「台風が来るって聞いた日から、もう息が上がるんです」。町田市のご自宅に伺うと、9月の台風シーズンにこう話される方に何人も出会います。そしてその体験を「気のせい」と言われ、それきり誰にも相談できずにいる方が少なくありません。台風が近づく数日間、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の方の体には、気圧の低下だけでなく、気温と湿度の急変、活動量の低下、停電による吸入や酸素の中断が重なります。ひとつずつは小さくても、束になれば増悪(急な悪化)の引き金になります。東京都町田市・神奈川県相模原市で在宅療養の方に伺う訪問看護の視点から、低気圧や台風の日に息苦しさが強まる背景、当日の受診の判断、停電したときの在宅酸素の扱いを整理します。この記事でわかること台風接近でCOPDの息苦しさが悪化する仕組みと、気圧以外に重なる要因増悪のサインを息切れ・咳・痰の3つの軸で見分ける方法SpO2(血中酸素飽和度)の測り方と、数値の読み方低気圧の日の吸入薬の扱いと、台風3日前から通過後までの動き方停電で酸素濃縮器が止まる前提での在宅酸素(HOT)の準備リスト今日ひとつだけ動くなら、吸入薬の残量と携帯用酸素ボンベの本数を数えてください。台風が来てからでは処方も配送も間に合いません。台風が近づくとCOPDの息苦しさが強くなるのはなぜか台風が近づくとCOPDの息苦しさが強くなるのは、気圧の低下だけが原因ではなく、気温と湿度の急変、活動量の低下、感染や薬の中断が同じ時期に重なるからです。台風の前後に体が受け取る4つの変化変わるもの体に起きること起きやすい自覚気圧の低下呼吸の感覚が変わる吐き切れない感じ気温と湿度の急変気道が刺激される咳き込み、喘鳴外出の中止歩数と会話が減る痰が出しにくい不安と不眠呼吸が浅く速くなる息苦しさが増幅する表の4つは、単独なら大したことのない変化。問題は同じ2〜3日にまとめて来ることです。健康な方が「だるい」で済む負担も、予備力の少ないCOPDの方では息切れとして表に出ます。見落とされやすいのは3番目。雨で外出できず一日中座っていると、痰を押し出す咳の力が落ちます。通過の翌々日に痰が絡む方は、この経路をたどっています。不安も軽く見ないでください。呼吸が速く浅くなると吐き切れない空気が肺に残り、次に吸える量が減る。苦しいから速く吸い、速く吸うからもっと苦しい。COPDはこの循環に入りやすい病気です。「気圧のせい」で片づけると危ないものきっかけ具体的な場面台風時期に重なる理由気道の感染風邪、インフルエンザ季節の変わり目と重なる大気の刺激ほこり、片付け、煙通過後の掃除で舞い上がる薬の中断吸入忘れ、受診できない交通機関の停止心臓の負担むくみ、体重増加保存食の塩分と不活動日本呼吸器学会は、COPDの治療の目的を、症状をやわらげ、病気の進行や増悪(急な悪化)を防ぐことだと説明しています(出典:日本呼吸器学会「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」)。増悪を防ぐ視点で表を見ると、避けたい引き金は天気だけではありません。在宅で最も判断を誤りやすいのがここ。台風の前に苦しくなった経験が重なるほど、「今回も気圧だからそのうち戻る」と様子を見てしまいます。見分けの入口は痰です。色が黄色や緑に変わったら、天気のせいにしないでください。色が変わる、量が増える、粘りが強くなる。この3つが揃えば主治医へ連絡を。薬が途切れる経路も台風のときだけ現れます。受診日に電車が止まる、薬局まで歩けない。理由は違っても、吸入薬が切れた状態で数日を過ごす結果は同じです。台風の週に訪問看護へ入る連絡の中身時期よく聞く訴え背景にあったこと2〜3日前「なんとなく息が上がる」不安と睡眠不足前日から当日「じっとしていても苦しい」気温湿度の急変、吸入忘れ通過の翌日「痰が切れない」水分不足と不活動2〜3日後「熱っぽくて痰の色が違う」感染による増悪町田市・相模原市で訪問看護を提供する中で、台風が接近した週は電話が増えます。内容は日を追って変わり、はじめは漠然とした不安、通過後は痰と発熱の相談へ移ります。接近前に多いのは、呼吸そのものより「眠れなかった」という話。風の音で何度も目が覚め、朝から呼吸が浅い。要注意は通過後の2〜3日。