心臓ペースメーカーは、不整脈や徐脈などで脈が遅くなる症状を整え、安心して生活を続けるための医療機器です。この記事では、ペースメーカーの仕組みや日常生活での注意点、運動・リハビリの工夫、そして在宅療養を支える訪問看護についてわかりやすく解説します。町田市で心臓疾患の在宅ケアを希望される方には、地域密着のピース訪問看護ステーションの支援体制も紹介します。1. 心臓ペースメーカーとは?(しくみと基本のはたらき)ペースメーカーの役目:心臓のリズムを整える小さな機械項目内容主な目的心臓の拍動が遅くなる「徐脈」を防ぎ、血流を安定させる植え込み場所鎖骨下(左胸が多い)の皮下に設置大きさ約20〜30g、500円玉〜マッチ箱程度寿命約5〜15年(機種・設定により異なる)対応疾患洞不全症候群・房室ブロックなどの不整脈心臓ペースメーカーは、心臓が正常なリズムで動かなくなったときに、電気信号を送って拍動を助ける小型医療機器です。主に「脈が遅くなる徐脈」や「電気が途中で途切れる房室ブロック」などで使われます。体内に埋め込まれた装置が、常に心拍をモニタリングし、必要なときにだけ電気刺激を送るため、自然な拍動リズムを保つことができます。治療を受けることでめまい・失神・息切れなどの症状が改善し、日常生活の安全性が高まります。近年は装置の小型化が進み、入浴・旅行・運動も可能な生活を送れる方が増えています。どんなしくみで心臓を動かすの?電気刺激の流れをやさしく解説構成要素機能パルスジェネレーター電気刺激を作り出す本体。電池と制御回路を内蔵。リード(導線)電気信号を心臓まで届ける線。電極リード先端で心筋に接触し、刺激を伝える部分。心臓は本来、自ら電気を発生して一定のリズムで拍動します。しかし、その電気がうまく伝わらなくなると、拍動が止まりかけたり極端に遅くなったりします。ペースメーカーは、この「電気信号の途切れ」を感知すると自動的に作動し、適切な強さの電気刺激を送って心筋を収縮させます。この働きによって、心臓が常に規則正しく動くようになり、脳への血流が維持されて意識消失を防ぐことができます。また、機器には自己調整機能があり、安静時と運動時で刺激のタイミングを変える「レートレスポンス機能」も搭載されています。これにより、運動中の心拍上昇を自然にサポートできるのです。ペースメーカーの部品:本体・リード・リードレスの違い種類特徴主な適応従来型(リードあり)胸部に本体を埋め込み、リードを心臓に通す洞不全症候群・房室ブロックリードレス型 ✅リードなしで心臓内に直接設置主に単室刺激。機種によりAV同期も可能三腔型(CRT)左右の心室を同時刺激し心不全を改善重症心不全・心室内伝導遅延従来型のペースメーカーは、本体から心臓へ細いリードを通して刺激を送ります。これに対して、リードレスペースメーカーは心臓内に直接留置するタイプで、感染やリード断線のリスクが少ないのが利点です。さらに新しいモデル(Micra AVなど)では、心房の動きを加速度センサーで感知し、心房と心室のタイミングを合わせるAV同期機能も実現しています。また、三腔型(CRT)は心不全治療にも使われ、心臓の両心室を同時に動かすことでポンプ機能を改善します。いずれの機種も医師が心電図・心拍データをもとに選択し、症状や生活スタイルに合わせた最適な治療を提案します。出典:日本不整脈心電学会「心臓ペースメーカー治療の手引き」/Medtronic社「Micra AV2概要(2024)」2. ペースメーカーが必要になる病気と症状徐脈(脈が遅い)や不整脈ってどんな病気?病名原因・特徴主な症状洞不全症候群心臓の拍動を生み出す洞結節の働きが低下脈が遅く、立ちくらみ・めまい房室ブロック心房から心室へ電気が届かない脈が途切れる、失神する徐脈性心房細動不整脈の一種で心拍が遅すぎる倦怠感、息切れ、ふらつき徐脈(じょみゃく)とは、心臓の鼓動が極端に遅くなる状態で、血液を全身に送り出す力が足りなくなる病気です。脈拍が1分間に40回以下になることもあり、頭がボーッとする・立ちくらみ・息切れ・失神といった症状が現れます。洞不全症候群では、心臓のリズムを作る「洞結節」の働きが弱まり、拍動が止まることもあります。房室ブロックでは、心房から心室への電気信号が伝わらなくなり、心臓の拍動が一瞬止まるような状態になります。いずれも重症化すると突然倒れる危険があるため、ペースメーカーによるリズム補正が有効です。