脳梗塞のあと「性格が変わった」と感じたら、それは高次脳機能障害のサインかもしれません脳梗塞のあとに「怒りっぽくなった」「やる気が消えてしまった」と感じる変化は、性格そのものが変わったのではなく、脳の損傷による高次脳機能障害のサインである可能性があります。退院して自宅に戻ってから、ご家族がこう漏らすことがあります。「体の麻痺はよくなってきたのに、別人みたいに短気になった」「前は優しかったのに、些細なことで怒鳴る」。手足の動きやろれつのように目に見える後遺症とは違い、性格や感情の変化は「本人の気持ちの問題」「歳のせい」と受け取られやすいもの。理由がわからないまま、家族が長く一人で抱え込んでしまいます。けれども脳梗塞は、運動をつかさどる領域だけでなく、注意・記憶・段取り・感情のブレーキといった「考える力」「気持ちを整える力」を担う領域も傷つけます。その結果として現れるのが高次脳機能障害です。見た目には元気そうでも、脳の中では確かな変化が起きています。歩けて話せて、日常会話も一見成り立つからこそ、周囲は「ただ機嫌が悪いだけ」「性格が丸くなくなった」と受け止めてしまいがちです。しかしその裏で、本人は必死に頭を働かせても以前のようにこなせず、うまくいかない自分に戸惑い、いら立っていることが少なくありません。家族と本人の双方が理由の分からないまま向き合うと、家庭内のすれ違いは深まっていきます。この記事では、東京都町田市・神奈川県相模原市で在宅の脳梗塞後遺症ケアに携わる訪問看護の視点から、家族が最初に気づける変化の見分け方と、相談・受診までの具体的な進め方を整理します。この記事でわかること脳梗塞後に「性格が変わった」ように見える医学的な理由家族が家庭内で気づける高次脳機能障害の具体的なサインなぜ本人は自分の変化に気づきにくいのかどこに、どんな順番で相談・受診すればよいか診断後に自宅でできる関わり方と訪問看護の役割「わがままになった」と本人を責める前に、まず脳で何が起きているのかを知ること。それが、家族の気持ちを軽くする第一歩になります。高次脳機能障害とは?脳梗塞後に性格が変わったように見える理由高次脳機能障害とは、脳梗塞や脳出血、頭部外傷などで脳が損傷を受けた結果、注意・記憶・遂行機能(段取りする力)・感情のコントロールなどに支障が出る状態のことです。脳卒中のあとには、注意障害・記憶障害・遂行機能障害・半側空間無視といった高次脳機能障害が生活に影響を及ぼすことが知られています(参考:日本脳卒中学会)。つまり「性格が変わった」ように見える変化の多くは、本人の意思や努力の問題ではなく、傷ついた脳が引き起こす症状として理解する必要があります。ここを取り違えて「本人の心がけ次第」と考えてしまうと、家族はどれだけ働きかけても改善しない現実に疲れ果ててしまいます。本人もまた、理解されない孤独を深めていきます。まずは脳で何が起きているのかという土台を押さえること。それが、その後の対応をぐっと楽にします。高次脳機能障害と脳梗塞のつながり脳梗塞で血流が途絶えた領域の働きが失われることで、その部位が担っていた機能に応じた症状が現れます。損傷を受けやすい部位主に担う働き障害されたときに見られる変化前頭葉意欲・判断・感情のブレーキ怒りっぽい、意欲低下、抑制が効かない側頭葉記憶・言葉の理解新しいことを覚えられない、言葉が出にくい頭頂葉空間の認識・注意片側を見落とす、ぶつかる前頭葉と各領域をつなぐ回路段取り・切り替え計画が立てられない、こだわりが強い脳梗塞は運動野の近くだけで起こるとは限りません。感情や思考をつかさどる前頭葉や、それらをつなぐ神経回路が傷つくと、手足の麻痺がほとんどなくても、性格が変わったように見える症状が前面に出ます。逆に麻痺が軽い人ほど「後遺症は残らなかった」と周囲が油断し、高次脳機能障害が見過ごされやすい傾向があります。