この記事でわかること終末期に食べられなくなる身体的な理由と、経過の目安点滴・経鼻経管栄養・胃ろうそれぞれの利点と負担の違い「点滴をしない」という選択が苦痛を減らすことがある理由家族が後悔しないための話し合いの進め方(ACP・人生会議)在宅で看取るときに訪問看護ができること、費用と相談の入口終末期に食べられなくなったとき、家族は何を基準に考えればよいか終末期に食べられない状態が続くとき、点滴をするかどうかは「延命するかどうか」ではなく、本人の苦痛が減るかどうかを軸に考えます。「昨日まで食べていたのに、今日は一口も口を開けてくれない」。終末期のご家族に付き添う方から、この訴えを何度も伺ってきました。点滴をお願いすべきか、胃ろうを作るべきか、それとも何もしないという道があるのか。医師から選択肢を並べられても、判断の材料がないまま決断を迫られたように感じる方は少なくありません。ここでは在宅の看取りに関わる訪問看護の立場から、判断の前提になる考え方を整理します。「食べられない」は終わりの合図ではなく、身体が変わっていくサイン食欲の低下は、終末期の身体が消化と代謝の負担を減らそうとする過程の一部として現れます。家族が受け取りがちな解釈身体で実際に起きていること食べないから弱っていく弱ってきたから食べられなくなる(順序が逆)食べさせれば持ち直す消化吸収の力が落ち、入れた分が負担になることがある本人が我慢している空腹感そのものが乏しくなっていることが多い介護が足りないせい病気や加齢の経過に伴う変化で、介護不足が原因ではないこの順序の理解が、その後の判断を大きく左右します。食べないから衰弱するのではなく、身体が終末期に向かう過程で食べる力が落ちていく。だからこそ、栄養を無理に入れても失われた体力がそのまま戻るとは限りません。ご家族が「食べさせられなかった自分の責任だ」と感じてしまう場面によく出会います。けれどもこれは、責任の所在の問題ではなく身体の経過の問題です。実際、終末期に無理に食事を勧めると、むせ込みや誤嚥性肺炎を招いて本人がかえって苦しむこともあります。食べさせようとするほど、本人は口を閉ざし、介助する側も疲れていくでしょう。食事の時間が対立の場になるくらいなら、量を測るのをやめて、好きな味をひと口味わってもらう時間に切り替えたほうが穏やかです。この前提を家族全員で共有できると、点滴や胃ろうの話し合いが「する・しない」の対立から、「本人にとって何が楽か」という共通の問いに変わっていきます。判断の軸は三つ、本人の意思・苦痛の増減・暮らしのかたち迷ったときは、医療処置の是非ではなく、次の三つの軸に情報を当てはめて考えると整理しやすくなります。判断の軸具体的に確認すること確認先本人の意思以前の発言、書き残したもの、今の表情や拒否の様子家族・本人・かかりつけ医苦痛の増減むくみ・痰・呼吸苦が処置で増えないか主治医・訪問看護師暮らしのかたち自宅で過ごしたいか、介護できる体制があるか家族・ケアマネジャー三つのうち一つだけで決めると、後から迷いが残りやすくなります。たとえば本人が「自然にしてほしい」と話していても、介護する家族が疲弊しきっていれば在宅は続きません。逆に体制が整っていても、処置で本人の苦しさが増すなら選ぶ理由は弱くなるでしょう。三つの軸を紙に書き出し、家族と医療者で同じ表を見ながら話す方法をよくご提案しています。判断材料をそろえる作業と、決断そのものを分けて進める。この二段構えにするだけで、感情だけで押し切る展開を避けられます。なぜ終末期に食べられなくなるのか、身体の自然な変化と余命の目安終末期に食べられなくなる背景には、悪液質(あくえきしつ・病気による代謝の変化でやせが進む状態)、消化管の機能低下、嚥下(えんげ・飲み込み)機能の低下という複数の要因が重なっています。原因が一つではないため、「これを治せば食べられる」という単純な解決策がない点が、ご家族にとってつらいところです。ただし原因の内訳が分かると、どこまでが治せる部分でどこからが経過なのかを切り分けられます。