「言葉が出ないなら、一人暮らしは難しいでしょう」。脳卒中のあとに失語症が残った方が、退院前カンファレンスでそう言われることがあります。ご本人は自宅に帰りたい。判断力もはっきりしている。それでも、電話に出られない、買い物で伝えられない、救急車を呼べない。この三つを理由に施設入所や同居をすすめられる場面を、在宅の現場で何度も見てきました。ご本人からは「帰りたい」の一言が出てこず、ご家族からは「私が仕事を辞めるしかないのか」とご相談を受けます。行き詰まりの原因は、話す力よりも備えの不足です。実際、一人暮らしを続けている方は珍しくありません。分かれ目は言葉が戻った量よりも、言葉を使わずに用が足りる仕組みをどれだけ先に用意してあるかです。指差しで済む買い物、電話の代わりの連絡手段、押すだけで助けが呼べる機械。そろえておけば、話せないことは暮らせないことと同じにはなりません。この記事では、買い物・電話・受診・緊急時の四場面に分けて工夫をまとめます。身体障害者手帳や意思疎通支援者派遣事業など、知らないまま終わりやすい制度も整理しました。町田市・相模原市の現場で機能している方法が中心です。この記事でわかること失語症があっても一人暮らしを続けられる人と、続けにくくなる人の分かれ目買い物・電話・受診・緊急時の四場面ごとの、言葉に頼らない具体的な備え脳卒中の再発を疑って救急車を呼ぶ目安と、緊急時情報シートの作り方失語症で取れる身体障害者手帳の等級と、意思疎通支援者派遣事業などの制度訪問看護・訪問リハビリの使い方と、離れて暮らす家族にできる準備失語症でも一人暮らしは続けられる。鍵は「言葉に頼らない備え」を先に用意すること失語症があっても一人暮らしは続けられます。決め手になるのは言葉の回復量ではなく、買い物・電話・受診・緊急時という四つの場面を言葉なしで通過できる備えを、退院前から用意してあるかどうかです。失語症は「言葉の通り道」の障害であって、知能が落ちたわけではありません失語症は、脳卒中などで大脳の言語をつかさどる領域が傷つき、話す・聞く・読む・書くの四つが同時に障害された状態です。リハビリの標準的な考え方は日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕」にまとまっています。タイプ話す聞いて理解する生活での現れ方運動性失語(ブローカ失語)出にくい・とぎれる比較的保たれる用件は分かるが返事に時間がかかる感覚性失語(ウェルニッケ失語)流暢だが内容がずれる難しい会話が噛み合わず本人も気づきにくい全失語ほとんど出ない難しい表情・身振り・絵が主な手段になる前提を一つ。失語症は言葉という道具が使いにくくなった状態であり、知的能力が落ちたわけではありません。銀行の残高も薬の飲み方も分かっている。ただ、外へ出す経路が細くなっています。取り違えると周囲は子ども扱いを始め、本人は説明をあきらめます。困る場面はタイプで違うため、どれに近いか言語聴覚士に確認を。日々の会話での待ち方は失語症の家族との接し方|脳卒中で言葉が出なくても「伝わる」会話の工夫とコツ、タイプ別の関わり方は失語症の家族とのコミュニケーション|タイプ別の接し方と訪問リハビリの活用へ。一人暮らしが揺らぐのは「話す力」ではなく「言葉で交渉する場面」自宅の中だけを見れば、生活はかなり自立しています。着替え、調理、洗濯、テレビ。ここで言葉は要りません。困難が集中するのは、家の外の誰かとやりとりする瞬間です。場面困りごとの正体備えの方向買い物店員の質問に即答できないやりとりの回数そのものを減らす電話音声だけ・時間制限・手がかりなし文字と代理に置き換える受診症状を言葉で説明できない書面と同行者を先に用意する緊急時119番で状況を伝えられない押すだけ・登録済みの通報手段必要なのはリハビリだけではありません。訓練と並行して、言葉を使わない代替ルートも作っておきます。回復を待つあいだにも生活は毎日進みます。町田市内で失語症のある方を訪問していると、退院後2か月ほどで外出が減る方が出てきます。理由を探ると、たいてい買い物か銀行で「うまく伝わらなかった一度の体験」がきっかけです。退院前に決めておくと、あとが格段に楽になる五つのこと退院してから手配すると、制度の申請が間に合いません。入院中にできることは入院中に済ませてください。