退院時のリハビリ評価で指摘がなくても、生活の中で初めて表面化することも少なくありません。理由の一つは入院中の環境です。入院中はスタッフが生活を整え、決まった時間に食事や服薬が用意されるため、段取りや判断の力を使う場面が限られます。自宅に戻り、自分で一日を組み立てる生活に戻って初めて、注意や遂行機能の弱さが表面化するのです。だからこそ、日常をともにする家族の観察が診断の入り口になります。同じ脳梗塞でも、傷ついた場所や範囲によって現れる症状はまったく異なります。「うちの家族はどのタイプか」を決めつけず、実際の様子を丁寧に見ていくことが大切です。「性格が変わった」ように見える代表的な4つの症状性格変化に見える背景には、大きく分けて4つの代表的な症状が隠れています。症状名見た目の印象実際に起きていること注意障害ぼんやりする、集中しない複数のことに気を配れない、疲れやすい記憶障害同じことを何度も聞く新しい出来事を覚えておけない遂行機能障害段取りが悪くなった手順を組み立て順序立てて動けない社会的行動障害短気・自己中心的感情のブレーキが効かない、意欲が湧かない「わがままになった」と感じる怒りっぽさは社会的行動障害、「無関心になった」と感じる意欲低下も同じ枠組みで説明できます。感情を抑える脳のブレーキ役が弱まると、以前なら我慢できた苛立ちがそのまま言葉や態度に出てしまいます。本人も「なぜか抑えられない」と内心で戸惑っていることが多く、決して家族を困らせようとしているわけではありません。これらの症状は単独で現れるとは限りません。注意障害と記憶障害が重なる、意欲低下と怒りっぽさが日によって入れ替わるなど、いくつも組み合わさって出ることが一般的です。そのため家族から見ると「何が起きているのか分からない」「対応の正解が見えない」と感じやすくなります。この仕組みを家族が理解しているかどうかで、家庭内の緊張はまったく変わってきます。症状名を知ることは、本人を責める気持ちを手放し、「脳の状態」として向き合い直すきっかけ。まずは症状として捉え直すことが、対応の出発点になります。家族が気づきたい高次脳機能障害のサイン一覧(症状別チェック)高次脳機能障害のサインは、感情面・生活面・コミュニケーション面の3つの角度から観察すると気づきやすくなります。どれか一つの視点だけで見ると「気のせいかもしれない」と流してしまいがちです。三方向から並べて眺めると、変化の全体像がはっきり浮かび上がります。検査で数値に表れにくい症状ほど、家庭での「あれ、前と違う」という気づきが手がかりになります。ここでは家族が日常でチェックしやすいサインを、場面ごとに整理します。ひとつひとつは「よくあること」に見えても、複数が重なって続く場合は高次脳機能障害を疑う根拠になります。逆に、当てはまる項目が一つだけで一時的なものなら、疲れや環境の影響のこともあるでしょう。大切なのは、良し悪しを家族だけで判断しようとせず、気になる変化を書き留めておくこと。当てはまる項目が複数ある場合は、後述する相談・受診の手順に進む目安と考えてください。感情・行動面のサイン感情面のサインは、怒りっぽさと意欲の低下という正反対の形で現れることが特徴です。チェック項目よくある家庭の場面些細なことで急に怒鳴るテレビのリモコンが見つからず激高する一日中ぼんやりして動かない声をかけないと着替えや食事をしない感情の起伏が激しいさっきまで笑っていたのに突然泣く同じ話やこだわりを繰り返す決めた手順を崩されると強く抵抗する怒りっぽさと無気力は一見反対ですが、どちらも感情や意欲を調整する脳の働きが乱れた同じ根っこのサインです。特に意欲低下は「うつ」と間違われやすく、「疲れているだけ」「怠けている」と誤解されがちです。実際には、以前は率先してやっていた趣味や身だしなみへの関心が薄れ、一日中座ったまま過ごすようになるといった変化として表れます。