脳卒中で入院していた家族が退院し、自宅に戻ってきた。けれど以前のように言葉が出てこない、こちらの問いかけにもうまく答えられない——そんな変化を前に、「どう話しかければいいのか」と立ち止まってしまうご家族は少なくありません。沈黙が増え、会話そのものが減っていく。本人もどこか不機嫩そうで、何を考えているのか分からない。そう感じてご自身を責めてしまう方もいます。けれど、ここで知っておいてほしいことがあります。失語症は「言葉」の障害であって、「考える力」の障害ではありません。本人は分かっているのに、それを言葉にできずもどかしさを抱えています。この記事では、失語症で本人に何が起きているのか、家族が陥りやすい誤解、今日からできる会話の工夫を、訪問看護・訪問リハビリの現場の視点から具体的にお伝えします。一人で抱え込まないための相談先もまとめました。この記事でわかること失語症で本人に起きていること(思考力は保たれている)家族が陥りやすい誤解と、本人が抱えるもどかしさ今日からできる「伝える」「受け取る」会話の工夫回復とリハビリ、毎日の会話が持つ力一人で抱えないための相談先と使える支援制度町田・相模原の訪問看護が在宅でできること失語症とは|「言葉が出ない」けれど分かっている失語症は脳の言語をつかさどる部分が傷ついて起こる障害で、「話す・聞く・読む・書く」が不自由になります。でも、考える力そのものは保たれています。家族が失語症と向き合う第一歩は、「本人の中で何が起きているのか」を正しく理解すること。ここを取り違えると、よかれと思った関わりが本人を傷つけてしまうことも。まずは失語症という障害の正体をやさしい言葉でほどいていきましょう。失語症で起きていること(思考は保たれている)厚生労働省は失語症を、「脳梗塞や脳外傷などにより、脳の言語中枢(言葉をつかさどる脳の部分)が損傷された障害」と説明しています。そして、思考能力は保たれていながら、「話す」「聞く」「読む」「書く」という言語の働きが不自由になりコミュニケーションが困難になる、としています(出典:厚生労働省「意思疎通支援」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/sanka/shien.html )。脳卒中の後遺症として起こることが多い障害です。ここで最も大切なのは、太字にした「思考能力は保たれている」という一点です。失語症のある方は、考える力、感じる力、判断する力を失っているわけではなく、家族のことも状況もちゃんと分かっています。ただ、その「分かっていること」を言葉にして外に出す回路、入ってきた言葉を意味に変換する回路に、うまく信号が通らない。それが失語症です。たとえるなら、よく知っているはずの母国語が、ある日突然うまく扱えない言語のように感じられる状態に近いかもしれません。言いたいことははっきりあるのに、それにあたる言葉が出てこない。私たちが現場で出会うご本人の多くも、この「分かっているのに伝えられない」もどかしさと毎日静かに闘っています。「話す」だけじゃない|聞く・読む・書くの不自由失語症というと「言葉が出ない(話せない)」イメージが先に立ちますが、実際には言語の4つの側面すべてに影響が及びます。話すことでは言葉が出にくい・別の言葉に置き換わる(「みかん」と言いたいのに「りんご」と出る)、聞くことでは音は聞こえても意味が結びつかない、読み書きでは文字を目で追えても内容が入ってこない、というかたちで濃淡をつけて現れます。これは努力不足ではなく障害の性質そのもの。どの側面がどれくらい不自由かは人によって大きく違うため、「うちの場合はどこが苦手か」を知ることが関わりの出発点になります。現れ方はさまざま|タイプの違いと構音障害との違い失語症の現れ方は、決して一様ではありません。大きく分けると、「言葉は理解できるけれど自分から話すのが難しいタイプ」と、「滑らかに話すように見えるけれど相手の言葉を理解するのが難しいタイプ」があります。前者では、聞いて分かっているぶん、伝えられないもどかしさを強く自覚しやすい傾向が。