安心したころに感染による増悪が表面化します。相模原市の集合住宅に伺うご家庭でも、通過翌日に窓を開けて掃除をしたあと咳が続き、3日目に発熱した例がありました。時期ごとの傾向が分かれば備え方も変わります。前日までは睡眠と室温、当日は無理をしない、通過後は痰と体温の観察。在宅での増悪サインは、COPDの在宅療養|家族ができる対応と増悪サインの早期発見を解説でも整理しています。気圧が下がるとCOPDが悪化する仕組み|気道収縮と自律神経の乱れ気圧が下がるとCOPDが悪化する仕組みは未解明ですが、もともと狭い気道、自律神経の乱れ、酸素の受け取りにくさの3つが重なると考えられています。すでに狭い気道に、吐き出す力が届きにくくなる状態吸うとき吐くとき動いたとき健康な肺十分入る吐き切れる呼吸を速めて対応COPDの肺入る量が少ない気道がつぶれ吐き残る吐き残りが増える台風前の肺同上刺激で吐きにくさが増す少しの動作で息切れCOPDは、タバコの煙などを長年吸い込むことで気道と肺胞が傷み、空気の通り道が狭くなる病気です。坂道や階段での息切れ、長引く咳と痰が、生活の中で最初に気づく変化になります。つらいのは吸うことより吐くこと。狭い気道は息を吐くときにつぶれやすく、肺に空気が残ります。残った分だけ次に吸える量が減り、呼吸を速めるほど苦しくなる逆転が起きます。台風の前後は、冷たい風、蒸し暑さ、ほこりが気道に加わる。もともとの狭さに一時的な狭さが上乗せされると考えると、実感に近いはずです。だから対処は「たくさん吸う」ではありません。口をすぼめてゆっくり吐く呼吸法が役に立ちます。呼吸法や運動療法を含む呼吸リハビリテーションは、COPD治療の柱のひとつです(出典:3学会合同「呼吸リハビリテーションに関するステートメント」)。自律神経の乱れが呼吸のリズムを速くする自律神経の傾き体の反応呼吸への影響交感神経が優位心拍が上がり緊張する浅く速い呼吸になる副交感神経が優位休息に向かう夜間や早朝の息苦しさ切り替えが乱れる眠れない、だるいリズムが安定しない気圧や気温が短時間で動くとき、体は血圧や体温を保とうと自律神経を働かせます。この調節が追いつかず、だるさや頭重感を訴える方がいます。ただし、ここから先は仮説の域を出ません。気圧の変化が呼吸のリズムをどう変えるかに、確立した結論はまだ出ていないからです。上の表も諸説のひとつと受け取ってください。「気圧が○ヘクトパスカル下がると気道が○%細くなる」と数字で断定する解説は、根拠を確かめるまで信じないことです。確かなのは訴えのほう。台風の夜に眠れず、明け方に起き上がって座り込む。呼吸が浅く速くなれば吐き残りが増え、息苦しさが強まる。この流れは在宅で何度も見てきました。気圧と高齢者の体調全般は、気圧の変化で高齢者の体調が崩れるのはなぜ?頭痛・だるさへの在宅ケアと訪問看護の活用にまとめています。気圧が下がると空気の酸素は薄くなるのかよくある疑問実際のところ受け止め方酸素が減るのか酸素の割合は変わらない取り込みやすさの問題高い山と同じか台風の低下は登山ほどではない健康な人は自覚しない気にしなくてよいか予備力が少ないと自覚する記録して相談する酸素を増やせばよいか自己判断は危険主治医の指示の範囲で空気中の酸素の割合は、平地でも台風のときも約21パーセントで変わりません。変わるのは気圧、つまり空気を押す力。押す力が弱まると、肺から血液へ酸素が移る効率がわずかに落ちます。この「わずか」は健康な方ならまず自覚しない程度。台風の気圧低下は、高い山に登ったときよりずっと小さいものです。一方、平地を歩くだけで息切れが出るCOPDの方に余裕はありません。余裕のないところへ小さな負担が乗れば、自覚としては大きくなります。ここで最も避けたいのが、酸素の流量を自分で上げることです。COPDでは二酸化炭素を吐き出しにくい方がいて、酸素を増やしすぎると呼吸の勢いが落ち、意識がぼんやりすることがあります。だからこそ増悪期の酸素療法や換気補助療法は、診療ガイドラインでも医療者が管理して行う治療として整理されています(出典:日本呼吸器学会「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2022〔第6版〕」)。台風の夜に苦しくなっても、つまみを回す前に主治医か訪問看護へ電話を。