認知症の弄便(ろうべん)とは|どんな行動で、なぜ「まさかうちが」と感じるのか認知症の弄便は、便の感覚や意味がつかみにくくなって起こる症状の一つで、対応の基本は叱らずに原因を探ることです。朝、部屋に入ると独特のにおいがして、布団や壁、本人の手や爪に便がついている。驚きと情けなさで言葉が出ず、気づけば「何やってるの」と大きな声を出していた。弄便(ろうべん)は、介護するご家族が誰にも話しにくい悩みの一つです。けれども弄便は、本人がわざと困らせようとしているわけではありません。便が出た感覚がわかりにくい、おむつの中が気持ち悪い。そうした理由が重なって起きていることが多いのです。この記事では、町田市・相模原市で訪問看護を行うピースの立場から、認知症の弄便の原因、後始末の手順、予防の工夫、相談先を順に整理します。この記事でわかること弄便とはどんな行動で、認知症でなぜ起こるのか見つけたときに叱らずに乗り切る声かけと後始末の手順排便のリズムや衣類、日中の過ごし方で弄便を減らす工夫限界を感じたときの相談先と、デイサービスや施設の考え方訪問看護が排便の管理や家族の相談でできること弄便とはどんな行動を指すのか弄便とは、排泄した便を手で触ったり、周りにこすりつけたりしてしまう行動のことです。行動の例家族が気づくきっかけおむつや下着の中に手を入れて便に触れる手や爪の間が汚れている便のついた手で壁や床、寝具をなでるシーツや壁に茶色い跡がある手についた便を体や衣類にこすりつける着替えたばかりの服が汚れている便を口に入れてしまう口の周りが汚れている国立のぞみの園の研究者による文献レビューでは、弄便は排泄に関連した不潔行為の一つとされ、便に触れる、なでる、体や壁、床に塗る、食べるといった行動が含まれると整理されています(出典:国立のぞみの園紀要「弄便が見られる人の特徴と支援について」)。同じレビューでは、弄便はBPSD(行動・心理症状。認知症に伴う行動や気持ちの変化)として理解されることが多いとされています。介護の現場では「不潔行為」と呼ぶこともありますが、本人に悪意があるという意味ではありません。「不潔な癖が出てきた」「性格が変わった」と受け止めているご家族も少なくありません。病気による症状の一つだと知るだけでも、見え方は変わってくるでしょう。毎晩のように起こる方もいれば、便秘が続いたあとにだけ起こる方もいます。弄便の起こり方の違いが、原因を探る手がかりになります。「まさかうちが」と感じるのは自然なこと弄便を初めて目にしたとき、ショックを受けたり嫌悪感を覚えたりするのは、ごく自然な反応です。家族によくある気持ち知っておきたいこと見てはいけないものを見たようで言葉を失う驚きや嫌悪感は誰にでも起こる恥ずかしくて人に話せない医療や介護の専門職には珍しくない相談自分の介護が悪かったのではと責める病気による感覚や判断の変化が背景にあるこの先ずっと続くのかと不安になる便秘などの手当てで減った例もある日本認知症学会など6学会が監修したガイドラインでは、認知症の人の約60〜90%が何らかのBPSDを経験するとされています(出典:日本認知症学会など6学会監修「かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)」)。弄便も「うちだけ」の問題ではありません。先のレビューでも、弄便は家族や支援者の精神的・身体的な負担が大きいと指摘されています。片づけのたびに疲れ果ててしまうのは、あなたが弱いからではありません。弄便がいつまで続くかは一律には言えません。レビューでは重度の認知症の方に多いとされ、進行とともに起こりやすくなる面があります。一方で、便秘やかゆみが引き金なら、まずそこを整えるのが先決です。「またやった」と行動だけを見るのではなく、「なぜ今こうなったのか」と一歩引いて考えてみましょう。次の章で、その手がかりを整理します。認知症で弄便が起こる主な原因認知症の弄便は、便が出た感覚や不快感をうまく処理できないことから起こりやすく、対応には体の状態と環境の両面を見ることが欠かせません。認知症で便を「便」と認識しにくくなる認知症が進むと、便が出たことやにおいに気づきにくくなり、便を汚いものと捉えることも難しくなります。