人工股関節の手術後、退院後の自宅リハビリで安心して歩ける生活を取り戻すために人工股関節手術の退院後は、自宅でのリハビリと脱臼予防動作の習慣化が、再び歩いて暮らせる生活への鍵になります。「家でひとりで動いていいのか」「股関節が外れたら」――人工股関節置換術(THA)後に多くの方が抱える不安です。60〜70代でも安全性が確立した手術ですが、自宅の過ごし方が半年後・1年後の歩きやすさを左右します。本コラムでは脱臼予防、自宅リハビリ、階段・入浴、訪問看護活用、家族サポートを町田・相模原・多摩のピース現場視点で解説します。わかること:退院直後の生活、脱臼予防動作、自宅リハビリ、階段・入浴、訪問看護活用、家族の心構え。今日からの一歩:術後パンフレットを家族と読み直し、手術アプローチと禁忌動作を冷蔵庫に貼りましょう。退院直後の生活リズム――最初の2週間で整える在宅生活の土台退院直後の2週間は、痛みと腫れの管理・歩行器/杯の使い方・住環境の段差対策を最優先に整えます。退院日が決まると「家で大丈夫だろうか」という不安が押し寄せます。病院は看護師が常駐していますが、自宅では家族の協力が頼りです。最初の2週間は普段通りに戻そうとせず、術後の体を「整える期間」と割り切りましょう。①痛み・腫れ・創部の自己観察退院後しばらくは股関節周りに鈍い痛みや突っ張り感が残り、夕方に腫れが強くなる方が多いです。痛み止めはリハビリや外出前に予防的に内服しておくと動きが滑らかで回復も早まります。定時薬と頑服薬の違いを家族と確認を。創部(傷あと)の観察は毎日行います。シャワー後など明るい場所で家族に手鏡で見てもらうのが確実です。赤み・熱感・滌出液の増加・38度を超える発熱は自己判断せず手術病院へ連絡を。創部感染は早期発見が予後を左右します。ふくらはぎの腫れや痛み、片足だけ赤くなる症状は深部静脈血栓症(DVT)のサインの可能性があります。退院後2〜4週間は弾性ストッキング着用と足関節底背屈運動で予防します。長時間座り続けない、水分をこまめに摂ることも欠かせません。②歩行器→T字杯への段階移行退院時には歩行器・松葉杯・T字杯のいずれかが処方されます。多くのケースでは歩行器を自宅で2〜3週間使用してからT字杯に移行します。あせって早めにT字杯へ切り替えると、患側(手術した側)への負担が増え、骨盤の動揺や反対側への過剰な体重移動が癖になることがあります。杯は「手術した足と反対側の手」で持ち、最初は「杯→患側→健側」の三動作、慣れたら「杯と患側を同時→健側」の二動作で歩きます。歩幅をそろえ視線を前方に向けると転倒リスクが下がります。杯の長さは大転子(お尻の横の出っ張り)の高さが目安で、退院時に病院の理学療法士に調整してもらいましょう。屋内は歩行器、屋外はT字杯と使い分ける段階もあります。③ベッド・トイレ周りの環境整備自宅環境の整備は、退院前から家族が準備しておくのが理想です。特に注意したいのは次の3点です。場所整備のポイントベッド床上の布団から、立ち上がりやすい高さのベッドへ変更(介護保険レンタル可)トイレ洋式トイレに手すり・補高便座を設置。和式トイレは絶対に使わない(補高便座は形状により介護保険の特定福祉用具購入対象になる場合があり、ケアマネに確認)玄関・廘下段差解消スロープ、滑り止めマット、夜間用フットライトカーペットの端めくれ・電源コード・こたつ布団のはみ出しは、家族には「いつもの風景」でも術後は転倒・脱臼の引き金になります。退院前に本人の目線でリビング・寝室・トイレ・浴室を見回り、訪問看護師や福祉用具事業者に下見を依頼すると確実です。④家族の付き添いポイント退院直後1週間は、夜間トイレや早朝の起き上がりで家族の付き添いが必要です。