「パーキンソン病」と「パーキンソン症候群」は同じではありません。しかし、どちらも体を動かしにくくなる症状があり、患者さんやご家族にとって大きな不安の原因となります。特に初期は症状がよく似ているため、医師の診断を受ける前に「どちらなのだろう?」と迷うケースも多いでしょう。本記事では、定義・原因・症状・診断・治療・経過と予後・利用できる制度・在宅療養・町田市での訪問看護の活用までを一般の方にもわかりやすい言葉で解説します。生活に役立つ実践的な知識としてぜひご活用ください。1. 定義について説明用語定義原因主な症状治療方針パーキンソン病黒質ドパミン神経の変性による進行性神経変性疾患レビー小体(α-シヌクレイン蓄積)安静時振戦・固縮・無動・姿勢反射障害、便秘、嗅覚低下、認知機能低下ドパミン補充療法(L-ドパ等)、リハビリ、生活支援パーキンソン症候群パーキンソニズムを呈する病態の総称薬剤性、脳血管障害、正常圧水頭症、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、レビー小体型認知症など下肢優位の歩行障害、急速な進行、認知変動や幻視など原因治療(減薬・手術等)、症状緩和、リハビリパーキンソン病は一つの病気ですが、パーキンソン症候群は似た症状を示す複数の病気の総称です。そのため治療法や経過も大きく異なります。訪問看護の現場では「薬の副作用による一時的な症状なのか」「進行性の神経疾患なのか」を見極めることが、日々のケアの第一歩となります。出典:WHO「Parkinson disease」https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/parkinson-disease出典:国立長寿医療研究センター「パーキンソン病とパーキンソン症候群:『パーキンソン病らしさ』とは?」https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/letter/114.html2. 原因と病態の違い疾患区分主な原因病態特徴治療方針パーキンソン病黒質ドパミン神経変性レビー小体形成、ドパミン低下L-ドパ反応性良好、進行性薬剤性パーキンソニズム向精神薬・制吐薬など投薬後に急速進行減薬・中止で改善する場合多い脳血管性パーキンソニズム多発ラクナ梗塞など下半身優位の歩行障害血管危険因子管理、リハビリ強化正常圧水頭症脳脊髄液循環障害歩行障害・認知低下・尿失禁シャント術で改善が期待できることがあるその他神経変性疾患進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、レビー小体型認知症など早期から転倒・自律神経障害・幻視など原因疾患ごとの対症療法薬剤性や正常圧水頭症は原因治療で改善が見込める一方、進行性核上性麻痺や多系統萎縮症は進行が早く予後が厳しいことが多いです。訪問看護では「改善可能なものか」「進行を見守る必要があるのか」を把握し、医師との連携を密にします。出典:日本精神神経学会「Lewy小体型認知症 ガイドライン」https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdf出典:国立長寿医療研究センター「病院レター No.114」https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/letter/114.html3. 症状の違い運動症状の違い症状パーキンソン病パーキンソン症候群振戦安静時の手足の震え出にくいこともある固縮歯車のようなこわばり下半身に強く出やすい無動動作がゆっくりになる急速に進むことが多い姿勢反射障害中期以降に出現早期から転倒が多いパーキンソン病は進行がゆるやかで、震えやこわばりが左右非対称に現れることが多いです。最初は片手や片足にだけ出ることもあり、時間をかけて全身に広がります。症状は進行期になると「オン・オフ現象」と呼ばれる日による変動も見られます。これに対してパーキンソン症候群では振戦が目立たない場合があり、早い時期から転倒リスクが増加します。特に進行性核上性麻痺や多系統萎縮症などでは姿勢保持が困難になり、数年のうちに頻繁な転倒が起こることも少なくありません。こうした違いは、日常生活の安全対策や介護導入のタイミングに直結します。非運動症状の特徴症状パーキンソン病パーキンソン症候群嗅覚低下多く見られる目立たない場合もある認知障害ゆるやかに進行変動が大きく幻視を伴うことも多い自律神経障害便秘、排尿障害、起立性低血圧多系統萎縮症では顕著パーキンソン病では便秘や睡眠障害、嗅覚低下といった非運動症状が早期から出ることが知られています。これらは見逃されやすい症状ですが、早期診断のヒントになることもあります。一方、パーキンソン症候群では認知機能の変動や幻視が多く見られ、介護の負担が大きくなりやすいのが特徴です。また自律神経障害も強く、排尿障害や低血圧による失神などが生活の質を著しく低下させます。経過の違い観点パーキンソン病パーキンソン症候群進行速度ゆるやか速いことが多い生活影響リハや薬で維持可能早期に介護が必要予後長期に生活維持可能厳しい場合が多いパーキンソン病は薬やリハビリを組み合わせることで数十年単位で生活機能を維持できることが珍しくありません。これに対し、パーキンソン症候群では進行が速く、診断から数年以内に日常生活動作に大きな制限が生じることもあります。