起きている変化弄便につながる流れ便が出たことに気づきにくいおむつの中の違和感を確かめようと手を入れるにおいがわかりにくい汚れていても不快と感じにくい便を汚いものと認識しにくい触ることへのためらいが弱くなる片づけの手順がわからない自分で始末しようとして汚れが広がる不快を言葉で伝えにくい「気持ち悪い」を行動で表す先のレビューでは、アルツハイマー型認知症の方は便が出たことやにおいがわかりにくく、失認(見たものが何かを認識できなくなる症状)のために便を不潔なものと認識できないことが紹介されています(出典:国立のぞみの園紀要「弄便が見られる人の特徴と支援について」)。失行(手順どおりに動作ができなくなる症状)や判断力の低下で便をうまく処理できず、言葉で不快感を伝えにくくなることも挙げられています。本人に「何か気持ち悪い」「なんとかしなければ」という思いがあっても、適切な行動に移す力が弱くなっているのです。確かめようと手を入れ、汚れた手で壁や布団を触ってしまう。そう考えると、責める気持ちが少し和らぎます。自分で片づけようとして、かえって汚れを広げてしまう方もいます。その裏に、本人なりの「きれいにしたい」という気持ちが隠れていることも。注意したり言い聞かせたりしても、本人は何を直せばよいのかがわかりにくいもの。叱るより、不快の原因を取り除くほうが弄便を減らす近道です。便秘・下痢・かゆみなど体の不快弄便の背景には、便秘や残便感、おむつの中の蒸れやかゆみといった体の不快が隠れていることがよくあります。体の状態本人が感じていそうなこと便秘で便が硬いお腹が張る、出したいのに出ない残便感があるお尻のあたりがすっきりしない下痢や軟便おむつの中がべたつくおむつの中に便が残っている蒸れや冷たさ、気持ち悪さ皮膚のかぶれやかゆみかきたくて手が伸びる先のレビューでは、要因として便秘やおむつでの排便の不快が挙げられています。硬い便に対して飲水を増やし緩下剤を使った例や、かゆみのある方に下剤やトイレ誘導、パッドの確認を組み合わせた例も紹介されていました。BPSDのガイドラインでも、まず体の原因を確かめるよう求めています。感染症、脱水、痛み、便秘、視覚や聴覚の障害、うつ病、薬の影響などを確認し、せん妄(体の不調などで急に意識が混乱した状態)かどうかも見分けるとされています。「お腹が苦しい」「お尻がかゆい」と言えない代わりに、便を触っている。そう考えると、見るべき場所が見えてきます。弄便が増えたら、最後の排便はいつか、便の硬さ、お尻の皮膚の赤みを確かめてください。便秘や下痢が続くとき、皮膚のただれが治らないときは、自己判断で市販薬を足さず主治医に相談しましょう。便秘の対策は高齢者の便秘解消|在宅でできる排便コントロールと家族の対応でも詳しく紹介しています。環境・時間帯・薬の影響トイレの場所がわからない、夜中に目が覚める、日中にすることがないといった環境や時間帯も、弄便のきっかけになります。きっかけ例トイレの場所がわからない夜の廊下が暗く、たどり着けない夜間の目覚め・睡眠の乱れ暗い中で一人で対処しようとする退屈や不安、ストレス手持ちぶさたで、おむつをいじる薬の影響便秘や下痢が起こりやすくなる認知症では、今いる場所や時間がわからなくなる見当識障害が起こります(出典:国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト 認知症」)。住み慣れた家でも、夜中にトイレの場所で迷う方がいるのはこのためです。先のレビューでは、弄便は夜間に多いという報告があり、睡眠障害との関係が指摘されています。強いストレスのある環境も要因の一つでした。夜中に目が覚めて違和感に気づいても、暗くて誰もいない。そうした状況が重なると起こりやすくなると考えられます。夕方から夜にかけて落ち着かなくなる方は、認知症の夕暮れ症候群・帰宅願望|家族が玄関で止めない対応のコツも参考になります。薬の影響も見逃せません。BPSDのガイドラインでは、向精神薬を使う際に便秘や下痢、尿失禁などの副作用を確認するよう示しています。薬が変わってから弄便が増えたら、自己判断で中止せず主治医や薬剤師に伝えてください。弄便を見つけたときの対応|叱らずに乗り切る後始末の手順認知症の弄便を見つけたときの対応は、叱らずに声をかけ、部屋より先に本人の手と体をきれいにすることが基本です。