夏になると、発熱や喉の痛み、倦怠感といった症状が出た際に「コロナか?」「夏風邪か?」「熱中症か?」と迷う方も多いのではないでしょうか。特に2025年の夏は感染者数の増加傾向が続いており、正しい情報に基づいた対応が必要です。本記事では、夏に多い体調不良とコロナの違い、最新の症状の傾向、正しい感染対策などを、訪問看護の現場視点を交えて詳しく解説します。1. 夏にコロナが流行する理由と最新の感染状況新型コロナウイルスは冬に流行するイメージがありますが、近年では夏にも感染拡大が見られるようになっています。2025年の夏も例外ではなく、特に7月下旬から8月にかけて感染者数が増加傾向にあります。これは以下の要因が重なっているためです。人との接触機会の増加:夏祭りや帰省、旅行などで人流が活発になる。エアコンによる換気不足:暑さ対策で窓を閉め切ることが多く、換気が不十分になりやすい。免疫力の低下:強い暑さや寝不足により体力が奪われ、感染に対する抵抗力が落ちる。最新の感染状況厚生労働省の発表によると、2025年7月中旬から8月中旬にかけて(第29〜33週)、全国の定点報告は増加傾向を示しています。特に首都圏や大都市圏での報告数が高い傾向にあります。ただし、WHOは「明確な季節性は確立していない」としており、今後も継続的な監視が必要です。直近の特徴として、オミクロン株の派生型「ニンバス(NB.1.8.1系統)」の割合が拡大しており、一部地域では10〜30%程度を占めると推定されています。ニンバス株はWHOの「監視下の変異株(VUM)」に分類され、追加公衆衛生リスクは「低」と評価されています。重症度の上昇は確認されておらず、現行ワクチンによる重症化予防効果も期待されています。出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の発生動向調査(2025年第33週)」https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/001543603.pdf出典:WHO「Disease Outbreak News: COVID-19 - Global Situation」https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2025-DON572出典:WHO「Initial risk evaluation of NB.1.8.1」https://cdn.who.int/media/docs/default-source/documents/epp/tracking-sars-cov-2/23052025_nb.1.8.1_ire.pdf2. 夏風邪とコロナ(ニンバス株)の症状の違い夏場に多い体調不良のひとつが「夏風邪」です。エアコンによる冷えや睡眠不足で免疫力が下がりやすく、ウイルス感染を引き起こします。一方で、2025年夏に流行しているコロナの主流株はニンバス株であり、従来株と比べても感染力が強いとされています。ただし、WHOは「症状に大きな差はなく、従来と同様に咽頭痛、咳、発熱、倦怠感などがみられる」としています。以下は、夏風邪とコロナ(ニンバス株)の比較表です。症状夏風邪(例:アデノ・エンテロ)コロナ(ニンバス株)発熱微熱〜38℃程度38℃前後の発熱が持続する場合がある喉の痛み軽度〜中等度咽頭痛はよくみられる症状咳軽度、痰を伴うことあり乾いた咳が長引くことがある倦怠感軽度〜中等度強い倦怠感で日常生活に支障が出ることも結膜炎出やすい(咽頭結膜熱)主症状ではない口腔内小水疱出やすい(ヘルパンギーナ)出ない特に、結膜充血や口腔内小水疱の有無は夏風邪とCOVID-19を区別する大きなポイントです。症状が重く長引く場合は早めに医療機関へ相談しましょう。出典:国立感染症研究所「咽頭結膜熱とは」https://www.niid.go.jp/niid/ja/adeno-pfc-m/adeno-pfc-idwrc/12351-idwrc-2342.html出典:国立感染症研究所「ヘルパンギーナとは」https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/515-herpangina.html出典:WHO「Coronavirus disease (COVID-19) Fact sheet」https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/coronavirus-disease-(covid-19)3. 熱中症とコロナを見分けるポイント夏に注意が必要なもう一つの健康リスクが「熱中症」です。体温上昇や発汗異常により体の水分・塩分バランスが崩れることで発症します。熱中症とコロナは初期症状が似ているため、誤解しやすいのが問題です。症状熱中症コロナ(ニンバス株)発熱高体温(体温40℃に達することも)38℃前後の発熱頭痛強い頭痛・めまい出る場合もある意識障害あり(重度で倒れることも)基本的にはなし咳・喉の痛みなし咽頭痛・咳が主症状汗異常にかく、または全く出ない通常通り意識障害や異常発汗は熱中症、喉の痛みや咳があればコロナと判断する目安になります。出典:厚生労働省「熱中症予防のために」https://neccyusho.mhlw.go.jp/heatstroke/4. 2025年夏のコロナ症状の特徴とは?2025年夏に報告されているコロナの症状には、従来と比べて以下の特徴が見られます。咽頭痛:一般的に多く報告される。喉の炎症により飲食困難になる場合がある。長引く乾いた咳:生活の質を下げる要因になる。発熱の持続:38℃前後の発熱が数日続く例もある。倦怠感:体力消耗により日常生活に影響。ただし、WHOは「従来のCOVID-19と大きな差は認められない」としており、症状は従来のオミクロン系統と同様の範囲に収まるとしています。出典:WHO「Coronavirus disease (COVID-19) Fact sheet」https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/coronavirus-disease-(covid-19)5. 潜伏期間や感染経路はどうなっているか?コロナの潜伏期間は概ね2〜3日(中央値約3日)とされ、これは従来のオミクロン系統と同様です。感染経路は以下の通りです。飛沫感染:会話や咳・くしゃみによる飛沫吸入。エアロゾル感染:換気不足の密閉空間で感染が広がる。接触感染:手指を介して口や鼻に触れることで感染。特に夏は冷房で室内が閉め切られやすく、換気不足がリスク増大につながるため注意が必要です。出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症について(Q&A)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html出典:国立感染症研究所「オミクロン株に関する疫学情報(暫定報告)」https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000970030.pdf6. コロナ感染時の受診の目安と注意点コロナに感染した可能性があるときは、受診のタイミングを見極めることが重要です。