24時間つきっきりは家族が消耗するため、「危険動作が起きやすい時間帯」に重点的に寄り添うのが現実的。具体的には起床直後・食後すぐ・入浴前後・就寝直前の4タイミングが転倒事故の起こりやすい場面です。最初の外来通院は家族同行が望ましく、車では助手席を倒し股関節を90度以上曲げない座り方を。家族が遠方や勤務で同居困難なら、訪問看護・訪問リハ・ヘルパー・地域包括支援センターを組み合わせ「家族だけで頑張らない」体制を整えましょう。お問い合わせ脱臼を防ぐ動作の覚え方――後方アプローチと前方アプローチの違い人工股関節の脱臼予防は、手術アプローチ別の禁忌動作を家族と一緒に覚えることが最大の予防策です。人工股関節の怖い合併症のひとつが「脱臼」です。一般に頻度の高い合併症ではないとされますが、起きると緊急で整復処置が必要になり、入院もやり直しになる場合があります。脱臼は手術アプローチごとに「特定の動き」で起こりやすく、一度起こすと繰り返しやすい「習慣性脱臼」になることもあるため、退院後3ヶ月の禁忌動作の遵守が何より大切です。①後方アプローチ:屈曲90度+内転+内旋がNG日本でもっとも多く行われているのが後方アプローチ(お尻側から切開する方法)です。このアプローチの場合、股関節を90度以上深く曲げる動作と、膝を体の中心側へ寄せる(内転)、つま先を内側に向ける(内旋)動作が重なったときに脱臼しやすくなります。具体的に避けたい動作は次のとおりです。低いソファに深く腰掛けるしゃがんで床のものを拾うあぐらをかく、横座りをするベッドで足を反対側に組む椅子に座った状態で手術した足側の靴下を履く②前方アプローチ:伸展+外旋がNG最近少しずつ普及している前方アプローチ(鼠越部側から切開する方法)の場合、禁忌動作は逆になります。股関節を後ろへ反らす(伸展)動作と、つま先を外側に向ける(外旋)動作の組み合わせが危険です。避けたい動作の例:後ろを振り返るときに腰だけひねるうつ伏せで足を後ろに上げる立位で手術した足を後ろへ大きく踏み出す大股で歩くご自身の手術アプローチは退院時の説明書類か、主治医・理学療法士に必ず確認しましょう。「自分はどちらか」を正確に把握することが、退院後3ヶ月の安全な生活の前提になります。前方アプローチは後方より脱臼リスクが低いとされますが、禁忌動作はゼロではありません。家族にも一緒に覚えてもらい「いまの動きは大丈夫だった?」と確認し合える関係を作るのが理想です。③床に落ちた物の拾い方退院後にもっとも頻繁に起こる危険動作が「床のものを拾おうとしゃがむ」場面です。後方アプローチの場合、しゃがむと股関節が90度以上深く曲がり、内転・内旋がそろえば脱臼リスクが一気に高まります。安全な拾い方は3パターンあります。マジックハンド(リーチャー) — 介護用品店や福祉用具レンタルで入手可(1,500〜3,000円)。生活空間に1本ずつ置くと便利。健側の足を後ろへ引いて、手術した足を前に伸ばしてかがむ — テコの原理で股関節を深く曲げずに済みます。ゴルフのアプローチショットの構えに似ています。家族に頼む — 「自分でやらなきゃ」と頑張りすぎて脱臼するケースもあるため、無理せず声をかけることも大切です。④寝返り・起き上がりのコツベッドでの寝返りや起き上がりも脱臼リスクのある場面です。後方アプローチの場合は健側を下にした横向き寝にし、両膝の間に枕やクッションを挟みます。寝返りは両膝を立ててから体ごとブロックのように同時に回す「丸太様回旋」を意識。起き上がりは、横向きになってから上半身を起こし、両足をベッドから下ろして座位になる順序です。仰向けから直接上体を起こすと股関節が深く曲がるため避けます。