最初の一言は「気持ち悪かったね」弄便を見つけた瞬間の一言で、その後の後始末がスムーズに進むかどうかが大きく変わります。避けたい反応代わりの声かけ・関わり方「何やってるの!」と叱る「気持ち悪かったね、きれいにしようか」「汚い!触らないで」と叫ぶ「手を洗いに行きましょう」と誘う大きなため息をつく低めの声でゆっくり話す後ろから急に腕をつかむ正面から声をかけ、動作を一つずつ伝える国立精神・神経医療研究センターの情報サイトでは、認知症の人には否定したり叱ったりせず、話に耳を傾けることが大切だとしています(出典:国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト 認知症」)。叱られても本人は何がいけなかったのかを理解しにくく、恥ずかしさや怖さだけが残ります。手洗いや着替えを拒まれ、後始末がかえって長引く。家族にも本人にもつらい悪循環です。こつは、「行動」ではなく「困っている本人」に目を向けること。便に触れたのは、気持ち悪さをなんとかしたかったからかもしれません。とはいえ、驚いて声が出てしまうのは当然です。声を荒らげたら、深呼吸して「びっくりしちゃった、ごめんね」と言い直せば十分です。本人が興奮しているときは無理に手を引かず、少し距離をとって落ち着くのを待ちます。手袋や着替えを用意する時間が、そのまま待つ時間になるでしょう。後始末の手順|本人の体が先、部屋はあと後始末は、家族自身を守る準備をしてから、本人の手、体、着替え、部屋の順に進めると混乱が少なくなります。順番することポイント1使い捨て手袋やエプロン、マスクをつけるごみ袋やタオル、着替えも手元にそろえる2本人の手を洗う石けんで指の間や爪の間まで洗う3汚れた衣類を脱がせ、お尻や体を洗う寒くないようタオルで体を覆う4皮膚の状態を見る赤み、ただれ、ひっかき傷がないか5本人に安全な場所で休んでもらう温かい飲み物などで一息つく6部屋や寝具を片づける便を取り除いてから拭き、消毒する手を先に洗うのは、汚れた手で顔や口に触れたり、便が広がったりするのを防ぐためです。爪を短く整えておくと後始末が楽になります。体はシャワーが使えれば短時間で済みます。お風呂を嫌がる方は、温かいタオルで拭くだけでもかまいません。入浴を嫌がるときの工夫は、認知症の入浴拒否|お風呂を嫌がる理由と家族の対応・清拭の工夫も参考にしてください。部屋の片づけは本人が落ち着いてからで十分です。寝具や衣類は便を取り除いてから分けて洗い、壁や床は拭き取ったあとに家庭用の消毒剤で拭きます。時間帯や便の状態をメモしておくと、原因探しに役立ちます。便を口に入れたときは口の中をすすぎ、その後の体調に気をつけます。熱や吐き気、下痢が出たときや家族にも同じ症状が出たときは、感染症の可能性もあるため主治医に相談してください。認知症の弄便を減らす環境づくりと予防のコツ認知症の弄便の予防と対応では、排便のリズムを整えて便の不快を早く取り除き、手持ちぶさたな時間を減らすことが中心になります。排便のリズムをつかみ、トイレへ誘う便が出るタイミングに合わせてトイレへ誘い、出た便をすぐに片づけることが、弄便を減らす一番の近道です。工夫ねらい排便の記録をつける出やすい時間帯をつかむ食後にトイレへ誘う便が出やすい時間を生かす出たらすぐにおむつを替える便に触る前に不快を取り除く排便後はすぐに流す便が目に触れないようにする便秘を主治医に相談する水分や食事、下剤を調整する先のレビューでは、有効だった手立てとして排便パターンの把握やトイレ誘導、浣腸による排便コントロールが挙げられ、毎食後や排便に気づいた時点でトイレへ誘った例も紹介されています(出典:国立のぞみの園紀要「弄便が見られる人の特徴と支援について」)。過去の研究からは、時間を決めた排便の誘導、排便後すぐに流すこと、便を目に触れさせないことも紹介されています。便が長く残らなければ、弄便のきっかけ自体が減ります。記録は、カレンダーに「夜」「便かたい」と一言書くだけでもかまいません。続けるうちに出やすい時間帯が見えてきます。おむつ交換を排便が多い時間帯の少しあとに合わせるだけでも、便に触れる機会は減らせます。