後者では、たくさん話せているのに内容がかみ合わず、すれ違いに気づきにくいことがあります。どのタイプか、どの程度の不自由かは、脳のどこがどれだけ傷ついたかで決まり、個人差がとても大きいものです。同じ「脳梗塞のあとの失語症」でも、現れ方も回復の道のりもまったく違います。だからこそ、ほかの人の体験談をそのまま当てはめず、目の前の本人の「いま」を見ることが大切。診断やタイプの見立ては主治医や言語聴覚士(ST。言葉や飲み込みのリハビリの専門職)が行いますので、気になる点は専門職に確認してください。ここで、家族が混同しやすい別の障害にも触れます。失語症とよく似て見えて、まったく別物なのが構音障害(こうおんしょうがい)です。これは、唇や舌、声帯など発音に関わる器官の動きがうまくいかず、発音が不明瞭になったり声が出にくくなったりする状態。脳卒中では単独で、あるいは失語症と一緒に出ることもあります。失語症と構音障害の大きな違いは、「言葉の処理そのものに障害があるか」という点。下の表で整理します。項目失語症構音障害障害の中心言葉を理解し組み立てる脳の働き発音・発声に関わる口や舌などの運動言葉の理解理解にも不自由が出ることがある理解は保たれていることが多い話し方言葉が出てこない・置き換わる言いたい言葉は分かるが発音が不明瞭書く・読む影響が出やすい比較的保たれやすい関わりのヒント絵・写真・選択肢など言葉以外の手段を併用ゆっくり言ってもらう・五十音表や筆談を補助に家族が無理に見分ける必要はありませんが、「発音がうまくいかないこと」と「言葉が出てこないこと」は別の困りごとだと知っておくと、関わりの引き出しが増えます。どちらの、あるいは両方の不自由かは、STの評価で整理できます。家族が陥りやすい誤解|「分かっていない」ではない「言葉が出ない=何も分からなくなった」は、最もよくある、そして最も本人を傷つける誤解です。失語症のある方を支えるなかで、家族がつい陥ってしまう関わりがあります。どれも本人を思う気持ちから出たものなのに、結果として本人を深く傷つけてしまうことがある——悪気がないからこそ気づきにくい誤解を見ていきましょう。「ボケた」ではない|知性は失われていない失語症で言葉が出なくなった本人を前に、「急に何も分からなくなった」「ボケてしまったのでは」と感じるご家族がいます。無理もない反応ですが、失語症は「ボケた(認知症になった)」のとは違います。前章の通り、思考能力——考える力、判断する力、これまで培ってきた知性や人格——は保たれています。失われたのは「言葉という道具を扱う力」であって、「中身」ではありません。本人は、目の前の会話の内容も、自分の置かれた状況も、家族が自分をどう見ているかも感じ取っています。だからこそ、「この人はもう分からないから」と本人の前で本人のことを話したり、子ども扱いをしたりすると、それはまっすぐ届いて傷になります。「言葉が出ないこと」と「分かっていないこと」を、どうか切り離して考えてください。よかれと思った関わりが傷つけることも家族の善意が、かえって本人を追い詰めてしまう典型が3つあります。下の表に「やってしまいがちな関わり」と「本人がどう感じるか」を整理しました。責めるためではなく、気づくためのものです。やってしまいがちな関わり背景にある家族の気持ち本人が感じること赤ちゃん言葉・子ども扱いの口調で話す分かりやすくしてあげたい一人の大人として扱われず、惨めで悲しい本人が言いかけているのに先回りして代弁する待たせるのが気の毒、早く楽にしたい自分で伝える機会を奪われ、もどかしさが募る本人を飛ばして、付き添いの人とだけ話す本人に聞いても通じないと思い込む「いないもの」にされたようで、孤立するたとえば、本人が一生懸命に言葉を探しているそのとき、家族が「あー、お茶でしょ」と先に言ってしまう。よかれと思っての一言ですが、本人には「また最後まで言えなかった」という体験の積み重ねに。それが毎日続けば、「どうせ言っても」と本人は口を閉ざしていきます。本人のもどかしさ・孤立・落ち込みを想像する失語症のある方の心の中を想像してみてください。