家族としては、叱ったり励ましたりしても改善しない点に注目してください。気合いの問題ではないため、正論で説得するほど本人も家族も消耗します。怒りっぽさについても、きっかけをよく観察すると一定のパターンが見えてくることがあります。「うまくできない場面」「急かされた場面」で起きやすい、といった具合です。そのパターンが分かれば、あらかじめ刺激を減らして衝突を予防できます。まずは変化を記録すること。いつ・どんな状況で・どのくらいの頻度で起きたかをメモしておくと、受診時に医師へ伝える貴重な情報になります。生活・作業面のサイン段取りや同時進行が急に苦手になった変化は、遂行機能障害と注意障害の代表的なサインです。チェック項目よくある家庭の場面料理の手順が組み立てられない鍋を火にかけたまま別のことを始める予定や約束を忘れる通院日を何度伝えても抜ける二つのことを同時にできない会話しながら作業すると手が止まる片付けや整理ができなくなった物の置き場所が定まらず散らかる以前は当たり前にこなしていた家事や金銭管理が急にできなくなった場合、加齢による「もの忘れ」とは質が異なります。認知症のもの忘れが徐々に進むのに対し、高次脳機能障害は脳梗塞の発症を境に段階的に現れる点が見分けの手がかりです。たとえば料理では、複数の鍋を同時に扱う、味付けをしながら次の工程を考えるといった「並行して段取りする力」が特に落ちやすいもの。一品ずつなら作れても、献立全体を回せなくなります。買い物で同じものを何度も買う、財布の小銭が増える、公共料金の支払いを忘れるなども、注意や記憶の低下を映すサインです。火の消し忘れや服薬の抜けは、在宅生活の安全に直結します。危険につながる項目は特に見逃さないでください。ガスを自動消火機能付きに替える、服薬を一包化してカレンダーに貼るといった環境面の工夫で、事故の多くは未然に防げます。訪問看護の現場でも、退院直後の数週間はこうした生活動作の変化が最も表面化しやすい時期だと感じています。コミュニケーション・対人面のサイン会話の質やその場に合わせた振る舞いの変化も、高次脳機能障害を疑う大切なサインです。チェック項目よくある家庭の場面会話がかみ合わない質問と違う答えが返ってくる場にそぐわない言動をする相手の状況を考えず思ったまま口にする相手の左側に気づかない左から話しかけると反応が薄い疲れると急にできなくなる夕方になると受け答えが乱れる左側を見落とす、左から声をかけると反応しないといった様子は、半側空間無視という症状の可能性があります。食事で皿の左半分を残す、左側の壁にぶつかる、着替えで左袖を通し忘れるなども同じサインです。本人は「見えていない」という自覚すらないことが多いもの。視力の問題ではなく、脳が左側の情報を認識できていない状態だと理解してください。声をかけるときは本人の右側から、よく使う物を右側に置くといった工夫で、生活のしづらさをやわらげられます。また高次脳機能障害は脳の疲れやすさを伴うため、朝は普通でも夕方に症状が強まる日内変動もよく見られます。長い会話や外出のあとにぐったりして受け答えが乱れるのは、なまけているのではなく脳が疲れているサインです。「さっきはできたのに」という波を、家族が本人のやる気のムラと誤解しないことが大切です。会話のかみ合わなさが目立つ場合は、失語症という別の後遺症が関わっていることもあります。言葉のやり取りでのつまずきが気になる方は、脳梗塞後の失語症、家族はどう接すればいい?会話の工夫と訪問看護STの在宅支援もあわせてご覧ください。こうした場面ごとの観察は、専門職による評価の精度を高める土台になり、その後の支援の方向性を決める手がかりにもなります。なぜ本人は気づきにくい?家族だからこそ気づける変化高次脳機能障害の多くは本人が自分の変化を自覚しにくく、だからこそ日々をともにする家族の気づきが最初の手がかりになります。