台風接近時に注意したいCOPD増悪のサインとSpO2の確認ポイント息切れ・咳・痰の3つの変化と、SpO2がいつもの値からどれだけ下がったかを見れば、台風接近時のCOPD増悪はかなり早い段階で見分けられます。増悪のサインを3つの軸で見る観察するところいつもの状態増悪を疑う変化息切れ平地を歩ける、会話が続く着替えやトイレで息が上がる痰透明から白、量は少なめ黄色や緑、量が増える、粘る咳朝に少し出る日中も夜間も止まらない全身熱はなく食べられる発熱、食欲低下、ぐったり意識はっきりしている朝の頭痛、眠気、手のふるえ見分けるコツは他人と比べないこと。COPDの方の「いつも」は一人ひとり違います。比べる相手は先週の自分。息切れは動作の種類で測ると分かりやすい。いつもは玄関まで歩けたのに今日は無理、着替えを一度で終えられたのに途中で座る。痰は色と量と粘りの3点で見ます。透明から白の痰が黄色や緑に変われば、気道の感染を疑う場面。意識の変化は最も見落とされます。朝の頭痛、日中の強い眠気、手のふるえは、二酸化炭素が体にたまったときに出ることがある症状です。本人には自覚しにくいもの。ご家族が「反応が鈍い」と感じたら、それも立派な観察結果。SpO2の測り方と、数値の読み方場面測るタイミング一緒に記録すること平常時の把握朝夕の同じ時刻、安静で脈拍、その日の体調動作の後直後と、休んで5分後どの動作で下がったか苦しいとき症状が出たときと休んだ後痰の色、体温、いつから台風の前後前日から通過翌日まで毎日睡眠、食事、吸入の実施SpO2は、指に挟むパルスオキシメーターで測る血中酸素飽和度です。台風の前に確かめたいのは自分の平常時の値。ここが分からないと、下がったかどうかを判断できません。COPDの方は、健康な方より低い値で安定していることが珍しくありません。一般の基準をそのまま当てはめると、不要な不安を抱えるか危険な低下を見逃します。主治医から「この値を下回ったら連絡」と指示が出ていれば、それが基準です。指示値がまだない方には、いつもの値より3から4ポイント低い状態が5分から10分休んでも戻らないなら連絡を、とお伝えしています。これは学会が定めた基準ではなく、ピース訪問看護ステーションが町田市・相模原市への訪問で受けてきた相談をもとに決めている目安です。主治医の指示が出たら、そちらを優先してください。測定にも落とし穴が。手が冷えている、指先の血の巡りが悪い、マニキュア、動きながら測る。いずれも実際より低く出ます。台風の日に「急に80台になった」と連絡を受けて伺うと、手が冷え切っていただけ、という場面を何度も経験しました。数値が保たれていても会話が続かないなら、救急を考えてください。受診と救急を分ける考え方状態対応連絡先会話が続かない、唇や爪が紫、意識がもうろうすぐに救急要請119番安静でも息切れ、指示値を下回る、発熱と痰の変化その日のうちに連絡主治医、訪問看護息切れは増えたが休めば戻る記録して翌日相談訪問看護、薬局いつもの範囲、SpO2も普段どおり経過を見る次回の訪問で報告迷ったら、迷ったこと自体を連絡してよい。台風の日は冠水や交通機関の停止で、あとから動こうとしても動けません。救急を呼ぶ分かれ目は、言葉が続くかどうか。ひと息で短い文章を言い切れないほど息が上がっているなら、待つ場面ではありません。一方、動いたあとに苦しく、座って休めば数分で戻るなら記録の場面。どの動作で、何分で、どこまで戻ったか。この記録が、次の受診で処方や酸素の設定を見直す材料になります。夜間や休日の連絡先は平時に決めます。主治医の夜間連絡先、訪問看護ステーション、酸素業者の緊急窓口。この3つを1枚の紙にまとめ、電話機のそばに貼ってください。停電するとスマートフォンの連絡先は見られません。紙に意味があります。低気圧の日に備える吸入薬の使い方と体調管理のコツ低気圧の日に備える基本は、吸入薬を天気で自己判断せずに続けること、苦しいときの薬の置き場所を決めること、そして台風の前に残量を切らさないことです。毎日の薬と、苦しいときの薬を分けて置く役割どんな薬か台風の前にすること毎日続ける長時間はたらく気管支拡張薬残量を数え、受診を前倒し苦しいとき短時間ではたらく気管支拡張薬定位置を決め、家族に伝える内服薬処方されている飲み薬残数の確認、手帳を撮影増悪時の指示別に渡されている薬使う条件を主治医に確認日本呼吸器学会は、COPDの治療は禁煙が基本で、気管支拡張薬の吸入薬が中心になると説明しています(出典:日本呼吸器学会「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」)。