新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2023年5月に感染症法上の5類感染症へと移行しました。それに伴い、自宅待機期間や療養の取り扱いは大きく変化しています。しかし、2025年の現在も「陽性になったら何日休めばいいの?」「濃厚接触者はどうなるの?」といった疑問は根強くあります。本記事では、2025年8月時点の厚生労働省(MHLW)の最新情報に整合させながら、自宅待機(外出を控えることの推奨)に関するルールと、訪問看護の現場で役立つ実践ポイントを網羅的に解説します。1. コロナ自宅待機期間の基本知識新型コロナは5類へ移行し、法律に基づく一律の外出自粛要請はありません。ただし、感染拡大防止の観点から、国は「感染した場合の考え方(推奨)」を示しています。自宅待機(=外出を控えること)の目的は、家庭・職場・学校での二次感染の連鎖を断ち切ること、そして本人の体調悪化に備えることです。自宅待機の目的感染拡大防止:潜伏~急性期はウイルス排出量が多く、他者への感染リスクが高い。体調管理:急変兆候を見逃さず、適切な受診につなげる。社会的配慮:高齢者や基礎疾患のある人への曝露を避ける。区分基本的な考え方備考陽性者発症日を0日目として5日間は外出を控えることが推奨5日目に症状が続く場合は、解熱・症状軽快後24時間経過まで外出を控える濃厚接触者法律上の外出自粛は求められない家族内曝露後7日目までは発症する可能性に留意し、配慮を継続出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について」https://www.mhlw.go.jp/stf/corona5rui.html2. 陽性者の自宅待機期間と解除条件発症日を0日目として5日間は外出を控えることが推奨されています。5日目に症状(発熱、痰、喉の痛みなど)が続いている場合は、解熱剤を使わずに解熱し、症状が軽快してから24時間経過するまで外出を控えるよう求められています。なお、発症後10日が経過するまではマスク着用やハイリスク者との接触回避など周囲への配慮を推奨しています(「10日間の待機義務」ではありません)。状況推奨される行動外出再開の目安軽症(発熱・咳など)発症日0日目→5日目まで外出を控える解熱・症状軽快後24時間+5日経過を満たせば再開可無症状検体採取日を0日目とする6日目以降、症状がなければ再開可(配慮は継続)重症/高リスク個別に医師指示へ従う仕事復帰・外出の可否は必ず主治医判断重要:発症後3日間は感染性ウイルスの排出が多く、5日後には大きく減少することが分かっています。そのため、この期間に外出を控えることが特に有効とされています。出典:厚生労働省 広報誌「厚生労働」2023年7月号 新型コロナウイルス最前線https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202307_00003.html出典:厚生労働省「新型コロナウイルス 療養に関するQ&A」https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001093929.pdf2-1. 推奨タイムライン(目安)経過日数主な推奨補足0~5日外出を控える発症2日前~発症後は感染性が高い。家族と分離・換気徹底6~7日症状なければ外出可。配慮継続マスク着用・ハイリスク者との接触回避8~10日通常生活へ段階的復帰体力低下・咳残存時は無理をしない出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症への対応について」https://www.mhlw.go.jp/content/001092714.pdf3. 濃厚接触者の自宅待機について5類移行以降、保健所による濃厚接触者の特定や法的な外出自粛は原則なし。 ただし、家族が陽性になった直後の7日目までは自分も発症する可能性があり、体調観察と基本的感染対策が推奨されます。濃厚接触者の定義(参考)発症2日前からの接触で、1m以内・15分以上のマスクなし会話など。対応詳細自宅待機法的義務なし(推奨行動での配慮)マスク着用外出・会話時に推奨。高齢者等ハイリスク者との接触回避家庭内対応部屋の分離、共有物品の最小化、トイレ・浴室の消毒出典:厚生労働省「感染症法上の位置づけ変更後の療養に関する Q&A①」https://www.mhlw.go.jp/content/001087453.pdf4. 自宅待機中の生活管理と工夫訪問看護・訪問リハの現場では、“体調変化の早期察知”と“生活機能の維持”を重視します。特に高齢者・慢性疾患のある方では、寝込みによる廃用症候群を防ぐため、無理のない活動設計が重要です。健康観察のポイント(毎日)体温測定(朝夕2回)と症状日誌(咳・呼吸苦・食欲・水分量)。SpO2(パルスオキシメータ)があれば 1日2~3回。