認知症の方に見られる「落ち着きがない」状態。家の中をウロウロと歩き回る、何度も同じことを言う、理由もなく怒る――これらの行動は、介護する家族にとって大きな悩みの種となります。しかし、その背景や理由を理解し、適切な対応を行うことで、ご本人の不安を軽減し、安心できる日常を取り戻すことが可能です。本記事では、認知症の落ち着きのなさの原因と対応方法について、訪問看護・介護現場の視点も交えてわかりやすく解説します。1. 認知症で落ち着きがないとは?「落ち着きがない」とは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか。以下のような行動が典型例です:行動例説明徘徊外出の予定がないのに外へ出ようとする目的のない歩行室内や施設内を何度も歩き回る過度な独り言や質問同じ内容を何度も繰り返す急に怒り出す理由もなく怒る、暴言や暴力を伴うこともあるこれらは、「BPSD(行動・心理症状)」と呼ばれる認知症特有の症状の一部で、ご本人の不安や混乱が原因であることが多いです。2. 落ち着きがない状態の具体例実際に訪問看護の現場では、以下のようなケースが見られます。ケース1:毎晩「家に帰る」と言って外に出ようとする→ 昼夜逆転や記憶混乱が原因。昔の記憶と現実が交錯していることが多い。ケース2:「財布がない!」と1日に何度も探し回る→ 不安や物盗られ妄想。物の置き場所を忘れることによる混乱。ケース3:突然怒鳴り出す→ 言葉がうまく出てこない苛立ち。相手に気持ちが伝わらないストレス。このように、行動の裏には必ず理由や感情が隠れています。3. 原因とメカニズム認知症による落ち着きのなさには、以下のような原因が考えられます。原因説明不安・恐怖環境が理解できず不安に駆られる混乱時間や場所の認識が曖昧で、現在地が分からなくなる疼痛や体調不良痛みや不快感をうまく伝えられないため、行動で表現するストレスや疲労音、光、人間関係などの刺激に過敏に反応生活習慣の乱れ睡眠障害や便秘などが原因で精神的に不安定になることがあるこうした原因に対して、まずは**「本人が何を感じているのか」を想像する視点**が大切です。4. 家族ができる対応策家族としてできることには、いくつかのポイントがあります。1)安心できる環境づくり部屋の明るさや温度を整える時計やカレンダーを見える場所に設置写真や思い出の品を飾ることで空間に安心感を与える2)決して否定しない「違うでしょ!」ではなく「そうだったんだね」と共感する声かけ話を逸らしたり、注意を他に向ける「リダイレクト」も効果的3)行動の記録をつける落ち着きのない時間帯や状況を記録し、パターンを探るこれにより、予防的なアプローチが可能になります。5. 専門職による対応法訪問看護師や介護職などの専門職が行っている対応策も、家族にとって参考になります。専門職の対応例解説アセスメントの実施行動・心理面・身体面を総合的に評価リハビリの導入軽い運動や生活リズムを整えるアプローチ環境調整の提案生活空間の安全性・快適性をサポート服薬管理のサポート不安や興奮を和らげる薬の正しい使用特に訪問看護では、医療と生活の両面から継続的に支援できる点が強みです。6. 医療・介護サービスの活用落ち着きのなさが継続する場合は、医療・介護サービスの利用を検討しましょう。訪問看護ステーション:看護師による観察・ケア、主治医との連携デイサービス:日中の活動で生活リズムを整えるショートステイ:一時的な預かりで家族の負担軽減地域包括支援センターやケアマネジャーに相談することで、ご家庭に最適なサービスを選ぶことが可能です。7. よくあるQ&AQ:夜中に何度も起きて歩き回るのはどうすれば? A:日中の活動量を増やす、夕方以降のカフェインを控える、照明を工夫することで改善することがあります。Q:暴言がひどくて困る A:言葉の背景に「伝わらない苛立ち」があることが多いため、無理に受け止めず、専門職に相談を。Q:外出したがるときはどうすれば? A:「ちょっと一緒にお茶を飲もうか」など、注意をそらす声かけが効果的です。まとめ認知症の「落ち着きがない」行動は、ご本人の不安や混乱の表れです。原因を理解し、環境調整や声かけの工夫をすることで、落ち着きを取り戻せる場合が多くあります。家族だけで抱え込まず、訪問看護や介護の専門職と連携しながら支援することが、安心できる生活への第一歩となります。関連記事認知症の種類と特徴を徹底解説!違いがわかる一覧表&訪問看護の活用方法 高齢者がキレるのはなぜ?感情の変化から考える病気の可能性高齢者の足のむくみは病気のサイン?訪問看護で行う観察・ケア・予防と家族支援ピース訪問看護ステーションのご案内自宅での療養や介護に、不安やお悩みはありませんか?ピース訪問看護ステーションでは、町田市を中心に、医療依存度の高い方や在宅でのリハビリを希望される方への支援を幅広く行っています。24時間緊急対応が可能な体制を整えており、看護師・リハビリ職(PT・OT・ST)・ケアマネジャーが在籍。医療と介護の両面から、ご本人とご家族を多職種で支え、安心して在宅生活を続けられるようサポートしています。退院支援を担う医療機関の皆さま、地域のケアマネジャーの皆さま、訪問看護をご検討中のご本人・ご家族も、どうぞお気軽にご相談ください。新規のご依頼・ご質問は、お電話またはお問い合わせフォームより承っております。📞 鶴川本部 直通TEL:042-860-4404(平日9:00〜18:00)▶ お問い合わせフォームはこちら▶ 訪問看護・訪問リハビリのサービス詳細はこちら本記事の執筆者・監修者プロフィール【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理に長け、地域医療連携や在宅看取り支援にも積極的に取り組んでいる。