毎日続ける薬と苦しいときの薬は、役割がまったく違います。在宅で起きがちなのがこの2つの混同。天気が悪いから毎日の吸入を余分に使う、調子がよいから今日は飛ばす。どちらも避けてください。天気で増やしたり減らしたりせず、決まった時刻に続けます。置き場所も決めます。苦しいときの吸入薬は、寝室の枕元とリビングというように生活の動線上へ。停電した部屋で探し回る事態を避けるためです。残量は台風情報が出た時点で数えます。上陸まで数日あれば処方を前倒しできることもある。近づいてからの受診変更は電話がつながりにくくなります。吸入がきちんと入っているかを確かめる確認する項目よくあるつまずき直し方残量表示数字を見ずに使う使うたびに確認する吸う前いきなり吸い込むいったん息を吐いてから吸ったあとすぐ息を吐く数秒ゆっくり息を止める吸入後うがいを省く声がれを防ぐため必ず行う手技全体自己流のまま何年も過ぎる訪問や薬局で見てもらう吸入薬は飲み薬と違い「使ったのに効いていない」が起こります。薬が口や喉で止まり、気道の奥まで届いていないためです。訪問看護で実際に吸っていただくと、手技が崩れている方は少なくありません。同じ薬を何年も使う方ほど、最初に習った手順から少しずつずれます。確認は台風が来る前の落ち着いた日に。苦しくなってからでは、手技を練習する余裕がありません。薬局でも吸入指導を受けられます。次に薬を受け取るとき、一度見てもらってください。デバイスで手順が変わるので、自分の薬に合った手順を紙に書いて薬のそばに置くと確実です。吸えているかどうかは、説明を聞くより実際に吸ってみせていただくほうが早く分かります。ピース訪問看護ステーションでは訪問時にその確認をしています。お問い合わせからどうぞ。台風の3日前から通過後までの動き方時期やること理由3日前薬と酸素の残量確認、受診の相談直前では処方が間に合わない前日買い物と入浴を済ませる当日の外出と入浴を減らす当日予定を減らし、水分と記録動作の負担を最小限に通過翌日掃除は無理をしないほこりが気道を刺激する2〜3日後体温と痰の色を毎日確認増悪は遅れて出る前日に入浴を済ませる理由は、浴室の温度差と湯気が呼吸の負担になるから。当日に入るなら湯温はぬるめ、時間は短く、家族が家にいる時間帯を選んでください。水分は痰を切れやすくするために欠かせません。心臓や腎臓の病気で水分量の指示が出ている方は、主治医の指示が優先です。そうでなければ、コップ半分を回数多く飲むのが目安。室温と湿度も整えます。エアコンのフィルターにほこりがたまると空気が汚れるため、台風前の掃除が効きます。通過後の掃除は意外な落とし穴。窓を開けて一気に片付けると、ほこりが舞い上がって気道を刺激します。窓は短時間だけ開け、掃除はマスクをして数日に分けます。台風・停電に備える在宅酸素(HOT)の準備リスト在宅酸素(HOT)の台風対策は、停電で酸素濃縮器が止まる前提に立ち、ボンベの残量と業者の連絡先、切り替え手順を紙に貼っておくことです。停電で止まるもの、止まらないもの機器停電したとき備えておくこと酸素濃縮器止まるボンベへの切り替え手順携帯用酸素ボンベ使える本数と残圧の確認マスク型の人工呼吸器内部電池があれば一定時間(無い機種もある)内部電池の有無と作動時間、外部電源電動の吸引器止まる手動式や充電式の予備電動ベッド止まる手動ハンドルの場所停電すると酸素濃縮器は止まります。この一文が台風対策の出発点です。濃縮器は室内の空気から酸素を取り出す機械なので、電気がなければ動きません。携帯用の酸素ボンベは電気を使わないため停電中も使えます。停電時の行動は、濃縮器からボンベへ切り替えることに尽きる。手順は明るいうちに一度やっておいてください。暗い部屋で初めてバルブを開ける作業は、慣れた方でも手が止まります。ボンベは残圧計、つまり残りの酸素量を示すメーターの見方も確認します。何本あるか、いつもの流量で何時間もつのか。業者の説明書の数字を書き写し、機器のそばに貼ります。