インフルエンザは「いつ流行するのか」「ワクチンはいつ打てばよいのか」「家族にうつさないコツは?」──毎年の疑問に、在宅医療・訪問看護の現場視点で答えます。本稿は、公的機関の最新情報に基づき、市民の皆さまが今日から実践できる対策と、症状が出たときの受診の目安、学校・職場での扱いまで丁寧に整理しました。お子さんやご高齢の方と暮らす家庭、基礎疾患のある方、妊娠中の方にも役立つ内容です。迷ったときに見返せる保存版としてご活用ください。1. インフルエンザは「いつ」流行する?(日本と世界の季節性)日本では例年11月ごろに流行が始まり、1〜2月にピーク、3月まで続くのが一般的です。北半球と南半球では季節が逆転し、年間を通じてどこかの地域で流行が起こっているため、海外旅行や来訪者の増加で国内流行が早まることもあります。熱帯地域では雨季に流行しやすい傾向が報告されています。年間の流行カレンダー(日本の傾向)月状況の目安家庭の備え9〜10月情報収集・接種予約の開始母子手帳・お薬手帳の確認、加湿器の点検11月流行開始ワクチン接種、手洗い・咳エチケットの強化1〜2月ピーク混雑回避、室内湿度50〜60%、高齢者の体調観察3月終息へ学校・職場の出席停止期間の確認、再流行に注意4〜8月低活動期(散発)海外渡航時の注意、基本の対策継続出典:国立感染症研究所「インフルエンザとは」 https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/a/flu-intro.html2. 近年の傾向と2024/25シーズンに向けた見通し直近のシーズンでは、地域差はあるものの、長期にわたって患者報告数が高止まりするなど、例年より流行時期が前倒し・長期化するケースがみられました。国内外のサーベイランスでは、複数のA/B型が入れ替わりながら流行するため、局地的に波が続くことがあります。こうした背景から、ワクチン接種は流行前(秋)に早めに検討し、家庭内の基本対策を“季節行事”として習慣化しておくのが有効です。出典:感染症発生動向年報 IASR「季節性インフルエンザの最近の状況(2023/24)」 https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr/510-iasr-others/12448-511r04.html3. 予防接種の基礎:対象・回数・効果・受けどきワクチンは発症予防と重症化予防に一定の効果があります。全年齢で万能ではありませんが、特に高齢者・基礎疾患のある方・妊娠中の方・乳幼児がいる家庭では、家庭内二次感染の抑制にも寄与します。接種対象と回数(日本)13歳以上:原則1回6か月以上13歳未満:2回(2〜4週間隔)高齢者(65歳以上)と60〜64歳で一定の障害のある方:予防接種法に基づく定期接種(自治体が実施)効果の現れ方と持続免疫がつくまで:接種後およそ2週間効果の持続:概ね数か月(約5か月程度)とされます。流行ピーク(1〜2月)を見据え、10〜12月上旬までの完了がおすすめです。よくある副反応注射部位の腫れ・痛み、発熱、倦怠感など。ほとんどは軽症かつ一過性。体調不良時の接種は避け、基礎疾患や妊娠中の方は主治医と相談を。予防接種 早見表区分回数・間隔受けどきの目安ポイント13歳以上1回10〜12月上旬ピークに間に合うよう2週間前倒し6か月〜13歳未満2回(2〜4週)10〜11月に1回目2回目は3〜4週後を目安に65歳以上・60〜64歳の対象者年1回(定期)自治体期間に合わせる料金・実施期間は自治体で異なる出典:厚生労働省「令和6年度インフルエンザQ&A(接種回数・接種時期・有効性)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2024.html出典:厚生労働省「インフルエンザワクチン(季節性)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/influenza/index.html出典:前橋市医師会「高齢者とインフルエンザワクチン(効果は約5か月)」 https://maebashi.gunma.med.or.jp/healthmemo/%E9%AB%98%E9%BD%A2%E8%80%85%E3%81%A8%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AB%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B6%E3%83%AF%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%B3/4. 家庭でできる予防:手洗い・換気・湿度・マスクのコツ最も効果的なのは、手指衛生・咳エチケット・換気の“基本セット”を家族でそろえて続けること。特に在宅での介助・看病時は、マスクの正しい着脱と手洗いの順番が肝心です。家庭の予防チェックリスト項目コツありがちNG手洗い帰宅時・食事前・トイレ後。20秒以上、石けん+流水アルコールだけに頼るうがいのどが乾く前にこまめにうがい薬の多用で粘膜を傷める換気1時間に数回、対角線の窓を開ける1日1回だけの“形だけ換気”湿度50〜60%を維持(加湿器+洗濯物干し活用)加湿しすぎで結露・カビマスク看病・混雑・医療機関受診時は不織布鼻出し・顎マスク共有物タオルは個別、ドアノブ等は1日1回拭き掃除家族全員でタオル共用出典:厚生労働省「令和6年度インフルエンザQ&A(予防方法)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2024.html5. 風邪とインフルエンザ、どう違う?受診の目安インフルエンザは“急に高熱・全身症状が強い”のが特徴。一方で普通の風邪は、のどの痛みや鼻水が中心で、発熱も軽めのことが多いとされます。次のような場合は、早めに医療機関に相談を。