認知症の親が同じ話・同じ質問を繰り返すのはなぜ?家族がまず知っておきたいこと認知症の親が同じ話を繰り返すのは覚えていられない症状のためで、家族の対応を少し変えるだけで双方の負担が軽くなります。「今日は何曜日だっけ」「ご飯はまだ?」。さっき答えたばかりの質問を、またすぐに聞かれる。昔の同じ思い出話が、一日に何度も始まる。最初は優しく答えていても、何十回目かで「さっきも言ったでしょ」と強い声が出てしまい、あとで自分を責める。町田市・相模原市で訪問看護を提供する中で、認知症の親を介護するご家族からよく打ち明けられる悩みです。「わざとやっているのでは」「私の答え方が悪いのか」と、一人で悩み続けている方も少なくありません。この記事では訪問看護の立場から、繰り返しの理由と、今日から使える返し方や相談先を順に整理します。この記事でわかること認知症の親が同じ話・同じ質問を繰り返す理由年相応のもの忘れと認知症の違い「さっきも言ったよ」が逆効果になる理由と、イライラしにくい返し方同じ質問・同じ昔話・同じ不安への場面別の答え方メモ・カレンダー・時計など環境の工夫と、受診や相談の目安同じ話を繰り返すのは「わざと」ではない家族に見えていること本人の中で起きていること同じ質問を何度もする聞いたこと自体が記憶に残らず、本人には毎回が初めての質問同じ昔話を何度も話す最近の出来事は残りにくく、昔の記憶は比較的残っている「そんなこと聞いてない」と言う言われた記憶がないため、本人にとってはそれが事実同じ心配を何度も口にする安心した記憶が残らず、不安だけが続いている同じ話を繰り返すのは、認知症の中心的な症状である記憶の障害によるものです。本人は家族を困らせようとしているわけでも、話を聞いていないわけでもありません。答えてもらって安心したことが記憶に残らないため、また同じ質問が浮かんでくるのです。本人にとっては毎回が「初めて聞くこと」。だから「何回目?」と言われても、話がつながりません。まずは「病気がそうさせている」と知っておくことが、家族が自分を責めないための出発点になるでしょう。年相応のもの忘れと、認知症による繰り返しの違い比べるところ年相応のもの忘れ認知症が疑われるもの忘れ忘れ方体験の一部を忘れる(昼食の献立など)体験そのものを忘れる(昼食を食べたこと自体)自覚忘れたことに気づいている忘れたことに気づきにくい指摘されたとき「そうだった」と思い出せる思い出せず、否定したり怒ったりする生活への影響大きな支障はない約束や金銭管理などで困りごとが増える年を重ねれば、人の名前が出てこない、物の置き場所を忘れるといったことは誰にでも起こります。一方、さっき電話したこと自体を覚えていない、同じ質問を短い間に何度もするといった様子は、年相応のもの忘れとは違う変化です。受診するか迷う段階でも、かかりつけ医に伝えておきたいサインといえます。ただし、うつや体の不調、薬の影響でも、もの忘れのように見えることがあり、家族だけで見分けるのは簡単ではありません。気分の落ち込みや意欲の低下が目立つときは、高齢者のうつと認知症の見分け方|家族が早く気づくチェックも参考にしてください。同じ質問を繰り返す3つの原因は記憶障害・見当識障害・不安認知症で同じ話を繰り返す背景には記憶障害・見当識障害・不安の3つがあり、原因ごとに家族の対応の要点が変わります。認知症の症状は、記憶障害や見当識障害などの認知機能の障害(中核症状)と、それを土台に体調や環境、心理的な要因が重なって現れる行動・心理症状(BPSD)に分けて整理されています(出典:日本神経学会監修「認知症疾患診療ガイドライン2017」 第3章 CQ3A-2)。同じ質問の繰り返しは、この両方がからみ合って起きることの多い症状です。記憶障害|新しいことが覚えられず、昔の記憶は残りやすい認知症では、少し前の出来事を覚える力が早い段階から弱くなりやすいといわれます。答えを聞いたこと自体が残らないので同じ質問になり、自分が話したことも残りにくいため、同じ話を初めてのように話し始めます。一方で、若いころの記憶や、繰り返し語ってきた思い出は比較的長く保たれます。本人が安心して話せる話題が、どうしても昔の同じ話に集まっていくのはそのためです。同じ昔話は、本人にとって「自分らしさを確かめられる話」でもあります。