるため、本人の自立支援という観点でも有効です。Q. 薬の受け取りも可能ですか?A. 原則として医療行為は不可ですが、薬局に同行し処方箋を一緒に渡すなどは可能です。ただし、服薬管理や服薬の説明などは看護師や薬剤師の範疇になるため、役割分担には注意が必要です。6. 利用までの流れ買い物同行サービスを受けるまでには以下のステップが必要です:地域包括支援センターまたはケアマネジャーに相談要介護(支援)認定の申請ケアプラン作成にて買い物同行を盛り込む訪問介護事業所との契約サービス開始このプロセスにおいて、ケアマネジャーの果たす役割は非常に大きいです。サービスの必要性を適切に伝え、調整を行うため、日ごろから信頼関係を築くことも重要です。まとめ買い物同行は、高齢者が地域で暮らし続けるうえで欠かせない生活支援の一つです。制度の理解と適切な活用により、自立支援と家族の介護負担軽減の両立が可能となります。高齢者の「自分で選びたい」「社会と関わり続けたい」という想いを叶えるこのサービスは、単なる生活援助にとどまらず、生きがい支援や生活の質(QOL)の向上にもつながります。この記事を参考に、ぜひ必要な支援を検討してみてください。関連記事介護保険で通院付き添いは可能?利用条件と注意点を徹底解説認知症とお金の管理:家族が知っておくべき対策とポイントシャワーチェアは介護保険で買える?要支援でも使える制度の全知識ピース訪問看護ステーションのご案内自宅での療養や介護に、不安やお悩みはありませんか?ピース訪問看護ステーションでは、東京都町田市を中心に、医療依存度の高い方や在宅でのリハビリを希望される方への支援を幅広く行っています。24時間緊急対応が可能な体制を整えており、看護師・リハビリ職(PT・OT・ST)・ケアマネジャーが在籍。医療と介護の両面から、ご本人とご家族を多職種で支え、安心して在宅生活を続けられるようサポートしています。退院支援を担う医療機関の皆さま、地域のケアマネジャーの皆さま、訪問看護をご検討中のご本人・ご家族も、どうぞお気軽にご相談ください。新規のご依頼・ご質問は、お電話またはお問い合わせフォームより承っております。📞 鶴川本部 直通TEL:042-860-4404(平日9:00〜18:00)▶ お問い合わせフォームはこちら▶ 訪問看護・訪問リハビリのサービス詳細はこちら本記事の執筆者・監修者プロフィール【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理に長け、地域医療連携や在宅看取り支援にも積極的に取り組んでいる。