水分や食事の工夫だけで便秘が解消しないときの下剤や浣腸は、体への影響もあるため主治医と相談して決めてください。衣類・おむつ・部屋の工夫おむつや衣類の当て方、トイレまでの道を見直すことが、便に触れる機会を減らす第一歩です。見直すところ工夫の例おむつ・パッド肌に合うもの、ずれにくい当て方にする皮膚お尻を清潔に保ち、かぶれを早めに手当てするトイレまでの道夜間は足元を照らすライトをつけるトイレの扉「トイレ」と書いた貼り紙で場所を示す介護衣(つなぎ服)行動を制限するものとして慎重に考えるおむつの中が蒸れたりかぶれたりすると、手が伸びやすくなります。サイズや当て方、交換の間隔を見直してみましょう。夜は足元を照らすライトをつけ、扉に「トイレ」と大きく書いた紙を貼ると、場所を思い出す手がかりになります。弄便を防ごうと、介護衣(つなぎ服)を考えるご家族もいます。ただ、厚生労働省の手引きでは、脱衣やおむつ外しを制限するために介護衣を着せることが、身体拘束にあたる行為の例として挙げられています(出典:厚生労働省「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」)。この手引きは在宅の介護事業所や家族も対象にしています。先のレビューでも、介護衣は根本的な解決にならず、別の困った行動が出る可能性があると指摘されています。つなぎ服を考えてしまうほど追い詰められているなら、それは一人で抱えすぎているサインです。家族だけで決めず、ケアマネジャーや主治医、訪問看護に相談してください。日中の活動と安心できる関わりを増やす日中に体を動かし、人と関わる時間を増やすと夜の眠りが整いやすく、弄便を減らす土台になります。日中の過ごし方期待できること散歩や日光を浴びる時間昼と夜のリズムがつきやすい洗濯物たたみなど手を使う作業手持ちぶさたな時間が減るデイサービスの利用生活にリズムができ、家族も休めるこまめな声かけ不安や寂しさが和らぐ先のレビューでは、日中の活動を増やして睡眠のリズムが戻り、弄便が減った例が紹介されています。環境調整、特性の理解、意思の尊重、関わりを増やすことも大切な視点とされていました。BPSDのガイドラインでも、第一選択は非薬物療法とされ、環境調整やケアの変更、通所リハビリテーションの利用などを家族や介護スタッフと検討するよう示しています。手を使う作業は、昔から慣れ親しんだものを選ぶと続きやすくなります。タオルをたたむなど、役割として頼むと表情が変わる方もいます。デイサービスは本人の活動の場であり、家族が弄便の後始末から離れて休める時間にもなります。できることを一つ増やすだけで十分です。排便のリズムの整え方やおむつの当て方、便秘の相談は訪問看護でもお受けしています。まずはお気軽にお問い合わせください。認知症の弄便で「もう無理」と感じたら|自分を責めずに在宅介護を続けるために認知症の弄便への対応がつらくて限界を感じるのは自然なことで、一人で抱えずに相談先と休む手段を早めに確保することが、在宅を続ける支えになります。限界に近いサインと、自分を責めないための考え方弄便の後始末が続けば、体の疲れだけでなく、本人への気持ちまで揺らいでくるものです。自分に出ているサイン考えたいこと夜中の物音で目が覚め、眠れない睡眠が削られている本人の顔を見るのがつらい気持ちが追い詰められている思わず怒鳴ってしまう負担が重なりすぎている家に人を呼べず、誰にも話せない孤立が始まっている縛りたい、閉じ込めたいと思ってしまうすぐに相談してよい段階先のレビューでは、弄便は施設で虐待の一因になったこともあると指摘されています。専門職でも追い詰められる行動を、家族が一人で受け止め続けるのは無理があります。非薬物的介入のガイドラインも、認知症の人だけでなく家族介護者への支援を題名に掲げています(出典:作成委員会「認知症と軽度認知障害の人および家族介護者への支援・非薬物的介入ガイドライン2022」)。家族が支えを受けるのは、特別なことではありません。身体拘束の手引きも、家族は悩みを相談しづらい場合があるとして、日頃から相談できる関係の大切さを示しています。「こんなことを考えてしまった」という気持ちこそ、早めに話してほしい内容です。