マスクをつけて呼吸を助ける人工呼吸器(NPPV)を使う方は、内部電池があるか、あるなら何分もつのかを業者に確認してください。内蔵していない機種もあり、その場合は停電と同時に止まります。日常の注意は、在宅酸素療法と暮らす家族が知っておきたい注意点も参考になります。台風前にそろえておく持ち出しと備蓄品目目安置き場所携帯用酸素ボンベ業者と相談して決めた本数玄関近くの定位置吸入薬と内服薬数日分と手帳の写しひとつの袋にまとめるパルスオキシメーター本体と予備の電池記録用紙と一緒に明かり懐中電灯、電池式ランタン寝室と居間の両方連絡先の紙主治医、訪看、業者、ケアマネ電話機のそばに貼る明かりには譲れない条件がひとつ。ろうそくを使わないことです。在宅酸素を使う場所に火気は近づけられないため、停電時の明かりは電池式に限ります。火気の扱いは、COPDの在宅酸素療法(HOT)、家族が知っておきたい機器の扱いと火災予防|訪問看護のサポートに詳しくまとめています。台風の停電時こそ、この注意が最も守られにくくなります。薬は種類ごとに散らばっていると持ち出せません。ひとつの袋にまとめ、お薬手帳の写しか処方内容の写真を一緒に入れます。避難先で医療者に見せるとき、この1枚の有無で話の早さが変わります。連絡先の紙は手書きで構いません。備え全般は、台風・停電への備え|在宅医療機器と常備薬、今からできる準備リストにもまとめてあります。避難が必要になったときの考え方場面すること相談先台風情報が出た時点避難が必要な地域か確認自治体、ケアマネジャー早めに動くとき明るいうちに移動する家族、訪問看護電源の確保避難先で充電できるか確認自治体の福祉担当、業者平常時の登録支援が必要な方の名簿を相談地域包括支援センター在宅酸素や人工呼吸器を使う方の避難は、健康な方より早く動くのが原則。風が強まってから、暗くなってから移動するのは、ボンベを持ち歩く負担を考えると現実的ではありません。避難先で電源が使えるかは事前に確認する事項です。自治体によって受け入れ体制が異なるため、平常時の相談が要ります。入口は地域包括支援センターです(出典:町田市「高齢者支援センター(地域包括支援センター)」、相模原市「地域包括支援センター」)。ひとり暮らしの方は、緊急時に外部へ知らせる手段も要ります。自治体によっては緊急通報の仕組みがあります(出典:町田市「救急通報システム事業」、相模原市「緊急通報サービス」)。自宅にとどまる選択もあります。どちらにせよ、決めるのは台風が来る前。訪問看護でできること|町田・相模原の在宅療養で見えてきた備え台風の前に薬と酸素の残量を一緒に数え、SpO2の平常値と連絡の基準を決め、主治医や酸素業者、ケアマネジャーへ橋渡しするところまでが訪問看護の役割です。連絡の基準を紙に書いて貼る状態連絡する相手伝えること息切れが増えたが休めば戻る訪問看護いつから、どの動作で痰の色が変わった、発熱主治医、訪問看護色、量、体温、いつから機器が動かない業者の緊急窓口機種、停電の有無会話が続かない119番呼吸の状態、酸素の流量電話口で「苦しいんです」とだけ言われても、こちらは判断できません。連絡の基準を紙に書いて貼る。在宅で最も効果が出る準備のひとつです。伝える内容を決めておくと電話の3分で話が進みます。いつから、どの動作で、SpO2はいくつ、痰の色は、体温は。訪問先で毎年感じるのは、備えている方ほど連絡が早いということ。基準が決まっていれば迷わず、様子を見すぎることがありません。基準がないと「もう少し様子を見よう」が続き、動けなくなってから連絡が来る。紙に書く作業は訪問時に一緒に行います。ご本人の平常値、主治医の指示、家族の連絡先。台所の壁か電話機のそばか、貼る場所まで一緒に決めます。主治医、酸素業者、ケアマネジャーをつなぐ相手台風前に確認すること連絡のタイミング主治医増悪時の対応、指示値、処方台風情報が出た時点酸素業者ボンベの本数、緊急窓口シーズン前と接近前ケアマネジャーサービス調整、避難の相談台風情報が出た時点薬局配達の可否、在庫、吸入指導処方を受け取るとき在宅療養は関わる人が多いほど連絡が抜けます。主治医は薬、業者は機器、ケアマネジャーはサービスを見ていますが、全体を一枚の絵にする人がいないと台風の日に穴が開きます。訪問看護はその橋渡しをする位置にいます。呼吸の状態は主治医へ、機器の不具合は業者へ、生活の調整はケアマネへ。