変化があればかかりつけ医・受診相談センターへ早めに連絡。在宅でできるセルフケア栄養:たんぱく質(魚・卵・豆)+ビタミン(果物・野菜)。運動:座位での足踏み、立位保持、呼吸筋ストレッチを各5~10分。メンタル:孤立を避け、1日1回は誰かと会話。睡眠衛生を整える。項目推奨内容現場のコツ食事野菜スープ+主菜のたんぱく質調理が難しい日はレトルト・冷凍を活用水分こまめに少量ずつ発熱時は経口補水液を常備運動立ち上がり×5回/朝夕息切れが増えたら中止して休憩呼吸鼻呼吸・口すぼめ呼吸咳はテッシュで覆い速やかに廃棄出典:国立長寿医療研究センター「新型コロナ療養生活支援」https://www.ncgg.go.jp/hospital/korona/index.html5. 自宅待機解除の条件と注意点自宅待機の解除は単に日数を満たせば良いわけではありません。症状の改善状況と日常生活への復帰可否を合わせて考える必要があります。特に高齢者や基礎疾患のある方は、症状が軽快しても体力低下や呼吸機能の低下が続いている場合があり、注意が必要です。解除の一般的な基準発症から5日以上が経過している。解熱剤を使用せず解熱し、かつ症状が軽快して24時間以上経過している。咳や痰の減少、食欲の回復など日常生活を送るうえで問題がない。待機解除後の注意点発症から10日間が経過するまでは不織布マスク着用、人混み回避、高齢者や基礎疾患者との接触をできる限り避けること。職場復帰に関しては、医療・介護・教育機関などは一般職場よりも基準が厳しい場合があり、所属先や産業医の判断を仰ぐ必要がある。子どもや高齢者の家庭では、解除後もしばらくは家庭内での接触を最小限にするなど、追加的な配慮が望ましい。現場からの視点訪問看護では、症状軽快後すぐに活動を再開した結果、倦怠感や呼吸苦が再燃するケースも見られます。そのため、解除後も段階的な社会復帰を意識し、十分な休養とリハビリを組み合わせることが重要です。出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症への対応について」https://www.mhlw.go.jp/content/001092714.pdf6. 家族内感染防止の具体策家庭内での二次感染は起こりやすく、部屋分け・換気・手指衛生の3点が鍵になります。家庭での標準予防策不織布マスクをすき間なく装着(鼻まで覆う)。1時間に数回の換気(窓2か所の対角開放)。石鹸と流水で20秒以上の手洗い、アルコール消毒の併用。タオル・食器・寝具の共用を避ける。トイレ・浴室は使用後の清拭消毒。場面具体策補足食事時間・場所を分ける配膳は世話役を最小限に入浴最後に実施、浴室は換気接触面は洗剤→消毒の順介助マスク・手袋・エプロン使用後は廃棄、手洗い徹底出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の基本的感染対策」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19_kihon.html7. 医療機関との連携と公的支援自宅待機中に症状が悪化した場合には、速やかに医療機関へ相談する必要があります。特に呼吸状態の悪化や意識障害は重症化のサインであり、救急要請をためらうべきではありません。医療機関受診の目安息苦しさや強い倦怠感がある。発熱が続き、解熱剤で一時的に下がっても再上昇する。酸素飽和度(SpO2)が93%以下を示す。公的支援・体制の最新の考え方健康フォローアップセンターや宿泊療養施設の多くは終了(発生届・外出自粛要請の廃止に伴う)。ただし、受診相談・体調急変時の相談機能や高齢者・妊婦向け宿泊療養施設は、期限を区切って継続される場合があります。検査費の公費負担は終了。治療薬や入院費の公費支援は期限付きで一部継続。最新の運用は居住自治体の公式サイトで確認してください。出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について(医療提供体制及び公費支援)」https://www.mhlw.go.jp/stf/corona5rui.html出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 第10.1版(2024年4月23日)」https://www.mhlw.go.jp/content/001248424.pdf8. よくある質問Q1:会社・学校への報告は必要?A:法的義務はありませんが、所属先の就業規則・校内規定に基づき報告するのが一般的です。学校は出席停止の目安が設けられています(参考:文部科学省の省令)。Q2:無症状でも5日間は外出を控えるべき?A:無症状で陽性の場合は、検体採取日を0日目として考え、5日間は外出を控えることが推奨です。Q3:咳だけ続く場合は?A:軽快後24時間の基準を満たすまで外出は控え、10日目まで配慮を続けましょう。長引く場合は受診を。Q4:家族が陽性になった。