急変時の訪問看護において重要な役割を果たす「特別指示書」。この記事では、特別指示書の交付条件や指示期間、料金の違いについて、現場の視点も交えてわかりやすく解説します。訪問看護の制度に詳しくない方でも理解できるよう、基本情報から実際の運用まで網羅してご紹介します。1. 特別指示書とは「特別指示書」は、医師が利用者の状態を踏まえて交付する書類で、通常より頻回な訪問看護を可能にするものです。主に以下のような状況で発行されます:急性増悪などにより頻回な看護ケアが必要な場合退院直後で状態が不安定なとき在宅での緩和ケアが必要な場合通常の訪問看護では週3回までですが、特別指示書があると週4回以上の訪問が可能となります。2. 特別指示書の交付条件特別指示書が交付されるには、以下のような条件を満たす必要があります。条件項目内容主治医の判断利用者の状態が急性期または悪化している在宅での管理が必要医療処置が在宅で継続的に必要通常の訪問頻度では対応困難週3回を超える訪問が必要な状況特別指示書が交付される具体的な医学的条件以下は、特別指示書が交付される主な医学的状況をまとめた表です:状況内容の具体例呼吸器系の急変COPDの急性増悪、在宅酸素療法の不安定化終末期医療がん末期での疼痛管理や緩和ケア感染症点滴治療を必要とする肺炎など精神症状認知症の急激な悪化やせん妄処置の必要性中心静脈栄養管理、褥瘡処置など人工呼吸器関連吸引対応や呼吸状態の管理さらに、気管カニューレや点滴注射などの管理を必要とする患者に対しては、月に2回まで特別指示書の交付が可能とされています。点滴注射の管理に関しては、1回の指示で最大7日間までといった制限もあるため、医師の指示と併せて訪問看護ステーションでの適切なスケジュール調整が求められます。また、褥瘡に関しては「真皮を超える程度」の深さがある場合に、特別指示書交付の対象となります。これは「III度以上(壊死組織や皮下組織の損傷を伴うもの)」の褥瘡が該当し、継続的な観察・処置・報告が求められるためです。特別指示書が交付されている期間中は、1日複数回の訪問も制度上可能です。必要に応じて午前・午後の2回訪問や、夜間の訪問看護も実施できます。加えて、複数の訪問看護ステーションの利用も認められており、状況に応じた柔軟な体制が整えられています。3. 指示期間とその延長について特別指示書の指示期間は14日間です(2週間)。原則としてこの期間内での頻回訪問が認められます。項目内容基本期間14日間(交付日から)再交付原則1ヶ月に1回まで例外がん末期などでは制限緩和の可能性あり現場では、再交付に備えて状態の経過記録や医師への報告が重要となります。4. 特別指示書が必要となるケース例実際にどのような場面で交付されるのか、以下に例を挙げます。COPDの急性増悪により酸素療法の管理が必要がん末期で疼痛緩和のためモルヒネ投与を開始認知症の急激な行動変化により観察と介入が必要点滴による抗生剤治療が必要な感染症患者在宅での終末期医療中にバイタルサインが不安定な状態訪問看護師の判断だけでは対応が難しいケースで、医師の継続的な管理と連携が求められる場面で使用されます。5. 特別指示書の交付の流れ交付には以下のステップを踏みます。ステップ内容1看護師が状態変化を認識し、主治医に報告2医師が必要と判断し、特別指示書を作成3書類を訪問看護ステーションへ交付4記録・管理を行いながら14日間の看護実施医師・看護師・家族の三者の連携がスムーズな運用の鍵となります。6. 特別指示書がある場合の料金と保険適用特別指示書に基づく訪問看護は、通常より多くの回数が保険適用となるため、利用者負担も変わります。区分保険適用備考通常の訪問看護介護保険週3回まで特別指示書あり医療保険週4回以上可能、1日複数回も可自己負担割合1割〜3割所得や年齢により変動公費負担医療証等で軽減可小児・難病等対象なお、特別指示書がない状態で週4回以上訪問した場合、保険請求が通らない恐れがあるため、制度の理解と適正な運用が必要です。7. 特別指示書の実務上の注意点現場では以下のような工夫や注意が求められます。14日間の起算日は交付日から(初回訪問日ではない)書類は原本を管理、スキャン保存も可訪問記録や報告書はタイムリーに提出また、頻回訪問によりスタッフのシフト調整が必要になることもあるため、事前の調整と全体のケアプランとの整合性が大切です。訪問看護ステーションとしては、交付状況を正確に記録し、再交付の必要性があるかどうかを医師と連携して判断する仕組みづくりが求められます。8. まとめ特別指示書は、訪問看護の現場で急性期ケアや終末期医療を支える重要な制度です。適切に交付され、活用されることで、利用者のQOL向上につながります。制度の正しい理解と実務上の対応を通じて、より良い在宅ケアを実現しましょう。関連記事訪問看護の【初回加算】完全ガイド、算定要件・点数・注意点を徹底解説【2025年対応】訪問看護における退院時共同指導加算とは?算定要件や注意点を解説 訪問看護におけるリハビリの減算とは?現場で知っておくべき制度と対策【訪問看護】別表7・8に該当するとどう変わる?保険・回数・処置のポイント総まとめ町田市で訪問看護や介護サービスについて知りたい方は、ピース訪問看護ステーションの公式サイトもあわせてご覧ください。▶ https://island-piece.jp/service/houmonkango