内容を正すより、話しているときの表情や気持ちに目を向けてみてください。関わり方のヒントが見えてくるはずです。見当識障害|時間・場所・人がわからなくなる不安見当識の対象わからなくなることよく出る質問の例時間日付・曜日・時刻・季節「今日は何曜日?」「今何時?」場所今いる場所、これからの行き先「ここはどこ?」「いつ帰るの?」人相手が誰か、家族との関係「あなたは誰だっけ」「母さんはどこ?」見当識とは、今がいつで、ここがどこで、目の前の人が誰かをつかむ力のこと。この力が弱くなると、本人はいつも「状況がつかめない」心細さの中にいます。「今日は何曜日?」という質問は、情報が欲しいというより、足場を確かめたい気持ちの表れでしょう。答えを聞いて一度は安心しても、その安心が記憶に残らないため、しばらくするとまた同じ質問が出てきます。夕方になると落ち着かず「家に帰る」と言い出す場合は、認知症の夕暮れ症候群・帰宅願望|家族が玄関で止めない対応のコツも参考にしてください。不安・心細さからくる確認行動と、急に増えたときの注意点繰り返す言葉背景にありそうな気持ち確かめたいこと「財布はどこ?」なくしたら困るという不安大切な物が無事か「病院は何時?」予定に遅れたくない焦り自分は間に合うか「ご飯はまだ?」時間や空腹の感覚がつかめない心細さいつもの生活が続いているか「息子は帰ってきた?」家族を心配する気持ち大切な人が無事か同じ質問は、不安を打ち消すための「確認行動」として出ることがよくあります。予定が近づくほど何度も確かめたくなるのは、認知症でなくても起こる心の動きです。注意したいのは、ふだんより急に繰り返しが増えた、ぼんやりしている時間が長い、夜に興奮するといった変化です。脱水や便秘、発熱などの体の不調や薬の変更のほか、せん妄が隠れていることがあります。せん妄とは、体の不調や薬などをきっかけに急に注意力が落ち、ぼんやりしたり混乱したりする状態のことで、一日の中でも波があるのが特徴です。いつもと違う急な変化に気づいたら、様子見を続けず、主治医や訪問看護師に早めに伝えてください。夜になると混乱や興奮が強まる場合は、認知症の夜間せん妄で眠れないとき家族ができる対処と訪問看護の活用もあわせてご覧ください。イライラしない返し方の基本は「否定せず、短く、同じ言葉で」認知症の親が同じ話を繰り返すときの対応は、否定せず短く同じ言葉で返すのが基本で、毎回完璧に答える必要はありません。「さっきも言ったよ」がつらさを増やす理由家族の言葉本人の受け取り方その後に起こりやすいこと「さっきも言ったでしょ」聞いた覚えがないのに責められた混乱し、怒りや落ち込みにつながる「何回言えばわかるの」自分はだめになったと感じる自信を失い、不安から質問が増える「覚えてないの?」試されている、ばかにされた家族を避ける、話さなくなる「さっきも言ったよ」は事実ですが、本人にはその「さっき」が記憶にありません。指摘されても思い出せず、「責められた」という嫌な感情だけが残ります。出来事は忘れても、怒られた、恥ずかしかったという感情は残りやすいといわれ、かえって不安から同じ質問が増える悪循環に陥りがちです。つい口に出てしまうのは自然なことなので、言ってしまった後に「ごめんね、何だっけ」と言い直せれば十分。言い直しの一言があるだけで、本人の表情がふっとやわらぐことは少なくありません。毎回「初めて聞いたように」答えなくていいよく言われる理想現実に続けやすい形毎回初めて聞いたように笑顔で答える同じ短い答えを、落ち着いた声で繰り返す質問のたびに手を止めて向き合う手を動かしながら「3時だよ」と返してよい家族が一人ですべて答える紙に書いて貼り、「ここに書いてあるよ」と指さすイライラしてはいけないイライラしたら、その場を少し離れてよい介護の本では「初めて聞いたように答えましょう」とよく書かれていますが、何十回も続けるのは現実的ではないでしょう。大切なのは演技の上手さではなく、本人を否定しないことと、家族が続けられることです。答えを毎回変えるより、同じ短い言葉で返すほうが本人も受け取りやすく、家族の負担も軽くなります。よく聞かれる質問の答えは、紙に大きく書いて目につく場所に貼っておくと、答える回数そのものを減らせます。