腎不全は、腎臓の機能が低下し、体内の老廃物や余分な水分を排出できなくなる状態を指します。進行すると生命にも関わる重大な疾患であり、早期の対処と継続的なケアが不可欠です。この記事では、「腎不全 看護」の観点から、疾患の基礎知識から急性・慢性腎不全への対応、看護ケアの要点、そして在宅での訪問看護の実際までを網羅的に解説します。1. 腎不全とは腎不全とは、腎臓がその本来の役割である老廃物の排出、体液の調整、電解質のバランス維持などの機能を果たせなくなる病態を指します。大きく分けて、**急性腎不全(AKI)と慢性腎不全(CKD)**の2種類があり、それぞれに応じた看護と管理が必要です。分類特徴原因急性腎不全短期間で急激に腎機能が低下する脱水、感染症、外傷、薬剤など慢性腎不全長期間かけて徐々に腎機能が低下する糖尿病、高血圧、糸球体腎炎など特に慢性腎不全は症状が徐々に進行するため、自覚症状が乏しく、発見が遅れることがあります。そのため、定期的な検査と早期発見・早期介入が重要です。2. 腎不全の主な症状と合併症腎不全では、腎臓の代謝機能低下に伴い、身体全体にさまざまな症状や障害が現れます。主な症状:全身の浮腫や体重増加(体液貯留)倦怠感や集中力低下(尿毒症症状)食欲不振、吐き気、嘔吐貧血による息切れや疲労感尿量の変化(乏尿、無尿)主な合併症:合併症特徴高カリウム血症不整脈や心停止を引き起こすリスクがある心不全水分の貯留や血圧上昇により悪化する骨代謝異常カルシウム・リン代謝異常による骨折リスクの増加高血圧腎機能悪化の原因・結果ともなるこれらは病状の進行を示す重要なサインであり、定期的な観察と迅速な対応が求められます。3. 腎不全患者の看護の基本腎不全患者に対する看護は、身体的ケアに加え、生活指導や精神的支援も含まれます。3-1. 観察項目観察項目詳細内容バイタルサイン血圧、体温、脈拍、呼吸数、体重変動尿量・性状日々の排尿パターン、尿の色・臭い・量浮腫の有無足背や顔面のむくみ、手指の腫れ精神状態不安、抑うつ、認知症状の有無食欲・摂取状況食事の摂取量、嗜好の変化、栄養状態3-2. 食事管理腎不全患者では、食事療法が病状管理の中核となります。ステージごとの指導が必要であり、管理栄養士との連携が効果的です。項目留意点たんぱく質摂取量の制限(必要最低限)ナトリウム(塩分)むくみ・高血圧予防のため制限カリウム心停止予防のため果物・野菜に注意リン骨疾患予防のため乳製品制限水分体重や浮腫の程度に応じた管理患者が理解・納得できるよう、わかりやすく、実生活に即した指導が重要です。4. 透析療法と看護のポイント腎不全が進行すると、腎臓の代わりに老廃物を排出する手段として透析が必要になります。透析には大きく分けて、**血液透析(HD)と腹膜透析(PD)**の2種類があり、それぞれに応じた看護が必要です。4-1. 血液透析(HD)血液透析では、血液を体外に取り出して人工腎臓(ダイアライザー)を通し、老廃物や余分な水分を除去して体内に戻します。看護の要点:シャント(内シャント)の状態観察と管理穿刺部位の感染予防透析前後のバイタル測定と体重変化の記録低血圧や筋痙攣などの合併症への対応4-2. 腹膜透析(PD)腹膜透析は、自宅での自己管理が可能な治療法で、患者自身または家族が実施する場合もあります。看護の要点:清潔操作の指導と環境整備カテーテル挿入部のスキンケアと感染予防灌流液の性状確認と排液記録合併症(腹膜炎、出口部感染など)の早期発見透析療法は患者の生活スタイルに大きく影響するため、生活に寄り添った指導と継続的なフォローが看護師の重要な役割です。5. 