受診を検討すべき症状息苦しさや呼吸困難強い倦怠感で日常生活が困難喉の痛みで水分が摂れない意識障害や胸痛高齢者や基礎疾患を持つ人の体調悪化自宅療養の注意点水分補給をこまめに行う(経口補水液が有効)解熱剤は医師の指示に従って使用家族への感染を防ぐため換気やマスクを徹底体調変化を日記等で記録し、悪化時は早めに相談出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に関する相談・受診の目安」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19-kikokusyasessyokusya.html7. 高齢者や在宅療養中の方が注意すべき点(訪問看護の視点)訪問看護の現場では、高齢者や持病を持つ方がコロナに感染すると重症化リスクが高いと実感されています。特に以下の点に注意が必要です。喉の痛みにより水分・食事摂取が困難 → 脫水や低栄養リスク認知症患者は体調変化に気づきにくい → 家族や看護師による観察が必須終末期や慢性疾患患者 → 酸素療法や薬剤管理が必要になるケースあり訪問看護では、体調観察だけでなく生活リズムや睡眠の確認も行い、家族だけでは判断が難しい変化を早期に医師へつなぐ役割を担います。出典:日本看護協会「在宅療養と新型コロナウイルス対応」https://www.nurse.or.jp/nursing/practice/covid19/homecare.html8. 夏にできる効果的な感染対策と予防法基本的な対策室内でも定期的に換気マスクの適切な使用手洗い・アルコール消毒の徹底夏ならではの工夫エアコン使用中でも1時間に1回は換気水分補給をこまめに行い、脱水と感染リスクを同時に防ぐ外出時は人混みを避け、特にイベント参加は体調を優先規則正しい生活と睡眠を確保し、免疫力を保つこれらの感染対策は、単に「コロナにかからない」ためだけでなく、熱中症や夏風邪との複合的な健康リスクを避けることにもつながります。特にニンバス株は喉の痛みが強く水分摂取が難しいため、日頃からの水分補給と体調管理が重要です。また、夏は生活リズムが乱れやすいため、免疫力を維持するために睡眠と食事のバランスを意識することが求められます。出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症について(Q&A)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html9. よくある質問(Q&A形式)Q1. 夏風邪とニンバス株はどう見分ければいいですか?→ 咽頭痛と長引く咳はコロナでもよく見られる症状ですが、結膜炎や口腔内水疱がある場合は夏風邪の可能性が高いです。Q2. ニンバス株は従来株より重症化しやすいですか?→ WHOは「重症度に差はない」と評価しています。ただし高齢者や基礎疾患のある人では脱水や合併症の危険が高く注意が必要です。Q3. ワクチンは有効ですか?→ ニンバス株に対しても重症化予防効果が期待されています。接種は自治体の案内を確認してください。Q4. 自宅療養中に気をつけることは?→ 脱水予防が重要です。水分や経口補水液をこまめに摂取し、食欲がなくても少量ずつ栄養補給をしましょう。Q5. 後遺症はありますか?→ 倦怠感、咳の持続、集中力低下などが数週間続く場合があります。症状が続く際は医師に相談してください。出典:WHO「Coronavirus disease (COVID-19) Fact sheet」https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/coronavirus-disease-(covid-19)まとめ2025年夏の新型コロナは、オミクロン派生型「ニンバス株」が監視対象株として注目されています。症状は従来と大きく変わらず、咽頭痛や発熱、倦怠感、咳が主です。夏風邪や熱中症との鑑別が難しいこともありますが、正しい情報に基づいた判断と早めの受診が大切です。特に高齢者や基礎疾患を持つ方は重症化リスクがあるため、在宅療養時には訪問看護を含めた支援を積極的に利用してください。体調に不安がある方は、ピース訪問看護ステーションにご相談ください。関連記事コロナと酸素濃度の関係性とは?自宅療養で知っておくべきポイント【最新8/23速報】新型コロナ「ニンバス」が流行中!喉の痛みの特徴と感染者増加の背景【2025年8月】新型コロナ感染者数の最新情報と訪問看護の最前線参考文献一覧厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の発生動向調査(2025年第33週)」https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/001543603.pdfWHO「Disease Outbreak News: COVID-19 - Global Situation」https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2025-DON572WHO「Initial risk evaluation of NB.1.8.1」https://cdn.who.int/media/docs/default-source/documents/epp/tracking-sars-cov-2/23052025_nb.1.8.1_ire.pdf国立感染症研究所「咽頭結膜熱とは」https://www.niid.go.jp/niid/ja/adeno-pfc-m/adeno-pfc-idwrc/12351-idwrc-2342.html国立感染症研究所「ヘルパンギーナとは」https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/515-herpangina.htmlWHO「Coronavirus disease (COVID-19) Fact sheet」https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/coronavirus-disease-(covid-19)厚生労働省「新型コロナウイルス感染症について(Q&A)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html厚生労働省「熱中症予防のために」https://neccyusho.mhlw.go.jp/heatstroke/日本看護協会「在宅療養と新型コロナウイルス対応」https://www.nurse.or.jp/nursing/practice/covid19/homecare.html本記事の執筆者・監修者プロフィール【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理に長け、地域医療連携や在宅看取り支援にも積極的に取り組んでいる。