言いたいことははっきりある。相手の言うことも分かる。それなのに言葉が出ず、焦るほど遠のく。やっと口にした言葉が別の言葉に置き換わり、怪訝な顔をされる。——このもどかしさが、一日に何度も繰り返されるのです。こうした体験が続くと、本人は深い孤立感や落ち込みを抱えやすくなります。人と会うのが億劫になり、好きだった集まりから足が遠のき、笑顔が減っていく。それは「やる気がなくなった」のではなく、「伝わらないことのつらさ」から自分を守ろうとしている姿でもあります。私たちが訪問の現場で大切にしているのは、まずこの気持ちに寄り添うこと。「あなたの言いたいことを分かろうとしているよ」という姿勢が伝わり、分かろうとしてくれる人がそばにいる——その安心感そのものが、本人が再び人とつながろうとする力になります。今日からできる会話の工夫|伝える・受け取るコツ失語症の会話は「うまく話させる」ことではなく、「お互いに通じ合う」ことが目的。言葉以外の手段をどんどん使ってください。ここからは実践です。失語症のある家族との会話のコツは、難しい専門技術ではなく、今日の夕食の場からでも始められることばかり。厚生労働省も意思疎通支援の内容として「会話における理解や表現の補助(道具や絵の利用等)」を挙げています(出典:厚生労働省「意思疎通支援」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/sanka/shien.html )。「伝える」ときと「受け取る」とき、分けて見ていきましょう。「伝える」ときのコツ|短く・ゆっくり・見せながらまず、こちらから伝えるときのコツです。土台になるのは「環境を整えること」。テレビがついていたり何人もが同時に話していたりすると、失語症のある方は言葉を追うのがとても難しくなります。できるだけ静かな場所で、1対1で、向かい合って話すことから。本人が安心して聞ける状況を作るだけで、伝わりやすさは大きく変わります。話し方の基本は、ゆっくり、短く、一度に一つ。「お茶を飲む?」「散歩、行く?」と短く区切り、一つ伝えて反応を待ってから次へ。そして言葉だけに頼らず、表情やジェスチャー、絵、写真、実物、文字を添えてください。「お茶」と言いながら湯のみを指させば、言葉が届きにくくても意図は伝わります。気をつけたいのは、ゆっくり話すことと子ども扱いはまったく別だということ。声を大きくする必要も赤ちゃん言葉にする必要もありません。大人同士の対話として丁寧に話す——その姿勢が本人の尊厳を守ります。下の表に「伝える」ときのコツをまとめます。場面具体的な工夫ねらい話す前の環境づくりテレビを消す・静かな場所・1対1で向き合う言葉に集中できるようにする話すスピードゆっくり、短く、一文を区切って言葉を追う負担を減らす伝える量一度に一つの用件だけ情報の混乱を防ぐ言葉以外の手段表情・身ぶり・絵・写真・実物・文字を添える言葉が届かなくても意図を伝える態度大人として丁寧に。大声や赤ちゃん言葉は使わない本人の尊厳を守る「受け取る」ときのコツ|待つ・選ぶ・責めない次に、本人の伝えたいことを「受け取る」ときのコツです。最大のポイントは、せかず待つこと。沈黙が続くと家族はつい埋めたくなりますが、その数秒を待てるかどうかで、「最後まで言えた」という体験を持てるかが変わります。質問の仕方にも工夫を。「何が食べたい?」のような開かれた問いは答えるのがとても難しいもの。代わりに「お腹すいた?」「うどんがいい?」と、「はい」「いいえ」で答えられる形に。さらに、2〜3の選択肢を実物や絵で見せて指さしで選んでもらう方法も有効です。言葉で答えなくても、指さし一つで気持ちは伝わります。そして、間違いを責めないこと、分かったふりをしないこと。言い間違えても訂正を重ねると萎縮させますし、分からないのに「うんうん」とうなずくと「結局伝わっていない」と感じ取られます。分からないときは「ごめんね、もう一度」と正直に伝え、ジェスチャーや指さしに切り替える。その誠実さが信頼につながります。下の表に「受け取る」ときのコツをまとめました。