「自分は前と変わっていない」と本人が言い張り、家族との認識のずれに悩むケースは珍しくありません。これは本人がとぼけているのではなく、脳の損傷そのものが自己認識にも影響するためです。家族からすると「なぜ現実を認めてくれないのか」ともどかしく、時に関係が険しくなります。けれども、その言い張り自体が症状の一部だと分かると、受け止め方が少し楽になります。この仕組みを知ると、家族の関わり方も変わってくるでしょう。病識が低下する仕組み自分の障害に気づく力そのものが脳の機能であり、その力が低下すると変化を自覚できなくなります。状態本人の受け止め家族が感じるギャップ病識が保たれている「できなくなった」と落ち込む支援を受け入れやすい病識が低下している「問題ない」と言い張る指摘すると怒る、否定する部分的に気づいている場面により態度が揺れる対応が読めず戸惑う自分を客観的にモニターする働きも、脳が担う高次の機能の一つです。ここが傷つくと、失敗しても「たまたま」「相手が悪い」と受け取り、支援や訓練の必要性を感じにくくなります。運転や仕事の再開を本人が強く希望する一方で、家族から見ると明らかに難しい、という食い違いもこの病識の低下から生じます。家族が「できていないよ」と正面から指摘すると、本人にとっては身に覚えのない非難になり、かえって関係がこじれます。責めるのではなく、失敗が起きにくい環境を整える方向に切り替えると、衝突を減らせます。どうしても伝える必要があるときは、第三者である主治医やリハビリ職から説明してもらうほうが、本人も受け入れやすい傾向があります。病識の低下自体が症状であると理解すること。それが、家族の心の負担を軽くします。家族だからこそ気づける「以前との違い」発症前の姿を知る家族だけが、検査ではとらえきれない微妙な変化に気づくことができます。観察の視点家族が気づけること専門職が把握しにくいこと長期的な変化発症前と後の人柄の違い病前の性格やこだわり生活の実際家庭内での失敗や工夫診察室以外での様子感情の波一日の中の調子の変動短時間の診察での揺れ対人関係家族や近所との関係の変化慣れた相手との自然な会話外来診察はせいぜい数十分で、本人も緊張して普段より受け答えがしっかりすることがあります。これを「取りつくろい」と呼び、短時間の面談では実際より状態がよく見えてしまうことがよくあります。そのため診察室では問題が見えにくく、家庭での様子を家族が伝えて初めて全体像がつかめます。「前はこうだったのに、今はこう」という発症前後の比較は、家族にしかできない貴重な情報です。几帳面だった人が片付けられなくなった、穏やかだった人が短気になった、といった人柄レベルの変化は、病前を知らない専門職には決して分かりません。日付とともにメモや動画で記録しておくと、医師や訪問看護師が症状を評価する助けになります。家族の観察は診断の邪魔ではなく、むしろ診断を支える中心的な材料。そう考えてください。サインに気づいたら、受診・相談までの具体的な手順気になるサインに気づいたら、まずは脳梗塞の主治医や地域の相談窓口へ連絡し、専門的な評価につなげるのが基本の流れです。「どこに相談すればいいのか分からない」という声は、訪問看護の現場でもよく聞かれます。高次脳機能障害は医療・リハビリ・福祉と複数の窓口が関わるため、順序を知っておくと迷わず動きやすくなります。高次脳機能障害の支援は国の事業として各地に窓口が整備され、生活面の相談から福祉サービスの案内までを受けられます(参考:厚生労働省「障害者福祉」)。制度を知っておくと、家庭だけで抱え込まずに済みます。どこに相談すればよいか(相談先の選び方)相談先は「医療」「リハビリ」「福祉・生活」の3系統に分けて考えると、どこに何を頼ればよいかが整理しやすくなります。