決めること相談する相手目安の時期身体障害者手帳を申請するか主治医・医療ソーシャルワーカー退院1〜2か月前介護保険の要介護認定を受けるか医療ソーシャルワーカー・市区町村退院1〜2か月前訪問看護・訪問リハビリを入れるか主治医・ケアマネジャー退院1か月前緊急時に誰へ連絡するか家族・親族・大家・管理人退院前カンファレンス買い物と受診の同行を誰に頼むか家族・ケアマネジャー・支援者退院前カンファレンス順番にも意味があります。手帳と要介護認定は交付まで1か月前後かかるため、先に動きます。遅れると、退院直後のいちばん不安な時期に空白ができます。退院前カンファレンスには、可能ならケアマネジャーと訪問看護師にも入ってもらいます。どんな聞き方なら答えられるかを、その場で在宅チームへ引き継げます。身体の動きの側面は片麻痺でも自宅で暮らし続けるための生活の工夫と訪問リハビリの活用もどうぞ。買い物の工夫|指差しカード・レジでの伝え方・ネット注文の活用失語症のある方の買い物は、店員とのやりとりの回数を減らす設計にすると一気に楽になります。話す訓練の場にせず、必要な物が手に入る作業として組み直してください。買い物メモは文字より写真。「見せれば伝わる」形に作り替える文字が読みにくいタイプでは、手書きのメモが役に立ちません。棚の前で見ても何を買うのか結びつかない、という相談は少なくありません。方式作り方向いている方写真メモ冷蔵庫の中身や商品パッケージをスマホで撮る読み書きが難しい方実物パッケージ持参空き箱・ラベルをそのまま持って行く銘柄が決まっている方絵カード品目のイラストを並べたシート写真の操作が難しい方すぐ効くのは写真メモです。使い終わった容器を捨てる前に撮っておき、店で見比べる。見せれば伝わる形にすれば、店員に場所を尋ねるときも画面を差し出すだけで済みます。相模原市の集合住宅に伺っているご家庭では、空き容器を小袋にためておき、週末の買い物にそのまま持って出る習慣が定着していました。レジでの関門を、先につぶしておくレジは失語症にとって難所です。急かされる、質問が続く、後ろに人が並ぶ。重なると、言えるはずの言葉も出ません。場面起きやすいこと先回りの備えポイントカードの確認質問が聞き取れず固まるカードを最初から出しておく支払い小銭を数えられず時間がかかる電子マネー・交通系ICに統一する説明が必要なとき説明できず購入をあきらめる支援カードを財布に入れておく支援カードは、名刺サイズの紙に「脳卒中の後遺症で言葉が出にくいです。ゆっくり話してください。指差しで答えます」と書いたもの。作るのは10分です。見せると店員の話す速度が落ち、はい・いいえで答えられる聞き方に変わります。支払いは現金をやめ、声を出さずに終わる方法へ。混む時間帯を外すのも手です。ネットスーパー・移動販売・買い物同行の使い分け外へ買いに行くことだけが買い物ではありません。三つを組み合わせれば、悪天候でも体調が悪くても食料は途切れません。手段向いている状況注意する点ネットスーパー重い物・まとめ買い初回の登録と決済設定に支援が要る移動販売近所まで来てほしい・少量曜日と時間が固定されている買い物同行(介護保険等)自分で品物を選びたい対象条件と回数に制限があるネットスーパーは注文画面が写真中心で、指差し操作に近い感覚で使えます。ただし初回のアカウント作成とカード登録は文字入力の連続なので、家族か支援者と済ませてください。一度作れば、あとは履歴をなぞるだけです。移動販売は【買い物が大変な高齢者に】町田市の移動販売サービスで暮らしがラクにへ。買い物同行の条件は介護保険で買い物同行は使える?対象条件と注意点を徹底解説を読み、ケアマネジャーへ相談を。電話が使えないときの代替手段|メール・FAX・家族経由・自治体の連絡手段電話は失語症にとって最も条件の悪い手段です。無理に電話で頑張るのをやめ、文字・画像・代理の三つに置き換えることで、外との連絡は保てます。なぜ電話だけが、対面よりはるかに難しいのか「対面なら話せるのに電話は無理」には理由があります。ご家族が知っておくと、本人を責めずに済みます。電話の特徴失語症への影響音声だけで手がかりがない表情・口の動き・身振りが使えない相手のペースで進む言葉を探す時間が取れない沈黙が許されない焦りでさらに言葉が出なくなる対面なら相手の表情から意味を補えますが、電話にその補助線はありません。