出典:日本循環器学会「不整脈診療指針(2021年改訂版)」めまい・息切れ・失神などのサインに注意症状原因となる異常注意点めまい・ふらつき脳への血流不足繰り返す場合は心拍異常の可能性あり息切れ・疲れやすさ心拍出量の減少階段・坂道で息苦しければ受診を失神・意識消失一時的な心停止や脈途絶転倒・けがの危険があり要注意脈が遅くなると、脳に十分な血液が届かず、立ちくらみやめまいが起こります。さらに進むと、数秒〜数十秒間、意識が途切れる「アダムス・ストークス発作」と呼ばれる状態になることもあります。このような症状を「年のせい」と思い込む方も多いのですが、実際にはペースメーカーで改善できる病的な徐脈であることが少なくありません。息切れや倦怠感も、心臓が全身に十分な血液を送り出せていないサインです。これらの症状が続く場合は、循環器専門医による検査(心電図・ホルター心電図)を受けましょう。早期発見・早期治療で転倒や突然死のリスクを大きく減らせます。出典:日本不整脈心電学会「徐脈性不整脈の診断と管理」心不全や突然死を防ぐための治療との違い(ICD・CRTなど)装置名主な働き対応する疾患ペースメーカー心拍が遅い時に電気刺激を送る洞不全症候群・房室ブロックICD(植込み型除細動器)危険な速い脈を感知し除細動する心室頻拍・心室細動CRT(両心室ペースメーカー)左右の心室を同時に動かし心不全を改善重症心不全・伝導障害一口に「心臓に機械を入れる」といっても、その目的はさまざまです。ペースメーカーは遅すぎる脈を補う装置であるのに対し、ICD(除細動器)は「速すぎる脈」を感知して自動的に電気ショックを与え、突然死を防ぐための装置です。また、CRT(両心室ペースメーカー)は、心不全で左右の心室の動きがずれる「非同期収縮」を整え、血液を送り出す力を回復させます。近年はこれらを組み合わせたCRT-D(除細動器付き心臓再同期療法)も登場しており、心不全の重症化を防ぐ治療として普及しています。医師は症状・心電図・心エコーの結果をもとに、どの装置が最も適しているかを判断します。出典:日本循環器学会「非薬物療法ガイドライン(2021)」3. ペースメーカーを入れる前の検査と診断心電図やホルター心電図でわかること検査名内容検出できる異常安静時心電図短時間の心電図測定徐脈・房室ブロックなどホルター心電図24時間心電図記録一過性の脈の乱れイベントレコーダー数週間〜1か月記録発作性不整脈心電図検査は、心臓の電気信号を波形で記録する基本的な検査です。安静時の短時間測定では、一定の脈の乱れや房室ブロックなどが確認できますが、発作が一時的にしか起こらない場合は見逃すこともあります。そのため、24時間連続で記録するホルター心電図が有効です。さらに、数週間の長期記録ができるイベントレコーダーを使えば、発作のタイミングを逃さずに解析できます。こうした検査結果をもとに、医師がペースメーカーが必要な状態かどうかを判断します。出典:日本循環器学会「不整脈診療指針(2021)」精密検査(電気生理検査)で決まるペースメーカーの必要性検査内容対象電気生理検査(EPS)心臓内にカテーテルを入れ、電気刺激を解析不整脈の原因究明負荷試験運動や薬剤で心拍変化を評価徐脈や洞不全の重症度確認心臓内に細い管(カテーテル)を挿入して、電気の流れ方を直接調べるのが電気生理検査(EPS)です。この検査では、心臓のどの部分で電気が遅れたり途絶えたりしているかを特定できます。特に房室ブロックや洞不全症候群では、ペースメーカー治療の適応を明確に判断できる大切な検査です。また、運動負荷試験や薬剤負荷試験で、活動時の脈の上がり方を確認することで、より正確に治療方針を決めることができます。出典:日本不整脈心電学会「心臓電気生理検査ガイドライン」合併症や持病をふまえた安全チェックチェック項目内容感染症手術前に皮膚や血液検査で確認抗凝固薬・抗血小板薬服用中の場合は休薬や調整慢性疾患糖尿病・腎疾患・心不全などを事前評価ペースメーカー植込み前には、安全に手術できるかを確認するための全身チェックが行われます。感染症があると創部トラブルの原因になるため、事前に治療してから実施します。また、血液をサラサラにする薬を服用している方は、出血リスクを下げるために医師の指示で一時的に中止または減量します。