そのため、早い段階から将来を見据えたケア計画を立てることが求められます。出典:WHO「Parkinson disease」https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/parkinson-disease出典:国立長寿医療研究センター「病院レター No.114」https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/letter/114.html4. 診断の違い臨床診断のポイント観点パーキンソン病パーキンソン症候群発症様式徐々に進行急速に進むことも多い左右差片側から始まりやすい左右対称が多い薬の反応L-ドパで改善効果が乏しいパーキンソン病は片側の症状から始まり、薬がよく効くのが特徴です。これに対し、パーキンソン症候群では両側性に同時に症状が出たり、薬が効かないことが多いため、早期の鑑別が重要です。補助検査の比較検査方法特徴有用性限界DATスキャンドパミントランスポーターの機能を評価薬剤性や本態性振戦との鑑別に有用神経変性型同士は区別困難MRI脳構造を画像化脳血管性や正常圧水頭症の鑑別に有効パーキンソン病特有の所見は乏しい脳血流シンチ血流パターンを評価レビー小体型認知症の診断補助単独では確定診断できない神経心理検査認知機能を詳細に評価認知症合併の有無を把握疾患特異性は低いこれらの検査はそれぞれ単独では診断を確定できず、臨床所見と組み合わせて総合的に判断されます。たとえばDATスキャンでドパミン機能の低下が認められても、それがパーキンソン病か進行性核上性麻痺かを判別することはできません。また、MRIで脳血管性病変があれば脳血管性パーキンソニズムを疑うきっかけになります。つまり診断は一つの検査に依存せず、複数の視点を持つことが重要です。出典:Nature Reviews Neurology「Clinical utility of DaTscan in patients with suspected Parkinsonian syndrome」https://www.nature.com/articles/s41582-021-00562-8出典:厚生労働省「特発性正常圧水頭症 概説」https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000496468.pdf5. 治療の違い薬物療法パーキンソン病の治療の中心はL-ドパをはじめとするドパミン補充療法です。ドパミン作動薬やMAO-B阻害薬なども併用され、症状を和らげる効果があります。一方で、進行期には薬の効き方に波が出る「オン・オフ現象」や、不随意運動が出やすくなるといった副作用もみられます。パーキンソン症候群ではこれらの薬が効きにくい場合が多く、薬物療法だけで症状改善が難しいことがしばしばあります。外科的治療パーキンソン病で薬物療法の効果が不十分になった場合、脳深部刺激療法(DBS)が選択肢となります。これは電極を脳内に埋め込み、異常な神経活動を調整する方法です。一方、パーキンソン症候群ではこうした外科的治療の効果は限定的であり、あまり適応になりません。リハビリテーションと生活支援どちらの疾患でもリハビリは極めて重要です。歩行訓練、筋力維持、嚥下リハビリ、発声訓練などが行われ、生活の質を保つうえで欠かせません。また、住宅改修や福祉用具の活用、食事や睡眠環境の工夫など、日常生活のサポートも大切です。6. 経過と予後の違いパーキンソン病の経過パーキンソン病はゆっくりと進行し、薬やリハビリを適切に行うことで10年以上にわたり自立生活を続ける方も多くいます。ただし進行とともに転倒や嚥下障害、認知機能低下などが現れ、介護や医療のサポートが必要になります。パーキンソン症候群の経過パーキンソン症候群は進行が速いものが多く、診断から数年以内に歩行や食事動作に大きな制限が出る場合があります。特に進行性核上性麻痺や多系統萎縮症では予後が厳しく、早期から介護体制を整える必要があります。予後に関わる要因予後を左右するのは、薬への反応性、合併症の有無、リハビリや支援の継続性です。訪問看護や介護サービスを取り入れることで、症状の進行に応じた柔軟な対応が可能になります。7. 利用できる制度の違い医療保険と介護保険訪問看護は医療保険・介護保険のどちらでも利用できます。パーキンソン病は指定難病に含まれるため、難病医療費助成制度の対象となり、医療費の自己負担軽減が可能です。介護保険では要介護認定を受けることで、訪問リハビリやデイサービス、福祉用具貸与など幅広い支援を利用できます。高額療養費制度医療費が高額になった場合には、高額療養費制度を利用することで自己負担の上限を超えた分が払い戻されます。慢性的に医療費がかかる患者さんにとって大きな支えとなります。自治体の支援制度町田市では地域包括支援センターが窓口となり、医療・介護・福祉の連携をサポートしています。申請や制度利用に不安がある場合も、専門職に相談することでスムーズに支援を受けられます。8. 在宅療養と訪問看護訪問看護の役割訪問看護は病気の進行に応じて柔軟に支援します。服薬管理、症状の観察、転倒予防の助言、嚥下障害や栄養管理など、日常生活の中で必要となるケアを提供します。加えて、ご家族への介護方法の指導や心理的サポートも重要な役割です。