会社名や日時などの固有名詞は最も出にくく、聞き取れても書き取れない。だから電話は最後の手段に回します。ただし放置すると、検査日の変更など生活に直結する連絡が届きません。留守番電話を設定し、内容を誰が確認するかまで決めてください。メール・LINE・FAXの使い分けと、定型文の準備文字がほとんど書けない方でも、用意した定型文を選んで送る形なら連絡は成立します。手段主な相手準備しておくことLINE家族・訪問看護師・ケアマネジャーよく使う文章を単語登録しておくスタンプ・写真家族「体調悪い」「来て」など意味を決めておくFAX役所・病院・薬局用件別の記入済み用紙を作っておくLINEは単語登録が使えます。「たいちょう」と打つと「体調が悪いので相談したいです」と出るよう設定しておくと便利です。薬のシートや体温計の表示を撮って送れば、訪問看護師は状況を判断できます。FAXは古い手段に見えて、役所や薬局では現役です。用件のチェック欄を印字した用紙を数枚用意し、丸を付けて送れば、書字が難しくても意思表示ができます。「電話の代わり」を頼む相手を、用件ごとに決めておくすべてを一人の家族に集中させると、その人が不在の日に生活が止まります。用件で分けます。用件第一の連絡先代わりの手段体調の相談訪問看護ステーションLINE・写真送信薬の相談かかりつけ薬局FAX・訪問時に相談サービスの調整ケアマネジャー家族経由役所の手続き障害福祉課・高齢者支援課窓口へ同行してもらう24時間対応の訪問看護ステーションなら、夜間の連絡先も確保できます。ご本人がかけられなくても、家族が伝えれば対応は始まります。町田市・相模原市で実感しているのは、この一覧を紙一枚にまとめて冷蔵庫に貼っているご家庭ほど、緊急時の初動が早いことです。受診をスムーズにする準備|問診票の事前記入・お薬手帳・代弁を頼む相手を決めておく受診は準備でほとんど決まります。自宅で作った書面を出すだけの形にしておけば、失語症があっても受診は一人で成立します。問診票は自宅で書く。受付では「出すだけ」にする初診でも再診でも、受付で渡される用紙を短時間で書くのは難しい。書く場所を自宅に移してください。受診セットの中身内容記入済みの症状メモいつから・どこが・どんなふうに支援カード失語症であることと配慮のお願いお薬手帳服薬中の薬すべて質問カード医師に聞きたいことを箇条書き症状メモは、体の絵に丸を付けて痛む場所を示し、時期を「〇月〇日から」と数字で書けば、言葉が出なくても伝わります。受付で出すだけにしておけば、待合室での焦りも減ります。医師の説明は紙に書いてもらうか、了承を得て録音を。あとで家族や訪問看護師と確認できます。服薬と体調の記録を、書けなくても残せる形にする診察で必ず聞かれるのが「薬は飲めていますか」「変わったことはありましたか」です。答えられないと処方の判断材料が減ります。記録方法やり方利点一包化+日付印字薬局で朝昼夕ごとにまとめてもらう飲み忘れが目で分かる写真記録血圧計・体温計の表示を撮る数字を書かずに残せる丸印だけの日誌良い日に丸、悪い日にバツ書字が難しくても続く一包化は薬局に依頼できます。袋に日付と服用時点が印字され、飲んだかどうかを本人も訪問者も確認できます。血圧手帳に数字を書けない場合は、表示を撮るだけで十分です。写真は訪問看護師が記録へ転記し、受診時に医師へ見せられる形にします。丸とバツだけの日誌でも、1か月分並べば体調の波が見えます。代弁を誰に頼むか、先に決めておく診察室で説明を聞き、内容を持ち帰るところまでが受診です。ここは一人では抱えきれません。代弁者頼めること依頼の仕方家族全般の説明の受け取り受診日を共有しておくケアマネジャーサービス調整に関わる内容担当者会議で依頼する訪問看護師医療的な内容・薬の変更訪問看護指示書の範囲で相談意思疎通支援者通院同行と会話の橋渡し都県の派遣事業に事前登録家族が遠方でも、説明用紙を写真に撮って送れば共有できます。同じフォルダにためれば経過も追えます。意思疎通支援者は、あとで述べる制度で派遣を依頼できます。一人暮らしを続けさせてよいのか、決めきれずにいるご家族へ。ピース訪問看護ステーションでは、受診前の症状整理や医師に伝える内容の整理からお手伝いします。