場面具体的な工夫ねらい言葉を探しているときせかず、数秒〜十数秒待つ「最後まで言えた」体験を支える質問の仕方「はい/いいえ」で答えられる形にする答える負担を減らす選んでもらうとき2〜3の選択肢を絵や実物で見せ、指さしで言葉なしでも意思を表せる言い間違えたとき訂正を重ねず、まず受け止める萎縮させない分からないとき分かったふりをせず「もう一度」と正直に信頼関係を保つやりとりを支える道具|絵・写真・文字・指さし会話を支える「道具」を用意しておくと、毎日のやりとりがぐっと楽になります。特別なものは要らず、家にあるものや手作りから始められます。厚生労働省が意思疎通支援として「道具や絵の利用」を挙げるのも、こうした手段が有効だからです。たとえば、よく使う言葉を絵や写真にした「コミュニケーションボード」。「トイレ」「お茶」「痛い」といった頻出の言葉を一枚にまとめておけば、本人が指さすだけで気持ちを伝えられます。五十音表が役立つ方もいますが、失語症では文字も難しい場合があるため、本人に合うかは試しながら確認してください。下の表に使える道具を整理します。道具使い方向いている場面コミュニケーションボード頻出の言葉を絵・写真にして指さしで伝える日常の要求(トイレ・痛い・お茶など)写真・アルバム家族や場所の写真を見せて話題にする気持ちを共有したいとき・回想実物湯のみ・薬・上着など本物を見せて確認「これ?」と意思を確かめたいとき五十音表一文字ずつ指さして言葉を作る文字が比較的保たれている方筆談・メモこちらの言葉を短く書いて見せる耳からの理解が難しい方大切なのは、「正しい道具」を探すことより、その人に合う組み合わせを一緒に見つけていくことです。ある方には写真がよく効き、別の方には実物が伝わる。試しながら、本人が「これなら通じる」と感じられる手段を増やしていきましょう。焦らず続ける|回復とリハビリ、毎日の会話の力失語症の回復には時間がかかり、その道のりは人それぞれ。焦らず、長い目で。毎日の会話そのものが、何よりのリハビリになります。失語症と向き合う家族にとって、いちばんつらいのは「これからどうなるのか」が見えないことかもしれません。その不安のなかで、回復をどう捉え、毎日の生活のなかでどう本人を支えるかを考えます。回復は人それぞれ|長い目で見守るまず知っておいてほしいのは、失語症の回復には時間がかかり、その程度や速さには大きな個人差があるということ。発症から数か月で大きく改善する方もいれば、長い時間をかけて少しずつ変化していく方もいます。どこまで回復するかも一人ひとり異なり、「いつまでに、ここまで」と一律に言えるものではありません。だからこそ、ほかの人や過去の本人と比べて焦らないことが大切です。「前はもっと話せたのに」という落胆は自然ですが、その焦りは本人にも伝わります。昨日より今日、ほんの少しでも通じ合えた瞬間に目を向ける。回復は進んだり停滞したりを繰り返しながら長い時間をかけて形づくられるもの。長い目で見守る姿勢が、本人にも家族にも支えになります。見通しで気になることは、主治医や言語聴覚士に尋ねてください。言語聴覚士(ST)のリハビリ失語症のリハビリで中心的な役割を担うのが、言語聴覚士(ST)です。STは、話す・聞く・読む・書くといった言語の機能や飲み込み(嚈下)の評価とリハビリを専門とする国家資格を持つ専門職。本人のタイプや程度をていねいに評価し、その人に合った訓練を組み立てます。STのリハビリは、単に「言葉の練習」をするだけではありません。残された力を活かし、苦手な部分を補う手段(絵や文字、ジェスチャーなど)を一緒に見つけ、本人が日常のなかで「通じる」という実感を取り戻せるように支えます。家族にも、その人に合った接し方や会話の工夫を助言してくれます。在宅では、訪問リハビリのなかでSTのリハビリを受けられる場合があります。STがどのように失語や飲み込みを支えるのかは、訪問リハビリで受けられる言語聴覚士(ST)の嚈下・失語支援とは?で詳しく解説しています。リハビリの細かな内容や進め方は、主治医とSTが本人の状態を見ながら決めていく領域です。家族が専門的な訓練を肩代わりする必要はありません。