夏の海や山、スポーツ観戦、ガーデニングなど、紫外線にさらされる機会は日常の中に多くあります。日焼けは「赤くなるだけ」ではなく、火傷と同等の皮膚損傷を引き起こし、処置を怠ると感染症や色素異常、さらには皮膚がんリスクにもつながります。本記事では、日焼けの重症度の見分け方、症状別の正しい対処法、予防策に加え、在宅療養や高齢者ケアに役立つ訪問看護の活用方法も解説します。1. 日焼けと火傷の関係日焼けは紫外線による皮膚組織の損傷です。特にUVB(波長280〜315nm)は表皮細胞に直接ダメージを与え、炎症反応を起こします。この反応は火傷と類似しており、皮膚科学的には「日光皮膚炎」と呼ばれます。火傷との違いは、原因と症状が現れるタイミングです。火傷は接触直後に症状が出ますが、日焼けは曝露から数時間〜1日後にピークを迎えます。種類原因主な症状皮膚損傷の深さ回復期間火傷高温物質、熱湯、炎、金属など即時の強い痛み、水ぶくれ、壊死表皮〜真皮〜皮下組織数日〜数ヶ月日焼け紫外線(UVA・UVB)数時間後から赤み、痛み、水ぶくれ表皮〜真皮上層数日〜数週間2. 日焼けの重症度分類皮膚科では日焼けも火傷と同様にⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度で重症度を判定します。重症度皮膚の状態症状医療受診の目安Ⅰ度(日光皮膚炎・軽度)赤み、軽度の腫れヒリヒリ感、かゆみ自宅ケアで回復可能Ⅱ度(浅達性〜深達性)水ぶくれ、皮膚剥離強い痛み、患部の熱感広範囲や顔面は受診推奨Ⅲ度(重度)皮膚の壊死、白色化感覚鈍麻、全身症状緊急受診・入院注意点Ⅱ度以上は感染症リスクが高く、医師の診察が必要広範囲の日焼けは熱中症や脱水を合併しやすい3. 自宅でできる日焼けの応急処置日焼け直後の対応が回復スピードを左右します。手順冷却流水または冷(微温)水で20分冷やす。氷は直接当てず、布で包んで使用。保湿アロエや大豆成分入りなど低刺激の保湿剤を薄く塗布。“-caine”(ベンゾカイン等)やアルコール配合は避ける。安静・遮光紫外線曝露を避け、患部は衣服やタオルで覆う。水分・電解質補給経口補水液やスポーツドリンクでこまめに補給。避けるべき行為強くこする刺激の強い化粧水使用自己判断で水ぶくれを潰す(破れた場合は清潔を保ち、医療者の指示でワセリン等で保護)4. 医療機関を受診すべき日焼け症状以下の症状があれば受診が必要です。広範囲の発赤や水ぶくれ発熱、悪寒、倦怠感嘔吐、頭痛など全身症状顔面・目・生殖器のⅡ度以上損傷小児・高齢者・持病のある方の重度日焼け5. 日焼け予防の基本と最新情報予防策詳細ポイント日焼け止めSPF30以上、PA+++以上を選び、外出15分前に塗布。屋外では2時間ごとに塗り直し。泳いだ/汗をかいたら都度。衣服長袖・襟付き・UVカット素材の衣服。帽子は幅広つばが有効(7cm以上が望ましいとされる報告もあり)。サングラスUV400またはUVA/UVBを99〜100%カットするものを選ぶ。時間帯調整紫外線が強い10〜16時は直射日光を避ける。日陰利用木陰や建物の影を活用。砂浜や雪面は反射でUV量が増えるため注意。6. 重度日焼けと合併症リスク重度日焼けは次の合併症を招くことがあります。細菌感染:破れた水ぶくれからの感染色素異常:炎症後色素沈着や色素脱失皮膚がん:DNA損傷による長期的リスク増加免疫抑制:紫外線による皮膚免疫低下7. 日焼け・火傷に対する訪問看護の活用在宅療養中や高齢者が日焼け・火傷を負った場合、訪問看護は有効なサポートです。訪問看護で行えるケア創部の洗浄・保護・保湿水ぶくれの管理と感染予防医師への報告と処方薬の塗布全身状態のチェック(発熱、脱水など)家族へのケア指導8. 日焼け後のスキンケアと回復促進低刺激保湿:ワセリン(創部保護時)、セラミド配合クリーム抗炎症薬:必要に応じて医師の指示で使用食事:バランスのよい食事で皮膚再生をサポート(ビタミンC・Eを含む食品も有用とされる)生活習慣:十分な睡眠と休養まとめ日焼けは軽度であれば自宅ケアで回復しますが、重度の場合は火傷と同様の緊急性があります。重症度を正しく判断し、適切な応急処置と予防策を実践することが重要です。高齢者や持病のある方は、必要に応じてピース訪問看護ステーションなど訪問看護の活用も検討してください。関連記事訪問看護のサービス内容を徹底解説、対象者・保険制度・利用の流れまでわかる高齢者の水分摂取量ガイド:健康維持のために必要な知識と実践法を紹介食中毒の原因と予防対策、家庭でできる安全な食事管理本記事の執筆者・監修者プロフィール【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理に長け、地域医療連携や在宅看取り支援にも積極的に取り組んでいる。