町田市・相模原市で在宅の体制を組み直したい方は、お問い合わせからご相談ください。緊急時に助けを呼ぶ備え|緊急通報システム・近隣との関係づくり・意思表示カード失語症のある方の緊急時の備えは、声で119番できない前提で組み立てます。再発を疑うサインを周囲と共有し、押すだけの通報機器と事前登録した通報手段を二本立てでそろえます。再発を疑うサインは「いつもの本人と比べて」で判断する脳卒中は再発の多い病気です。普段から言葉が出にくいため、再発のサインが「いつものこと」に紛れやすくなります。突然現れたサイン具体的な見え方とる行動顔のゆがみ片側の口角が下がるすぐ119番腕の脱力両腕を上げると片方が落ちるすぐ119番言葉の急な変化いつもより明らかに話せないすぐ119番意識がはっきりしない反応が鈍い・強い眠気すぐ119番突然の激しい頭痛・嘔吐経験のない痛み方すぐ119番片側のしびれ・視野が欠ける片目が見えにくいすぐ119番顔・腕・言葉の三つは、救急の場でも最初に確認される脳卒中の初期サインです。片側の麻痺やしびれ、片目が見えない、視野が半分欠けるのも同じ扱いです(出典:日本脳卒中協会「脳卒中の主な症状」)。ひとつでも突然現れたら、様子を見ずにすぐ119番を。軸は突然かどうか。両手の指先が徐々にしびれる場合は当てはまりません。失語症では「言葉」の項目が普段から当てはまって見えるため、判断の基準は普段との差です。家族・近隣・訪問看護師の間で、どこまで話せるのかを共有しておいてください。シートに「普段はうなずきと単語で答えられる」と書いておけば、救急隊も変化を判断できます。迷う症状は、かかりつけ医か24時間対応の訪問看護ステーションへ。緊急通報システムとNET119を、両方そろえておく自治体の緊急通報システムと消防のNET119は目的が違います。両方登録しておくと死角が減ります。手段対象申込先高齢者救急通報システム65歳以上の一人暮らし等市区町村の高齢者担当課NET119緊急通報システム音声による119番が困難な聴覚・言語機能障害者管轄の消防本部ICT見守り(電球型など)一人暮らしの高齢者市区町村の見守り事業押すだけで通報できる機器は、失語症のある一人暮らしの最優先の備えです。町田市の制度は高齢者の安心を支える「町田市の救急通報システム」とは?しくみ・費用・申請方法を解説にまとめました。NET119は、音声による119番通報が困難な聴覚・言語機能障害のある方が、スマホから救急か火事かと位置情報を送り、以後はチャットで伝える仕組みです。2025年4月1日時点で全国659の消防本部が導入しています(出典:総務省消防庁「NET119緊急通報システム」)。いずれも事前登録が必要です。倒れてからでは間に合いません。町田市には通信機能付き電球のICT見守り事業もあり、65歳以上の一人暮らしで救急通報システム未利用の方が対象(出典:町田市「ICT機器を活用した高齢者見守り事業」)。カメラを使う方法は見守りカメラと訪問看護連携、家族が異常を発見して活かせる仕組みへ。玄関と冷蔵庫に置く「緊急時情報シート」救急隊が到着したとき、本人が説明できないと搬送先の判断が遅れます。情報は紙で置きます。記載する項目書く内容氏名・生年月日・血液型保険証の記載どおり失語症であること「言葉が出にくい。うなずきで答えられる」普段の会話レベル「単語なら出る」「指差しで答える」など既往歴脳梗塞・高血圧・糖尿病など服用中の薬お薬手帳のコピーを添付かかりつけ医・緊急連絡先病院名・診療科と家族2名・ケアマネジャー置き場所は玄関ドアの内側と冷蔵庫の扉が定番。失語症であることは最初の行に大きく書いてください。これがないと救急隊は意識障害を疑い、評価に時間をかけます。町田市内では、シートを作ったまま更新せず薬が半年前のまま、というご家庭を見かけます。更新確認は訪問看護側にも手間が生じるため、ピースでは処方が変わった訪問日に差し替えます。離れて暮らすご家族は、シートの写真を送ってもらう約束をしておくと、更新漏れに気づけます。近隣・管理人・配達員という「毎日の目」機械の備えだけでは、倒れて動けない状況に気づけません。人の目を組み合わせます。