返し方を「決めておく」だけで、そのつど考える疲れが減り、イライラの波も小さくなるはずです。短く・同じ言葉で・気持ちに応えるコツコツ具体例ねらい短く答える「今日は水曜日だよ」情報を一つに絞り、受け取りやすくする同じ言葉で答える毎回「3時にお迎えが来るよ」聞き慣れた言葉が安心材料になる気持ちに応える「心配になったんだね」質問の奥にある不安をやわらげる話題を移す「お茶にしようか」確認のループから自然に抜ける答えるときは、正面から目を合わせ、ゆっくり短く伝えるのが基本です。長い説明は途中で情報があふれ、かえって不安を強めてしまいます。同じ質問が続くときは、答えより「心配なんだね」と気持ちを受け止めるほうが、本人が落ち着く場面も多いものです。そのうえでお茶や散歩、好きな作業に誘えば、確認のループから自然に抜けられます。認知症の行動・心理症状には、まず体の不調が隠れていないかを確かめ、薬より先に関わり方や環境を整える非薬物的な対応を行うことが基本とされています(出典:日本神経学会監修「認知症疾患診療ガイドライン2017」 第3章 CQ3A-2)。家族みんなで返し方をそろえる同居の家族、近くに住むきょうだい、ヘルパーなど、関わる人によって答えが違うと、本人はかえって混乱します。そろえたいのは、よく聞かれる質問の答え、言い方と声の調子、困ったときの逃がし方の3つ。「デイは火曜と金曜」のように答えを一行で決めて紙に書き出し、冷蔵庫など家族全員の目に入る場所に貼っておきましょう。行き詰まったら「お茶にしよう」「一緒に見に行こう」と場面を変える、と決めておけば迷いません。答えを決める話し合いは、介護を一人で担っている家族の負担を、ほかの家族に知ってもらうよい機会にもなります。ケアマネジャーやデイサービスの職員にも同じ紙を渡しておけば、家の外でも同じ言葉で安心してもらえます。同じ質問・同じ昔話・同じ不安を繰り返されたときの場面別対応例認知症で同じ話や同じ質問を繰り返す場面ごとに、家族の対応例を知っておくと、とっさの言葉に迷いにくくなります。町田市・相模原市で訪問していると、デイサービスの前日や通院日の前など、予定が近づくほど同じ質問が増えるご家庭によく出会います。たとえば80代の親御さんと暮らすご家庭では、週2回のデイサービスの前の晩に「明日は何時にお迎えが来るの?」が寝るまで何度も続く、といった形です。繰り返しには「出やすい場面」があるので、場面ごとに返し方を用意しておくと落ち着いて対応できます。同じ質問を繰り返されたとき(曜日・時間・食事)質問避けたい返し方返し方の例「今日は何曜日?」「さっきも言ったよ」「水曜日だよ。カレンダーにも丸がついてるね」「ご飯はまだ?」「もう食べたでしょ」「今作っているよ。先にお茶を飲もうか」「デイサービスは今日?」「何回聞くの」「明日だよ。ホワイトボードに書いておくね」「ご飯はまだ?」は、食べたこと自体を覚えていない場合によく出る質問です。「もう食べたでしょ」と事実で返すと、本人は「食べさせてもらえない」と感じ、言い合いになりがち。「今作っているよ」「先にお茶にしよう」と受け止め、飲み物や小さなおやつで間をつなぐと、おさまることがあります。食べた直後でも強い空腹を訴え続ける、体重が急に変わったといった場合は、主治医に相談してください。曜日や予定の質問は、答えとあわせてカレンダーやホワイトボードを指さすと、次から自分で確かめる手がかりになります。同じ昔話を繰り返されたとき昔話を途中で「その話はもう聞いた」とさえぎると、本人は話す楽しみと自信を失ってしまいます。すべてを熱心に聞く必要はありません。家事をしながら「それでどうなったの?」と相づちを打つ、「大変だったね」「うれしかったね」と話の中の気持ちを拾う。それだけでも、聞いてもらえた満足感は本人に残ります。そのころの写真や思い出の品を入り口にすると、同じ話から少しずつ会話が広がり、別の話題にも移りやすくなるでしょう。家族だけで聞き役を続けると負担が大きいため、デイサービスや訪問の職員など、聞き手を分けることも考えてみてください。同じ不安を繰り返されたとき(お金・財布・予定)不安の内容返し方の例あわせてできる工夫「財布がない」「一緒に探そうか」置き場所を一つに決め、目印をつける「お金は足りてる?」