自分は出勤可?A:濃厚接触者の外出自粛の法的義務はなし。ただし7日目までは発症する可能性があるため、マスク・換気・体調観察を継続してください。出典:文部科学省「学校保健安全法施行規則の一部を改正する省令(2023年4月28日公布)」https://www.mext.go.jp/content/20230427-mxt_ope01-000004520_2.pdf出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について」https://www.mhlw.go.jp/stf/corona5rui.html9. 仕事・学校・保育の扱い自宅待機が必要になった場合、仕事や学校、保育園への影響も大きな課題となります。仕事(就業)一般の職場:発症日0日目から5日間が経過し、解熱・症状軽快後24時間を満たしたら復帰を検討。医療・介護・保育等:利用者にハイリスク者が多いため、職場規定や主治医・産業医の判断に従う。発症後10日が経過するまでは、マスク着用や高リスク者との接触回避など周囲への配慮を継続。出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について(外出を控える期間・周囲への配慮)」https://www.mhlw.go.jp/stf/corona5rui.html学校・保育(出席停止の基準)「発症した後5日を経過し、かつ、症状が軽快した後1日を経過するまで」が出席停止の基準。例:月曜に発症→土曜以降かつ軽快後24時間(翌日)を満たすまで登校・登園を控える。出典:文部科学省「学校保健安全法施行規則の一部を改正する省令(2023年4月28日公布)」https://www.mext.go.jp/content/20230427-mxt_ope01-000004520_2.pdfまとめ新型コロナウイルス感染症に関する自宅待機ルールは、2025年現在も「発症後5日間+症状軽快後24時間」が基本です。ただし10日目までは周囲への配慮を継続し、体調の変化に注意しましょう。濃厚接触者に法的な外出制限はありませんが、家庭内感染防止策や7日目までの体調観察が重要です。仕事や学校への復帰は基準に沿って判断しつつ、無理のない社会復帰を心がけてください。困ったときは、ピース訪問看護ステーションへご相談ください。関連記事【最新8/27速報】新型コロナ「ニンバス」が流行中!喉の痛みの特徴と感染者増加の背景【2025年8月】新型コロナ感染者数の最新情報と訪問看護の最前線コロナか夏風邪か熱中症か?2025年夏に知っておきたい症状の違いと受診目安参考文献一覧厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について」https://www.mhlw.go.jp/stf/corona5rui.html厚生労働省 広報誌「厚生労働」2023年7月号 新型コロナウイルス最前線https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202307_00003.html厚生労働省「新型コロナウイルス 療養に関するQ&A」https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001093929.pdf厚生労働省「新型コロナウイルス感染症への対応について」https://www.mhlw.go.jp/content/001092714.pdf厚生労働省「感染症法上の位置づけ変更後の療養に関する Q&A①」https://www.mhlw.go.jp/content/001087453.pdf国立長寿医療研究センター「新型コロナ療養生活支援」https://www.ncgg.go.jp/hospital/korona/index.html厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の基本的感染対策」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19_kihon.html厚生労働省「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 第10.1版(2024年4月23日)」https://www.mhlw.go.jp/content/001248424.pdf文部科学省「学校保健安全法施行規則の一部を改正する省令(2023年4月28日公布)」https://www.mext.go.jp/content/20230427-mxt_ope01-000004520_2.pdf本記事の執筆者・監修者プロフィール【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理に長け、地域医療連携や在宅看取り支援にも積極的に取り組んでいる。