糖尿病・腎臓病・心不全などをお持ちの方も、専門医が連携してリスク管理を行うので安心です。出典:厚生労働省「植込み型医療機器安全管理指針」4. ペースメーカーの種類をわかりやすく紹介一腔・二腔・三腔タイプ(CRT)の特徴と使われ方タイプ刺激部位主な対象一腔心室のみ房室ブロックなど二腔心房・心室洞不全症候群三腔(CRT)両心室心不全患者ペースメーカーには一腔・二腔・三腔(CRT)の3タイプがあります。一腔型は構造がシンプルで感染リスクが少ない一方、心房のリズムを補えないため、適応は限られます。二腔型は心房・心室を連動させ、より自然な拍動を実現します。三腔型(CRT)は心不全の患者さんに使われ、左右の心室を同時に動かすことでポンプ機能を回復させるのが特徴です。出典:日本循環器学会「非薬物療法ガイドライン(2021)」リードレスペースメーカーとは?小型・低侵襲の新技術特徴内容サイズ約2〜3cmのカプセル型留置場所右心室内に直接設置(カテーテル法)対応範囲主に単室刺激。機種によりAV同期も可メリット感染・断線リスクが少ない寿命約10〜16年(使用条件による)リードレスペースメーカーは、胸に機械を埋め込まず、カテーテルを使って心臓の中に直接設置するタイプです。従来型のようなリード(導線)が不要で、感染やリード断線の心配がほとんどありません。また、新しいモデルでは心房の動きを検知してAV同期(VDD)を取ることもでき、より自然なリズムに近づいています。小型で体への負担が少なく、高齢者や再手術リスクの高い方にも適しています。出典:Medtronic社「Micra AV2 製品概要(2024)」MRI対応・遠隔モニタリング機能つきペースメーカーの概要機能内容MRI対応条件付きで撮影可能(設定変更が必要)遠隔モニタリングデータを自動送信して医療機関が管理異常通知電池残量や動作異常を早期に把握MRI対応機種(MR Conditional)の登場により、ペースメーカー装着者でも多くの病院でMRI検査が可能になりました。ただし、適切な施設と手順(設定変更・監視体制)が必要です。また、遠隔モニタリング機能では自宅からデータを送信し、異常や電池残量を医療機関が把握できるため、通院回数を減らしつつ安全性を高めることができます。出典:厚生労働省「医療機器の遠隔モニタリング指針」5. 退院後の生活と注意したいこと傷口ケア・入浴・運動・仕事復帰の目安項目内容入浴創部治癒後(約1〜2週)に医師許可で可腕の動き術側の肩を90度以上挙げない(約1か月)運動散歩・軽運動は可、激しい動作は控える仕事軽作業は2〜4週後を目安手術後の生活では、創部の清潔管理と腕の安静が重要です。創部が治るまでは湯船を避け、医師の許可後に入浴を再開します。術側の腕を大きく上げるとリードがずれる可能性があるため、1か月は注意が必要です。仕事や運動は体調を見ながら徐々に再開し、無理をせず安定した心拍を維持する生活を心がけます。出典:日本不整脈心電学会「植込み後の生活指導」6. ペースメーカーの点検と電池寿命・定期通院電池の寿命はどのくらい?交換が必要なタイミング項目内容平均寿命約5〜15年(機種・設定・使用状況で変動)電池残量表示ERI/RRTサインで交換時期を通知交換方法本体のみ入れ替え、リードは再利用可所要時間約30〜60分、局所麻酔で実施ペースメーカーの電池は、使用状況や刺激頻度によって寿命が異なります。おおむね5〜15年が目安で、電池が少なくなると機器が「ERI(交換準備)」という警告信号を出します。交換手術は局所麻酔で行われ、通常は本体のみ取り替えるため、体への負担は少ないです。突然止まることはなく、半年〜1年前から交換計画を立てる余裕があります。定期検診で寿命の予測を聞き、安心して過ごせるようにしておきましょう。出典:日本不整脈心電学会「植込み型心臓デバイスの管理指針」定期検診と遠隔モニタリングで安心を保つ方法通院頻度内容植込み後1〜3か月動作確認・創部チェック3〜6か月ごと電池残量・リード接触・作動データ確認年1回詳細検査・設定調整遠隔モニタリング自宅からデータ送信し異常を早期把握ペースメーカーを安全に使い続けるには、定期的な点検が不可欠です。外来では専用の解析装置で動作状況を確認し、電池やリードの状態をチェックします。また、最近は「遠隔モニタリング」が普及し、自宅に設置した通信機器からデータを自動送信できます。