暑い季節や体調不良時に重宝される「経口補水液」。熱中症や脱水症の対策として注目されていますが、市販品だけでなく家庭で簡単に手作りできるのをご存知ですか?この記事では、経口補水液の基礎知識から具体的な作り方、活用シーン、注意点までをわかりやすく解説します。1. 経口補水液とは?経口補水液(ORS:Oral Rehydration Solution)とは、水分と電解質(塩分など)を効率よく体内に吸収させるための飲料です。下痢や嘔吐、発熱などによる脱水状態、あるいは高温環境での発汗による水分不足時に利用されます。主成分は以下の通りです:成分役割水水分補給ブドウ糖ナトリウムの吸収促進食塩(ナトリウム)体液バランスの維持2. なぜ経口補水液が有効なのか?人間の体は、約60%が水分で構成されており、その中にはナトリウムやカリウムなどの電解質が含まれています。これらの電解質は、体内の細胞の働きや神経伝達、筋肉の収縮などに欠かせない役割を果たしています。しかし、汗や尿、下痢、嘔吐などによって水分と一緒に電解質も失われてしまうと、体内のバランスが崩れ、脱水症状や体調不良を引き起こします。こうしたとき、ただの水だけを飲んでも十分ではありません。水だけでは体内の電解質濃度がさらに薄まり、水分がうまく吸収されない可能性があるのです。経口補水液の吸収メカニズム含有成分吸収のしくみと役割ナトリウム水分の腸管吸収を助け、体液のバランスを維持ブドウ糖ナトリウムと共に小腸で吸収されることで、水の取り込みを促進水上記成分とともに効率よく吸収されるこの仕組みは「ナトリウム・グルコース共輸送」と呼ばれ、ブドウ糖とナトリウムが一緒に小腸の壁を通過することで、同時に水分も吸収されやすくなるという生理的な働きに基づいています。さらに、電解質を適切に補うことで、体液の浸透圧が整い、細胞の機能を正常に保つことができるのです。このように、経口補水液は単なる飲料ではなく、医学的根拠に基づいた非常に効率的な水分・電解質補給手段であり、特に脱水症や熱中症の予防・初期対応において有用性が高いのです。⚠ ポイント:水分と一緒に電解質をバランス良く補えるのが、経口補水液の最大の利点です。💡 ワンポイントアドバイス(看護師より) 「口の中が乾いてきたり、尿の色が濃くなってきたら脱水のサイン。早めの経口補水液で対応しましょう。」出典:厚生労働省「健康のため水を飲もう推進運動」、日本WHO協会「経口補水療法マニュアル」3. 経口補水液が必要なシーン出典:厚生労働省「熱中症環境保健マニュアル」 経口補水液は、以下のようなシーンで役立ちます。熱中症対策:特に高齢者や子どもは要注意風邪や胃腸炎時:発熱・下痢・嘔吐による脱水にスポーツや屋外作業後:大量の汗で失われた水分と塩分の補給に災害時・非常時の備蓄品として4. 市販品と手作りの違い出典:大塚製薬「OS-1 商品情報」 市販の経口補水液(例:OS-1)と家庭で作るものには以下の違いがあります。比較項目市販品手作り経口補水液ナトリウム濃度厳密に調整されているやや不安定になることも味の調整飲みやすさを重視材料により個人差あり衛生管理厳格な品質管理衛生環境に依存緊急時や外出先では市販品、自宅での予防には手作りも有効です。5. 経口補水液の作り方(レシピ)以下が基本的なレシピです。● 材料(1リットル分)材料分量水1リットル砂糖40g(大さじ4と1/2)塩3g(小さじ1/2)レモン汁小さじ1〜(お好みで)● 作り方清潔な容器に水を入れる砂糖と塩を加えてしっかり溶かすお好みでレモン汁を加える冷蔵庫で保存し、当日中に飲み切るのが望ましいです。出典:日本WHO協会「経口補水療法マニュアル」、厚生労働省「健康のため水を飲もう推進運動」6. 正しい飲み方と量の目安出典:日本医師会「熱中症予防・対策」 経口補水液は「水代わりに常用するもの」ではありません。適切な飲用タイミングと量があります。対象目安量成人軽度脱水時に500ml〜1L/日程度子ども体重に応じて少量ずつこまめに高齢者口当たりよく少しずつ摂取飲みすぎるとナトリウム過剰になる可能性があるため注意が必要です。7. 注意したいケースと使用上のポイント出典:日本腎臓学会「腎臓病患者の食事と水分管理」 以下の方は使用前に医師への相談が必要です。腎疾患や心不全のある方糖尿病の方(糖分制限があるため)乳児・高齢者(状態に応じた調整が必要)また、飲み残しは雑菌繁殖の恐れがあるため、一度開封したら早めに飲み切ることが重要です。8. 災害時・非常時の備えとしての経口補水液出典:内閣府 防災情報「家庭の備え」 災害時の備蓄品としても経口補水液は有効です。市販品を数本常備しておく粉末タイプを備蓄し、水で溶かして使用手作りのレシピを家庭内で共有しておく防災バッグに材料メモを入れておくのもおすすめです。まとめ経口補水液は、正しいレシピと使い方を知ることで、熱中症や脱水の予防に非常に役立ちます。市販品と手作りの使い分けをしながら、いざというときのために備えておくことが大切です。ご家庭でも簡単に作れるこの知識を、ぜひ実生活に役立ててください。関連記事日焼けの重症度と適切な対処法、症状別チェックと予防のポイント高齢者の熱中症対策完全ガイド、予防・症状・室内での注意点まで高齢者の水分摂取量ガイド:健康維持のために必要な知識と実践法を紹介本記事の執筆者・監修者プロフィール【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理に長け、地域医療連携や在宅看取り支援にも積極的に取り組んでいる。