在宅リハビリは、住み慣れた自宅で生活機能を回復・維持するためのリハビリです。病気や加齢で体の機能が落ちた方が、安心して自宅で暮らし続けられるようにサポートします。本記事では、在宅リハビリの仕組みや費用、利用の流れ、病気ごとの工夫、家族の役割まで、わかりやすく解説します。さらに具体例や現場での工夫も加えて、実際のイメージを持ちやすい内容にしています。1. 在宅リハビリとは在宅リハビリは、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)などが自宅を訪問して行います。目的は以下の通りです。起き上がる・歩くなどの基本動作を取り戻す食事・トイレ・入浴などの日常生活を自分でできるようにする会話や飲み込みなどの機能を改善する生活の質(QOL)を上げて、社会参加を促すポイント: 自宅で行うため、玄関の段差や浴室など「生活そのもの」に即したリハビリが可能です。環境調整や福祉用具の選び方も大切になります。具体例玄関にある10cmの段差を昇る練習を繰り返し、自分で買い物に行けるようになる。キッチンで料理をする動作を再現しながら、包丁や鍋を安全に扱えるよう工夫する。認知症の方に対しては、写真やカレンダーを使いながら「今日の予定」を一緒に確認する。2. 訪問看護・訪問リハ・通所リハの違い在宅で受けられるサービスは大きく3つに分けられます。サービス担い手内容向いている方訪問看護看護師・理学療法士医療ケア、薬の管理、リハビリ、看取り病気の管理が必要な方訪問リハビリPT/OT/ST生活動作の訓練、環境調整、家族への助言自宅で動作を改善したい方通所リハ(デイケア)介護施設集団・個別リハ、食事や入浴、送迎社会参加や仲間づくりもしたい方イメージすると分かりやすいポイント:訪問看護 → 医療も含めて安心を支える訪問リハ → 自宅での生活動作に特化通所リハ → 通いながら仲間とリハビリ利用の工夫訪問リハと通所リハを組み合わせ、「平日は訪問リハで生活訓練、週末は通所で交流」といった形でバランスを取る方もいます。訪問看護を利用しながら、病状が安定してきたら通所に切り替えるケースもあります。3. 利用開始までの流れ在宅リハビリを始めるには、介護保険か医療保険かで手続きが異なります。ステップ介護保険の場合医療保険の場合①相談地域包括支援センターやケアマネに相談主治医に相談②判定要介護認定を受ける医師が訪問リハの必要性を判断③計画ケアマネがケアプランを作成主治医が訪問看護指示書を作成④実施事業所と契約して開始ステーションと契約して開始まとめ: 迷ったら、まず地域包括支援センターに相談するとスムーズです。現場での工夫認定調査時には「普段の生活で困っていること」を具体的に伝えると、より実情に合った判定が受けられます。医療保険の場合、リハビリが長期に続くと制限があるため、介護保険への切り替えを見据えて準備することが多いです。4. 費用と保険在宅リハビリは、介護保険か医療保険が使えます。自己負担の目安保険自己負担特徴介護保険1〜3割要介護度に応じた枠の中で利用。超えると全額負担医療保険1〜3割訪問回数に制限あり。難病・小児は特例あり費用の実例介護保険:1回20分のリハビリで300〜400円程度(1割負担の場合)医療保険:訪問看護1回で約400〜600円程度(1割負担の場合)ポイント: どちらを使うかは病状や要介護度で決まります。費用を抑えるには、ケアマネやソーシャルワーカーに相談して計画的に利用しましょう。5. 在宅リハビリの内容(病気ごと)在宅リハビリは病気ごとに工夫が異なります。循環器疾患軽い有酸素運動(歩行など)を安全に行う息切れや胸痛のサインを確認しながら継続血圧や体重のセルフチェックを習慣化透析患者疲れに配慮して短時間の運動を分けて実施シャント側の腕を守りながら筋力維持水分制限に合わせた生活指導も併せて行う呼吸器疾患腹式呼吸や口すぼめ呼吸の練習酸素療法中でもできる運動を指導痰を出しやすくする体位を習慣化廃用症候群関節のストレッチで拘縮を予防ベッドでの起き上がり・座る練習筋力に合わせた段階的トレーニング骨折手すりや歩行器を使った安全な歩行練習家の段差や照明を整えて転倒を予防痛みに配慮しながら関節を動かす脳血管疾患片麻痺に合わせた立ち上がり・歩行練習自助具を使った日常動作の工夫言語や飲み込みの訓練も行うパーキンソン病リズムに合わせて歩行練習姿勢保持や転倒予防のバランス訓練服薬タイミングに合わせた活動計画精神疾患規則正しい生活リズムを整える散歩など軽い運動で気分を安定趣味や活動を計画に組み込み、意欲を高める6. 