最初の数日は家族に動きを確認してもらい何度か練習することで、夜間の独力での寝返り・起き上がりも安心できます。⑤靴下・爪切り・足のケアの工夫退院後3ヶ月は爪切りや靴下の着脱にも工夫が必要です。靴下はソックスエイドを使えば股関節を深く曲げずに着用でき、1〜2分で履けます。爪切りは家族に頼むか、座位で健側の足を組んで切る範囲まで。爪が伸びすぎると転倒原因になるため、訪問看護師の足のケアを定期利用する方も多いです。糖尿病がある方は感染源になりやすいためフットケアは欠かせません。お問い合わせ自宅で続ける基本リハビリメニュー――筋力・可動域・バランスの3本柱人工股関節の手術後の自宅リハビリは、大臀筋・中臀筋・大腿四頭筋を中心に毎日コツコツ続けるのが基本です。退院後の自宅リハビリは、入院中に理学療法士から指導された運動メニューを継続するのが基本です。ただし自宅では「やっているつもり」で回数が足りなかったり、痛みを我慢して頑張りすぎたり極端になりがちです。ここでは町田・相模原の訪問リハの現場で指導している基本メニューを紹介します。1日2〜3セット、テレビを見ながら可能な内容です。「3ヶ月で大臀筋・中臀筋・大腿四頭筋を術前以上に強くする」目標を意識しましょう。①椅子に座ってできる足踏み・膝伸ばし朝起きてすぐ、テレビの前で行えるメニューです。背もたれのある椅子に深く座り、背筋を伸ばします。足踏み運動: 太ももを交互に持ち上げます。10回×2セット膝伸ばし運動: 手術した足の膝をゆっくり伸ばし、5秒キープして下ろします。10回×2セット。大腿四頭筋(だいたいしとうきん、太もも前面の筋肉)を強化する基本運動です足首の運動: 足首を上下にゆっくり動かします。20回×2セット(血栓予防にも有効)おしり締め運動: 椅子に座ったまま、おしりにキュッと力を入れて5秒キープ。10回×2セット。大臀筋を働かせる優しいトレーニングですポイントは「ゆっくり・しっかり」。勢いをつけて速くやると効きません。力を入れる瞬間に息を吐く(吐きながら持ち上げ、吸いながら戻す)リズムを身につけると、血圧変動も少なく安全に運動できます。②立位での外転運動(中臀筋トレーニング)中臀筋(ちゅうでんきん)はお尻の横にある筋肉で、歩行時に骨盤が左右にぐらつかないよう支える役割を持ちます。ここが弱いと「トレンデレンブルグ歩行」が出やすく、見た目にも疲れやすさにもつながります。退院後3ヶ月で大臀筋・中臀筋の筋力を術前以上に戻せるよう毎日コツコツと行いましょう。椅子の背もたれや壁につかまって立つ手術した足を、ゆっくり真横に持ち上げる(角度は20〜30度程度で十分)3秒キープしてゆっくり戻す10回×2セットつま先は前を向けたまま行うのがコツです。つま先が外を向くと股関節の前方の筋肉ばかりが働いてしまい、目的の中臀筋に効きません。立位が難しい方は、健側を下にした横向き臥位で手術側の足をゆっくり真上に持ち上げる「サイドリフト」が代替メニューになります(後方アプローチの方は両膝の間にクッションを挟み、内転・内旋に注意)。③ストレッチで可動域維持筋力訓練と並行して関節の可動域を保つストレッチも重要です。仰向けで両膝を立て健側の膝を胸に近づけるストレッチ(手術側ではなく健側を曲げる)、座位で太もも裏のハムストリングスを伸ばすストレッチが基本です。「痛気持ちいい」程度〇20〜30秒キープ、反動をつけずゆっくり伸ばします。お風呂上がりなど筋肉が温まっているときが効果的です。注意: 後方アプローチの方は、手術した足の膝を胸に引き寄せるストレッチは絶対に行わないでください。屈曲90度を超えるため脱臼の危険があります。④歩行距離の段階的拡大歩くこと自体がリハビリの中心です。