「大丈夫、ちゃんとあるよ」少額を手元に置き、安心できるようにする「病院に行かなきゃ」「明日の朝だね。書いておくね」予定を一枚の紙にまとめて貼るお金や財布、予定に関する不安は、本人にとって生活の安全にかかわる切実なものです。一緒に探す、見える場所に置く、予定を書いて貼るなど、不安のもとを目に見える形で解消すると落ち着きやすくなります。財布が見つからないことが続き「盗られた」と言い出す場合は、もの盗られ妄想かもしれません。大切な物が見つからないときに「誰かに盗られた」と思い込んでしまう症状で、いちばん身近で介護している家族が疑われやすいのが特徴です。否定や説得を重ねるより「一緒に探そう」と寄り添い、見つけたら本人が自分で見つけられるよう、さりげなく置き場所へ誘うとこじれにくくなります。お金の管理で困りごとが続く場合は、認知症とお金の管理:家族が知っておくべき対策とポイントも役立ちます。不安が強くて生活が回らないときは、一人で抱えず、主治医やケアマネジャーに状況を伝えてください。同じ質問への返し方がわかっていても、毎日続けば疲れはたまります。ピースの訪問看護では、ご本人の様子を見ながら、ご家族と一緒に「この家で続けられる返し方」を考えます。認知症の親との関わり方に悩んでいる方は、まずはお気軽にお問い合わせください。やってはいけない対応と、答える回数を減らす環境の工夫認知症で同じ話を繰り返す親への対応では、叱る・試す・無視をやめ、メモや時計など環境の工夫で答える回数を減らします。やってはいけない対応と、その代わりにできることやってはいけない対応本人に起こること代わりにできること叱る・大きな声で注意する混乱と恐怖が強まる声を落とし、短く答える「今日は何日?」と試すできない自分を突きつけられる答えを先にさりげなく伝える無視し続ける見捨てられた不安で質問が増える一言だけでも返し、離れるときは声をかける間違いを細かく正す自信を失い、話さなくなる大筋が合っていれば受け流す叱る、試す、無視し続ける、細かく正す。どれも本人の不安を強め、繰り返しを増やしやすい対応です。記憶の訓練のつもりで「今日は何日か言ってみて」と問いかけるのも、本人には試験のように感じられます。一方で、家族が一時的にその場を離れること自体が悪いわけではありません。大切なのは、余裕がなくなる前に、短く返してから離れるなど、関係を壊さない形で距離をとること。つい叱ってしまったときも、後から穏やかに声をかければ、関係は十分に立て直せます。メモ・カレンダー・時計・ホワイトボードの使い方道具使い方の例置き場所のコツ日めくりカレンダー過ぎた日をめくり、今日がわかるようにする本人がよく座る場所から見える壁日付・曜日つきの時計大きな文字で日付と時刻を一度に示すテレビの横など、自然に目に入る場所ホワイトボード今日の予定と、家族の居場所を書く玄関や食卓の近く大きめのメモよく聞かれる質問の答えを書いて貼る質問がよく出る場所同じ質問への答えを「目に見える形」で置いておくと、本人が自分で確かめられるようになります。特に、日付と曜日が大きく出る時計や、今日の予定を書いたホワイトボードは、曜日や予定の質問を減らす助けになるでしょう。書くときは「今日は水曜日。午後3時にヘルパーさんが来ます」のように、短く、はっきり。針の時計が読みにくくなっている場合は、数字で表示されるデジタル時計のほうが伝わることもあります。道具は一度に増やすより、本人がよく見る場所に一つずつ置き、使えるかを確かめながら増やしましょう。それでも質問が続くときは、「ここに書いてあるよ」と一緒に指さして読むことを習慣にしていきます。生活リズムと体調を整えることも繰り返しを減らす同じ質問は、退屈や手持ち無沙汰、体の不快感をきっかけに増えることもあります。することがなく一日中座っていると、頭に浮かぶのは「今何時?」「いつ帰る?」といった確認ばかりになりがちです。洗濯物をたたむ、野菜の皮をむくなど、本人が得意だったことを役割としてお願いすると、表情が変わる方もいます。体調面では、眠り、水分と便通、痛みの3つを見直してみてください。眠りが浅いと日中の混乱が強まるため、朝は日光を浴び、昼寝は短めに。脱水や便秘も落ち着かなさにつながるので、飲み物をこまめに勧め、便通を記録しておくと主治医にも伝えやすくなります。