終末期に食欲が落ちる医学的な理由がん・臓器不全・老衰では、それぞれ食べられなくなる仕組みが少しずつ異なります。背景主な仕組み栄養を入れて改善が期待できる度合いがんの終末期炎症性物質による悪液質。食欲低下と筋肉の減少が進む進行期は限定的心不全・腎不全など臓器不全内臓のうっ血、倦怠感、水分制限病状の安定期なら一部期待できる老衰全身の予備力低下、嚥下と覚醒の低下限定的一時的な原因(脱水・感染・薬の副作用・口内炎)治療で回復しうる期待できる見落としてはいけないのが最下段の「一時的な原因」です。便秘や口腔カンジダ、鎮痛薬の副作用、脱水など、対処すれば数日で食欲が戻る要因が隠れていることがあります。訪問看護では、食事量が落ちたときにまず口の中を見て、排便の間隔を確認し、直近で変更した薬を洗い出します。入れ歯が合わずに噛めないだけだった方、便秘で腹部が張って食欲が落ちていた方。思い当たる原因が見つかることは、決して珍しくありません。ここを飛ばして「もう終末期だから」と結論づけてしまうと、まだ食べられたはずの時間を失いかねません。治せる原因を除外してから、経過としての食思不振を受けとめる。この順番を医療チームで守ることが、後悔を減らす前提になります。経過の目安、月単位・週単位・日単位で現れるサイン終末期の変化には段階があり、どの段階かによって選ぶべきケアも変わります。段階目安の期間見られるサイン月単位数か月食事量が半分程度に減る、体重減少、日中の臥床が増える週単位数週間食事は数口、水分中心、一日の大半を眠って過ごす日単位数日水分もほとんど摂れない、傾眠、尿量の減少時間単位数時間から1日下顎(かがく)呼吸、手足の冷感と色調変化段階は行きつ戻りつしながら進むため、日付で機械的に区切れるものではありません。それでも「今は週単位に入っている」と共有できていれば、家族が遠方から集まる判断や、輸液を続けるかどうかの見直しに使えます。訪問看護では、食事量・水分量・尿の回数・眠っている時間の四つを記録していただきます。数値の絶対値より、一週間前と比べてどう変わったかという傾きが判断に役立ちます。手帳の隅に「昼はゼリー2口、水は湯のみ半分、尿3回」と書き添える程度で構いません。医師に相談するときも、この記録があると話が早く進むでしょう。段階の共有は、家族が心の準備をする時間をつくる作業でもあります。食べられなくなってからの余命はどれくらいか食事も水分もほとんど摂れない状態が続く場合、多くは数日から2週間程度の経過をたどるとされますが、個人差が大きく、断定はできません。摂取の状況一般的に見られる経過の幅補足食事は減ったが水分は摂れる数週間から数か月経過の幅が最も大きい水分のみ、少量ずつおおむね1週間から数週間体格や病状で変動する水分もほぼ摂れない数日から2週間程度尿量の減少が目安になる点滴のみで経口摂取なし病状により大きく異なる輸液で日数が必ず延びるとは限らないご家族から「点滴だけになったら余命はどれくらいですか」と聞かれる場面は非常に多くあります。正直にお伝えすると、輸液の量と余命は単純な比例関係にはありません。終末期には身体が水分を血管内に保てなくなり、入れた分がむくみや胸水として溜まりやすくなるためです。輸液の量と苦痛の関係は、日本緩和医療学会「終末期がん患者の輸液療法に関するガイドライン(2013年版)」で整理されています。数字を求めたくなる気持ちは自然なもの。それでも、残された日数より、その日々をどう過ごすかに話題を移すほうが、結果として家族の納得につながる場面を多く見てきました。点滴・経管栄養・胃ろうという選択肢、それぞれのメリットとデメリット点滴と経管栄養は目的も負担も異なる別の処置であり、終末期に食べられない状況では「どちらが優れているか」ではなく病期に合うかどうかで選びます。三つの選択肢は、入れられる栄養量・身体への負担・在宅での続けやすさが大きく違います。まず全体を俯瞰してから、個別の事情に落とし込みます。