異常や電池消耗を医療機関が即時に把握できるため、早期対応と受診間隔の延長が両立します。出典:厚生労働省「医療機器の遠隔モニタリング指針(2022)」通院の流れと医療機関への相談ポイントチェック項目内容心電図測定不整脈・ペーシング率の確認リード抵抗測定接続不良や断線を早期発見電池状態確認電圧・使用履歴の解析医師面談生活面や運動可否の相談定期通院では、心電図や機器データを通して電気刺激の正確さを確認します。体調や脈拍の変化を感じた場合は、些細なことでも医師や看護師に相談しましょう。通院先によっては臨床工学技士が同席し、技術面の点検をサポートしてくれます。こうしたチーム医療により、長期間にわたり安全なペースメーカー管理が可能になります。出典:日本循環器学会「ペースメーカー外来管理基準」7. 妊娠・子ども・高齢者のペースメーカー管理妊娠・出産に影響はある?医師と相談しながら安心出産項目内容妊娠の可否多くの方が妊娠・出産可能管理体制循環器科・産科・麻酔科の連携が必要出産方法自然分娩も可能だが計画分娩が望ましい注意点出産時は心電図モニタリングを併用ペースメーカーを入れていても、多くの女性が妊娠・出産できます。ただし妊娠中は血流量や心拍数が増えるため、循環器科と産科の緊密な連携が大切です。出産は「計画分娩」として行うのが一般的で、麻酔医がモニターを見ながら安全に管理します。母体にも胎児にも悪影響は少なく、自然分娩が可能なケースも多数です。安心して妊娠生活を送るためには、主治医へ早めに相談することが重要です。出典:日本産科婦人科学会「心疾患合併妊娠の管理指針(2023)」子どもや先天性心疾患の場合のケアと長期フォロー年齢層特徴対応小児成長に合わせて設定変更が必要定期点検・交換計画学童期運動・体育は制限付きで可能医師の許可と学校連携青年期進学・就職時の説明が必要医療情報カードを携帯先天性心疾患や先天的徐脈で小児期にペースメーカーを装着するケースも増えています。成長に伴いリードの長さや設定を見直す必要があるため、長期的なフォロー体制が重要です。学校生活では激しい接触スポーツを避ければ、多くの活動が可能です。教師や保護者が「ペースメーカー手帳」を理解しておくことで、緊急時にも迅速な対応が取れます。出典:日本小児循環器学会「小児ペースメーカー治療ガイドライン」高齢者・在宅療養でのサポートと訪問看護の役割サービス内容訪問看護血圧・脈拍測定、創部観察、服薬管理訪問リハビリ運動量調整・体力維持支援医師連携状態変化を報告・受診調整高齢の方では通院が難しい場合も多く、訪問看護と訪問リハビリが安心の支えになります。看護師が定期的に訪問し、脈拍や創部の異常を確認。異常があれば医師に即時連絡します。リハビリスタッフは、転倒予防や体力維持の運動を支援し、生活の自立を助けます。医療と介護が連携することで、在宅でも安全にペースメーカー管理が継続できる体制が整います。出典:厚生労働省「訪問看護ステーション運営基準(改定版)」8. ペースメーカーに関するよくあるトラブルと対処法めまい・動悸が出たときの対応手順状況対応方法軽いめまい座って休み、深呼吸。続く場合は医師へ連絡。強い動悸・胸痛すぐに救急要請(119番)。意識消失周囲の人が緊急通報。めまいや動悸を感じたら、まず安全な姿勢で安静にすることが大切です。症状が数分以内に治まれば経過観察で問題ありませんが、頻発する場合はペースメーカー作動異常の可能性もあります。強い胸痛や失神を伴う場合は、迷わず救急要請してください。常に「ペースメーカー手帳」を携帯し、救急隊員に提示できるようにしておくと対応がスムーズです。出典:日本不整脈心電学会「患者向け安全マニュアル」警告音・アラートが鳴ったときの確認方法状況対処法電子音が鳴る電池残量や異常作動のサイン。記録して通院時に報告。頻発する機器チェックが必要。遠隔送信で確認可能。不明な音家電・電波干渉の可能性も。最新のペースメーカーは警告音や振動で異常を知らせます。突然「ピッ」という音がしても慌てず、時刻・回数・体調をメモし、次回外来や電話で医師に伝えましょう。遠隔モニタリングを利用していれば、データ送信により医療機関が状況を把握できます。自分で装置を操作する必要はなく、独自判断で磁気を当てたり触れたりしないことが大切です。出典:Medtronic「患者用安全ガイド」災害・旅行・引っ越しのときに気をつけること状況注意点災害時手帳・医療情報を常に携帯。