最初1週間は家の中の往復、2週目は玄関を出て自宅前10〜20m、3〜4週目は近所100〜200m、退院後1〜2ヶ月でスーパーまでの500m〜1kmと少しずつ距離を伸ばします。途中で休めるベンチや公園を見つけておくと安心。距離を伸ばす目安は「歩いた翼日に痛みが残らない」ことです。「今日はどこまで歩いた」をカレンダーやスマホに記録すると回復を実感できモチベーションが続きます。歩く時間帯は朝の涼しいうちか夕方がおすすめで、真夏の日中は熱中症リスクがあるため避けましょう。⑤痛みが出たときの中止基準リハビリは「痛みのない範囲で」が大原則です。次のいずれかが当てはまれば、その日はそれ以上頑張らず休みます。運動中に「ズキッ」とした鋭い痛みが出る運動後に痛みが翼日まで残る関節がぐらつく感じや、はずれそうな違和感がある患側の足が急に腫れた、熱を持った「痛みを我慢して頑張る」は逆効果で、無視すると炎症が長引き回復が遅れます。リハビリ記録ノート(スマホメモで可)に「いつ・どんな運動で・どんな痛みが出たか」をメモしておくと、訪問リハや外来でメニュー調整のヒントになります。リハビリは「短時間・毎日」が「長時間・週1回」より効果的。痛みのある日は無理せず休む勇気も大切です。階段・入浴・外出――日常動作の再獲得ステップ階段は「行きは健側から、降りは患側から」を合い言葉に、入浴は手すり・シャワーチェアで安全を確保します。退院後2〜4週目には家の中の動きに慣れ、階段・入浴・外出という「やや難易度の高い動作」に取り組む時期です。ここでつまずくと自信を失い閉じこもる方もいるため、安全な方法を一つひとつ確認しましょう。①階段昇降の順序と手すり活用階段は人工股関節術後の方にとって、もっとも転倒リスクの高い場所のひとつです。順序を間違えると、患側に過剰な負荷がかかります。覚えるのは次の合い言葉です。「行きは健側から、降りは患側から」(健患患健の法則)つまり、上り: ①健側の足を一段上に → ②患側の足を同じ段に → ③手すりを次の段へ下り: ①手すりを一段下に → ②患側の足を一段下に → ③健側の足を同じ段にこれは「健側で体を持ち上げ・支える」原則に従っています。手すりは必ず使い、最初の1〜2ヶ月は家族に背後または横についてもらいます。階段の段数が多いお宅では寝室を1階へ移す工夫も検討を。滑り止めテープ、夜間照明、踊り場の椅子も転倒予防に有効です。②浴室の改修・福祉用具レンタル入浴は退院後の生活の質を大きく左右します。ピースが町田・多摩地域のお宅を訪問していると、退院後しばらくは家族介助でシャワー浴のみ、その後シャワーチェアと手すり設置で自立、というステップを踏む方が多いです。用具用途入手方法シャワーチェア座って体を洗う・安全な洗い場姿勢介護保険レンタル(特定福祉用具購入)浴槽手すり浴槽の出入り時の支え介護保険レンタルor住宅改修滑り止めマット浴室・浴槽内の滑り防止自費購入(1,000〜3,000円程度)バスボード浴槽の縁に渡して座って入る台介護保険購入対象要介護認定を受けている場合、住宅改修費として手すり設置や段差解消に最大20万円までの工事費の9割(または8割・7割)が支給されます。詳細は厚生労働省「介護・高齢者福祉」ページや市町村の介護保険課へ。浴槽への出入りは、後方アプローチは「浴槽の縁に座ってから足を入れる」、前方アプローチは「健側から先に入る」とコツが異なります。退院前に病院の理学療法士・作業療法士から指導を受けると安心です。③車の乗降と運転再開の目安車の乗降は、股関節を90度以上深く曲げる動作になりやすく注意が必要です。安全な乗り方は次のとおりです。