言葉にできない痛みや不快が、不安や繰り返しとして出てくることもあります。表情や動きのいつもと違う変化は、見逃したくないサインです。入浴を嫌がるなど生活のケアで困っている場合は、認知症の入浴拒否|お風呂を嫌がる理由と家族の対応・清拭の工夫もあわせてご覧ください。家族がイライラを溜め込まないために|受診の目安と訪問看護に相談するタイミング認知症の親が同じ話を繰り返す毎日に家族がイライラするのは自然なことで、対応を一人で抱えず早めに相談先を持つことが大切です。イライラする自分を責めなくていい同じ話を何度も聞かされる毎日で、イライラや疲れを感じるのは、介護する人として自然な反応です。何十回も続けば、誰でも疲れます。優しくできない自分を責めるより、「疲れが限界に近い」というサインとして受け止めてください。強く言ってしまったときは、後で穏やかに声をかけ直せば十分です。怒りがこみ上げてきたら、台所に立つ、窓を開けて深呼吸するなど、その場を短く離れる自分なりの合図を決めておくのも一つの方法。自分の時間がまったくないなら、デイサービスやショートステイで離れる時間をつくることも考えてみてください。休むことも介護の一部です。誰にもわかってもらえないと感じるときは、同じ立場の家族が集まる介護者の交流会で話すと、気持ちが軽くなることがあります。介護する家族もまた、支えられるべき存在です。知識や接し方、困った行動への向き合い方を家族が体系立てて学べる支援は、介護者の燃え尽きやうつを軽くすることが示されています(出典:日本神経学会監修「認知症疾患診療ガイドライン2017」 第3章 CQ3A-7-1)。2022年には、認知症の人と家族介護者への支援・非薬物的介入をテーマにした診療ガイドラインもまとめられています(出典:「認知症と軽度認知障害の人および家族介護者への支援・非薬物的介入ガイドライン2022」作成委員会)。眠れない、消えてしまいたいと感じるほど追い詰められたときは、介護の相談とは別に、こころの電話相談も利用できます(出典:厚生労働省「まもろうよ こころ 電話相談窓口」)。受診の目安と、何科に相談すればよいか相談先向いている場面かかりつけ医まず相談したいとき、専門医を紹介してほしいときもの忘れ外来認知症かどうかを調べたいとき脳神経内科・精神科・老年科診断や治療、行動・心理症状への対応を相談したいとき認知症疾患医療センター専門的な診断や、対応の難しい症状を相談したいとき同じ質問の繰り返しが以前より目立ってきた、生活に支障が出始めたと感じたら、受診を考えるタイミングです。回数や期間に一律の基準はなく、「前と比べて明らかに増えた」「困りごとが続いている」という家族の実感が大切な目安になります。受診の際は、いつごろから、どんな質問を、どんな場面で繰り返すかをメモして持っていくと、医師に様子が伝わりやすくなります。まだ診断を受けていない場合は、まずかかりつけ医に相談し、必要に応じてもの忘れ外来や専門の医療機関を紹介してもらうとスムーズです。町田市では鶴川サナトリウム病院が東京都から認知症疾患医療センターに指定され、専門医療相談などを行っています(出典:町田市「認知症疾患医療センター」)。相模原市では北里大学病院と総合相模更生病院が認知症疾患医療センターとして、専門医療相談や鑑別診断を担っています(出典:相模原市「相模原市認知症疾患医療センター」)。町田市・相模原市の相談先と、訪問看護でできること相談先できること地域包括支援センター(町田市では高齢者支援センター)介護保険や介護サービス、家族の悩みの総合相談町田市の介護者等相談臨床心理士などに、接し方やストレスの減らし方を相談ケアマネジャーデイサービスやショートステイなど、休む時間をつくる調整訪問看護自宅での体調管理、関わり方の助言、家族の相談認知症の人の状態に応じたサービスの流れを市町村ごとにまとめた「認知症ケアパス」は、市町村の高齢者福祉の担当窓口や地域包括支援センターで確認できます(出典:厚生労働省「認知症施策」)。町田市では高齢者支援センターが相談窓口となり、介護する家族向けの交流会も開いています(出典:町田市「高齢者支援センター(地域包括支援センター)」)。臨床心理士などに、認知症の理解や接し方、ストレスの減らし方を相談できる介護者等相談もあります(出典:町田市「臨床心理士等による介護者等相談」)。