同じ出来事でも、相手によって伝える言葉は変わります。呼吸のつらさで生活が制限される段階では、症状をやわらげるケアの選択肢も出てきます。進行性疾患にともなう呼吸困難の緩和は診療ガイドラインに整理され、在宅でも主治医と相談しながら進められます(出典:日本緩和医療学会「進行性疾患患者の呼吸困難の緩和に関する診療ガイドライン 2023年版」)。台風は毎年来ます。今年困ったことを記録しておけば、来年はその分だけ楽になります。よくある質問Q1. なぜ台風が近づくとCOPDの息苦しさが強くなるのですか気圧の低下だけでなく、気温と湿度の急変、活動量の低下、不安と睡眠不足が同じ数日に重なるためです。呼吸の予備力が少ないCOPDの方では、小さな負担でも合わされば息切れとして表に出ます。日本呼吸器学会も、治療の目的のひとつとして増悪を防ぐことを挙げています。Q2. 気圧が下がるとCOPDはなぜ悪化するのですかはっきりした仕組みはまだ解明されていません。説明に使われるのは、狭い気道が刺激でさらに細くなる、自律神経の調節が追いつかず呼吸が浅く速くなる、肺から血液へ酸素が移る効率がわずかに落ちるの3つです。数値で断定する説明は根拠を確認してください。Q3. COPDの息切れがひどいときはどんなサインに注意すればいいですか息切れ、咳、痰の3つを先週の自分と比べてください。着替えやトイレでも息が上がる、痰が黄色や緑に変わって量が増える、咳が日中も夜間も止まらない。この3つは増悪を疑う場面です。発熱、朝の頭痛、日中の強い眠気、手のふるえも見てください。意識の変化はご家族の観察が頼りです。Q4. COPDの増悪はいつ受診・救急を考えるべきですか会話がひと息で続かない、唇や爪が紫色、意識がもうろうとしているときは、数値に関係なくすぐ119番へ。安静でも息切れが治まらない、主治医の指示値を下回る、発熱と痰の色の変化がそろうときは、その日のうちに主治医か訪問看護へ連絡します。Q5. 台風の前にCOPDの吸入薬はどう備えればいいですか台風情報が出た時点で残量を数え、足りなければ受診や処方を前倒しします。毎日続ける吸入薬は天気で増減させず、決まった時刻に続けてください。苦しいときの吸入薬は寝室と居間に定位置を決め、家族にも場所を伝えます。増悪時の薬を別に渡された方は、使う条件を主治医に確認してください。Q6. 停電になったら在宅酸素(酸素濃縮器)はどうすればいいですか酸素濃縮器は電気で空気から酸素を取り出す機械なので、停電すると止まります。携帯用ボンベは電気を使わないため、停電中はボンベへ切り替えます。手順は明るいうちに一度試してください。ボンベの本数と残圧、業者の緊急窓口を紙に書いて機器のそばに貼ります。停電時の明かりは電池式に限り、ろうそくは使いません。Q7. SpO2はどのくらいの数値で危険と判断すればいいですか一律の数字はありません。COPDの方は健康な方より低い値で安定していることが多く、一般的な基準を当てはめると判断を誤ります。主治医から「この値を下回ったら連絡」と指示が出ていれば、それが基準です。指示がない方には、いつもの値より3から4ポイント低い状態が5分から10分休んでも戻らないなら連絡を、とお伝えしています。これは学会基準ではなく、当ステーションが在宅の相談経験から決めている目安です。手が冷えていると低く出るため、測る前に温めてください。Q8. 台風が過ぎたあとも息苦しさが続くのはなぜですか理由は2つ。ひとつは数日動かず過ごしたことで痰が出しにくくなり、脚の力も落ちて同じ動作の負担が増えていること。もうひとつは、気道の感染による増悪が遅れて表面化していることです。通過後2〜3日は体温と痰の色を確認し、変化があれば天気のせいにせず主治医へ連絡してください。まとめ台風接近でCOPDの息苦しさが悪化するのは、気圧の低下だけが理由ではありません。気温と湿度の急変、活動量の低下、気道の感染が重なって引き金がそろいます。見分ける手がかりは、息切れ・咳・痰の3つの変化と、いつもの自分と比べたSpO2の下がり方。主治医の指示値があればそれが基準です。会話が続かない、唇や爪が紫色、意識がもうろうとする場面では、数値に関係なく119番を考えてください。備えは今日からできます。