点滴(末梢輸液・皮下輸液・中心静脈栄養)でできること点滴は水分と電解質を補う手段であり、必要な栄養をすべてまかなえるわけではありません。種類入れられるもの在宅での実施主な負担末梢点滴水分・電解質・少量の糖訪問看護で対応可能血管の確保が難しくなる、刺し替えの痛み皮下輸液水分・電解質在宅で行いやすい刺入部の腫れ、吸収に時間がかかる中心静脈栄養(TPN)必要栄養量に近い量カテーテル管理が必要感染、管理の負担が大きい在宅では末梢点滴と皮下輸液が中心になります。皮下輸液はお腹や太ももの皮下に細い針を留置する方法で、血管が細くなった方でも続けやすく、夜間に行って日中は自由に過ごす使い方もできます。一方で、終末期に1日1,000ミリリットルを超える輸液を続けると、むくみ・腹水・痰の増加といった症状が強まることがあります。実際の在宅では、1日200から500ミリリットル程度の少量から始めて、むくみや呼吸の様子を見ながら増減する運用が多く選ばれます。中心静脈栄養は必要な栄養量に近い量を入れられますが、カテーテルの管理と感染対策が欠かせず、終末期に新たに導入する例は多くありません。点滴は「するかしないか」ではなく「どれだけの量を、いつまで」で調整できる。この視点を、ぜひ持っておいてください。経鼻経管栄養と胃ろうの違い経鼻経管栄養と胃ろうはどちらも消化管に直接栄養を入れる方法ですが、留置する場所と負担の質が異なります。項目経鼻経管栄養胃ろう(PEG)挿入方法鼻から胃までチューブを通す内視鏡で腹壁に小さな穴をあける導入の負担処置は簡便だが、留置中の違和感が続く内視鏡処置と数日の入院が必要交換の頻度数週間ごとが目安おおむね数か月ごとが目安見た目・生活顔にチューブが出る、自己抜去が起こりやすい服の下に隠れる、入浴もしやすい長期に栄養管理を続ける見通しがある場合、身体的な負担が少ないのは胃ろうです。鼻のチューブは咽頭の違和感が続き、認知症のある方では抜いてしまうために手を抑制する状況につながることもあります。表に挙げた交換の間隔は一般的な目安であり、実際の頻度は使用する製品や主治医の方針で変わるため、導入前に確認してください。栄養療法の分野では、消化管が働いているなら点滴より経腸栄養を優先するという考え方が広く共有されています。栄養療法全般の情報は日本栄養治療学会(JSPEN)が発信しています。ただしこれは、栄養療法が適応となる病期での話。終末期にそのまま当てはめると、身体が処理できない量を入れることになりかねないため、導入を検討するときは回復や維持の見込みがある病期かどうかを主治医と確認してください。胃ろうは一度つけたら外せないのか、断ることはできるのか胃ろうは造設後も中止や抜去の相談ができ、造設しないという選択も本人・家族の意思として認められています。よくある心配実際の考え方一度つけたら二度と外せない経口摂取が回復すれば抜去した例もある。中止の相談も可能断ると見捨てたことになる病期に合わない処置を選ばないことは、放置とは異なる家族が決めなければいけない本人の意思の推定が原則。家族だけで背負う必要はない一度決めたら変更できない状態の変化に応じて何度でも見直せる「外せない」という思い込みが、造設の判断を過度に重くしています。実際には、嚥下機能が回復して抜去に至る方もいますし、状態の変化に伴って注入量を減らしていく選択もあります。一方で、いったん始めた栄養を中止する判断は、開始する判断より心理的な負担が大きくなりがちです。だからこそ、造設の前に「どうなったら見直すか」を主治医と家族で言葉にしておくと、後の判断が楽になるでしょう。胃ろう導入後の生活面については、胃ろうの在宅管理で家族が知っておくべきこと|日常の注意点とトラブル対処法で具体的な手順をまとめています。自然な経過を選ぶという選択肢とその意味、苦痛を増やさないケア自然な経過を選ぶとは医療を打ち切ることではなく、身体が受けとめられる量に医療を合わせ、苦痛を減らすケアに力を注ぐという方針です。「何もしない」と表現されることがありますが、実際にはやることが減るわけではありません。