お尻から先に座席に座る(足はまだ車外)健側の足から車内に入れる体を回転させながら、患側の足を入れる助手席なら背もたれをやや倒すと股関節の屈曲が浅くなる降りるときは逆の順序で、患側を先に車外へ出し、健側→おしりの順で立ち上がります。背の低いセダンよりSUVや軍自動車の方が座面が高く乗降が楽です。タクシーは車種を選んで予約も可能です。運転再開は術後6〜8週間以降が目安ですが、必ず主治医の許可を得てから。右側を手術した方は右足でブレーキを踏むため、左側手術より許可が慎重になりやすい点に注意が必要です。最初は近所のスーパーまで短距離から始め、徐々に距離を伸ばします。長距離運転は1時間ごとに休憩を取り、車内で足首運動を忘れずに。④買い物・通院での杯の使い方外出は社会復帰の重要な一歩です。最初は家族と一緒にスーパーやコンビニまで歩くことから始めます。買い物カートは杯代わりに使いやすく、肘で軽く支える程度でも安定します。重い荷物は持たず、最初は「行って買って帰る」だけで上等です。人混みでは患側を壁側にして歩くのがコツです。雨や雪の日は家族や宅配サービスに頼り、退院直後の数ヶ月は地域包括支援センターやケアマネジャーに相談して買い物代行や配食サービスを利用するのも選択肢です。⑤靴選びと屋外路面への対応退院後の靴選びは、つま先がきつくない・かかとがしっかり覆われる・滑り止めの靴底があるシューズが安全です。マジックテープ式の介護シューズも選択肢に入ります。雨のマンホール、町田・相模原の住宅街にある緩やかな坂、玄関の濡れたタイルは滑りやすいため、外出前に天気と路面を確認し、必要なら傘ではなくレインコートで両手を空ける工夫を。お問い合わせ人工股関節術後の訪問看護・訪問リハで在宅生活を支える――ピース訪問看護ステーションの関わり方退院後の人工股関節リハビリは、訪問看護師と理学療法士が自宅環境で直接指導することで安心感が大きく変わります。退院後の自宅リハビリはご本人と家族だけでも進められますが、「これで合っているか不安」「動作のクセが心配」と感じる方は多いはず。訪問看護チームが自宅で専門職の目で見守ることで、回復スピードと安心感がぐっと高まります。①訪問リハで何ができるか訪問リハビリテーション(訪問リハ)では、理学療法士(PT)または作業療法士(OT)がご自宅に伺い、生活の場面そのものでリハビリを行います。病院のリハビリ室と違うのは、「実際に使う環境で評価・指導できる」という点です。具体的には次のような関わりをします。自宅の段差・廘下幅・トイレや浴室の構造を実測し、福祉用具や住宅改修を提案患者さんが日中過ごす椅子・ベッド・トイレ動作を直接観察し、脱臼リスクのある動作を修正病院で指導された自主トレを、自宅でできる形に組み替えて指導退院後の体力低下に応じて、歩行距離・運動強度を週単位で調整家族への動作介助のしかた・声かけのコツの指導訪問リハの利点は「困っているその場で解決できる」点です。たとえば退院後はじめてキッチンに立ったときの「シンクの高さで腰が痛い」「足元の収納に届きにくい」も、その場で台所マットや踏み台を調整し、その日のうちに「楽になった」を実感していただけます。②看護師の創部観察と感染予防訪問看護師はリハビリ職とは別の視点で術後の体調管理を担います。創部観察、痛みコントロール、内服薬管理、DVTチェック、栄養状態の確認など、退院後しばらくは週1〜2回の訪問で全身を見守ります。特に60〜70代の方は糖尿病・高血圧・心疾患などの併存疾患を抱えていることが多く、術後の体調変化を早期にキャッチすることが重要です。看護師は主治医や手術病院とも連絡を取りながら必要に応じて受診を勧めます。