家族の役割は、STから教わった関わり方を日々の暮らしのなかで続け、本人の「話したい」気持ちを支えることにあります。毎日の会話が力になるここがこの章でいちばんお伝えしたいことです。専門職によるリハビリは週に数回、限られた時間です。けれど、本人が過ごす時間の大半は家族との日常のなか。だからこそ、毎日の会話そのものが、何よりのリハビリになります。完璧な言葉でなくてもかまいません。発音が不明瞭でも、言葉が一つしか出なくても、指さしやうなずきだけでも、「通じた」という体験を積み重ねること——それが本人の自信を育て、「また話してみよう」という意欲につながります。逆に間違いを恐れて話さなくなり、家族も気をつかって話しかけなくなると、せっかくの機会が失われます。天気の話でも、テレビを見ながらの一言でもいい。うまく言葉が返ってこなくても、「そうだね」「気持ちいいね」と語りかけ続けてください。その積み重ねが本人の世界を狭めずに保ち、回復の土台を支えます。「立派に会話を成立させなくていい。通じた小さな瞬間を一緒に喜んでください」——私たちがいつもお伝えしていることです。一人で抱えない|相談先と使える支援失語症のある方と家族を支える仕組みは、地域にちゃんとあります。家族だけで抱え込まず、つながれる先を知っておいてください。ここまで家庭でできる工夫を中心にお伝えしてきましたが、家族だけですべてを背負う必要はありません。失語症のある方と家族を支える専門職、当事者同士のつながり、公的な制度——使える資源は地域にあります。代表的なものと最初の相談先をまとめます。失語症の支援者・つながりまず知っておいてほしいのが、「失語症者向け意思疎通支援者」という存在です。これは、失語症のある方とのコミュニケーション技術を習得した支援者で、外出や対話の場面で意思疎通を手助けします。厚生労働省の「意思疎通支援」の枠組みのなかで、市区町村や都道府県が障害者総合支援法(障害のある方への福祉サービスを定めた法律)に基づいて養成・派遣しています(出典:厚生労働省「意思疎通支援」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/sanka/shien.html )。利用できるかは自治体の障害福祉窓口で確認してください。もう一つ、心の支えになるのが当事者・家族同士のつながりです。失語症のある方やその家族が集まる「失語症友の会」といった集まりが各地にあり、同じ経験をした人と話すことで「うちだけじゃなかった」という安心や、日々の工夫の知恵を分かち合えます。失語症は外から見えにくく孤立しやすい障害だからこそ、こうしたつながりの価値は大きいもの。情報は自治体の窓口や訪問看護師に尋ねてみてください。使える制度|手帳・障害福祉サービス失語症のように音声・言語機能に障害が残った場合、身体障害者手帳(音声・言語機能の障害)の対象となることがあります。取得すると障害福祉サービスや各種の支援を受けられる場合があり、暮らしを支える選択肢が広がります。対象かどうかや等級の判定、手続きは状態や自治体によって異なり、市区町村の障害福祉窓口が窓口です(出典:厚生労働省「障害者福祉」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/index.html )。利用できるサービスには、訪問看護や訪問リハビリ、デイサービスなどがあります。脳卒中後の失語症では年齢や状態によって介護保険が使えることもあり、組み合わせは一人ひとり違います。下の表に相談先と役割の例を整理しました。ただし、対象や手続きは自治体や本人の状態によって異なるため、必ず窓口で確認してください。相談・支援の種類主な役割窓口の例身体障害者手帳(音声・言語機能の障害)障害福祉サービス等の利用につながる市区町村の障害福祉窓口失語症者向け意思疎通支援者外出・対話の場面で意思疎通を手助け市区町村・都道府県の障害福祉窓口失語症友の会など当事者・家族のつながり、情報交換自治体窓口・病院・訪問看護師に相談訪問看護・訪問リハビリ在宅での観察・リハ・家族支援ケアマネジャー・主治医・訪問看護ステーション介護保険サービスデイサービス・福祉用具など(対象者)地域包括支援センター・市区町村どこに相談すればいいか「結局、最初にどこへ相談すればいいの」と迷ったときの目安をお伝えします。