むしろ口腔ケアや体位の工夫、症状の緩和など、手をかける場面は増えていきます。「点滴をしない」選択がなぜ苦痛を減らすことがあるのか終末期には水分を血管内に保つ力が落ちるため、輸液量が多いと身体に水が溜まり、かえって苦しさが増すことがあります。過剰な輸液で起こりうること本人に現れる自覚症状全身のむくみ身体が重い、皮膚が張って痛い胸水・肺のうっ血息苦しさ、呼吸が浅く速くなる気道分泌物の増加痰がらみ、ゴロゴロという音腹水の増加お腹の張り、吐き気反対に、輸液を控えめにすると口の渇きが強まる可能性があります。ここで有効なのが、飲ませる代わりに口を潤すケア。スポンジブラシや保湿ジェルで口腔内を湿らせると、渇きの訴えはかなり和らぎます。訪問看護では、輸液量を減らす方針になったときほど口腔ケアの手技をご家族にお伝えしています。点滴を減らす判断とセットで、口の渇きへのケアを必ず組み立てる。これが「かわいそう」を「楽そう」に変える現実的な方法です。判断に迷う段階では、少量から始めて反応を見る試験的な輸液という進め方もあります。数日続けて、むくみや痰が増えていないか、本人の表情が楽になったかを見てから決める形です。自然な経過(自然死・老衰)を選ぶとはどういうことか自然な経過とは、治療をやめることではなく、目的を「延ばす」から「和らげる」に切り替えることを指します。続けること見直すこと痛み・息苦しさ・吐き気の緩和定期的な採血や画像検査口腔ケア、保湿、体位の調整高カロリーの経管栄養や大量輸液本人の希望する少量の飲食決められた量を飲ませる指導家族との時間、生活のリズム数値目標に沿った水分管理見直す欄にある項目も、状況によっては続ける意味があります。大切なのは一律に減らすことではなく、一つひとつについて「これは本人を楽にするか」を問い直す作業です。国が示す意思決定の考え方でも、本人の意思と最善の利益を中心に、医療・ケアチームが繰り返し話し合うことが基本とされています(参考:厚生労働省「人生会議してみませんか」)。自然な経過を選んだ方のご家族から、後になって「最後まで手を尽くした」という言葉を聞くことが多いのは、この置き換えが実際に行われていたからだと考えています。もう一点付け加えるなら、自然な経過を選んだ後でも方針は変えられます。痛みが強くなれば医療用麻薬を使いますし、脱水で本人がつらそうなら少量の輸液を再開する判断もあるでしょう。決めたら最後まで貫かなければならない縛りはなく、状態が変われば、そのたびに医療・ケアチームと相談し直せます。食べられなくても続けられるケア、口腔ケアとお楽しみ程度の摂取食べられない時期でも、口を清潔に保ち、好きな味を少量味わう関わりは最後まで続けられます。ケア具体的な方法目的口腔ケアスポンジブラシで清拭、保湿ジェルを薄く塗る渇きの緩和、肺炎の予防お楽しみ程度の摂取アイス、ゼリー、好きな飲み物をひと匙味わう楽しみ、家族の関わり体位の工夫上体を30度ほど起こす、枕で角度を保つ誤嚥(ごえん)や呼吸苦の軽減香りの活用だしや果物の香りを近づける覚醒と満足感ひと匙のアイスクリームが、点滴1本より本人の表情を変える場面は珍しくありません。誤嚥のリスクは残るため、覚醒がよいタイミングを選び、上体を起こし、少量ずつという条件は守ってください。飲み込みに不安があるときは、訪問看護師や言語聴覚士に評価してもらってから始めると安心です。嚥下面の支援については訪問リハビリで受けられる言語聴覚士(ST)の嚥下・失語支援とは?もあわせてご覧ください。判断に迷う段階から、ピース訪問看護ステーションへのご相談をご利用いただけます。家族が後悔しないための話し合い方、ACPと医療・ケアチームとの連携後悔を減らす最大の要因は、点滴や胃ろうを選んだかどうかではなく、本人の意思を軸に何度も話し合えたかどうかです。意思決定は一度きりの選択ではありません。状態が変わるたびに前提も変わるため、話し合いを重ねる仕組みが要ります。