相模原市でも、地域包括支援センターが高齢者本人と家族の相談を受けています(出典:相模原市「地域包括支援センター(高齢者の健康、福祉、介護の相談・支援)」)。訪問看護は、主治医の指示のもとで看護師などが自宅を訪ね、療養上の世話や診療の補助を行うサービスです(出典:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「訪問看護」)。体調の変化を確かめながら、ご家族と一緒に返し方や環境の工夫を考えられるのも、自宅に伺う訪問看護の役割です。相模原市のご家庭に伺う中でも、よく聞かれる質問を3つほどに絞ってホワイトボードに答えを書き出し、訪問のたびにご家族と見直す、といった工夫をしています。落ち着いた質問は消し、新しく増えた質問を書き足していく。書く量を増やさないことが、続けるコツです。限界を感じる前に使い方を知っておきたい方は、BPSDで在宅介護が限界になる前に|家族が訪問看護に相談すべきサインと使い方も参考にしてください。よくある質問(FAQ)Q. 認知症の人はなぜ同じ話や同じ質問を繰り返すのですか。A. 聞いたことや話したことが記憶に残りにくい記憶障害と、日時や場所がつかみにくい見当識障害が主な理由です。そこに不安や心細さが重なり、安心を確かめるために同じ質問を繰り返します。わざとではありません。Q. 年相応のもの忘れと、認知症による繰り返しはどう違いますか。A. 年相応のもの忘れは体験の一部を忘れ、本人も忘れたことに気づいています。認知症では体験そのものが抜け落ち、忘れたことに気づきにくいのが特徴です。迷うときはかかりつけ医に相談してください。Q. 「さっきも言ったよ」と言ってはいけないのはなぜですか。A. 本人には「さっき」の記憶がないため、思い出せないまま責められた感情だけが残り、不安から繰り返しが増えやすいからです。言ってしまったときは、後で穏やかに言い直せば大丈夫です。Q. イライラしない返し方のコツはありますか。A. 答えを短い決まった言葉にしておく、よく聞かれる答えを紙に書いて貼る、「心配なんだね」と気持ちに応えてから話題を移す、の3つが続けやすい方法です。毎回初めて聞いたように答える必要はありません。Q. 同じ質問が増えてきました。何科で、どのタイミングで受診すればよいですか。A. まずかかりつけ医に相談し、必要に応じてもの忘れ外来や脳神経内科、精神科、老年科を紹介してもらいます。回数や期間の決まった基準はなく、前より明らかに増えた、生活に支障が出てきたと感じたら受診を考えるタイミングです。急に増えた場合は体の不調が隠れていることもあるため、早めに主治医へ伝えてください。Q. メモやカレンダー、時計はどう使えばよいですか。A. 日付と曜日が大きく出る時計や日めくりカレンダーを本人から見える場所に置き、今日の予定はホワイトボードに短く書きます。質問されたら「ここに書いてあるよ」と一緒に指さすと、自分で確かめる習慣がつきやすくなります。Q. 家族が疲れないためにできることはありますか。A. 返し方を決めて考える量を減らす、デイサービスやショートステイで離れる時間をつくる、地域包括支援センター(町田市では高齢者支援センター)や訪問看護に早めに相談する、といった方法があります。一人で抱え込まないことが、いちばんの予防です。まとめ|同じ話・同じ質問への向き合い方認知症の親が同じ話を繰り返すのは、記憶や見当識の障害と不安が重なって起きる症状で、本人に悪気はありません。「さっきも言ったよ」と正すより、短く同じ言葉で答え、気持ちを受け止めることが対応の土台です。答えを紙やホワイトボードに書いて貼る、生活に役割をつくる、聞き手を家族以外にも広げる。こうした工夫で、答える回数もイライラの波も小さくできます。疲れたと感じたら、それは相談してよいサインです。地域包括支援センターや主治医、訪問看護を早めに頼ってください。精神科訪問看護ステーション ピースにご相談ください「精神科」の名前ですが、認知症の方の行動・心理症状や、介護するご家族のご相談も受けています。