医療やリハビリに関すること——回復の見通し、リハビリの内容、体調の不安——は、主治医や担当の言語聴覚士に相談するのが基本。退院後なら、かかりつけ医や入院先の医療相談室(ソーシャルワーカー)も力になってくれます。制度やサービス、手帳のことは、市区町村の障害福祉の窓口へ。介護保険の対象になりそうな場合や在宅での暮らし全般の困りごとは、地域包括支援センター(高齢者の暮らしを支える地域の総合相談窓口)が医療・介護・福祉の機関への橋渡し役に。担当のケアマネジャーがいれば、まずその方に相談するのが近道です。在宅で療養している場合は、訪問看護師も日々の相談相手になります。一つの窓口で答えが出なくても、つながった先が次を教えてくれます。家族だけで抱え込まず、まず一本どこかに連絡してみてください。町田・相模原の訪問看護でできること|在宅での失語症支援脳卒中後の失語症は、退院してからが本当のスタートです。整った病院から自宅に戻り、家族が日々の関わりを担うようになったとき、迷いは尽きません。そんな在宅の暮らしを、訪問看護・訪問リハビリは継続的に支えられます。私たちピース訪問看護ステーションも、町田市鶴川を拠点に、相模原市・多摩市を含む東京都南部で支えています。訪問看護師や訪問リハビリのスタッフは、自宅で本人の状態を観察し、言語聴覚士や主治医と連携しながら、家族へコミュニケーション方法を助言します。本人の意欲や気持ちを支え、必要に応じて地域資源につなぐ役割も担います。脳卒中そのものの再発予防や原因については脳梗塞の原因とは?予防と再発防止における訪問看護の役割で、脳梗塞後の在宅リハビリの進め方については脳梗塞の訪問リハビリとは?自宅で行う効果的なリハビリ方法と注意点で詳しくお伝えしています。町田市・相模原市の現場から町田・相模原の在宅で実際にあった支援を、個人が特定されないかたちで一つご紹介します。脳卒中の後遺症で失語症が残り、人の話は分かるのに自分から言葉を出すのが難しいタイプで、本人が思うように話せなくなったご家庭がありました。退院して自宅に戻ったものの、家族も「どう話しかけたらいいのか分からない」と戸惑い、気まずさから会話が減っていったといいます。本人は日中、テレビの前で黙って過ごすことが増えていました。私たちが訪問に入り、まず行ったのは、ご家族と一緒に本人の「いま伝えられること」を探すこと。よく使う言葉を絵カードにして「お茶」「トイレ」「痛い」を指さしで伝えられるようにし、質問を「はい・いいえ」で答えられる形に変える。本人が言葉を探しているときは、家族にも一緒に「待つ」練習をしてもらう。回を重ねるごとに、ぎこちなかったやりとりが少しずつかみ合っていきました。あるとき本人が絵カードを指さして何かを伝え、家族が「そうか、分かったよ」と応じた瞬間、久しぶりに笑顔が戻ったのです。脳卒中後の認知や生活全般の工夫については高次脳機能障害と暮らしの工夫、家族とできる在宅ケアのヒントもあわせてご覧ください。訪問看護でできることピース訪問看護ステーションが失語症のある方とご家族に在宅でできることを、下の表に整理しました。一つの事業所で看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が連携し、医療と生活の両面を支えられるのが強みです。支援の領域具体的な内容本人の状態観察全身状態・再発の兆候・気持ちの変化を確認。入浴や服薬の確認など生活場面でも絵や選択肢で意思を確かめる専門職との連携言語聴覚士・主治医と情報を共有し、リハや方針をつなぐ家族への助言その人に合った会話の工夫・道具の使い方を具体的に提案本人の気持ちの支え「話したい」気持ちを尊重し、自信と意欲を支える地域資源へのつなぎ手帳・障害福祉サービス・友の会・地域包括などへ橋渡し「うちの場合はどう関わればいいのか」という悩みは、ご家庭ごとに違い、一般的な工夫だけでは解決しきれない場面も多いもの。