ACP(人生会議)とは何か、いつ、どう始めるかACPは、本人・家族・医療者が繰り返し話し合い、本人の価値観に沿った医療とケアを共有していく過程を指します。始めるタイミング話し合う内容の例元気なうち・診断がついたときどこで過ごしたいか、何を大事にしたいか入退院を繰り返し始めたとき再入院の希望、救急搬送をどうするか食事量が明らかに落ちたとき点滴・経管栄養の方針、本人の意思の確認週単位の変化が出てきたとき看取りの場所、急変時の連絡先の確認多くのご家族が「話を切り出すと、死ぬ話をするのかと怒られそうで怖い」とおっしゃいます。そこで有効なのが、処置の話から入らず、暮らしの話から入る方法です。「もし入院が必要になったら、家と病院どちらがいい?」「痛みがあるのと眠くなるの、どちらが嫌?」といった問いなら、答えやすくなります。厚生労働省も愛称「人生会議」として、繰り返しの話し合いを呼びかけています。話し合った内容は必ず紙に残し、ケアマネジャーと訪問看護にも共有する。これが夜間の急変時に、本人の希望どおりの対応につながります。家族の意見が割れたとき、どう整理するか意見が割れたときは、多数決ではなく「本人ならどう答えるか」に立ち返って整理します。よくある対立整理の切り口同居家族は自然な経過、遠方の家族は積極的治療遠方の家族に現在の状態を直接見てもらう機会をつくる配偶者と子で希望が違う本人が過去に語った言葉を全員で持ち寄る医療者の説明の受け取り方が違う家族が同席する場で医師の説明を一度に受ける介護負担の偏りから感情がこじれる誰が何を担うかを紙に書き、負担を可視化する遠方のご家族が久しぶりに訪ねてきて「なぜ点滴をしていないのか」と主張し、その場が緊張する場面には何度も立ち会ってきました。多くの場合、対立の正体は意見の違いではなく情報量の差です。日々の変化を見ていない方に、経過を時系列で説明する時間を取るだけで、話は落ち着いていきます。記録した食事量と尿量を一緒に見返し、主治医から今の病期を聞いてもらったところ、「知らなかっただけだった」と受けとめ、付き添いを交代で担う側に回られたご家族もいます。訪問看護師やケアマネジャーが同席して、経過の説明役を引き受けることもできます。家族だけで抱え込まず、第三者を入れる選択肢を持っておいてください。訪問看護が支える在宅での意思決定と看取り、町田・相模原での取り組み訪問看護は、症状の緩和と介護指導に加えて、点滴や胃ろうの判断を家族が下すための情報整理と24時間の連絡体制を担います。在宅の看取りは、家族だけで担うものではありません。医師・訪問看護師・ケアマネジャー・ヘルパーが役割を分け合う体制が前提になります。在宅で看取るとき、訪問看護は具体的に何をするのか訪問看護は、身体のケアと家族の支えの両方を担い、急変時の窓口として機能します。場面訪問看護が行うこと平常時全身状態の観察、痛みや呼吸苦の緩和、口腔ケア、清拭、褥瘡(じょくそう)予防判断が必要なとき医師への報告と調整、選択肢の説明、家族の思いの整理夜間・休日24時間の電話対応、必要に応じた緊急訪問最期のとき呼吸や循環の変化の説明、家族への声かけ、死亡確認までの支援在宅療養で家族が最も不安に感じるのは、医療者が誰もいない夜間の時間帯です。呼吸の様子が変わったとき、痛みが強くなったときに、電話一本でつながる先があるかどうか。ここで在宅を続けられるかが決まります。24時間対応体制加算(介護保険では緊急時訪問看護加算)を届け出た訪問看護ステーションであれば、24時間の連絡体制を利用できます。訪問看護制度の全体像は公益財団法人 日本訪問看護財団でも解説されています。看取り期の在宅療養の流れは看取り期でも自宅で過ごせる?町田市の訪問看護ができることでも詳しく紹介しています。町田市・相模原市での在宅看取りの実際町田市・相模原市で訪問する中で、食事がとれなくなった時期のご家族から最も多く寄せられる質問は「点滴をしないのは見殺しではないか」という問いです。