なかでも糖尿病をお持ちの方は、高血糖状態が続くと創部感染や治癒遅延のリスクが上がります。HbA1cと血糖値のセルフモニタリングを継続し、内服・インスリン・食事内容を主治医や糖尿病かかりつけ医と連携して整えることが、人工股関節の長期成績にも直結します。訪問看護師は併存疾患も含めた全身管理を担うため、不安があれば早めに相談しましょう。③町田・相模原・多摩の利用事例ピースでは町田・相模原・多摩・八王子の方を中心に、人工関節術後の在宅リハビリを多数支援しています。町田市内のあるご家庭では、退院直後から週2回(看護師1回・PT1回)の訪問でスタートし、3週目で杯歩行が安定、6週目で買い物自立、3ヶ月後にはご夫婦で公園散歩まで回復されました。相模原市内では独居の不安が大きいケースでも、訪問看護・訪問リハ・ケアマネ・地域包括支援センター・主治医の情報共有、配食サービスや見守りセンサーの活用でチームとして在宅復帰を支えられます。退院前からのご相談がおすすめです。④主治医・ケアマネとの連携在宅リハビリには主治医、かかりつけ医、ケアマネ、訪問看護師、訪問リハ、福祉用具事業者など多職種が関わります。訪問看護ステーションが情報の橋渡しを担うことが多いです。ピースでは退院前カンファレンスに病院へ伺い、退院当日からスムーズに在宅生活が始まるよう準備します。訪問看護指示書・訪問リハ指示書などの書類もステーションが代行で進めます。退院後早期から訪問が始まるとリハビリ効果が早く実感でき、ご家族の介護負担も軽減します。「もっと早く頼めばよかった」と退院後3ヶ月のご家族からよく聞きます。病院から「訪問看護を検討してください」と提案があった時点で躇躇せず連絡することが第一歩です。お問い合わせ家族ができるサポートと、退院後3ヶ月の心構え人工股関節手術後の自宅リハビリは家族の声かけと焚らない心構えで、3ヶ月後の「歩ける生活」に必ずつながります。退院後の自宅生活では家族の役割も重要です。「手伝いすぎ」も「放っておきすぎ」も回復を遅らせるため、ちょうどよい距離感のコツをまとめます。①過介助を避ける見守り方家族は「何かあったら大変」と先回りして手を出しがちです。靴下を履かせる、立ち上がりに毎回手を貸す、トイレまで腕を組んで連れていく――こうした「過介助」は親切心の表れですが、本人の運動を奪い廃用症候群を招きます。理想は「見守るが、手は出さない」。立ち上がりの瞬間だけ後ろに立つ、靴下を履くときに道具を渡す、転びそうなら脇を支える――必要な瞬間にだけ手を出します。「自分でできた」という成功体験が意欲を支えます。家族の不安が強いときは訪問看護師に「家族指導」を依頼すると、専門職の立ち会いで介助のコツを身につけられます。②反対側関節・転倒予防の配慮人工股関節置換術を受けた方の多くは、長年の歩行バランスの偏りで反対側の股関節や膝関節にも変形が進んでいる場合があります。手術した側ばかりに気を取られがちですが、健側の関節もケアしましょう。歩きすぎた後の反対側の膝の痛み・腰の張り・足のしびれは早めに主治医や訪問リハへ相談を。転倒予防では、スリッパ廃止(裸足か滑り止めつき室内履きへ)、夜間照明、ベッド周りの整理整頓が基本。手すりは廘下・階段・トイレ・浴室に追加します。床のコード類や雑誌も転倒の引き金になりやすいため日常的に整理整頓を。③閉じこもり・抑うつのサイン退院後は急な活動量低下や人と会う機会の激減で気分が落ち込む方がいます。「やる気が出ない」「食欲がない」「眠れない」「楽しいと感じない」が2週間以上続くなら軽い抑うつ状態の可能性があります。家族はリハビリの励ましだけでなく本人の気持ちにも目を向け、必要に応じて主治医・かかりつけ医・訪問看護師に相談してください。