こんな方はぜひご相談ください:同じ質問を繰り返され、イライラして自分を責めてしまう方同じ質問が急に増え、体調や病気の変化が心配な方返し方や環境の工夫を、専門職と一緒に考えたい方ご相談について:訪問看護を使うか決めていない段階のご相談でも構いません始めるときは、主治医の指示書やケアマネジャーとの調整の流れをご案内します東京都町田市・多摩市、神奈川県相模原市・大和市・川崎市麻生区を中心に対応しています。まずはお気軽にお問い合わせください。関連記事BPSDで在宅介護が限界になる前に|家族が訪問看護に相談すべきサインと使い方認知症の夕暮れ症候群・帰宅願望|家族が玄関で止めない対応のコツ認知症の入浴拒否|お風呂を嫌がる理由と家族の対応・清拭の工夫認知症の暴言・暴力で家族が限界を感じたときの対応と相談先町田市で認知症の家族を支えるには?訪問看護と見守り支援を徹底ガイド参考文献一覧出典:日本神経学会監修「認知症疾患診療ガイドライン2017」(第3章 CQ3A-2、CQ3A-7-1)https://www.neurology-jp.org/guidelinem/nintisyo_2017.html出典:「認知症と軽度認知障害の人および家族介護者への支援・非薬物的介入ガイドライン2022」作成委員会https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00762/出典:厚生労働省「認知症施策」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/index.html出典:厚生労働省「まもろうよ こころ 電話相談窓口」https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/soudan/tel/出典:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「訪問看護」https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group4.html出典:町田市「高齢者支援センター(地域包括支援センター)」https://www.city.machida.tokyo.jp/iryo/old/shiminnokatae/mijikanasodan/koureisha_shien_center.html出典:町田市「臨床心理士等による介護者等相談」https://www.city.machida.tokyo.jp/iryo/old/shiminnokatae/ninchishojoho/ninchishomadoguchi/rinshousinrisisoudan.html出典:町田市「認知症疾患医療センター」https://www.city.machida.tokyo.jp/iryo/old/shiminnokatae/ninchishojoho/shikkaniryousenta.html出典:相模原市「地域包括支援センター(高齢者の健康、福祉、介護の相談・支援)」https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/kosodate/fukushi/1026635/korei_shien/1006373.html出典:相模原市「相模原市認知症疾患医療センター」https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/kosodate/1026646/kaigo/1007008/1007019.html【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理、地域医療連携、在宅看取り支援に積極的に取り組んでいる。【精神科訪問看護ステーション ピースについて】株式会社isLandは町田市で訪問看護を運営する3つの事業所を持ち、これまでも精神疾患のある方とそのご家族を多数支援してきました。2027年1月には、その経験を基に、精神科に特化した「精神科訪問看護ステーション ピース」を新たに開設します。開設までの期間も、既存3事業所でご相談・受入対応が可能です。お気軽にお寄せください。mental.island-piece.jp 精神科訪問看護ステーション ピース|町田市