相談先主な役割こんなときに脳梗塞の主治医・脳神経内科診断・医学的評価まず最初に相談するリハビリテーション科高次脳機能の専門評価症状を詳しく調べたい高次脳機能障害支援拠点機関相談・支援制度の案内生活や制度で困っている地域包括支援センター介護・生活の総合相談何から始めるか迷う最初の窓口は、脳梗塞で通院している主治医が原則です。気になる変化を伝え、必要なら高次脳機能障害の専門評価やリハビリテーション科への紹介につなげてもらいます。診断や評価には神経心理学的検査という専門的な検査が用いられることがあり、これはリハビリテーション科や専門の医療機関で受けられます。あわせて、各都道府県には国の支援普及事業に基づく高次脳機能障害支援拠点機関が置かれており、東京都や神奈川県にも相談窓口があります。ここでは医学的な相談だけでなく、就労・復職や社会復帰に向けた支援、利用できる制度の案内まで、生活全体を見据えた相談ができます。町田市・相模原市にお住まいの場合は、地域包括支援センターや市の障害福祉窓口が身近な入り口です。地域包括支援センターは高齢者の暮らしを地域で支える総合相談窓口で、介護や生活の困りごとを幅広く受け止めてくれます(参考:厚生労働省「地域包括ケアシステム」)。介護保険や障害福祉サービスの手続きも、ここから案内を受けられます。障害者手帳の申請や利用できる支援について詳しく知りたい方は、高次脳機能障害と障害者手帳:申請方法と支援の実際も参考になります。窓口が複数あって迷うときは、まず主治医か地域包括に一報を入れれば、適切な先へつないでもらえます。どこか一か所に相談すれば、そこから必要な機関へ橋渡ししてもらえるので、「正しい窓口を最初から選ばなければ」と気負う必要はありません。受診時に家族が準備しておくとよいこと受診の効果を高める鍵は、家庭での変化を具体的な記録として持参することです。準備するもの具体的な内容変化のメモいつ・どんな場面で・何が起きたか発症前との比較以前の性格や生活習慣との違い困りごとの優先順位今いちばん困っていること服薬・既往の情報お薬手帳、これまでの治療歴診察は時間が限られるため、口頭だけで伝えようとすると要点が抜けがちです。「怒りっぽい」ではなく「食事中に箸が見つからず、週に3回ほど大声を出す」のように、場面と頻度を添えると医師が症状を評価しやすくなります。困りごとは複数あっても、まず「これを何とかしたい」という優先順位を一つ決めておくと、限られた診察時間を有効に使えます。本人の前では言いにくい内容は、あらかじめメモにまとめて渡す方法もあります。本人の自尊心を傷つけないよう、家族が別途医師に伝えたいことは、受付や看護師を通じて事前に共有しておくと安心です。動画で普段の様子を短く記録しておくと、診察室では見えない一面を伝えられます。こうした準備は、家族の「困っている」という実感を、支援につながる客観的な情報へ変える大切な作業です。焦って一度にすべてを解決しようとせず、通院のたびに一つずつ相談を重ねていく姿勢が、結果的に本人と家族の負担を減らします。高次脳機能障害と診断されたあとの在宅での関わり方(訪問看護でできること)診断後の生活では、症状を責めずに環境を整える家族の関わりと、訪問看護・訪問リハによる専門的な支援を組み合わせることが回復と安定の鍵になります。高次脳機能障害は、時間をかけたリハビリと生活環境の工夫によって、日常の支障を和らげていける障害です。すぐに元通りとはいかなくても、関わり方しだいで本人も家族も暮らしやすくなります。回復は数か月から年単位でゆっくり進むことも多く、長い目で付き合っていく姿勢が支えになります。その過程では、本人へのリハビリと同じくらい、支える家族が倒れないための工夫が欠かせません。ここでは自宅でできる工夫と、訪問看護が担える役割を紹介します。家族の関わり方の工夫家族の関わりで最も効果的なのは、失敗を防ぐように環境と声かけをあらかじめ整えることです。