怒鳴ってしまった自分を責め続けているなら、認知症介護でイライラして怒鳴ってしまう自己嫌悪との向き合い方も読んでみてください。弄便は、あなたの介護が足りないから起きているのではありません。つらさは助けを求めてよい合図です。町田市・相模原市の相談先弄便の悩みは、地域包括支援センターやケアマネジャー、主治医、訪問看護など、複数の窓口に相談できます。相談先相談できること地域包括支援センター介護全般の相談、介護保険の申請ケアマネジャーケアプランの見直し、サービスの追加主治医便秘や下痢、皮膚、薬の相談訪問看護排便の管理、皮膚のケア、関わり方の相談町田市では、高齢者支援センターが地域包括支援センターの役割を担い、保健師や社会福祉士、主任ケアマネジャーなどが相談に応じています。相談は無料です(出典:町田市「高齢者支援センター(地域包括支援センター)」)。相模原市でも、地域包括支援センターが高齢者の介護、福祉、健康、医療の相談を受けており、相談や申請の費用は無料です(出典:相模原市「地域包括支援センター(高齢者の健康、福祉、介護の相談・支援)」)。要介護認定をまだ受けていない場合は、申請の相談から始められます。ケアマネジャーには「弄便があって後始末がつらい」と具体的に伝えてください。サービスの見直しにつながります。BPSDが重なって在宅介護が苦しくなっているときの相談のしかたは、BPSDで在宅介護が限界になる前に|家族が訪問看護に相談すべきサインと使い方でも整理しています。デイサービスやショートステイ、施設という選択肢デイサービスやショートステイ、施設入所は、弄便を必ず改善させるものではありませんが、家族が休み、排泄の支援を分け合う手段になります。選択肢考えられることデイサービス日中の活動が増え、排泄の見守りも受けられるショートステイ泊まりで預けて、家族がまとまって休める施設入所排泄の支援を職員と分け合える共通の注意点環境が変わって一時的に混乱することもある施設やデイサービスに移れば弄便がなくなるとは言い切れません。決まった時間のトイレ誘導で落ち着く方がいる一方、新しい環境に戸惑う方もいます。BPSDのガイドラインでは、BPSDの悪化が介護負担を増やし、施設入所を早める要因になるとしています。裏を返せば、家族の負担を早めに減らすことが、在宅を長く続けることにつながります。使い始めるときは、ケアマネジャーに弄便のことを伝えておくと、受け入れ先が準備しやすくなります。ショートステイの使い方は、介護を休むためのショートステイ|使い方・費用・嫌がるときの進め方で紹介しています。施設を選ぶことも、本人を見捨てることではありません。本人と家族が穏やかに過ごせる形を探す選択肢の一つです。認知症の弄便に訪問看護ができること|町田・相模原での在宅支援認知症の弄便への対応で、訪問看護は排便の管理や皮膚のケアを通して原因に手を打ち、家族の負担を一緒に軽くしていきます。訪問看護が弄便に対してできること訪問看護では、看護師が自宅を訪ね、排便の状態を確かめながら、弄便の原因になっている体の不快に働きかけます。支援の内容具体的なこと排便の状態の確認お腹の張りや便の性状、排便の間隔を見る排便のコントロール主治医の指示にもとづく浣腸や摘便、下剤の相談皮膚のケアかぶれやかきこわしの手当て原因の見立て時間帯やきっかけを家族と整理する家族への助言声かけ、おむつの当て方、片づけの工夫関係者との連携主治医やケアマネジャーと情報を共有する訪問看護は、看護師などが自宅を訪ね、主治医の指示に基づいて療養上の世話や診療の補助を行うサービスで、排泄の介助も含まれます(出典:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「訪問看護」)。浣腸や摘便(肛門から指で便を取り出す処置)は、主治医の指示のもとで行います。生活のリズムに合わせた排便の管理を主治医と相談しながら進めます。訪問のたびにお腹やお尻の皮膚を見るため、弄便の引き金になる便秘やかぶれにも早く気づけます。変化は主治医に伝え、薬の見直しなどにつなげます。話しにくい悩みを打ち明けられる専門職が定期的に来ること自体が、家族の支えになります。医療保険と介護保険のどちらで使うかは要介護認定の有無などで変わるため、ケアマネジャーや主治医に確認してください。