担い手頼めることお願いの仕方隣室・向かいの住民郵便物がたまっていたら連絡あいさつと連絡先の交換マンション管理人日中の異変の気づき家族から事情を説明しておく新聞・宅配の配達員未回収が続いたら通報販売店に見守り協力を依頼地域包括支援センター見守りネットワークへの登録担当区域のセンターへ相談近隣へお願いするときは、家族から失語症の説明を一度しておくと関係が続きます。「返事はゆっくりですが、理解はしています」と伝えるだけで誤解が防げます。相模原市に伺っているご家庭では、階下の方が毎朝カーテンの開閉を確認してくださっていて、それが最も早い異変の察知手段になっていました。使える制度を知っておく|身体障害者手帳と失語症者向け意思疎通支援者派遣事業失語症は身体障害者手帳の対象になり、外出や手続きに同行する意思疎通支援者の派遣も公的な事業として用意されています。身体障害者手帳(音声・言語機能障害)の等級と申請の流れ失語症は「音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害」として認定の対象になります。区分状態のめやす等級機能の喪失意思疎通がほぼ成立しない3級機能の著しい障害日常会話に大きな支障がある4級他の障害との重複肢体不自由等と合わせて判定総合等級で上位になる場合あり認定基準や様式は厚生労働省「身体障害者手帳」に公表されており、実務上は3級または4級が多くなります。申請は市区町村の障害福祉担当窓口で様式を受け取り、指定医の診断書を添えます。申請できるのは症状が固定してから。取得すると医療費の助成や税の控除、交通機関の割引につながります。高次脳機能障害を併せ持つ場合は高次脳機能障害と障害者手帳:申請方法と支援の実際へ。失語症者向け意思疎通支援者派遣事業とは言葉のやりとりを橋渡しする支援者の派遣が、都道府県の事業として実施されています。根拠は障害者総合支援法の地域生活支援事業で、意思疎通支援を行う者の養成研修と派遣が位置づけられています(出典:厚生労働省「地域生活支援事業」)。地域事業名主な内容窓口東京都失語症者向け意思疎通支援派遣促進事業支援者が関わるサロンの設置など東京都言語聴覚士会神奈川県失語症者向け意思疎通支援者派遣事業通院・手続き・買い物・余暇の外出同行県障害福祉課・県言語聴覚士会その他の道府県名称は自治体により異なる養成研修と派遣を組み合わせて実施都道府県の障害福祉担当課神奈川県の事業は、県内在住で失語症により意思疎通が困難な方が対象です。通院や手続き、買い物などの外出に支援者が同行し、事前登録のうえ申請します(出典:神奈川県「失語症者向け意思疎通支援者派遣事業」)。東京都では、失語症のある方と支援者が少人数で会話を楽しむサロンの設置事業を実施しており、費用は無料、本人か代理の方が申し込めます(出典:東京都福祉局「失語症者向け意思疎通支援派遣促進事業」)。名称も内容も自治体ごとに違うため、都県の障害福祉担当課か言語聴覚士会へ。なお40歳以上65歳未満でも、介護保険の特定疾病に該当すれば要介護認定を受けて訪問看護を使えます。該当するかは市区町村の介護保険担当課へ確認を(出典:厚生労働省「介護・高齢者福祉」)。意思疎通支援など介護保険にない支援は、障害福祉の枠で使います(出典:厚生労働省「障害者福祉」)。訪問看護・訪問リハビリでできること|町田・相模原の現場から訪問看護は、失語症のある方の一人暮らしを、体調管理と外との橋渡しの両面から支えます。訪問看護師が一人暮らしの部屋で見ているところ言葉で「困っている」と言えない方の状態は、部屋の様子から読み取ります。観察するところ見えるサイン対応冷蔵庫の中買い物ができていない・食べていない買い物手段の見直し薬の残数飲み忘れ・重複服用一包化やカレンダーの導入郵便物未開封の督促・受診案内家族・ケアマネジャーへ連携血圧・体重再発リスクの上昇主治医への報告脳卒中のあとは再発予防が最大の課題です。血圧と服薬は毎回確認し、未開封の郵便物も見逃しません。介護保険の更新書類が放置されると、サービスが止まるからです。町田市内で「何か困っていることはありますか」と尋ねても、答えるのに時間がかかり「大丈夫」で終わります。だから質問より先に部屋を見ます。言語聴覚士(ST)のリハビリは、実際の生活場面で行う在宅での言語リハビリは机上の課題だけではありません。使う場所で使う言葉を練習します。