困りごと家庭でできる工夫段取りができない手順を紙に書いて見える場所に貼るすぐ忘れるカレンダーやアラームで予定を知らせる気が散りやすいテレビを消し一度に一つのことに絞る感情が高ぶりやすい疲れる前に休憩を挟み刺激を減らす高次脳機能障害への対応の基本は、本人を変えようとするより、失敗が起きにくい環境をつくることです。予定はカレンダーやホワイトボードで「見える化」し、作業は一度に一つへ絞ると混乱が減ります。指示は一度に複数出すと処理しきれないため、「まず着替え、終わったら朝食」と一つずつ区切って伝えると動きやすくなります。感情が高ぶったときは正論で言い返さず、いったん距離を置いて落ち着くのを待つほうが早く収まります。言い争いになりそうな話題や、本人が苦手とする作業は、疲れがたまる夕方を避けて調子のよい時間帯に回すのも有効です。うまくできた場面はその場で認めると、本人の自信と意欲につながります。小さな成功体験の積み重ねが、低下した意欲を少しずつ取り戻す後押しになります。そして最も大切なのは、家族が完璧を目指さないこと。毎回うまく対応できなくて当たり前で、できなかった日があっても自分を責める必要はありません。介護する側が疲れ切ってしまう前に、周囲や専門職に頼る前提で関わってください。支援を求めることは、決して家族の力不足ではありません。訪問看護・訪問リハでできる支援訪問看護は、自宅という生活の場で症状を評価し、本人へのリハビリと家族への助言を同時に行える支援です。支援内容具体的なサポート生活場面での評価自宅での実際の困りごとを把握する服薬・体調の管理再発予防の血圧・服薬をサポート作業療法士による訓練段取りや注意の力を生活動作で訓練家族への助言・相談関わり方の工夫と介護負担の軽減外来では見えにくい自宅での症状を、訪問看護師や作業療法士が生活の場で直接評価できるのが在宅支援の強みです。台所の使い方、薬の管理、家族とのやり取りといった実際の生活場面を見ることで、診察室では拾いきれない困りごとと、その人に合った工夫を具体的に見つけられます。町田市・相模原市で脳梗塞後の方を訪問する中で実感するのは、退院後3か月ほどは環境の変化に本人も家族も戸惑いやすく、この時期の支援が生活の安定を大きく左右するということです。訪問では、服薬や血圧管理による再発予防に加え、作業療法士が調理や外出といった実際の動作を通じて注意や段取りの力を訓練します。同時に、ご家族には日々の関わり方を具体的に助言し、抱え込みがちな介護の負担を軽くする役割も担います。脳梗塞後の再発予防や退院後の生活で不安がある方は、脳梗塞 退院後の自宅生活で押さえる注意点もあわせてご覧ください。一人で抱え込む前に、まずは訪問看護へご相談ください。よくある質問(FAQ)脳梗塞後に性格が変わるのはなぜですか?感情や意欲を調整する前頭葉などが脳梗塞で傷つくと、怒りっぽさや無気力といった変化が現れます。これは本人の意思や我慢の問題ではなく、社会的行動障害と呼ばれる高次脳機能障害の症状です。性格が変わったのではなく、感情のブレーキ役を担う脳の働きが弱まった状態だと理解してください。高次脳機能障害とはどんな症状ですか?注意が続かない、新しいことを覚えられない、段取りが組めない、感情を抑えられない、片側を見落とすといった症状が代表的です。脳梗塞・脳出血・頭部外傷などで脳が損傷した結果として現れます。手足の麻痺のように目に見えないため、周囲に理解されにくいのが特徴です。高次脳機能障害は本人が自覚できますか?自分の障害に気づく力そのものが脳の機能であるため、本人が変化を自覚できないことが多くあります。これを病識の低下といい、「自分は問題ない」と言い張るのも症状の一つです。とぼけているわけではないので、正面から指摘して責めるより、失敗が起きにくい環境を整える対応が有効です。