多職種連携訪問看護は医師、薬剤師、リハビリ職、介護職と連携しながら進められます。特にパーキンソン症候群では病状の変化が速いため、チームでの情報共有が欠かせません。在宅療養の利点在宅で生活を続けられることは、本人の安心感や家族の精神的支えにつながります。通院の負担が減り、住み慣れた環境で生活できることは大きなメリットです。9. 町田市在住の方へのご案内:ピース訪問看護の利用地域密着の安心サポート町田市にお住まいで「パーキンソン病かもしれない」「パーキンソン症候群と診断を受けた」といった方やそのご家族にとって、在宅療養は大きな挑戦です。転倒の不安、薬の管理、介護者の疲れ…。これらを一人で抱えるのは容易ではありません。ピース訪問看護ステーションは町田市を拠点に活動し、地域の医療機関や介護サービスと連携しています。必要に応じて連絡できる体制を整えており、安心してご利用いただけます。スタッフ体制(2025年9月時点)職種人数特徴看護師9名医療的ケアや症状観察、夜間対応も可能リハビリスタッフ13名理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が在籍ケアマネジャー6名医療と介護をつなぐ役割を担当特徴夜間の急な体調不良や転倒にも対応可能リハビリ専門職が多く、在宅生活に合った支援が受けられるケアマネジャーとの連携で、医療・介護・リハビリをまとめてサポートパーキンソン病の支援経験が豊富町田市内のクリニックと連携し、定期的に勉強会を開催して専門性を高めているご利用の流れステップ内容1. 相談主治医またはケアマネジャーに「訪問看護を利用したい」と伝える2. 医師の指示医師が訪問看護指示書を作成する3. 契約ピース訪問看護と契約を結ぶ4. 開始看護師がご自宅に訪問し、ケアを開始するご家族の声「母が夜中に転倒しても、電話一本で相談できる安心感がある」「薬の副作用に気づいて主治医につないでくれたおかげで、体調が改善した」「介護で孤独を感じていたが、訪問看護師さんが相談相手になってくれる」費用と制度訪問看護は医療保険や介護保険が適用されるため、自己負担は1〜3割程度です。また「高額療養費制度」や「介護保険の区分支給限度額」を活用することで、経済的負担を軽減できます。さらにパーキンソン病は指定難病に含まれるため、難病医療費助成を利用すれば費用を抑えることも可能です。町田市では地域包括支援センターが制度利用をサポートしており、ピース訪問看護とも連携しています。町田市にお住まいの方のメリット町田市内の病院・診療所との連携がスムーズ緊急時には迅速な訪問対応が可能地域包括支援センターや介護事業所と日常的につながりがあるご家族の介護疲労に寄り添い、心理的な支援を重視町田市や周辺で訪問看護・リハビリをお探しの方は、ピース訪問看護ステーションへぜひご相談ください。まとめパーキンソン病は単一の病気、パーキンソン症候群は複数の病気の総称である。診断や治療方法、生活支援は大きく異なるため、早期に専門医へ相談することが重要。在宅療養では訪問看護が生活の安定に欠かせない役割を果たす。特に町田市にお住まいの方は、ピース訪問看護ステーション をぜひご利用ください。安心の地域密着型サポートで、ご本人もご家族も支えます。関連記事パーキンソン病のウェアリングオフ現象とは?症状と対応策を解説パーキンソン病リハビリ徹底ガイド、訪問看護と在宅支援で生活機能を守る最新実践パーキンソン病の症状と訪問看護の役割、在宅療養を支えるプロの視点パーキンソン病の初期症状を見逃さないために—在宅生活を支える訪問看護の実践ガイドパーキンソン病と暮らす町田市の方へ、治療と訪問看護で実現する在宅生活を紹介参考文献一覧WHO「Parkinson disease」https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/parkinson-disease国立長寿医療研究センター「パーキンソン病とパーキンソン症候群:『パーキンソン病らしさ』とは?」https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/letter/114.html国立長寿医療研究センター「病院レター No.114」https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/letter/114.html日本精神神経学会「Lewy小体型認知症 ガイドライン」https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/degl_2017_07.pdfNature Reviews Neurology「Clinical utility of DaTscan in patients with suspected Parkinsonian syndrome」https://www.nature.com/articles/s41582-021-00562-8厚生労働省「特発性正常圧水頭症 概説」https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000496468.pdf本記事の執筆者・監修者プロフィール【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理に長け、地域医療連携や在宅看取り支援にも積極的に取り組んでいる。