訓練の内容具体例実用的なコミュニケーション買い物・電話・受診の場面を想定した練習代替手段の練習指差し・書字・スマホ操作の習得家族・支援者への指導伝わる聞き方・待ち方の共有嚥下機能の確認食事の形態と飲み込みの安全性在宅の強みは、使う場所で練習できることです。自宅の電話台の前で留守番電話の操作を覚える、近所の店の写真で買い物の手順を確認する。病院の訓練室では作れない状況です。看護師とSTが別の事業所だと、伝わる聞き方の共有に連絡ノートや月1回の情報交換が要り、反映が遅れます。ピースでは記録を同じステーション内で共有し、気づきをその週のうちにケアへ戻します。詳しくは訪問リハビリで受けられる言語聴覚士(ST)の嚥下・失語支援とは?へ。利用を始めるまでの流れ訪問看護は、主治医の指示があれば介護保険でも医療保険でも利用できます。手順やること相談先1要介護認定を申請する市区町村の介護保険担当課2ケアマネジャーを決める地域包括支援センター3主治医に指示書を依頼するかかりつけ医4契約と初回訪問訪問看護ステーション費用は、介護保険なら負担割合に応じた自己負担です。手帳があれば医療費助成の対象になることもあるため、市区町村の窓口で確認を。迷ったら、最初の一歩は緊急通報の登録です。申請結果を待たずに命に関わる穴をふさげます。次が支援カードの作成で、今日10分でできます。手帳や要介護認定は、その二つのあとで構いません。何から手をつければいいか分からない、というご家族へ。ピース訪問看護ステーションでは、体調の管理から受診や手続きの橋渡し、ご家族への関わり方の共有まで対応します。町田市・相模原市・多摩市を中心に訪問していますので、現状の整理だけでもお問い合わせください。よくある質問(FAQ)Q1. 失語症になっても一人暮らしはできますか。できます。判断力や生活動作が保たれていれば、失語症そのものは一人暮らしを妨げません。分かれ目は、四場面を言葉に頼らず通過できる備えの有無です。緊急通報の登録と支援カードから始めてください。Q2. 失語症の人が電話に出られないときはどうすればいいですか。留守番電話を設定し、家族や訪問看護師が定期的に内容を確認する運用にします。日常の連絡はLINEや写真送信に移し、役所や薬局は記入済みのFAX用紙で足ります。用件ごとの第一連絡先は紙に書いて冷蔵庫へ。Q3. 失語症でも使える緊急通報システムはありますか。あります。市区町村の高齢者救急通報システムはボタンを押すだけで受信センターにつながり、声が出せなくても通報できます。音声による119番が困難な方向けのNET119なら、救急か火事かを選びチャットで伝えられます。どちらも事前登録が要ります。Q4. 脳卒中の再発は、どんなときに救急車を呼べばいいですか。顔のゆがみ、片腕の脱力、言葉の急な変化のいずれかが突然現れたら、その場で119番してください。意識がはっきりしない、経験のない頭痛、片側のしびれや視野が欠けるのも同じで、突然現れたらその場で119番です。軸は、いつもと比べて急に変わったかです。Q5. 失語症者向け意思疎通支援者派遣事業とはどんな制度ですか。障害者総合支援法の地域生活支援事業として都道府県が実施する制度です。研修を修了した支援者が通院や手続き、買い物などの外出に同行し、会話を橋渡しします。神奈川県は事前登録のうえ派遣を申請、東京都はサロンを無料で使えます。Q6. 失語症は身体障害者手帳の対象になりますか、何級ですか。対象になります。「音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害」という区分で判定され、機能の喪失は3級、著しい障害は4級が目安です。肢体不自由を併せ持つ場合は総合的に判定されます。申請は市区町村の障害福祉担当窓口で、指定医の診断書が要ります。Q7. 失語症の人が病院を受診するときはどんな準備をすればいいですか。症状メモ、支援カード、お薬手帳、保険証類、質問カードの五点を封筒にまとめ、受付では出すだけにします。症状は体の絵に丸を付け、時期は数字で書けば言葉なしで伝わります。医師の説明は紙に書いてもらうか録音してください。Q8. 離れて暮らす家族は失語症の一人暮らしをどう支えればいいですか。毎日を直接支えるより、仕組みを作る側に回るのが現実的です。