外出が難しい場合はテレビ電話で孫と話す、デイケア、地域のサロンなどで社会との接点を少しずつ取り戻しましょう。④介護保険・医療保険の使い分け退院後のリハビリには「医療保険」と「介護保険」があります。65歳以上は原則介護保険優先で、要介護認定を受けると訪問看護・訪問リハ・福祉用具レンタル・住宅改修費補助が利用できます。介護保険の申請は市区町村の介護保険課ですが、退院前から病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)に相談しておくとスムーズです。要介護認定の結果まで通常1ヶ月程度かかりますが、その間も「暖定ケアプラン」で訪問看護・訪問リハを開始できます。医療保険での訪問看護は、要介護認定を受けていない方や特定疾病・急性増悪期の方が対象で、退院直後の不安定な時期は週3回以上利用できる場合もあるため専門職に相談しましょう。退院後3ヶ月は人工股関節置換術後のもっとも変化の大きい時期です。「3ヶ月後には買い物に一人で」「半年後には旅行に」など具体的な目標を家族で話し合うとリハビリに意味が生まれます。一方で術後3ヶ月を過ぎると「無理ができる体」と錯覚しやすく、長距離歩行や草むしりで人工関節周囲に炎症が出ることもあります。「調子がいいときほど慎重に」を合い言葉に、半年間は意識的に休息日を作り段階的に活動範囲を広げましょう。焚らず、休まず、一歩ずつ。退院日が新しい生活のスタートラインです。「3ヶ月を乗り越えてよかった」と振り返れる日が必ず来ます。今日の積み重ねが半年後の旅行や公園散歩につながります。まとめ人工股関節置換術後の退院から3ヶ月は、自宅リハビリと脱臼予防動作の習慣化が「歩ける生活」を決定づけます。退院直後2週間で住環境を整え、アプローチ別の禁忌動作を家族と共有し、筋力・可動域・バランスのリハビリを継続。訪問看護師・PT・OTの自宅指導で動作を修正し、家族は「見守る」距離感で地域チームと支えましょう。ぜひ町田市およびその近隣にお住まいの方は、ピース訪問看護ステーションにご相談ください。よくあるご質問Q1. いつから歩けますか?A. 2〜4週で杯歩行安定、2〜3ヶ月で買い物自立、6ヶ月〜1年で術前以上の活動量に戻る方が多いです。Q2. 1日何回リハビリ?A. 1日2〜3セット、1回15〜30分が目安。継続が最重要。Q3. 脱臼の前兆は?A. 「ぐらつき」「特定動作で急な痛み」がサイン。動作中止し主治医・訪問看護師へ。完全脱臼時は救急受診です。Q4. お風呂はいつから?A. 創部が閉じる術後3〜4週が目安ですが、必ず主治医の許可後に湯船入浴を開始してください。Q5. 訪問看護の申し込み方法は?A. 退院前は医療ソーシャルワーカー、退院後はケアマネ・地域包括支援センター・ステーションへ。Q6. 反対側も手術予定です。A. 経験を活かして住環境整備と福祉用具を準備すれば2回目はスムーズです。関連記事【専門家監修】高齢者の大腿骨骨折の原因・治療・リハビリ・予防法まで徹底解説高齢者の転倒予防と対策:健康寿命を延ばすためにできること介護保険でできる住宅改修とは?対象工事や申請の流れ、注意点を徹底解説介護保険で利用できる福祉用具とは?レンタル・購入のしくみと選び方を解説【2025年最新版】参考文献一覧日本人工関節学会 https://jsra.info/厚生労働省「介護・高齢者福祉」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理、地域医療連携、在宅看取り支援に積極的に取り組んでいる。island-piece.jp 株式会社isLand|訪問看護・居宅介護支援・訪問介護|町田市