本人を直接見ながらご家族と一緒に方法を考えていける訪問看護・訪問リハビリが役に立ちます。町田・相模原・多摩で失語症のある方を支えるご家族が少しでも肩の荷を下ろせるよう、私たちは伴走します。まとめ失語症は「言葉」の障害であって、「考える力」の障害ではありません。本人は分かっているのに伝えられないもどかしさを抱えている——この一点を家族が理解できると、関わりは大きく変わります。短く・ゆっくり・見せながら伝え、せかず・選んでもらい・責めずに受け取り、毎日の会話そのものをリハビリにしていく。家族だけで抱え込まず、専門職や制度、当事者のつながりも頼ってください。今日からの一歩は、本人が言葉を探すとき、口を出さずに数秒待つこと。ピース訪問看護ステーションにご相談ください脳卒中後の失語症で「どう話しかければいいか分からない」と悩むご家族へ。ピース訪問看護ステーションは、町田市鶴川を拠点に、状態観察から言語聴覚士・主治医との連携、ご家族への助言まで在宅で支えます。こんな方はぜひご相談ください:脳卒中後に家族の言葉が不自由になり、接し方に戸惑っている会話が減って、本人の表情や意欲が乏しくなった失語症のリハビリや使える制度・相談先を知りたいピース訪問看護ステーションができること:本人の状態を観察し、言語聴覚士・主治医と連携した在宅支援ご家族に合った会話の工夫・道具の使い方を提案身体障害者手帳・障害福祉サービス・地域資源につなぐ町田市・相模原市・多摩市など東京都南部を中心に対応しています。まずはお気軽にお問い合わせください。関連記事訪問リハビリで受けられる言語聴覚士(ST)の嚈下・失語支援とは?高次脳機能障害と暮らしの工夫、家族とできる在宅ケアのヒント脳梗塞の訪問リハビリとは?自宅で行う効果的なリハビリ方法と注意点脳梗塞の原因とは?予防と再発防止における訪問看護の役割参考文献厚生労働省「意思疎通支援」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/sanka/shien.html厚生労働省「障害者福祉」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/index.htmlよくある質問(FAQ)Q1. 失語症は時間がたてば元通りに話せますか?A. 回復の程度や速さには大きな個人差があり、「いつまでにここまで」とは言えません。大きく改善する方も、ゆっくり変化する方も。焦らず、見通しは主治医やSTに。Q2. 言葉が出ないので、もう以前のような会話は無理ですか?A. 言葉の量にこだわらなければ、通じ合うことはできます。「はい・いいえ」の質問や絵・写真・指さしを使えば気持ちは伝わります。完璧より「通じた」瞬間の積み重ねが自信を支えます。Q3. 本人がうまく言えずに怒ったり、ふさぎ込んだりします。A. それは「分かっているのに伝えられない」もどかしさの表れで、本人が一番つらい思いをしています。責めず、言葉を探すときは待ち、伝わったら一緒に喜んでください。分かろうとする人がそばにいる安心感が支えに。Q4. 失語症と構音障害は何が違うのですか?A. 失語症は、言葉を理解したり組み立てたりする脳の働きの障害で、話す・聞く・読む・書くに不自由が出ます。構音障害は発音に関わる器官の運動の障害で、言いたい言葉は分かるのに発音が不明瞭になる状態。見分けはSTが。Q5. 専門的なリハビリを家族が自宅でやってあげるべきですか?A. 専門的な訓練を家族が肩代わりする必要はなく、内容はSTや主治医が組み立てます。家族の役割は、教わった接し方を毎日続け、本人の「話したい」気持ちを支えること。関わり方は訪問看護へ。【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理、地域医療連携、在宅看取り支援に積極的に取り組んでいる。island-piece.jp 株式会社isLand|訪問看護・居宅介護支援・訪問介護|町田市