吸入薬の残量を数える、携帯用酸素ボンベの本数と残圧を確認する、停電で濃縮器が止まる前提で切り替え手順を試す、連絡先と連絡の基準を紙に書いて貼る。この4つを台風情報が出た時点で済ませれば、当日に慌てずに済みます。今年整えた備えは、来年もそのまま使えます。ピース訪問看護ステーションにご相談くださいこんな方はぜひご相談ください:台風や低気圧の日に決まって息苦しくなり、受診の目安が分からない方在宅酸素を使っていて、停電時にどう動けばよいか不安なご家庭ひとり暮らしで、苦しいときに誰へどう連絡するか決まっていない方ピース訪問看護ステーションができること:平常時のSpO2と息切れの程度を記録し、連絡の基準を1枚の紙にまとめる吸入手技の確認と、薬・酸素ボンベの残量チェックを台風前に行う主治医、酸素業者、ケアマネジャー、地域包括支援センターへの橋渡し東京都町田市・多摩市、神奈川県相模原市・大和市・川崎市麻生区を中心に対応しています。まずはお気軽にお問い合わせください。関連記事COPDでも自宅で安心に暮らすために ― 訪問看護ができることCOPDの在宅療養|家族ができる対応と増悪サインの早期発見を解説COPDの在宅酸素療法(HOT)、家族が知っておきたい機器の扱いと火災予防|訪問看護のサポート台風・停電への備え|在宅医療機器と常備薬、今からできる準備リスト気圧の変化で高齢者の体調が崩れるのはなぜ?頭痛・だるさへの在宅ケアと訪問看護の活用参考文献一覧出典:日本呼吸器学会「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」(市民のみなさまへ)https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/b/b-01.html出典:日本呼吸器学会「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2022〔第6版〕」(2022年)https://www.jrs.or.jp/publication/jrs_guidelines/20220512084311.html出典:日本呼吸ケア・リハビリテーション学会/日本呼吸理学療法学会/日本呼吸器学会(3学会合同)「呼吸リハビリテーションに関するステートメント」(2018年)https://www.jrs.or.jp/activities/guidelines/statement/20181126164124.html出典:日本緩和医療学会「進行性疾患患者の呼吸困難の緩和に関する診療ガイドライン 2023年版」(日本医療機能評価機構)https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00804/出典:町田市「高齢者支援センター(地域包括支援センター)」https://www.city.machida.tokyo.jp/iryo/old/shiminnokatae/mijikanasodan/koureisha_shien_center.html出典:町田市「救急通報システム事業」https://www.city.machida.tokyo.jp/iryo/old/shiminnokatae/seikatsukurashi/moshimo/kinkyutuhoshisutemu.html出典:相模原市「地域包括支援センター(高齢者の健康、福祉、介護の相談・支援)」https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/kosodate/fukushi/1026635/korei_shien/1006373.html出典:相模原市「緊急通報サービス」https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/kosodate/fukushi/1026635/korei_shien/1006378.html【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理、地域医療連携、在宅看取り支援に積極的に取り組んでいる。island-piece.jp 株式会社isLand|訪問看護・居宅介護支援・訪問介護|町田市