避難先で申告。旅行時現地の医療機関連絡先を確認。引っ越し時新しい病院へデータを引き継ぎ。飛行機金属探知機では立ち止まらない。手帳提示。災害や旅行中のトラブルに備えて、ペースメーカー手帳と緊急連絡先カードを常に携帯しましょう。旅行前には、訪問先の医療機関を調べておくと安心です。引っ越しの際は、主治医から新しい病院へデータを転送してもらいましょう。空港では金属探知機で反応することがあるため、立ち止まらず通過するか手動検査を依頼します。出典:国土交通省「植込み型医療機器利用者の空港検査ガイド」9. 心のケアと生活の質(QOL)を高める工夫不安・ストレスを減らすための相談先と支援支援先内容医療機関医師・看護師による心理相談ピアサポート同じ経験を持つ患者同士の交流行政相談保健センター・地域包括支援センター家族支援家族の理解と協力が安心を支えるペースメーカーを装着すると、「機械に頼る生活」への不安を感じる人が少なくありません。これは自然な感情であり、医療スタッフに相談することが第一歩です。また、患者会やピアサポートグループでは、経験を共有することで孤立感がやわらぎます。家族が装置の仕組みや注意点を理解しておくと、日常生活も安心です。出典:厚生労働省「患者・家族支援ガイドライン」リハビリや運動で体力と自信を取り戻すリハビリ内容効果有酸素運動心肺機能の維持筋トレ姿勢改善・転倒防止ストレッチ柔軟性と血流促進専門指導医師・理学療法士が監修ペースメーカーを入れた後も、適切な運動は体に良い影響を与えます。心臓リハビリ専門施設や訪問リハビリでは、医師と理学療法士が個別プログラムを作成します。無理のない範囲で歩行や体操を行うことで、心肺機能と自信の回復につながります。続けることで体調も安定し、再入院のリスクを下げる効果があります。出典:日本心臓リハビリテーション学会「運動療法の標準指針」医療費助成・障害者手帳などの公的支援制度制度名対象内容高額療養費制度医療費が高額な場合自己負担分を払い戻し身体障害者手帳重症例税控除・交通費補助介護保険高齢者・要支援者訪問サービス利用可ペースメーカー装着者は、医療費や生活支援の制度を活用できます。代表的な「高額療養費制度」では、上限額を超えた医療費が払い戻されます。また、心疾患の程度により身体障害者手帳(4〜6級)が交付される場合もあります。介護保険を利用すれば訪問看護やリハビリを低負担で継続可能です。出典:厚生労働省「医療費助成制度の概要」10. 在宅療養と訪問サービスの活用在宅医療を支える「訪問看護」とはサービス内容詳細健康状態の観察血圧・脈拍・体温・体重・浮腫の確認医療的ケア傷の処置・吸引・服薬管理など緊急対応24時間連絡体制・夜間訪問可能医師との連携主治医への報告・受診調整訪問看護は、退院後や慢性疾患を持つ方が自宅で安全に生活できるよう支える医療サービスです。看護師が定期的に訪問し、体調観察・服薬管理・創部ケアを行い、異常があれば即時に医師へ報告します。心臓ペースメーカー装着者では、脈拍や息切れ、むくみなどの変化を早期に発見することがとても重要です。24時間の連絡体制により、夜間や休日でも緊急時に看護師が対応できるため、在宅療養中の不安を大きく減らせます。出典:厚生労働省「訪問看護ステーション運営基準(2023)」心臓ケアに役立つ「訪問リハビリ」の内容と効果サービス内容詳細評価心肺機能・体力・生活動作の確認運動療法歩行練習・ストレッチ・筋トレなど環境調整手すり・段差・動線の工夫家族指導介助方法や再発予防の助言訪問リハビリは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのリハスタッフが自宅を訪問し、体力維持・呼吸機能改善・日常生活動作(ADL)のサポートを行うサービスです。心臓疾患を持つ方では、過度な運動を避けながらも息切れを軽減し、心臓に負担をかけない体づくりを目指します。住環境の改善(手すり・家具配置など)や再発予防のアドバイスも行い、「自分のペースで生活したい」という希望を支える大切なリハビリです。