時期現場でよく行う支援食事量が落ち始めた頃治せる原因の確認、口腔内の観察、家族への経過説明週単位の変化が出た頃訪問回数を週2〜3回に増やす、輸液量の見直しを医師と調整日単位の変化が出た頃連日訪問と24時間対応、看取りのパンフレットを用いた説明お看取りの後エンゼルケア、ご家族へのねぎらいと悲嘆へのケア町田市は坂道が多く、家族が高齢の老老介護世帯も少なくありません。買い物や通院の付き添いだけで一日が終わってしまう状況で、点滴の管理まで担うのは現実的に難しい場面があります。そこで、皮下輸液を訪問時間内に終える、吸引が必要なら手技を無理なく伝えるなど、その世帯で続けられる形にケアを組み替えます。相模原市の橋本・大野方面では退院支援で関わることが多く、退院当日に初回訪問を入れて環境を整えています。その家で続けられない計画は、どれほど医学的に正しくても機能しないというのが、在宅で積み重ねてきた実感です。費用と制度、いつ誰に相談すればよいか終末期の訪問看護は、末期がんなど厚生労働大臣が定める疾病等に該当すれば医療保険が優先し、該当しない老衰や心不全では介護保険での利用が基本になります。状況保険と訪問回数の扱い末期の悪性腫瘍など、厚生労働大臣が定める疾病等医療保険が優先。週4日以上・1日複数回の訪問も可能老衰、非がんの心不全など該当しない場合要介護認定があれば介護保険が優先。回数はケアプランと区分支給限度基準額の範囲内状態が急に悪化した時期特別訪問看護指示書で、一定期間は医療保険の連日訪問に切り替えられる自己負担介護保険は1〜3割、医療保険は年齢と所得で1〜3割。高額療養費等で月ごとの上限あり相談先ケアマネジャー、病院の地域連携室、訪問看護ステーション費用が心配で相談をためらう方は少なくありません。負担割合は介護保険なら1〜3割、医療保険でも年齢と所得に応じて1〜3割で、高額療養費や高額介護サービス費という月ごとの上限もあります。見込み額はケアマネジャーに直接聞くのが早道です。老衰や非がんの慢性疾患では「毎日は来てもらえないのでは」と心配される方もいます。そこで使えるのが特別訪問看護指示書です。状態が急に変わった時期に主治医が交付すると、一定期間は医療保険で連日の訪問に切り替えられます。看取りが近づいた時期によく使う手段。介護保険の全体像は厚生労働省「介護・高齢者福祉」にまとまっています。入院中であれば、退院前カンファレンスに訪問看護師を呼んでもらうと、退院後の点滴や栄養の方針を共有できます。相談の時期は「決まってから」ではなく「迷い始めたとき」が適切です。今日ひとつだけ動くなら、担当のケアマネジャー(入院中なら病院の地域連携室)に「食事が減ってきて、点滴や胃ろうの話が出ています」と一言伝えてください。そこから訪問看護や訪問診療の調整が動き出します。よくある質問Q1. 終末期に点滴だけになった場合、余命はどれくらいですか。病状や体格で大きく異なり、一律には言えません。輸液の量を増やせば日数が延びるという単純な関係ではなく、過剰な輸液がむくみや痰の増加を招くこともあります。尿量や覚醒の変化を主治医と共有しながら、量を調整していく形が現実的です。Q2. 食べられなくなったら、人はどれくらい生きられますか。水分もほとんど摂れない状態では、数日から2週間程度の経過をたどることが多いとされます。ただし少量でも水分が入る時期は幅が広く、数か月に及ぶこともあります。日数より、一週間前と比べた変化の傾きを見てください。Q3. 終末期に点滴をしない方がよいのは、なぜですか。終末期には水分を血管内に保つ力が落ち、輸液が身体に溜まりやすくなるためです。むくみ、胸水、痰の増加が起こると、本人の呼吸が苦しくなります。しないと決めるより、少量で様子を見ながら調整するという選択肢もあります。Q4. 胃ろうは一度つけたら外せませんか。断ることはできますか。経口摂取が回復すれば抜去に至る方もおり、注入量の見直しや中止の相談も可能です。造設しないという選択も本人・家族の意思として尊重されます。造設前に「どうなったら見直すか」を主治医と共有しておくと判断が楽になります。Q5. 点滴と経管栄養(胃ろう・経鼻経管栄養)の違いは何ですか。