38℃以上の発熱が続く/急な悪寒・筋肉痛が強い乳幼児・妊娠中・高齢者・基礎疾患(心肺疾患、腎疾患、糖尿病、免疫低下など)がある呼吸が苦しい、意識がもうろう、脱水が疑われるインフルエンザと新型コロナの同時流行期で、鑑別が必要受診の目安(家庭向けメモ)状況様子を見る受診を検討すぐ受診・救急成人37℃台で食事・水分がとれる38℃超が2日以上続く意識障害、呼吸困難、強い脱水乳幼児機嫌・哺乳良好高熱+ぐったり/水分がとれないけいれん、顔色不良、尿が極端に少ない高齢者平熱でも息切れ・せき増悪発熱+持病悪化の兆候意識低下、SpO2低下、胸痛出典:日本医師会「インフルエンザと風邪の違い」 https://www.med.or.jp/forest/health/fever/influenza/influenza/influenza00.html出典:石川県「令和6年度インフルエンザQ&A(抗菌薬は効かない/外出自粛の目安等)」 https://www.pref.ishikawa.lg.jp/kansen/menu/documents/r6_inflienzae_qa.pdf6. かかったときの過ごし方と、学校・仕事の出席停止無理に登校・出勤しないことが、家族と社会を守る最短ルート。学校では「発症後5日経過」かつ「解熱後2日(幼児は3日)」が目安です。大人の職場復帰は就業規則によりますが、解熱後もしばらくは咳エチケットとマスク着用を。家庭内では看病者を可能なら一人に固定し、タオル・食器の共用は避けましょう。水分・電解質補給、十分な睡眠、室内を適切な温湿度に保つ解熱剤の使用は、医師・薬剤師の指示に従う抗菌薬(抗生物質)はウイルスに効かない。細菌の二次感染が疑われる時のみ出席停止の数え方(例)発症日解熱日小学生以上の登校可能日幼児の登園可能日月曜(0日目)水曜土曜(発症後5日&解熱後2日)日曜(解熱後3日)出典:厚生労働省「令和6年度インフルエンザQ&A(外出を控える期間、学校での取扱い)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2024.html出典:東京都教育委員会資料「学校におけるインフルエンザ出席停止期間」 https://www.metro.ed.jp/miyake-h/assets/filelink/filelink-pdffile-5523.pdf7. 高齢者・基礎疾患・妊娠中・乳幼児に多いリスクと配慮高齢者:肺炎などの合併症リスクが高い。年1回の定期接種を検討し、体調急変に注意。基礎疾患がある方(心臓・腎臓・呼吸器・糖尿病・免疫低下など):早めの受診体制と連絡ノートで情報共有。妊娠中:不活化ワクチンは接種可能とされています。主治医と相談を。乳幼児:けいれん・急性脳症など重症化に注意。解熱後もしばらく安静に。家族構成別・おすすめ対策家族の状況優先したい対策在宅ケアのコツ高齢者と同居定期接種+室内環境整備室温20〜22℃、湿度50〜60%持病がある主治医と受診計画を事前共有かかりつけ薬局に薬歴を連携乳幼児がいる家族全員の手洗い徹底おもちゃの拭き掃除は次亜塩素酸0.02%目安出典:厚生労働省「インフルエンザワクチン(季節性)/定期接種対象」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/influenza/index.html出典:厚生労働省「65歳以上に実施している予防接種」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/years-65.html8. 町田市の情報:定期接種の期間と確認先東京都町田市では、高齢者のインフルエンザ定期接種が毎年度、秋〜冬に実施されます。期間・自己負担・会場は年度により異なるため、必ず市の最新ページをご確認ください(2024年度は2025年1月31日で終了)。確認先:町田市公式サイト「高齢者インフルエンザ・新型コロナワクチン定期接種」こどもの任意接種:小児の定期接種と区別し、季節性インフルエンザは「任意接種」です。出典:町田市「高齢者インフルエンザ・新型コロナワクチン定期接種」 https://www.city.machida.tokyo.jp/iryo/iryo/yobousessyu/koureishainnfuruennza.html出典:町田市「子どもの予防接種の概要(任意接種:季節性インフルエンザ)」 https://kosodate-machida.tokyo.jp/soshiki/3/1/9/1187.html9. 訪問看護・在宅リハの視点:現場で効く“ほんのひと工夫”訪問看護の現場では、標準予防策(手指衛生・個人防護具の適切使用)と経路別予防策(飛沫・接触)を状況に応じて組み合わせます。発熱者のケア後は、玄関先で手袋→エプロン→マスクの順に外し、廃棄物は密閉して持ち帰る/所定の方法で処理します。過剰な防護は安心感につながる一方、コミュニケーションを阻害しがち。必要十分な防護と、穏やかな声かけの両立がQOLを保ちます。家庭での看病者は可能なら一人に固定し、短時間でケアを終える使い捨て手袋は手洗いの代わりにならない。前後で手指衛生を実施水回り・ドアノブ・スイッチは1日1回の拭き掃除(次亜塩素酸ナトリウム0.02%目安)介護・療養用具は「使用者ごと」に分け、洗浄→乾燥→保管をルーチン化出典:大阪府医師会「在宅ケアにおける感染対策・手指衛生・物品消毒」 https://www.osaka.med.or.jp/img/doctor/care-manual/care-manual-3-0.pdf出典:日本看護協会「訪問看護ステーション等で働く看護職向け情報」 https://www.nurse.or.jp/nursing/kikikanri/covid_19/homonkango/index.html出典:厚生労働省「介護現場における感染対策の手引き」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000814179.pdf10. よくある質問(Q&A)Q1. インフルエンザと普通の風邪の一番の違いは?A. 発症の急激さと高熱・全身症状です。