出典:日本心臓リハビリテーション学会「在宅心リハ実施指針(2022)」町田市在住の方へ:ピース訪問看護ステーションのご案内スタッフ体制職種人数主な対応内容医療スタッフ看護師9名医療的ケア・症状観察・夜間対応も可能リハビリスタッフ理学療法士・作業療法士・言語聴覚士14名心臓疾患や体調に合わせた在宅支援ケアマネジャー介護支援専門員7名医療と介護をつなぐ総合支援特徴詳細夜間対応24時間の緊急対応で急な体調変化にも迅速対応リハビリ専門職の充実心臓疾患・体調に合わせた個別支援が可能ケアマネ連携医療・介護・リハビリを包括的に支援循環器対応血圧・体重・むくみ・息切れを継続的に観察地域連携町田市内クリニックと密に連携し継続ケアを実施ピース訪問看護ステーションは、町田市および近隣地域にお住まいの方へ、心臓病・高血圧・不整脈などの循環器疾患を中心に在宅支援を行う専門チームです。看護師が定期的に訪問し、血圧・体重・脈拍・むくみを丁寧にチェック。変化があれば主治医に即報告し、必要に応じて受診手配や医療連絡を調整します。また理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が、息切れの軽減や体力維持を目的とした個別プログラムを実施。住宅内の動線や手すり位置など環境面にも配慮し、「自宅で安心して心臓ケアを続けられる環境」を整えます。24時間の緊急対応と地域医療連携で、急変時にも迅速対応が可能です。👉 ぜひ町田市およびその近隣にお住まいの方は、ピース訪問看護ステーション にご相談ください。出典:ピース訪問看護ステーション公式案内/厚生労働省「訪問看護制度の概要(2023)」11. よくある質問Q&A(5つの疑問に回答)Q1. スマホやIHは使えないの?機器使用時の注意安全距離スマートフォン装着部位から離す15cm以上離すIHコンロ胸部を近づけない機器正面を避ける電子レンジ問題なし通常使用可ほとんどの家電は、ペースメーカーに悪影響を与えません。ただし、強い磁場を発するスマートフォンやIH調理器は、胸部に近づけすぎないことが大切です。スマホは胸ポケットに入れず、反対側の耳で通話し、装着部位から15cm以上離して使います。IHコンロは前傾姿勢で長時間使わないようにしましょう。電子レンジやドライヤー、掃除機は通常通り使用できます。出典:日本不整脈心電学会「電磁波とペースメーカー」Q2. MRI検査は受けられる?機種可否注意点MRI対応機種(MR Conditional)条件下で可植込み前後に設定変更が必要非対応機種原則不可強磁場による誤作動リスクMRI対応ペースメーカーでは、病院側で機器設定を変更すればMRI検査が可能です。非対応機種では磁場の影響で誤作動するおそれがあるため避けます。検査を受ける際は必ず「ペースメーカー手帳」を提示し、医療機関に装着情報を伝えましょう。MRI対応機種であっても、撮影条件が整った施設でのみ実施されます。出典:厚生労働省「医療機器の安全使用指針(2022)」Q3. 運転やスポーツはしてもいいの?活動可否条件自動車運転原則可医師が制限不要と判断した場合軽い運動可医師指導のもとで徐々に再開激しいスポーツ原則不可接触・衝撃で機器損傷の恐れペースメーカーやCRT-P装着者は、失神や脈の乱れがなければ運転制限はありません。ただし、ICDやCRT-D(除細動器併用型)では別基準があり、一定期間の運転制限が必要です。ウォーキングや軽いストレッチなどの運動は、心臓リハビリ指導に沿って実施すれば安全です。一方、ラグビーや格闘技など、胸部に衝撃の加わるスポーツは避けましょう。出典:日本不整脈心電学会「運転・運動ガイドライン(2021)」Q4. 家電・空港ゲート・電子レンジなどは大丈夫?機器注意点電子レンジ問題なし掃除機・洗濯機通常使用可空港ゲート立ち止まらず通過ハンドワンド検査胸に当て続けないよう依頼ペースメーカーは電磁波に強く設計されており、日常家電は安心して使えます。空港などの金属探知機は、通過時に立ち止まらなければ問題ありません。検査員が持つハンドワンドは、胸部に長時間当てないようお願いすると安全です。出張や旅行では、ペースメーカー手帳を持参し、万一のトラブル時にも医療情報を提示できるようにしておきましょう。出典:国土交通省「植込み型医療機器利用者への空港検査案内」Q5. 在宅療養で気をつけることは?チェック項目内容体調変化息切れ・むくみ・体重増加を記録機器異常警告音・違和感を感じたら早めに相談創部管理赤み・痛み・腫れを確認訪問支援看護・リハビリ・医師連携を活用在宅生活では、体調の小さな変化を見逃さないことが大切です。息切れやむくみ、体重の増加は心不全悪化のサインとなることがあります。