町田市・相模原市の訪問先で見えること町田市・相模原市で訪問看護を提供する中では、弄便の悩みが「夜中に便で汚れてしまう」といった言葉で届くことが少なくありません。よく聞く困りごと一緒に考えること明け方に寝具が汚れている夜間の排便と、おむつ交換の時間便秘が続いたあとに起こる排便の間隔と、主治医への相談おむつの中が蒸れてかぶれている皮膚の手当てと、パッドの選び方毎朝の片づけで家族が疲れ切っている休むためのサービスの組み合わせ訪問を終えて玄関で靴を履いていると、「実は、夜中に汚してしまって」と小声で打ち明けてくださるご家族もいます。弄便は、それほど口にしにくい悩みです。排便の記録を一緒に見返し、便秘が続いた翌朝や夜中に目が覚めた日と重なっていないかを確かめていきます。老老介護の世帯では、床を拭く、重い寝具を洗うといった後始末そのものが大きな体の負担です。梅雨や冬は布団が乾かず、洗い替えが追いつかないという声も聞きます。防水シーツを重ねて敷き、汚れた上の1枚だけを替える形にすると、明け方の片づけが短く済みます。集合住宅では、においが近所に伝わらないかを気にして窓を開けにくいこともあるでしょう。こうした困りごとも遠慮なく話してください。弄便のことをうまく説明できなくても、カレンダーの記録を見せていただくだけで状況はよく伝わります。原因がすぐに見つからなくても、試せることを一つずつ一緒に変えていきます。よくある質問|認知症の弄便への対応認知症の弄便への対応について、ご家族からよく寄せられる質問にお答えします。Q. 弄便とはどんな行動を指しますか。A. 排泄した便を手で触ったり、壁や床、寝具、自分の体にこすりつけたりする行動です。便を口に入れてしまう方もいます。BPSD(行動・心理症状)の一つとして理解されることが多い行動です。Q. 認知症で弄便が起こるのはなぜですか。A. 便が出た感覚やにおいがわかりにくくなる、便を汚いものと認識しにくくなる、片づけ方がわからなくなることが背景にあります。便秘やおむつの中の不快、かゆみ、夜間の目覚めなどが重なると起こりやすくなります。Q. 弄便を見つけたときはどう対応すればいいですか。A. 叱らずに「気持ち悪かったね」と声をかけ、手袋をつけてから本人の手、体、着替えの順にきれいにします。部屋の片づけは本人が落ち着いてからで十分です。時間帯や便の状態を記録しておくと原因探しに役立ちます。Q. 弄便をやめさせる方法はありますか。A. 叱ったり行動を封じたりしてやめさせるのは難しく、おむつ外しを防ぐためのつなぎ服は身体拘束の例に挙げられています。便秘や不快といった原因を取り除き、排便のタイミングに合わせてトイレへ誘うことで、減らしていくのが現実的です。Q. 弄便を予防・対策する方法はありますか。A. 排便の記録をつけて出やすい時間にトイレへ誘う、出たらすぐにおむつを替える、便秘を主治医に相談する、日中の活動を増やすといった方法があります。できることから一つずつ試してください。Q. 弄便はいつまで続きますか。進行すると悪化しますか。A. 一律には言えません。重度の認知症の方に多いとされ、進行とともに起こりやすくなる面があります。一方、便秘やかゆみが引き金になっているなら、その手当てが先です。体の不快が取れて落ち着く方もいます。Q. 弄便がつらくて限界を感じたら、どこに相談すればいいですか。A. 地域包括支援センター(町田市では高齢者支援センター)、担当のケアマネジャー、主治医、訪問看護に相談できます。「後始末がつらい」と正直に伝えることが、サービスの見直しにつながります。Q. 弄便はデイサービスや施設に入所すると改善しますか。A. 必ず改善するとは言えません。決まった時間のトイレ誘導や日中の活動で落ち着く方もいますが、環境の変化で一時的に混乱する方もいます。家族が休み、排泄の支援を分け合う手段として考えてください。まとめ認知症の弄便は、便の感覚や意味がつかみにくくなることに、便秘やおむつの不快、夜間の目覚めが重なって起こります。見つけたら叱らず、本人の体を先にきれいにして、時間帯や便の状態を記録しましょう。予防の柱は、排便のリズムを整えることと日中の活動を増やすこと。つらいときは一人で抱えず、地域包括支援センターやケアマネジャー、訪問看護を頼ってください。