のど風邪中心の軽症なら様子見可ですが、38℃以上が続く、呼吸が苦しい、基礎疾患がある場合は受診を検討してください。出典:日本医師会「インフルエンザと風邪の違い」 https://www.med.or.jp/forest/health/fever/influenza/influenza/influenza00.htmlQ2. ワクチンは何回?効果はどのくらい?A. 13歳以上は1回、6か月〜13歳未満は2回が基本。効果は接種後約2週間で現れ、概ね数か月(約5か月)続きます。出典:厚生労働省「令和6年度インフルエンザQ&A」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2024.html出典:前橋市医師会「高齢者とインフルエンザワクチン」 https://maebashi.gunma.med.or.jp/healthmemo/%E9%AB%98%E9%BD%A2%E8%80%85%E3%81%A8%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AB%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B6%E3%83%AF%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%B3/Q3. 学校はいつから行ける?A. 発症後5日かつ解熱後2日(幼児は3日)を目安に。詳細は学校からの指示に従ってください。出典:東京都教育委員会資料「学校におけるインフルエンザ出席停止期間」 https://www.metro.ed.jp/miyake-h/assets/filelink/filelink-pdffile-5523.pdfQ4. コロナと同時流行(同時感染)はありますか?A. 季節によっては同時流行が起こりえます。発熱外来では同時検査が可能です。基本の対策(手洗い・換気・マスク)を継続しましょう。出典:厚生労働省「新型コロナ・インフル同時流行に備えて」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kansentaisaku_00003.htmlまとめインフルエンザは、流行前の準備(情報収集・接種計画)と家庭の基本対策の徹底で、大きくリスクを下げられます。発症したら無理をせず、学校・職場のルールに沿って回復を最優先に。家庭内の看病は“必要十分な防護+やさしい声かけ”が合言葉です。迷ったら、お住まいの自治体情報やかかりつけ医に相談を。本稿が皆さまの冬支度の“地図”になれば幸いです。ご不安やご相談は、ピース訪問看護ステーション までお気軽にどうぞ。関連記事訪問看護の視点でわかる「寒暖差疲労」完全ガイド:在宅療養者と家族が今日からできる対策秋の体調不良(秋バテ)を専門職が徹底解説:原因・セルフチェック・訪問看護の支援まで【2025年最新】新型コロナ自宅待機期間は何日?陽性者・濃厚接触者の最新ルールまとめ参考文献一覧国立感染症研究所「インフルエンザとは」 https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/a/flu-intro.html感染症発生動向年報 IASR「季節性インフルエンザの最近の状況(2023/24)」 https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr/510-iasr-others/12448-511r04.html厚生労働省「令和6年度インフルエンザQ&A」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2024.html厚生労働省「インフルエンザワクチン(季節性)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/influenza/index.html日本医師会「インフルエンザと風邪の違い」 https://www.med.or.jp/forest/health/fever/influenza/influenza/influenza00.html石川県「令和6年度インフルエンザQ&A」 https://www.pref.ishikawa.lg.jp/kansen/menu/documents/r6_inflienzae_qa.pdf東京都教育委員会「学校におけるインフルエンザ出席停止期間」 https://www.metro.ed.jp/miyake-h/assets/filelink/filelink-pdffile-5523.pdf町田市「高齢者インフルエンザ・新型コロナワクチン定期接種」 https://www.city.machida.tokyo.jp/iryo/iryo/yobousessyu/koureishainnfuruennza.html町田市「子どもの予防接種の概要」 https://kosodate-machida.tokyo.jp/soshiki/3/1/9/1187.html大阪府医師会「在宅ケアにおける感染対策・手指衛生・物品消毒」 https://www.osaka.med.or.jp/img/doctor/care-manual/care-manual-3-0.pdf日本看護協会「訪問看護ステーション等で働く看護職向け情報」 https://www.nurse.or.jp/nursing/kikikanri/covid_19/homonkango/index.html厚生労働省「介護現場における感染対策の手引き」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000814179.pdf本記事の執筆者・監修者プロフィール【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理に長け、地域医療連携や在宅看取り支援にも積極的に取り組んでいる。