点滴は血管や皮下に水分と電解質を補う方法で、必要な栄養をすべて満たすものではありません。経管栄養は消化管に栄養剤を直接入れる方法で、栄養量を確保できる一方、身体が処理できる病期かどうかの見極めが必要です。Q6. 自然な経過を選ぶとは、どういうことですか。治療をやめることではなく、目的を「延ばす」から「和らげる」に切り替えることです。痛みや息苦しさの緩和、口腔ケア、好きな味を少量味わう関わりは最後まで続き、手をかける場面はむしろ増えます。Q7. 延命治療について、家族はいつ・どう話し合えばよいですか。食事量が落ちてきた時期が一つの目安ですが、元気なうちから始めて構いません。処置の話ではなく「どこで過ごしたいか」「何が一番つらいか」という暮らしの問いから入ると話しやすくなります。話した内容は紙に残し、医療・介護チームに共有してください。Q8. 在宅で看取る場合、費用はどれくらいかかりますか。訪問看護の自己負担は介護保険で1〜3割、医療保険でも年齢と所得に応じて1〜3割です。高額療養費などで月ごとの上限もあるため、見込み額はケアマネジャーに確認してください。Q9. 在宅で看取る場合、訪問看護は具体的に何をしてくれますか。症状の緩和、口腔ケアや清拭などの身体的ケア、医師との調整、介護指導、24時間の電話対応と緊急訪問を行います。最期の時期には呼吸の変化を説明し、ご家族が慌てずに過ごせるよう、看取り後のケアまで伴走します。まとめ終末期に食べられなくなるのは、介護が足りないからではなく、身体が変化していく過程で起こることです。点滴も胃ろうも、それ自体が善でも悪でもなく、今の病期で本人の苦痛を減らすかどうかで選ぶ処置になります。輸液は量で調整でき、胃ろうも見直しの相談ができます。判断に正解を求めるより、本人の意思を軸に、医療・ケアチームと繰り返し話し合える状態をつくってください。まず今日、ケアマネジャーか病院の地域連携室に「食事が減ってきた」と一言伝えるところから始めていただければ、そこに訪問看護も加わります。ピース訪問看護ステーションにご相談くださいこんな方はぜひご相談ください:ご家族が食べられなくなり、点滴や胃ろうを勧められて迷っている方自宅で最期まで過ごさせたいが、夜間の急変が不安な方家族間で方針が割れてしまい、話し合いの進め方に困っている方ピース訪問看護ステーションができること:症状の緩和・口腔ケア・介護指導と、主治医との方針調整24時間の電話対応と緊急訪問による、夜間・休日の見守り点滴や栄養の選択肢を整理し、ご家族の意思決定に伴走する支援町田市・相模原市・多摩市など東京都南部を中心に対応しています。まずはお気軽にお問い合わせください。関連記事認知症の終末期ケア、在宅看取りで家族が迷う選択肢胃ろうの在宅管理で家族が知っておくべきこと|日常の注意点とトラブル対処法末期癌の在宅看取りで後悔しないために、訪問看護・リハビリと準備のすべて看取り期でも自宅で過ごせる?町田市の訪問看護ができること参考文献一覧出典:日本緩和医療学会「終末期がん患者の輸液療法に関するガイドライン(2013年版)」https://www.jspm.ne.jp/publication/guidelines/individual.html?entry_id=90出典:厚生労働省「『人生会議』してみませんか」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02783.html出典:日本栄養治療学会(JSPEN)https://www.jspen.or.jp/出典:公益財団法人 日本訪問看護財団https://www.jvnf.or.jp/出典:厚生労働省「介護・高齢者福祉」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理、地域医療連携、在宅看取り支援に積極的に取り組んでいる。island-piece.jp 株式会社isLand|訪問看護・居宅介護支援・訪問介護|町田市