緊急通報とNET119の登録、ネットスーパーのアカウント作成、緊急時情報シートの更新、近隣へのあいさつ。この四つは離れていても準備できます。日々の見守りは訪問看護やICT見守りへ。まとめ失語症があっても一人暮らしは続けられます。決め手は言葉の回復度ではなく、買い物・電話・受診・緊急時の四つを言葉に頼らず通過できる備えが先にあるかどうかです。まず着手すべきは緊急通報の登録、次に支援カード。写真メモや電子マネー、留守番電話とLINEはそのあとで間に合います。再発を疑うサインの共有も、同じくらい早く打てる手です。身体障害者手帳と意思疎通支援者派遣事業は、外出と手続きを軽くします。一人で抱えず、訪問看護やケアマネジャー、地域包括支援センターに相談してください。ピース訪問看護ステーションにご相談くださいこんな方はぜひご相談ください:脳卒中のあとに失語症が残り、一人暮らしを続けられるか迷っている方離れて暮らす家族が言葉を発しにくく、緊急時の備えを整えたい方受診や役所の手続きで、伝わらずに困っている方ピース訪問看護ステーションができること:血圧・服薬・食事の確認による再発予防と、体調変化の早期発見受診前の症状整理、医師への申し送り、主治医やケアマネジャーとの連携言語聴覚士による在宅リハビリと、ご家族・支援者への関わり方の共有町田市・相模原市・多摩市など東京都南部を中心に対応しています。まずはお気軽にお問い合わせください。関連記事失語症の家族との接し方|脳卒中で言葉が出なくても「伝わる」会話の工夫とコツ失語症の家族とのコミュニケーション|タイプ別の接し方と訪問リハビリの活用訪問リハビリで受けられる言語聴覚士(ST)の嚥下・失語支援とは?片麻痺でも自宅で暮らし続けるための生活の工夫と訪問リハビリの活用高齢者の安心を支える「町田市の救急通報システム」とは?しくみ・費用・申請方法を解説参考文献一覧出典:日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕」https://www.jsts.gr.jp/stroke_guidelines/index.html2.出典:厚生労働省「身体障害者手帳」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/shougaishatechou/index.html3.出典:厚生労働省「地域生活支援事業」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/chiiki/index.html4.出典:厚生労働省「障害者福祉」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/index.html5.出典:厚生労働省「介護・高齢者福祉」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html6.出典:東京都福祉局「失語症者向け意思疎通支援派遣促進事業」https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/shougai/nichijo/shitugohakensokushin7.出典:神奈川県「失語症者向け意思疎通支援者派遣事業」https://www.pref.kanagawa.jp/docs/yv4/shien.html8.出典:総務省消防庁「NET119緊急通報システム」https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/kyukyumusen_kinkyutuhou/net119.html9.出典:町田市「ICT機器を活用した高齢者見守り事業」https://www.city.machida.tokyo.jp/iryo/old/shiminnokatae/seikatsukurashi/mimamori/20240401ict.html【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理、地域医療連携、在宅看取り支援に積極的に取り組んでいる。island-piece.jp 株式会社isLand|訪問看護・居宅介護支援・訪問介護|町田市