精神科訪問看護ステーション ピースにご相談ください名前に「精神科」とありますが、弄便のような認知症に伴う行動の変化(BPSD)も、私たちがご相談をお受けしている分野です。2027年1月の開設に先立ち、今は町田市の3事業所から看護師がご自宅に伺います。こんな方はぜひご相談ください:弄便の後始末が続き、心身ともに疲れている方便秘や皮膚のかぶれなど、原因になりそうな体の不調が気になる方「こんなことを相談していいのか」と迷い、一人で抱え込んでいる方訪問看護でできること:排便の状態の確認と、主治医と連携した排便の管理皮膚のケアや、おむつの当て方、声かけの工夫のご提案主治医やケアマネジャーとの情報共有東京都町田市・多摩市、神奈川県相模原市・大和市・川崎市麻生区を中心に対応しています。まずはお気軽にお問い合わせください。関連記事BPSDで在宅介護が限界になる前に|家族が訪問看護に相談すべきサインと使い方認知症の入浴拒否|お風呂を嫌がる理由と家族の対応・清拭の工夫高齢者の便秘解消|在宅でできる排便コントロールと家族の対応認知症の暴言・暴力で家族が限界を感じたときの対応と相談先参考文献一覧出典:国立のぞみの園紀要「弄便が見られる人の特徴と支援について」https://www.jstage.jst.go.jp/article/nozominosonokiyou/18/0/18_15/_article/-char/ja出典:日本認知症学会など6学会監修「かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)」https://www.jspn.or.jp/modules/advocacy/index.php?content_id=120出典:作成委員会「認知症と軽度認知障害の人および家族介護者への支援・非薬物的介入ガイドライン2022」https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00762/出典:国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト 認知症」https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=WwE9LLpYbVZTIDMI出典:厚生労働省「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001248430.pdf出典:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「訪問看護」https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group4.html出典:町田市「高齢者支援センター(地域包括支援センター)」https://www.city.machida.tokyo.jp/iryo/old/shiminnokatae/mijikanasodan/koureisha_shien_center.html出典:相模原市「地域包括支援センター(高齢者の健康、福祉、介護の相談・支援)」https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/kosodate/fukushi/1026635/korei_shien/1006373.html【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理、地域医療連携、在宅看取り支援に積極的に取り組んでいる。【精神科訪問看護ステーション ピースについて】株式会社isLandは町田市で訪問看護を運営する3つの事業所を持ち、これまでも精神疾患のある方とそのご家族を多数支援してきました。2027年1月には、その経験を基に、精神科に特化した「精神科訪問看護ステーション ピース」を新たに開設します。開設までの期間も、既存3事業所でご相談・受入対応が可能です。お気軽にお寄せください。mental.island-piece.jp 精神科訪問看護ステーション ピース|町田市