新型コロナウイルス(COVID-19)が国内で初めて確認されてから5年以上が経過しました。2023年5月の感染症法上「5類」移行は社会生活に大きな変化をもたらし、マスクの着用義務や行動制限が緩和され、人々の暮らしは徐々にコロナ以前の姿を取り戻しつつあります。しかし、2025年現在も感染は完全には収束していません。季節ごとの流行や新たな変異株の出現、後遺症問題など、依然として私たちはコロナと共に暮らしています。本記事では、最新の感染状況から症状や予防策、医療体制の変化、そしてコロナ禍で注目が高まった訪問看護の役割まで、現場の情報を交えて詳しく解説します。1. 2025年8月時点のコロナ感染状況2025年8月時点での全国感染動向は、夏季特有の人の移動やイベントによる小規模な波が観測されている状態です。国立感染症研究所や厚生労働省の定点報告データによれば、都市部を中心に報告数が増加傾向にあります。特に観光地や大規模イベント会場周辺では、家族や友人間でのクラスター事例も見られます。地域定点あたり報告数前週比コメント北海道6.5+0.8観光客増加や祭りシーズンによる影響東京8.2+1.1大規模コンサート・スポーツイベントが集中大阪7.9+0.9高温多湿でも屋内感染が発生福岡6.1-0.3減少傾向だが油断は禁物補足: 「定点あたり報告数」は、指定医療機関が1週間に報告した感染者数を、その医療機関数で割った平均値です。受診・検査で陽性と判明した人数が基になっています。感染状況の特徴として、一部地域で感染の増加が見られる一方、他地域では減少傾向という「地域間差」が目立っています。これは人口密度やイベント開催状況、気温・湿度などが複合的に影響していると考えられます。2. 主な変異株と特徴2025年夏の流行株は、NB.1.8.1株とXFG株が中心です。どちらもオミクロン株系統の派生型ですが、症状や潜伏期間に違いがあります。変異株潜伏期間主な症状特徴NB.1.8.12〜4日発熱、喉の痛み、強い倦怠感感染力が非常に高く、家庭内・職場内での二次感染が多いXFG3〜5日咳、鼻水、関節痛、微熱軽症例が多いが、咳が長引く傾向これらの変異株はいずれも感染力が従来株より強く、短期間で家庭内全員が感染するケースも珍しくありません。特にNB.1.8.1は潜伏期間が短く、症状が出る前から感染力を持つため、感染拡大を防ぐのが難しい株です。3. コロナの最新症状と潜伏期間現在のコロナ症状は、初期のデルタ株流行期と比較すると重症化率は低いものの、生活への影響は依然として大きいのが特徴です。特に発熱・喉の痛みは非常に多く、倦怠感や咳、鼻水が続く人もいます。症状発生頻度(2025年報告)発熱(38℃前後が多い)喉の痛み(嚥下痛を伴うことも)咳(乾いた咳が長引く例あり)倦怠感(全身のだるさ)鼻水・鼻づまり関節痛・筋肉痛潜伏期間はおおむね2〜5日ですが、変異株によって短縮傾向があります。潜伏期間が短い株では、発症前から周囲に感染させるリスクが高く、感染制御の難しさを増しています。4. 重症化リスクが高い人とは重症化の危険性は、高齢者と基礎疾患を持つ人で高くなります。これらの条件が複数重なると、入院や酸素投与が必要になる可能性が大きくなります。年齢:65歳以上は重症化リスクが顕著に上昇基礎疾患:糖尿病、心疾患、腎不全、慢性呼吸器疾患など免疫抑制状態:がん治療中、免疫抑制薬の使用中妊娠後期:肺活量の低下や免疫変化によりリスク増医療機関では、これらの高リスク群には早期抗ウイルス薬投与や在宅酸素療法の導入が検討されます。5. 自宅療養と医療機関受診の目安自宅療養が可能な場合発熱や咳が軽く、食欲が保たれている呼吸が楽で、酸素飽和度(SpO₂)が96%以上基礎疾患がない、または安定している医療機関を受診すべきサイン息苦しさや呼吸困難高熱(38℃以上)が3日以上続く意識障害、会話の不自然さ酸素飽和度が94%以下注意: 自宅療養中も、症状の変化を記録し、異常を感じたら迷わず医療機関や救急相談窓口(#7119)に連絡しましょう。6. 感染予防とワクチン最新情報感染予防の基本は「マスク・手洗い・換気」の3つです。特に混雑する屋内や医療機関ではマスク着用が推奨されます。ワクチン情報(2025年)春よりNB.1.8.1株・XFG株対応のブースター接種開始高齢者や基礎疾患保有者は年1〜2回接種が推奨副反応は発熱・倦怠感・注射部位の痛みが多いが、数日で軽快する例が大半7. コロナ後遺症の現状と対策後遺症は軽症例でも発生し、日常生活や仕事・学業に長期的な影響を与える場合があります。主な後遺症発生頻度改善までの期間倦怠感約30%数週間〜数か月咳・喉の違和感約20%1〜3か月嗅覚・味覚障害約10%半年程度集中力低下・ブレインフォグ約15%数か月〜1年補足: 「ブレインフォグ」とは、頭がぼんやりして考えがまとまりにくくなる状態のこと。集中力や記憶力が低下し、日常の作業がしづらくなります。対策:無理な復職・復学を避ける専門外来やリハビリの活用睡眠・栄養・軽い運動の継続8. コロナ禍で広がる訪問看護の役割コロナ禍では、感染を避けるために自宅療養や在宅医療を選ぶ人が急増しました。その中で訪問看護は、患者と医療機関をつなぐ重要な役割を担いました。訪問看護の主な対応自宅でのバイタルサイン測定と症状観察酸素療法・点滴・薬の管理感染予防の指導(マスク着用、手指衛生、部屋の換気)オンライン診療への橋渡し、医師との情報共有現場の声として、「訪問看護師が来てくれることで不安が軽減し、家族の精神的負担も減った」という意見が多く聞かれます。これは、医療面だけでなく心理的サポートの重要性を示しています。9. まとめ新型コロナウイルスは「5類」移行後も私たちの生活の一部として存在し続けています。感染状況の把握、症状や潜伏期間の理解、予防策の継続は今後も欠かせません。さらに、コロナ禍で注目された訪問看護などの在宅医療サービスは、感染症流行期の不安を和らげ、医療を継続的に受けるための大きな支えになります。在宅での療養や介護に不安を感じる方は、専門スタッフがサポートするピース訪問看護ステーションにお気軽にご相談ください。関連記事【2025年最新】コロナ禍と訪問看護の現状と対策、安全なケア提供のために【訪問看護で支える】脱水症の見分け方と正しい対応高齢者の水分摂取量ガイド:健康維持のために必要な知識と実践法を紹介本記事の執筆者・監修者プロフィール【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理に長け、地域医療連携や在宅看取り支援にも積極的に取り組んでいる。