高次脳機能障害と認知症の違いは何ですか?高次脳機能障害は脳梗塞などの発症を境に症状が現れ、基本的には進行せず、リハビリで回復に向かう点が特徴です。一方、認知症の多くは原因がはっきりしないまま徐々に進行します。発症のきっかけと時期が明確かどうかが、見分ける一つの手がかりになります。判断に迷うときは専門医の評価を受けてください。高次脳機能障害は治りますか?回復しますか?時間をかけたリハビリと生活環境の工夫によって、日常生活の支障を和らげていくことは十分に期待できます。回復のしかたや程度には個人差があり、緩やかに改善していくことが多いとされています。完全に元通りになると保証はできませんが、適切な支援で暮らしやすさを高めることは可能です。焦らず継続することが大切です。高次脳機能障害はどこに相談すればいいですか?まずは脳梗塞で通院している主治医に、気になる変化を相談するのが基本です。あわせて各都道府県に設置された高次脳機能障害支援拠点機関や、お住まいの地域包括支援センター、市の障害福祉窓口も相談先になります。町田市・相模原市にお住まいで在宅生活の不安がある場合は、訪問看護ステーションでもご相談を受け付けています。<!-- 末尾固定セクション -->まとめ脳梗塞のあとに感じる「性格が変わった」という変化は、本人のわがままや気力の問題ではなく、脳の損傷による高次脳機能障害のサインであることが少なくありません。怒りっぽさ・意欲低下・段取りの苦手さ・片側の見落としなどは、感情面・生活面・コミュニケーション面から観察すると気づきやすくなります。本人は自分の変化を自覚しにくいため、発症前を知る家族の気づきが診断の入り口になります。気になるサインがあれば、変化を記録して主治医や地域の窓口に相談し、専門的な評価につなげてください。診断後は本人を責めず環境を整える関わりと、訪問看護・訪問リハによる支援を組み合わせることで、本人も家族も暮らしやすくなっていきます。ピース訪問看護ステーションにご相談ください脳梗塞後の性格変化や高次脳機能障害は、目に見えにくいぶん、ご家族が「自分の対応が悪いのでは」と一人で抱え込みやすいものです。ピース訪問看護ステーションは、生活の場に伺い、本人のリハビリとご家族の相談を同時に支えます。こんな方はぜひご相談ください:脳梗塞後に家族の性格や感情の変化が気になり、対応に悩んでいる方退院後の自宅生活や段取り・服薬の管理に不安がある方介護の負担が重く、どこに相談すればよいか分からない方ピース訪問看護ステーションができること:作業療法士による生活動作を通した注意・段取りの訓練血圧・服薬管理による脳梗塞の再発予防のサポートご家族への関わり方の助言と介護負担を軽くする相談対応町田市・相模原市・多摩市など東京都南部を中心に対応しています。まずはお気軽にお問い合わせください。関連記事高次脳機能障害と暮らしの工夫、家族とできる在宅ケアのヒント高次脳機能障害と障害者手帳:申請方法と支援の実際脳梗塞後の失語症、家族はどう接すればいい?会話の工夫と訪問看護STの在宅支援【家族向け】脳梗塞 退院後の自宅生活で押さえる注意点|再発予防・後遺症ケア完全ガイド脳梗塞の原因とは?予防と再発防止における訪問看護の役割参考文献一覧出典:日本脳卒中学会https://www.jsts.gr.jp/出典:厚生労働省「障害者福祉」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/index.html出典:厚生労働省「地域包括ケアシステム」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理、地域医療連携、在宅看取り支援に積極的に取り組んでいる。island-piece.jp 株式会社isLand|訪問看護・居宅介護支援・訪問介護|町田市