高齢になると、さまざまな健康リスクが高まりますが、中でも見逃せないのが「不整脈」です。軽度のものから命に関わるものまでさまざまで、「年齢のせい」と見過ごされがちな症状に潜んでいることもあります。本記事では、高齢者に多くみられる不整脈の症状、原因、治療法、そして予防策について、わかりやすく解説します。1. 不整脈とは?基本的な理解不整脈とは、心臓の拍動が乱れる状態を指します。正常なリズムよりも速くなったり遅くなったり、リズムがバラバラになることで、体にさまざまな不調を引き起こすことがあります。高齢者では、加齢による心筋や電気伝導系の劣化が原因で発生しやすくなります。2. 高齢者に多い不整脈の種類高齢者に多くみられる主な不整脈には、以下のようなタイプがあります。不整脈の種類特徴危険性心房細動心房が不規則に震える脳梗塞のリスクが上がる徐脈性不整脈心拍が極端に遅くなるめまいや失神の原因に期外収縮一拍だけ異常な収縮が入る自覚症状なしも多いが、頻発すると注意3. 不整脈の主な症状高齢者が訴える不整脈の症状としては、以下のものが挙げられます。動悸息切れ倦怠感めまい・立ちくらみ胸の痛みや圧迫感意識消失(失神)これらの症状は一時的なこともありますが、繰り返す場合は医師の診断が必要です。4. 高齢者が不整脈になりやすい理由高齢になると、心臓の電気信号を伝える機能が劣化しやすくなります。また、以下のような要因が重なることで、不整脈のリスクが高まります。高血圧や心疾患などの基礎疾患長年の生活習慣(喫煙、過度の飲酒)電解質バランスの乱れ薬の副作用5. 診断と検査方法不整脈の診断には、以下のような検査が用いられます。心電図(ECG)ホルター心電図(24時間記録)運動負荷試験心エコー検査症状がなくても定期的な検査が早期発見に有効です。6. 高齢者の不整脈治療法治療は、不整脈の種類や重症度によって異なります。薬物療法(抗不整脈薬、抗凝固薬など)カテーテルアブレーション(異常な電気信号の元を焼灼)ペースメーカー挿入(徐脈性不整脈に対して)特に心房細動では、脳梗塞を防ぐために抗凝固療法が重要です。7. 日常生活でできる予防法高齢者の不整脈予防には、以下のような日常的な心がけが大切です。規則正しい生活(十分な睡眠、食事管理)適度な運動(無理のないウォーキングなど)ストレスをためない塩分やカフェインの摂取制限定期的な健康診断また、持病がある場合は医師の指示に従い、治療を継続することが重要です。8. 不整脈がある高齢者への訪問看護と訪問リハビリの活用法不整脈を持つ高齢者は、日常生活の中でさまざまなリスクにさらされやすくなります。特に、心房細動による脳梗塞リスクや、急な失神による転倒事故などが心配されます。そうした方にとって、訪問看護や訪問リハビリの利用は大きな安心材料となります。訪問看護の役割バイタルチェックの定期的な実施(心拍数・血圧など)薬の服薬管理や副作用の確認医師と連携した病状悪化の早期発見心電図などのモニタリング機器を活用した状態把握(対応可能なステーションのみ)家族への介護指導・相談支援訪問リハビリの効果徐脈や動悸に配慮した個別運動指導呼吸機能や持久力の維持を目的とした軽度の運動療法転倒リスクを下げるバランス訓練・歩行訓練日常生活動作(ADL)維持のための動作練習心臓に負担をかけず、かつ身体機能を落とさないために、理学療法士や作業療法士の専門的な管理のもとで安全に実施されます。こんな方におすすめ病院退院後の療養中の方心房細動の診断を受けて抗凝固薬を服用している方心不全など他の循環器疾患と併発している方一人暮らしや介護者不在で生活の不安がある方訪問看護とリハビリは、医師の指示のもとで医療保険または介護保険を使って利用できます。主治医やケアマネジャーに相談することで導入が可能です。まとめ不整脈は年齢とともにリスクが高まる疾患ですが、早期発見・治療により重症化を防ぐことが可能です。日常のちょっとした体調の変化にも注意を払い、症状が気になるときは医療機関に相談しましょう。訪問看護や訪問リハビリの活用も、安心して生活を続けるための一助になります。関連記事高齢者が避けたい低栄養とその予防法、訪問看護でできる栄養管理高齢者のむくみの原因と対策、訪問看護師が教える正しい見分け方とケア方法高齢者の転倒予防と対策:健康寿命を延ばすためにできること町田市で訪問看護や介護サービスについて知りたい方は、ピース訪問看護ステーションの公式サイトもあわせてご覧ください。▶ https://island-piece.jp/service/houmonkango本記事の執筆者・監修者プロフィール【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理に長け、地域医療連携や在宅看取り支援にも積極的に取り組んでいる。