高次脳機能障害は、外傷や脳卒中などにより脳が部分的に損傷を受けることで生じる後天的な障害です。記憶、注意、感情のコントロールなど、目には見えにくい障害であるため、周囲の理解を得ることが難しいケースも少なくありません。こうした困難を抱える方々の生活を支える手段の一つが、「障害者手帳」の取得です。この記事では、高次脳機能障害に該当する障害者手帳の種類や申請方法、取得のメリットについて、最新の情報を交えて詳しく解説します。1. 高次脳機能障害とは?高次脳機能障害は、脳損傷後に起こる認知・行動・感情面の障害を総称したもので、以下のような症状が現れます。事故や病気によって一命を取り留めたものの、社会生活への復帰が困難になることもあります。主な症状内容記憶障害新しい情報が覚えられない、過去の出来事を忘れる注意障害集中力が続かない、気が散りやすい遂行機能障害計画を立てて実行することが難しい社会的行動障害感情のコントロールが難しく、トラブルになりやすい外見では判断しにくいため、理解と支援が得にくいのが特徴です。このため、本人や家族が孤立感を抱くことも少なくありません。2. 障害者手帳とは何か障害者手帳とは、障害のある人が各種支援やサービスを受けるために必要な証明書です。行政の支援を受ける「入口」とも言える存在です。種類は主に以下の3つがあります。種類対象身体障害者手帳肢体不自由、視覚・聴覚障害などの身体的障害療育手帳知的障害精神障害者保健福祉手帳精神障害(うつ病、統合失調症、高次脳機能障害等)高次脳機能障害は「精神障害者保健福祉手帳」の対象となるケースが多いです。なお、併存障害がある場合は、身体障害者手帳も併せて取得できる場合があります。3. 精神障害者保健福祉手帳の対象となる条件高次脳機能障害で精神障害者保健福祉手帳を取得するには、以下のような条件があります。診断名:器質性精神障害(脳損傷によるもの)初診日から6か月以上経過していること精神障害によって日常生活や社会生活に支障があることこの障害は、医師の継続的な観察と診断に基づいて判定されます。診断書と医師の意見が重要な判断材料となります。本人の生活のしづらさや就労状況などの情報も加味されるため、日頃の困りごとをメモしておくとスムーズです。また、診断書は「作成日から3か月以内」に申請書と共に提出する必要がある点に注意が必要です。4. 手帳の等級と判定方法手帳の等級は、障害の程度によって1級から3級に分類されます。これは、支援の度合いやサービスの範囲を決める重要な基準です。等級支援の目安1級常時介助が必要なレベル2級日常生活に著しい支障がある3級一定の支援が必要だが、ある程度自立可能判定は主治医の診断書や生活状況の聞き取りをもとに、自治体の審査会で決定されます。必要に応じて本人への聞き取りや家族・支援者の意見も参考にされます。5. 手帳取得によるメリット障害者手帳を取得すると、以下のような支援を受けることができます。所得税・住民税の控除公共交通機関の割引就労支援サービスの利用医療費の一部助成福祉サービス(デイケア、相談支援など)また、就職活動において企業側の理解を得やすくなるという点でも大きな利点があります。障害者雇用枠での採用も視野に入れやすくなり、職場での配慮も受けやすくなります。なお、精神障害者保健福祉手帳は「2年ごとに更新」が必要です。更新の際には、現行手帳のコピーや新たな診断書が求められる場合があります。6. 申請手続きの流れ障害者手帳の申請は、以下の手順で進めます。主治医に診断書の作成を依頼(作成から3か月以内に提出)住民票のある市区町村の障害福祉課などで申請審査(1~2ヶ月)結果通知、交付必要書類:申請書、診断書、本人写真、印鑑など。自治体によって異なる場合があるため、事前確認が重要です。また、申請書類の記入には誤りがないよう丁寧に対応しましょう。申請後、不備があると再提出になるケースもあります。7. 支援制度の活用と地域連携障害者手帳の取得後は、地域の支援制度や医療・福祉サービスと連携して生活の質を高めていくことが大切です。地域包括支援センターや精神保健福祉センター、訪問看護ステーションなどと連携し、生活支援・就労支援・家族支援などを一体的に行うことが可能です。多職種が連携することで、個別ニーズに応じた支援計画が立てられ、継続的な生活安定に寄与します。連携先内容訪問看護・リハビリ在宅での医療支援・服薬管理・リハビリ就労支援事業所職業訓練や就労マッチング障害者就業・生活支援センター日常生活全般の支援地域資源を活用することで、孤立を防ぎ、自立した生活を支援する仕組みが整いつつあります。まとめ高次脳機能障害は、見た目ではわかりにくく、社会生活に大きな困難をもたらす障害です。しかし、障害者手帳を通じて適切な支援を受けることで、当事者の生活の安定や社会参加が大きく前進します。手帳の申請には時間がかかることもありますが、必要な手続きを理解し、医療機関や支援者と連携を取りながら一歩ずつ進めていくことが重要です。身近な支援機関を積極的に活用し、本人と家族が希望を持って生活できるよう支援を受けることが求められます。関連記事認知症とお金の管理:家族が知っておくべき対策とポイント高齢者がキレるのはなぜ?感情の変化から考える病気の可能性高齢者の足のむくみは病気のサイン?訪問看護で行う観察・ケア・予防と家族支援ピース訪問看護ステーションのご案内自宅での療養や介護に、不安やお悩みはありませんか?ピース訪問看護ステーションでは、町田市を中心に、医療依存度の高い方や在宅でのリハビリを希望される方への支援を幅広く行っています。24時間緊急対応が可能な体制を整えており、看護師・リハビリ職(PT・OT・ST)・ケアマネジャーが在籍。医療と介護の両面から、ご本人とご家族を多職種で支え、安心して在宅生活を続けられるようサポートしています。退院支援を担う医療機関の皆さま、地域のケアマネジャーの皆さま、訪問看護をご検討中のご本人・ご家族も、どうぞお気軽にご相談ください。新規のご依頼・ご質問は、お電話またはお問い合わせフォームより承っております。📞 鶴川本部 直通TEL:042-860-4404(平日9:00〜18:00)▶ お問い合わせフォームはこちら▶ 訪問看護・訪問リハビリのサービス詳細はこちら本記事の執筆者・監修者プロフィール【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理に長け、地域医療連携や在宅看取り支援にも積極的に取り組んでいる。