また、警告音が鳴った場合や違和感を覚えたときは、遠隔モニタリングや医療機関へ早めの連絡を。訪問看護や訪問リハビリを利用すれば、定期的な観察・測定・相談ができ、自宅でも安心して療養が続けられます。出典:厚生労働省「訪問看護制度の概要」まとめ心臓ペースメーカーは、脈拍を安定させることで、めまい・失神・息切れの症状を改善し、安心して日常生活を送るための頼もしい医療機器です。技術の進歩により、MRI対応や遠隔モニタリングなど、生活を制限しない時代になっています。定期検診と適切な管理を行えば、仕事や旅行、運動も十分可能です。そして在宅療養を選ぶ方にとって、訪問看護・訪問リハビリは心強い味方です。医療・介護・リハビリが連携することで、「自宅でも安心して心臓ケアを続けられる」環境が整います。👉 ぜひ町田市およびその近隣にお住まいの方は、ピース訪問看護ステーション にご相談ください。循環器ケアに強い看護師・リハスタッフが、24時間体制であなたの生活を支えます。関連記事心臓がバクバクする原因と対処法、動悸・不整脈・ストレス・訪問看護まで徹底解説『心臓に水が溜まる』は何のサイン?心不全・胸水・心嚢水の違いと受診目安心臓が痛い?放置は危険!胸の痛みの原因・症状別チェックと受診の目安参考文献一覧出典:厚生労働省「訪問看護ステーション運営基準」https://www.mhlw.go.jp/content/000661085.pdf出典:厚生労働省「医療機器の遠隔モニタリング指針」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000193863.html出典:厚生労働省「訪問看護制度の概要」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000197226.html出典:厚生労働省「植込み型医療機器安全管理指針」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000160324.pdf出典:厚生労働省「医療費助成制度の概要」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html出典:日本循環器学会「不整脈診療指針(2021)」https://www.j-circ.or.jp/出典:日本循環器学会「非薬物療法ガイドライン(2021)」https://www.j-circ.or.jp/出典:日本不整脈心電学会「ペースメーカー装着者の生活指導」https://new.jhrs.or.jp/出典:日本不整脈心電学会「電磁波とペースメーカー」https://new.jhrs.or.jp/public/pacemakers/出典:日本不整脈心電学会「患者向け安全マニュアル」https://new.jhrs.or.jp/public/manual/出典:日本不整脈心電学会「運転・運動ガイドライン(2021)」https://new.jhrs.or.jp/guideline/出典:日本心臓リハビリテーション学会「運動療法標準指針」https://www.jacr.jp/出典:日本心臓リハビリテーション学会「在宅心リハ実施指針(2022)」https://www.jacr.jp/出典:日本産科婦人科学会「心疾患合併妊娠の管理指針(2023)」https://www.jsog.or.jp/出典:日本小児循環器学会「小児ペースメーカー治療ガイドライン」https://www.jspccs.jp/出典:国土交通省「植込み型医療機器利用者への空港検査案内」https://www.mlit.go.jp/出典:Medtronic社「Micra AV2 製品概要(2024)」https://www.medtronic.com/jp-ja/patients/products.html出典:Medtronic社「患者用安全ガイド」https://www.medtronic.com/jp-ja/patients/pacemakers.html本記事の執筆者・監修者プロフィール【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理に長け、地域医療連携や在宅看取り支援にも積極的に取り組んでいる。