慢性腎不全患者へのセルフケア支援慢性腎不全の進行を抑制するには、患者自身によるセルフマネジメント能力の向上が不可欠です。医療者の指導のもと、日々の生活の中で患者が自ら適切な選択を行えるよう支援します。支援項目具体的支援内容血圧管理家庭血圧の測定指導、記録の習慣化食事療法塩分・たんぱく質制限の工夫、レシピ提案運動習慣無理のないウォーキングなどの継続推奨水分管理1日摂取量の目安設定と記録の支援薬剤管理薬の飲み方、タイミングの把握通院・検査継続モチベーション維持とスケジュール管理支援患者が「自分でできた」と実感することが、継続への意欲につながります。自立支援型の看護が求められます。6. 訪問看護における腎不全ケアの実際在宅療養中の腎不全患者に対しては、訪問看護師の役割が重要です。訪問看護は、通院が困難な患者や、慢性的な疾患を抱えながら在宅療養を続ける患者にとって、医療と生活をつなぐ重要な支援手段です。特に腎不全患者では、継続的な観察と迅速な対応が予後に直結するため、訪問看護の存在がQOL向上と重症化予防に大きく貢献します。支援内容訪問看護での具体例バイタルチェック・状態観察血圧や浮腫、尿量の変化を毎回チェック食事・服薬指導栄養管理、水分制限、薬の服用方法の確認排泄管理排尿・排便の確認と助言精神的ケア不安や孤独感への共感、傾聴医師との連携異常時の迅速な情報共有と受診調整透析施設との連携透析前後の体調情報の共有と支援緊急時対応急変時の初期対応と救急搬送の手配現場の声:あるあると工夫「むくみが気になる」と訴える利用者には、ふくらはぎの軽いマッサージや足の挙上を指導。透析日には食事と水分制限の徹底確認。独居高齢者には服薬カレンダーの活用で飲み忘れを予防。7. 腎不全患者の家族支援と多職種連携腎不全の治療やケアは長期にわたるため、患者だけでなく家族の支援も不可欠です。家族が適切な理解と対応を行えるよう、看護師が橋渡し役として働くことが重要です。さらに、腎不全ケアは一職種では完結しません。医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、ケアマネジャー、リハビリ職など、多職種による連携が不可欠です。連携職種主な役割医師診断、治療方針の決定、指示出し看護師日々の観察、ケア実施、情報共有の中心管理栄養士食事内容の指導、調整薬剤師薬効の説明、飲み合わせの確認、副作用管理ケアマネジャー介護保険サービスの計画と調整リハビリ職運動機能の維持・改善支援情報共有の徹底や、定期的なカンファレンスの実施がチーム医療の質を高める要素です。まとめ腎不全看護には、疾患に関する知識と技術だけでなく、患者や家族に寄り添う姿勢が欠かせません。急性期から在宅療養まで、あらゆる場面での観察力と柔軟な対応力が求められます。食事や服薬の管理、精神的サポート、透析との付き合い方など、患者一人ひとりのライフスタイルに合わせた支援が必要です。特に訪問看護では、生活の中にある小さな変化に気づき、医療とのつなぎ役として機能することが、QOLの維持・向上や重症化予防に大きく貢献します。医療と介護の連携を図りながら、生活の質(QOL)を高める支援を心がけましょう。関連記事高齢者に多い不整脈と訪問看護の活用法、症状から在宅ケアまでわかりやすく解説高齢者が避けたい低栄養とその予防法、訪問看護でできる栄養管理高齢者の足のむくみは病気のサイン?訪問看護で行う観察・ケア・予防と家族支援訪問看護における入浴介助とは?安心・快適なケアの現場を解説町田市で訪問看護や介護サービスについて知りたい方は、ピース訪問看護ステーションの公式サイトもあわせてご覧ください。▶ https://island-piece.jp/service/houmonkango