家族の役割在宅リハビリは、家族の支えが大きなカギです。声かけ:小さな達成を一緒に喜ぶ介助:必要最小限で手助けする記録:歩数や排泄をメモして共有連携:困りごとは事実と頻度を伝える実際の工夫家族が「今日は5分歩けたね」と声をかけるだけで、本人のモチベーションが上がります。排泄や入浴の記録をつけることで、次のリハビリ計画に活かすことができます。7. メンタルケアリハビリは体だけでなく、心の支えも重要です。写真や動画で小さな進歩を見える化訪問時に「雑談タイム」を取り入れる家族も気持ちを吐き出せる場を持つ外出が難しいときはオンラインで交流ポイント: 趣味や生活歴を大事にし、その人らしさを尊重しましょう。事例パーキンソン病の方が「昔の好きな音楽」をかけると自然にリズムを取れるようになり、歩行訓練がスムーズに進んだケースがあります。8. 町田市での相談窓口町田市では在宅リハビリに関する相談窓口が整備されています。窓口内容連絡先地域包括支援センター介護保険申請、相談市HPの一覧から確認介護保険課要介護認定市役所の介護保険ページケアマネ事業所サービス調整地域の事業所検索注意点: 平日昼のみ対応の窓口も多いため、事前に電話やメールで確認しておくと安心です。補足町田市では、介護予防教室や市主催のリハビリ相談会も開催されています。地域でのつながりを持つことは、在宅生活を続ける上で大きな力になります。まとめ在宅リハビリは、生活の場そのものをリハビリに変える方法です。病気ごとの工夫を取り入れ、家族と専門職が協力することで、安心して自宅での生活を続けられます。町田市在住の方で、ご不安やご質問はお気軽にピース訪問看護ステーションにご相談ください。関連記事廃用症候群を防ぐために、寝たきりを防ぐ訪問リハビリと生活の工夫嚥下機能に効果的!パタカラ体操の正しいやり方と注意点パーキンソン病の症状と訪問看護の役割、在宅療養を支えるプロの視点参考文献一覧厚生労働省「訪問看護の利用対象」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000661085.pdf厚生労働省「介護保険制度の概要」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/kaigo_kihon/index.html日本看護協会「訪問看護の基礎知識」 https://www.nurse.or.jp/home/publication/pdf/visitnursing.pdf国立長寿医療研究センター「高齢者の転倒予防」 https://www.ncgg.go.jp/hospital/rehab/fall-prevention.html日本理学療法士協会「理学療法ハンドブック(在宅)」 https://www.japanpt.or.jp/medical_pt/handbook/国立感染症研究所「在宅療養に関する感染対策の考え方」 https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2484-idsc/10942-covid19-homecare.html町田市役所「地域包括支援センター」 https://www.city.machida.tokyo.jp/iryo/tyoufukushi/chiikihoukatsu.html本記事の執筆者・監修者プロフィール【執筆者】作業療法士都内の回復期リハビリテーション病院に7年間勤務し、その後東京都町田市内で訪問看護・訪問リハビリに携わり5年。AMPS認定評価者、CI療法外来の経験を持ち、またOBP(作業に基づく実践)を中心とした在宅支援の豊富な実践経験を有する。【監修者】看護師(訪問看護ステーション管理者)大学病院での急性期看護を経て、訪問看護ステーションの管理者を務める。終末期ケアや慢性疾患管理に長け、地域医療連携や在宅看取り支援にも積極的に取り組んでいる。